melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Capitol

Migos - Culture II [2018 Quality Control, Motown, Capitol]

2009年に、ジョージア州のローレンスビルを拠点に活動していたクアヴォ、テイクオフ、オフセットの三人が結成。2013年にアトランティックからデビュー・シングル”Versace”を発表すると、50万枚を売り上げ、ゴールド・ディスクを獲得する大ヒットになったヒップホップ・グループ、ミーゴス。

その後は、ヒット曲を引っさげて、複数のラジオ番組に出演。躍動感あふれるパフォーマンスで喝采を浴びる一方、合間を縫って立て続けにミックス・テープを発表。これらの作品が高い評価を受けた彼らは、2015年に初のスタジオ・アルバム『Yung Rich Nation』をリリースする。同作はアルバムチャートの17位に入り、グッチ・メインや2チェインズ、フューチャーとともに、アメリカ南部発の人気ヒップホップ・ミュージシャンとして、世界中のヒップホップ好きから注目を集めるようになる。また、2017年には2枚目のアルバム『Culture』を発表。同作はアメリカ国内だけで100万枚を売り上げ、全米総合アルバムチャートの1位を獲得。グラミー賞のベスト・ラップ・アルバムにノミネートする大ヒット作となった。

このアルバムは、前作からわずか1年という短い間隔でリリースされた通算3枚目のフル・アルバム。アトランティック系の300YRNから、ユニヴァーサル系のモータウンに移籍して制作された本作では、メンバーのクエヴォと、彼らのサウンドを支えてきたDJデュレルが制作を主導。それに加え、マーダ・ビーツやカニエ・ウエスト、メトロ・ブーミンといった、アメリカやカナダを代表するヒット・メイカーが参加。流行の最先端を意識した音楽を聴かせている。

本作の収録曲で最初に目を惹いたのは、デビュー作にも携わっているホノラブルC.N.O.T.E.がプロデュースした”Supastars”だ。ブリブリと唸る低音と、軽快なビートを組み合わせたトラックの上で、軽妙な掛け合いを見せる作品。ジョージア州出身の彼ららしい、トラップ・ビートを使った格好良い楽曲だ。

これに対し、ファレル・ウィリアムスをプロデューサーに起用した”Stir Fry”は口笛のような音色の上物と、ゴムボールのように跳ねるビートが面白い作品。リル・ジョンやクリス・ブラウンのヒット曲で有名になったクランクやトラップをベースにしつつ、ファレルが多用する軽やかな音色を組み合わせている点が新鮮だ。彼がプロデュースした作品にもかかわらず、3人のラップを聴かせることに力を注いだ構成も面白い。

そして、トラヴィス・スコット、タイ・ダラ・サイン、ビッグ・ショーンという人気ラッパー3人を迎えた”White Sand”は、アトランタ出身のプロデューサー、ウィージーがトラックを制作。オートチューンを使ったトラヴィス・スコットとタイ・ダラ・サインのフックから始まるこの曲では、リズミカルなラップが魅力のミーゴスと、荒っぽいラップが武器のゲストの対比が聴きどころ。ヴォーカル曲もこなせるタイ・ダラ・サインとトラヴィス・スコットの存在が、表現の幅を広げている点にも注目してほしい。

だが、本作の目玉はなんといっても、マーダ・ビーツがプロデュースを担当した”MotorSport”だろう。ニッキー・ミナージュとカルディBという、現代のヒップホップ・シーンをけん引する女性ラッパーとコラボレーションしたこの曲は、重厚なビートの上で、5人が個性豊かなラップを披露している。一度聴いたら忘れられない、強烈な個性を持つゲストのラップを引き立てるため、あえて堅実なパフォーマンスを聴かせる3人の存在が光る良作だ。

彼らの音楽の特徴は、現代のアメリカで流行している手法を積極的に取り入れているところだろう。彼らの地元ジョージア州を含むアメリカ南部で流行している、シンセサイザーを多用したトラップやクランクのサウンドを軸に、カニエ・ウエストや、ファレル・ウィリアムスといったヒット・メイカーや、ニッキー・ミナージュやドレイクといったトップ・ミュージシャンを集め、彼らのスタイルを盛り込んだ楽曲を録音している。この、一貫した個性を持ちつつ、周囲の変化を積極的に吸収していく手法が、彼らの音楽の人気の秘訣だろう。

現代のアメリカのヒップホップの美味しいところを凝縮したといっても過言ではない良盤。「今、どんな音楽が流行しているか知りたい」という人はぜひ聴いてほしい。

Producer
Quavo, DJ Durel, Honorable C.N.O.T.E., Kanye West, Metro Boomin, Murda Beatz, Pharrell Williams etc

Track List
1. Higher We Go (Intro)
2. Supastars
3. Narcos
4. BBO (Bad Bitches Only) feat. 21 Savage
5. Auto Pilot (Huncho on the Beat)
6. Walk It Talk It feat. Drake
7. Emoji a Chain
8. CC feat. Gucci Mane
9. Stir Fry
10. Too Much Jewelry
11. Gang Gang
12. White Sand feat. Big Sean, Travis Scott & Ty Dolla $ign
13. Crown the Kings
14. Flooded
15. Beast
16. Open It Up
17. MotorSport by Migos, Nicki Minaj & Cardi B
18. Movin' Too Fast
19. Work Hard
20. Notice Me feat. Post Malone
21. Too Playa feat. 2 Chainz
22. Made Men
23. Top Down On Da NAWF
24. Culture National Anthem (Outro)





Culture 2
Migos
Quality Control
2018-01-26

Sam Smith - The Thrill of It All [2017 Capitol]

エイミー・ワインハウスやワン・ダイレクション、アデルやマーク・ロンソンなどの相次ぐ成功で、再び注目を集めているイギリス出身のミュージシャン達。その一人で、2015年にアデル以来、実に5年ぶりとなる、外国出身者によるグラミー賞のベスト・ニュー・アーティストを獲得したことも記憶に新しい、ロンドン出身のシンガー・ソングライター、サム・スミスことサミュエル・フレデリック・スミス。

仲立人の家に生まれた彼は、ジャズ・バンドやミュージカルを通して音楽の世界に足を踏み込む。その後、2012年にエレクトロ・バンド、ディスクロージャーの”Latch”のゲスト・ヴォーカルでレコード・デビューすると、その後は自身の名義で複数のシングルをリリース。ブラック・ミュージックを扱うイギリスのラジオ・チャンネル、BBCレディオ1エクストラでお披露目する機会を得るなど、ブルー・アイド・ソウル(白人が歌うソウル・ミュージック)の旗手として、広く知られるようになった。

そして、2014年には初のアルバム『In the Lonely Hour』をリリース。複数の国のヒット・チャートで1位を獲得し、全世界で1200万枚も売り上げる大ヒット作となる。また、同作からシングル・カットされた楽曲の多くが全英チャートを制覇、これらの実績を引っ提げて、日本を含む世界各地でライブを行うなど、英国を代表するシンガーの一人として、縦横無尽の活躍を見せてきた。

このアルバムは、前作から3年ぶりの新作となる2枚目のフル・アルバム。プロデュースは前作にも関わっているスティーヴ・フィッツモーリスやジミー・ネイプスなどが担当。それ以外にも、スターゲイトやティンバランドなどの有名プロデューサーが参加した、人気ミュージシャンらしい豪華な布陣になっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、本作に先駆けてシングル・カットされた”Too Good At Goodbyes”。スターゲイトのミッケル・エリクセンがソングライティングで参加したこの曲は、生バンドのしっとりとした雰囲気が魅力的なトラックをバックに、じっくりと歌い込むサムの姿が印象的なミディアム・バラード。ニーヨやビヨンセに美しいメロディの楽曲を提供してきたエリクセンのセンスが加わることで、サムの洗練されたヴォーカルが際立った良曲だ。

これに対し、テイラー・スウィフトやジョン・レジェンドなどの作品を手掛けているアメリカの音楽プロデューサー、タイラー・ジョンソンを招いた”One Last Song”は、ディクシー・チックスやテイラー・スウィフトのような、カントリーやフォーク・ソングよりのミュージシャンの作品に近い、ゆったりとしたリズムが心地よい曲。ジャズやミュージカル音楽からキャリアをスタートしたサムだけあって、朴訥とした雰囲気のフォーク・ミュージックもきちんと乗りこなしている。

また、ロス・アンジェルスを拠点に活動するプロダクション・チーム、オーディブルズに所属するドミニク・ジョーダンと、コネティカット出身のソングライター、プーペーア制作に携わっているる”Burning”は、ピアノをバックに瑞々しい歌声を響かせるバラード、滑らかな歌声はマックスウェルやレミー・シャンドにも通じる洗練されたものだが、生楽器を多用したことでどこか柔らかい印象を受ける。

そして、本作の収録でも異彩を放っているのが、ティンバランドがプロデュースした”Pray”だ。ティンバランドに加え、彼と一緒にジョデシィのデヴァンテの元で腕を磨いてきたダリル・ピアソンが制作に携わったこの曲は、チキチキというハイハット以外は、シックに纏められた伴奏というティンバランドっぽくないスタイルの作品。しかし、ゴスペルの影響を感じさせるダイナミックで粘り強いヴォーカルや、荘厳でキャッチーなメロディなど、ジョデシィのような「歌」をウリにするアメリカのR&Bの影響が随所に盛り込まれている点は面白い。

今回のアルバムでは、前作に引き続き、往年のソウル・ミュージックを現代に合わせて再解釈した、美しいメロディと豊かな表現力、しなやかなアレンジが光る良曲を揃えている。スターゲイトやティンバランドなど、多くのヒットメイカーを起用して、彼らの持つ音楽への造詣の深さと、現代のブラック・ミュージックのトレンドを押さえる嗅覚の良さを取り入れつつ、ソウル・ミュージックがベースになっている自分のスタイルに昇華出来ているのは、スティーヴ・フィッツモーリスやジミー・ネイプスのような、前作にも携わってる面々と二人三脚でやっていることも大きいだろう。

斬新なサウンドや強烈な個性がなくても、高い歌唱力や演奏技術があれば、人の心を動かす音楽が作れることを再確認させてくれる良作。若い人には新鮮さを感じさせつつ、大人の鑑賞にも堪える稀有な作品だと思う。

Producer
Steve Fitzmaurice, Jimmy Napes, Timbaland  etc

Track List
1. Too Good At Goodbyes
2. Say It First
3. One Last Song
4. Midnight Train
5. Burning
6. Him
7. Baby, You Make Me Crazy
8. No Peace feat. YEBBA
9. Palace
10. Pray
11. Nothing Left For You
12. The Thrill Of It All
13. Scars
14. One Day At A Time



a

Thrill of It All
Sam Smith
Capitol
2017-11-03

D'Angelo - Brown Sugar: Deluxe Edition [2017 Capitol]

宣教師の父のもとで、幼いころから音楽の才能を開花し、91年にEMIと契約すると、デビュー前の新人ながら、ボーイズIIメンやキース・スウェットらが参加した企画シングル”U Will Know”のソングライターに抜擢されるなど、若いころから華々しい活躍を見せてきたバージニア州リッチモンド出身のシンガー・ソングライター、ディアンジェロこと、マイケル・ユージン・アーチャー。

1995年に、初のフル・アルバム『Brown Sugar』をリリースすると、ヒップホップのシンプルなダイナミックなビートと、生演奏を使った、往年のソウル・ミュージックを連想させる温かい演奏を融合した斬新な作風で、音楽ファンの注目を集めた。その後も、2000年には『Voodoo』を 2014年には『Black Messiah』を発表。寡作ながら、多くの人の記憶に残る傑作を残してきた。

今回のアルバムは、95年に発売したデビュー作の新装版。オリジナル盤の収録曲(ディスク1の1~11曲目)に本作が初出のリミックスなどを加えた、豪華なものになっている。

本作の目玉である追加曲に目を向けると、最初に目を惹くのはプロデューサーの仕事も多いイギリスのジャズDJ、ドッジがリミックスを担当した”Brown Sugar”だ。原曲と同じ音色を使いつつ、キーボードの激しい演奏を、しっとりとした伴奏に置き換えたアレンジが光る作品だ。発売された当初は、オリジナルに比べて地味な印象を抱いたが、改めて聴き返すと、ディアンジェロの歌声を際立たせたアレンジの妙味が光っている。

これに対し、インコグニートが制作した同曲のリミックスは、原曲のヴォーカルを残しつつ、伴奏の大半を新しく録音し直したもの。イントロを聴いた瞬間、インコグニートの仕事とわかる爽やかで上品な伴奏に、ディアンジェロのドロドロとした歌唱が乗っかったアレンジは奇抜にも映るが、実は相性が良い。普段はジャズやソウルに傾倒したスタイリッシュなパフォーマンスを披露することが多い彼らだが、この曲ではディアンジェロに合わせて、ヒップホップのビートや抽象的なフレーズを盛り込んでいることが功を奏している。同じ生演奏を多用した作風ながら、全く異なる音楽性でファンを魅了していた両者の持ち味が一つの音楽に同居した面白い作品だ。

それ以外の曲では、DJプレミアをリミキサーに起用した”Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Two Way”のリミックスも面白い。古いレコードの音色をコラージュして、ソウルフルで躍動感溢れるビートを数多く生み出してきたDJプレミアだが、この曲では音と音の隙間を効果的に使うディアンジェロの作風に合わせて、音数の少ないシンプルなトラックを用意している。プリモが制作に携わった『Voodoo』からの先行シングル”Left & Right”では、パンチの聴いたビートに、メソッドマンとレッドマンの荒々しいラップを組み合わせた斬新な作品だったが、こちらはディアンジェロの作風をベースにヒップホップの要素を追加したものだ。好みは分かれると思うが、個人的にはこちらの方がディアンジェロの作風と合っていると思う。

そして、本作の最後に入っている”Cruisin’”は、スモーキー・ロビンソンが79年に発表したシングル曲のカヴァー。95年に発売されたプロモーション用レコードにも入っていたが、正式にCD化されるのは今回が初となる。ほかの曲はリミキサーが明らかになっているが、この曲を含む複数の曲ではクレジットが明らかになっていない。ベタっとした音を使ったヒップホップのビートは、マーク・モリソンのようなイギリスのR&Bシンガーを思い起こさせる。90年代のトレンドが垣間見える佳作だ。

このアルバムを聴いていて驚くのは、追加曲を含むほとんどの作品が90年代に録音されているにも関わらず、今も新鮮に聴こえることだろう。もちろん、彼自身が佳作で作風の変化が小さいことも大きいが、それ以上に、メロディ、歌、演奏の全てが聴きどころという点も大きいと思う。そして、この完成度が極めて高い曲に、音を足したり引いたりして、新しい表情を吹き込むクリエイターの存在も目立っている。音楽配信サービスの隆盛によって、プロやアマチュアのクリエイターが多くのリミックス作品を発表する時代になったが、このアルバムに収められているような楽曲の持ち味を尊重しつつ、クリエイターの独自性を打ち出したものはそれほど多くないと思う。

ディアンジェロの音楽が一時の熱狂で評価されたものではない「不朽の名作」であること、彼だけでなく、本作を傑作にしたのは、彼一人の才能ではなく、作品に関わった全てのクリエイターの才能と技術によるものであることを再認識させられる名企画。彼の音楽を聴いたことがない人はもちろん、オリジナル盤を持っている人にもぜひ聴いてほしい。価値のある特別版だ。

Producer(Original Version)
D'Angelo, Kedar Massenburg, Ali Shaheed Muhammad, Bob Power, Raphael Saadiq

Track List
Disc 1
1. Brown Sugar
2. Alright
3. Jonz In My Bonz
4. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine
5. Sh*t, Damn, Motherf*cker
6. Smooth
7. Cruisin'
8. When We Get By
9. Lady
10. Higher
11. Brown Sugar A Cappella
12. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine A Cappella
13. Brown Sugar Instrumental
14. Lady Just Tha Beat Mix/featuring AZ (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
15. Brown Sugar Soul Inside 808 Mix (Mix by DJ Dodge)

DISC 2
1. Brown Sugar King Tech Remix feat. Kool G. Rap
2. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Def Squad Remix feat. Redman (Remixed by Erick Sermon for Funk Lord Productions)
3. Cruisin' Cut The Sax Remix (Remix by King Tech)
4. Lady Just Tha Beat Mix/featuring AZ (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
5. Brown Sugar Soul Inside 808 Mix (Mix by DJ Dodge)
6. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Two Way Street Mix (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
7. Cruisin' Dallas Austin Remix)
8. Lady 2B3 Shake Dat Ass Mix (Remix produced by Neville Thomas and Pule Pheto for 2B3 Productions)
9. Brown Sugar Incognito Molasses Remix
10. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Dreamy Remix (Remixed by Erick Sermon for Funk Lord Productions)
11. Cruisin' Wet Remix
12. Brown Sugar Dollar Bag Mix
13. Cruisin' God Made Me Funky Remix
14. Brown Sugar CJ Mackintosh Remix (Additional production and Remix by CJ Mackintosh)
15. Lady CJ Mackintosh Mix Radio Edit (Additional production and Remix by CJ Mackintosh)
16. Cruisin' Who's Fooling Who Mix





ブラウン・シュガー(デラックス・エディション)
ディアンジェロ
ユニバーサル ミュージック
2017-08-25

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