melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Columbia

Leon Bridges - Good Thing [2018 Columbia]

2014年のアルバム『Coming Home』が注目を集め、グラミー賞にもノミネートしたテキサス州フォートワース出身のシンガー・ソングライター、リオン・ブリッジスこと、トッド・ミッチェル・ブリッジス。

サム・クックやオーティス・レディングを彷彿させる、適度な泥臭さと大衆性を兼ね備えたヴォーカルに、60年代のモータウンスタックスのレコードを思い起こさせる、生演奏を使ったリズミカルな伴奏。それに加えて、ヒップホップを聴いて育った世代らしい、重くパンチの効いたビートを使ったアレンジが心地よい音楽が武器の彼。そんな彼は、子供のころからギターを片手に自作曲を作り、成長すると多くのオープン・マイク(飛び入り参加のイベント)でパフォーマンスを披露。その時の演奏が目に留まり、2014年にコロンビアと契約を結んだという叩き上げのミュージシャンなのだ。 そして、『Coming Home』を発表した彼は、このあともマックルモア&ライアン・ルイスの”Kevin”に参加し、BBCのテレビ番組にも出演、デビュー直後の新人ながらフジ・ロック・フェスティバルにも出演するなど、世界中の音楽好きを魅了してきた。

このアルバムは、前作から約4年の間隔を挟んでリリースされた、2枚目のスタジオ・アルバム。プロデュースは前作に引き続きナイルス・シティ・サウンドトリッキー・リードが担当。楽曲制作には彼自身が積極的にかかわる一方、前作同様ゲスト・ヴォーカルは招かないなど、前回のアルバムで高く評価された、彼の歌にフォーカスを当てた作品になっている。

本作のオープニングを飾るのは、アルバムに先駆けて公開された”Bet Ain't Worth The Hand”。鍵盤楽器や弦楽器を組み合わせ、60年代末から70年代初頭にかけてシャイ・ライツやデルズが残したような、煌びやかで優雅なアレンジのソウル・ミュージックに仕立てている。優雅なサウンドの上で、オーティス・レディングや元インプレッションズのジェリー・バトラーを連想させる武骨な歌声を操って、甘くロマンティックな音楽を聴かせる姿が印象的だ。

これに続く”Bad Bad News”はしなやかなビートとメロディが心地よいダンス・ナンバー。ベースの音を強調して、ジャズやディスコ音楽の要素を盛り込みつつ、スタイリッシュに纏め上げる手法は、90年代に一世を風靡したブラン・ニュー・ヘヴィーズを思い起こさせる。ゴスペルのコール&レスポンスを盛り込む演出など、複数の音楽のエッセンスを取り込むことで、懐かしさと新鮮さを両立させている。

これに対し、4曲目の”Beyond”は、彼の音楽の原点であるギターの伴奏を盛り込んだスロー・ナンバー。ギターの演奏は、ナイル・シティ・サウンドの一員で、ブルースやカントリーの演奏に強いオースティン・マイケル・ジェンキンスによるもの。しかし、この曲ではヴォーカルと息の合った演奏を披露することで、リオンの弾き語りのように聴かせている。ギターの演奏をバックに歌う音楽といえば、ブルースやカントリー、フォーク・ソングのイメージが強いが、彼が生まれ育ったアメリカ南部の出身のミュージシャンには、ボビー・ウーマックを筆頭に、ギターの伴奏を取り入れるミュージシャンが少なくない。激しい人種差別で知られる一方、人種の壁を越えて音楽が混ざり合ってきた、アメリカの音楽文化の奥深さを感じさせる良曲だ。

そして、本作の収録曲でも特に印象的だったのが、アルバムの最後を締める”Georgia To Texas”。粗っぽい音色のベースの演奏をバックに、朗々と歌う姿が印象的なバラード。ウッド・ベースを中心に、ピアノやトランペットなどの楽器を配置したバンドは、60年代のソウル・ミュージックではお馴染みのスタイル。それを現代の音楽環境に合わせて再構築した編曲技術が聴きどころ。楽器の音数を絞ることで、主役の歌声が持つ、繊細さや力強さ、優しい雰囲気が引き立っている点も興味深い。

本作から感じた彼の魅力は、50年代から70年代にかけて流行したソウル・ミュージックから強い影響を受けつつ、当時の音楽をそのまま演奏するのではなく、現代のR&Bに落とし込んでいる点だろう。ギターやオルガンなどの音を使いながら、現代のポップスでも用いられる大人数のホーン・セクションや弦楽団などは取り入れず、60年代のモータウンやスタックスのレコードのような、シンプルで温かみのあるサウンドに仕上げている。しかし、当時の音楽に比べると、ギターの音は刺々しく、ドラムの音は重い。この、昔の音楽を取り入れつつ、単なる懐古趣味に終わらせない、現代の音楽として再構築する技術が面白い。プロデュースにかかわった面々が、昔のソウル・ミュージック以外の音楽、例えば現代のカントリーやブルースにも造詣が深く、彼自身もジニュワインのような90年代以降のR&Bに慣れ親しんできたことも大きいのだろう。

彼の音楽は「温故知新」を地で行っている。このアルバムを聴いていると「伝統を受け継ぐ」というのは、過去のやり方を静態保存することではなく、受け継ぐ対象が持つ豊かな歴史を理解し、現代を生きる自分達に合わせてアップデートすることだと教えてくれる。往年のソウル・ミュージックが好きな人にも、ヒップホップのような最近の音楽が好きな人にも聴いてほしい。広い音楽の世界を繋ぐ架け橋になる、貴重な作品だ。

Producer
Niles City Sound, Ricky Reed

Track List
1. Bet Ain't Worth The Hand
2. Bad Bad News
3. Shy
4. Beyond
5. Forgive You
6. Lions
7. If It Feels Good (Then It Must Be)
8. You Don't Know
9. Mrs.
10. Georgia To Texas








Chloe x Halle - The Kids Are Alright [2018 Parkwood Entertainment, Columbia]

ビヨンセが率いるコロンビア傘下の音楽レーベル、パークウッド。彼女の作品を中心に、録音物だけでなく映像作品も送り出している同社からデビューしたのが、クロイとハリーのベイリー姉妹による音楽ユニット、クロイ&ハリーだ。

ジョージア州アトランタ出身の二人は、動画投稿サイトにアップロードしたパフォーマンスをきっかけにレーベルと契約。2016年に『Sugar Symphony』でレコード・デビューを果たした。といっても、姉のクロイは子供のころから役者として活動しており、ビヨンセが主演した映画「The Fighting Temptations」にも出演するなど、遠からぬ縁はあったという。

本作は、彼女達にとって初のスタジオ・アルバム。ディズニー映画「A Wrinkle In Time」や、コメディ番組「Grown-ish」のサウンドトラックに収録された楽曲も含め、ほぼ全ての作品を二人で制作。インターネット経由で色々なジャンルのヒット曲のカヴァーを披露してきた、本記事の執筆時点でクロイが19歳、ハリーが17歳という、10代の若い感性と高い技術を惜しげもなく披露した、新鮮なR&Bを聴かせている。

まず、アルバムに先駆けてリリースされたタイトル曲”The Kids Are Alright”は、シンプルなトラックの上で悠々と歌う二人の姿が印象的なミディアム・ナンバー。ドラムの音は後半まで入らず、後半のビートも音圧を抑えたスタイルは、ヒップホップを経由したR&Bというより、アカペラ作品のようにも聴こえる。二人の歌と伴奏だけで、豊かな表現を聴かせる彼女達のスキルに驚かされる良曲だ。

これに対し、ジョーイ・バッドアスが参加した”Happy Without Me”は、カルディBの”Bodak Yellow”やグッチ・メインの”I Got A Bag”を思い起こさせるトラップのビートが格好良い、ヒップホップ色の強い曲。人気ラッパーを起用した作品でありながら、メロディ部分も二人が担当し、あくまでもR&Bとして聴かせている点が面白い。ジョーイのラップが入る箇所で、ビートが微妙に変化する演出も光っている。

また、 ディズニー映画のサウンドトラック向けに作られた”Warrior”は、R&Bをベースにしつつ、荘厳な雰囲気で纏め上げた伴奏と、二人の歌唱力を活かしたダイナミックなメロディが光るスロー・ナンバー。「ライオンキング」の主題歌として知られるエルトン・ジョンの”Can You Feel the Love Tonight”にも通じる、シンプルだが味わい深い楽曲と、二人の高いヴォーカル技術が堪能できる佳作だ。

そして、本作のボーナス・トラックとして収録されたデビュー曲”Drop”は、シドジャミラ・ウッズの作品を連想させる、泥臭いビートとメロディが心に残るミディアム・ナンバー。トラックを構成する楽器の音を厳選し、音と音の隙間を効果的に使うスタイルは、ディアンジェロの”Brown Sugar”にも通じる。

このアルバムを聴いて真っ先に思い浮かんだのは、マイケル・ジャクソンのヒット曲”Butterfly”を制作したイギリスの女性デュオ、フロエトリーの存在だ。ヒップホップやR&B、映画音楽を飲み込み、多彩な表現を聴かせてくれる彼女達は、往年のソウル・ミュージックと現代のヒップホップを融合した作風や、グラマラスな歌声と繊細な表現で私達を魅了したフロエトリーとよく似ている。しかし、最大の違いは、新しい音楽への向き合い方で、彼女達は、昔のソウル・ミュージックにとらわれず、ポップスや新しいヒップホップの表現技法を盛り込んで、現代のポップスに落とし込んでいる。その点が、ヒップホップを取り入れつつ、ソウル・ミュージックにベースを置いたフロエトリーとは大きく異なる点で、彼女達の持ち味にもなっている。

多くのゲストを侍らせたソロ・シンガーが主流である、現代の欧米の音楽市場では貴重になった、シンガー二人による息の合ったパフォーマンスが楽しめる良作。二人組というシンプルな編成でも多彩な表現が可能なことを証明した、ヴォーカル・グループのお手本のようなアルバムだ。

Producer
Chloe Bailey, Halle Bailey

Track List
1. Hello Friend (Intro)
2. The Kids Are Alright
3. Grown (From Grown-ish)
4. Hi Lo feat. GoldLink
5. Everywhere
6. FaLaLa (Interlude)
7. Fake feat. Kari Faux
8. Baptize (Interlude)
9. Down
10. Galaxy
11. Happy Without Me feat. Joey Bada$$
12. Babybird
13. Warrior (From "A Wrinkle in Time")
14. Cool People
15. Baby on a Plane
16. If God Spoke
17. Drop
18. Fall





The Kids Are Alright
Parkwood Entertainment/Columbia
2018-03-23

N.E.R.D. - No One Ever Really Dies [2017 I am Other, Columbia]

2014年にソロ名義でリリースした”Happy”が世界的なヒットとなり、その後も、映画「ミニオンズ」シリーズや「ドリーム」などの映画のサウンドトラックをプロデュース。それ以外にも、ダフト・パンクやカルヴィン・ハリスの作品で自慢の喉を披露している、売れっ子ミュージシャンのファレル・ウィリアムス。そして、彼と組んだプロダクション・チーム、ネプチューンズの名義で、ジェイZやノー・ダウト、宇多田ヒカルなどにヒット曲を提供してきたチャド・ヒューゴ。彼らにシェイ・ヘイリーなどのメンバーを加えたバンドが、このN.E.R.D.だ。

デビュー前から、ネプチューンズが携わった作品のレコーディングやライブなどで腕を振るってきた彼らは、2002年にアルバム『In Search Of...』を発表。乾いた音色を使った軽快なトラックが魅力のネプチューンズとは全く異なる、荒々しいギターの演奏が光る”Rock Star”などのヒット曲を残すが、 商業的には今一歩の結果に終わる。その後、2004年に『Fly or Die』をリリース。同作からシングル・カットされた”She Wants to Move”がQ-ティップやデ・ラ・ソウルなどが名を連ねる、ネイティブ・ダンの面々を起用したリミックス・ヴァージョンも含めヒット。また、2008年には『Seeing Sounds』、2010年には『Nothing』を発売している。

このアルバムは、前作から約7年ぶりとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。リアーナケンドリック・ラマー、エド・シーランといった、今をときめく人気ミュージシャンが顔を揃えた、ヒット・メイカーらしい豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目は、ファレルに加え、トリッキー・スチュアートのところで活動していた、カーク・ハレルが制作に携わった”Lemon”。ゴムボールのように跳ねるビートと、ピコピコという電子音を組み合わせたトラックは、クリプスの”Grindin'”などで一世を風靡した、2000年代初頭のネプチューンズを思い起こさせる。しかし、ドラムン・ベースを連想させるビートや、曲調を次々と切り替えてリスナーの度肝を抜く手法は、ヒップホップの枠に捉われないN.E.R.D.っぽい。変則的なビートをしっかりと乗りこなすリアーナの存在も見逃せない。

これに対し、グッチ・メインウェイルという、重くパンチの効いた声が魅力のラッパー二人が参加した”Voilà”は、乾いたギターの音色が心地よいアップ・ナンバー。ギターやベースを使って、ロックの要素を盛り込むスタイルは、デビュー作のころから変わらないN.E.R.D.らしいものだ。肩の力を抜いたラップで、軽快な伴奏に溶け込んだ2人のラップもいい味を出している。

また、フューチャーを招いた”1000”は、アーハの”Take on Me”を思い起こさせる、軽快な伴奏が格好良いアップ・ナンバー。途中で細かく刻んだ声ネタを盛り込んだり、クイーンの”We Will Rock You”を連想させるフレーズが飛び出すのも面白い。大胆な発想で強烈な印象を残しつつ、ポップスとして完成させる彼らのスキルが発揮された良曲だ。

そして、本作の隠れた目玉が、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした”Don't Don’t Do It!”だ。カーティス・メイフィールドの”Tripping Out”を彷彿させる、しっとりした伴奏の上で切ない歌声を聴かせたと思いきや、途中からパンク・ロックに切り替わる奇想天外な曲。今をときめくケンドリック・ラマーが、唸るようなギターの演奏をバックに歌う光景は必聴。

個性的なサウンドで多くのヒット曲を生み出してきた、ネプチューンズやファレルの作品とは一味違う、ドラムン・ベースやグライム、パンク・ロックといった、色々な音楽のエッセンスを取り入れた音楽性が魅力のN.E.R.D.。久しぶりの新作でも、彼らの持ち味は変わっていない。

しかし、今回の作品では”Lemon”のように、ヒップホップのトレンドと呼応したような作品が目立っている。それは、彼ら地震がトレンドを意識したことも大きいが、ブラッドオレンジソランジュをプロデュースし、ゴリラズのアルバムに多くのラッパーが参加したように、ロックやエレクトロ・ミュージックとヒップホップやR&Bの距離が縮まり、混ざり合った曲が増えたことも大きいと思う。そんな、色々なジャンルの音楽が混ざり合った時代を先取りしつつ、流行とは一定の距離を置いた作品に落とし込んでいることが、彼らの音楽の魅力だと思う。

新しいトレンドを生み出してきた彼らの、本気が伺える佳作。これまでの作品同様、商業的に大きく成功するタイプの作品ではないが、今後のヒップホップやR&Bのトレンドを先取りした演奏が楽しめる。音楽のファッションショーといった趣のアルバムだ。

Producer
Pharrell Williams, Chad Hugo, Kuk Harrell, Mike Larson, Rhea Dummett

Track List
1. Lemon feat. Rihanna
2. Deep Down Body Thurst
3. Voilà feat. Gucci Mane and Wale
4. 1000 feat. Future
5. Don't Don’t Do It! feat. Kendrick Lamar
6. ESP
7. Lightning Fire Magic Prayer
8. Rollinem 7's feat. André 3000
9. Kites feat. Kendrick Lamar and M.I.A.
10. Secret Life Of Tigers
11. Lifting You feat. Ed Sheeran




No One Ever Really Dies
N.E.R.D
Sony
2017-12-15

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