ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Columbia

N.E.R.D. - No One Ever Really Dies [2017 I am Other, Columbia]

2014年にソロ名義でリリースした”Happy”が世界的なヒットとなり、その後も、映画「ミニオンズ」シリーズや「ドリーム」などの映画のサウンドトラックをプロデュース。それ以外にも、ダフト・パンクやカルヴィン・ハリスの作品で自慢の喉を披露している、売れっ子ミュージシャンのファレル・ウィリアムス。そして、彼と組んだプロダクション・チーム、ネプチューンズの名義で、ジェイZやノー・ダウト、宇多田ヒカルなどにヒット曲を提供してきたチャド・ヒューゴ。彼らにシェイ・ヘイリーなどのメンバーを加えたバンドが、このN.E.R.D.だ。

デビュー前から、ネプチューンズが携わった作品のレコーディングやライブなどで腕を振るってきた彼らは、2002年にアルバム『In Search Of...』を発表。乾いた音色を使った軽快なトラックが魅力のネプチューンズとは全く異なる、荒々しいギターの演奏が光る”Rock Star”などのヒット曲を残すが、 商業的には今一歩の結果に終わる。その後、2004年に『Fly or Die』をリリース。同作からシングル・カットされた”She Wants to Move”がQ-ティップやデ・ラ・ソウルなどが名を連ねる、ネイティブ・ダンの面々を起用したリミックス・ヴァージョンも含めヒット。また、2008年には『Seeing Sounds』、2010年には『Nothing』を発売している。

このアルバムは、前作から約7年ぶりとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。リアーナケンドリック・ラマー、エド・シーランといった、今をときめく人気ミュージシャンが顔を揃えた、ヒット・メイカーらしい豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目は、ファレルに加え、トリッキー・スチュアートのところで活動していた、カーク・ハレルが制作に携わった”Lemon”。ゴムボールのように跳ねるビートと、ピコピコという電子音を組み合わせたトラックは、クリプスの”Grindin'”などで一世を風靡した、2000年代初頭のネプチューンズを思い起こさせる。しかし、ドラムン・ベースを連想させるビートや、曲調を次々と切り替えてリスナーの度肝を抜く手法は、ヒップホップの枠に捉われないN.E.R.D.っぽい。変則的なビートをしっかりと乗りこなすリアーナの存在も見逃せない。

これに対し、グッチ・メインウェイルという、重くパンチの効いた声が魅力のラッパー二人が参加した”Voilà”は、乾いたギターの音色が心地よいアップ・ナンバー。ギターやベースを使って、ロックの要素を盛り込むスタイルは、デビュー作のころから変わらないN.E.R.D.らしいものだ。肩の力を抜いたラップで、軽快な伴奏に溶け込んだ2人のラップもいい味を出している。

また、フューチャーを招いた”1000”は、アーハの”Take on Me”を思い起こさせる、軽快な伴奏が格好良いアップ・ナンバー。途中で細かく刻んだ声ネタを盛り込んだり、クイーンの”We Will Rock You”を連想させるフレーズが飛び出すのも面白い。大胆な発想で強烈な印象を残しつつ、ポップスとして完成させる彼らのスキルが発揮された良曲だ。

そして、本作の隠れた目玉が、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした”Don't Don’t Do It!”だ。カーティス・メイフィールドの”Tripping Out”を彷彿させる、しっとりした伴奏の上で切ない歌声を聴かせたと思いきや、途中からパンク・ロックに切り替わる奇想天外な曲。今をときめくケンドリック・ラマーが、唸るようなギターの演奏をバックに歌う光景は必聴。

個性的なサウンドで多くのヒット曲を生み出してきた、ネプチューンズやファレルの作品とは一味違う、ドラムン・ベースやグライム、パンク・ロックといった、色々な音楽のエッセンスを取り入れた音楽性が魅力のN.E.R.D.。久しぶりの新作でも、彼らの持ち味は変わっていない。

しかし、今回の作品では”Lemon”のように、ヒップホップのトレンドと呼応したような作品が目立っている。それは、彼ら地震がトレンドを意識したことも大きいが、ブラッドオレンジソランジュをプロデュースし、ゴリラズのアルバムに多くのラッパーが参加したように、ロックやエレクトロ・ミュージックとヒップホップやR&Bの距離が縮まり、混ざり合った曲が増えたことも大きいと思う。そんな、色々なジャンルの音楽が混ざり合った時代を先取りしつつ、流行とは一定の距離を置いた作品に落とし込んでいることが、彼らの音楽の魅力だと思う。

新しいトレンドを生み出してきた彼らの、本気が伺える佳作。これまでの作品同様、商業的に大きく成功するタイプの作品ではないが、今後のヒップホップやR&Bのトレンドを先取りした演奏が楽しめる。音楽のファッションショーといった趣のアルバムだ。

Producer
Pharrell Williams, Chad Hugo, Kuk Harrell, Mike Larson, Rhea Dummett

Track List
1. Lemon feat. Rihanna
2. Deep Down Body Thurst
3. Voilà feat. Gucci Mane and Wale
4. 1000 feat. Future
5. Don't Don’t Do It! feat. Kendrick Lamar
6. ESP
7. Lightning Fire Magic Prayer
8. Rollinem 7's feat. André 3000
9. Kites feat. Kendrick Lamar and M.I.A.
10. Secret Life Of Tigers
11. Lifting You feat. Ed Sheeran




No One Ever Really Dies
N.E.R.D
Sony
2017-12-15

Syd - Always Never Home [2017 The Internet, Columbia]

フランク・オーシャンタイラー・ザ・クリエイターなどを擁するオッド・フューチャーの一員として活動し、同クルーのメンバーでもあるマット・マーシャンと結成したバンド、ジ・インターネットでグラミー賞にもノミネートしているロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、シドことシド・バレット。

2017年には、ソロ名義では初のフル・アルバムとなる『Fin』コロンビアからリリース。全ての曲で彼女自身がペンを執る一方、ジ・インターネットの中でも特に先進的な作風で注目を集めているスティーヴ・レイシーや、ヒットメイカーのアンソニー・キルホッファーやヒット・ボーイなど、バラエティ豊かなクリエイターを起用。新しい音楽に敏感なファンや批評家から高く評価された。

その後も、シカゴ出身のラッパー、ヴィック・メンサや韓国のR&Bシンガー、ディーンの作品に客演するなど、様々なミュージシャンとコラボレーションを重ねてきた彼女。本作は、そんな彼女にとって前作から7ヶ月ぶりの新作となる3曲入りのEPだ。

このEPでも、過去の作品同様、彼女自身が全ての曲の制作に関わっている。しかし、共作者の顔ぶれは大きく変わっており、アムステルダム在住のクリエイター、フル・クレイトやジ・インターネットの元メンバーで、サンダーキャットの兄弟としても知られているジャミール・ブルーナなどが参加、新しいサウンドを積極的に取り入れている。

本作の1曲目は、ニッキーミナージュの”Anaconda”や モニカの”Call My Name”などを手掛けているブルックリン出身のプロデューサー、アノニマスを起用した”Moving Mountains”。アノニマスが手掛けてきた、モニカやシアラの作品のような、キラキラとしたシンセサイザーの音色を使ったトラックと、シドの語り掛けるような歌唱のコンビネーションが魅力のミディアム・ナンバーだ。流行のサウンドを使ったトラックは彼女の作品ではそれほど多くなかったので、逆に新鮮に感じられる。

続く、”Bad Dream / No Looking Back”は、ジョデシーの”What About Us”をサンプリングしたミディアム・ナンバー(余談だが、同曲はザップの”Computer Love”をサンプリングしているため、この曲のソングライターにはロジャー・トラウトマン達の名前も入っている)。ゾなどの作品に携わっているグウェン・バンとケンドリック・ラマードレイクを手掛けているリッチ・リエラの二人がプロデュースしたこの曲は、これまでの彼女の楽曲以上に抽象的なメロディが印象的。彼女が透き通った声で囁きかけるように歌う摩訶不思議なメロディと、随所に小技を仕込んだ陰鬱なトラックが光る佳曲だ。

そして、本作の最後を飾る”On the Road”は、フル・クレイトとジャミール・ブルーナが制作にかかわっている曲。テルミンのようなフワフワとした音色のシンセサイザーを使った浮遊感のあるトラックに乗って、地声を多用した重々しいヴォーカルを聴かせるダークな雰囲気のミディアム・ナンバー。曲の途中でビートを変えることで楽曲に起伏を付けつつ、曲の雰囲気に一貫性を持たせるヴォーカルとアレンジのテクニックは流石としか言いようがない。

この作品では、今まで組んだことのないプロデューサー(といってもジャミールはジ・インターネットの同僚だが)を迎えて、自身のスタイルをベースにしつつ、新しい曲調に挑戦している。シアラやモニカのようなシンセサイザーを多用した現代的なR&Bのサウンドに、ケンドリック・ラマーやドレイクが採用するような電子楽器を駆使したヒップホップ色の強いトラック、ケイトラナダやサンダーキャットのようなエレクトロ・ミュージック色の強いビートなど、色々な音を積極的に取り入れながら、しっかりと自分の色に染め上げる技術は、強烈な個性でのし上がった彼女にしかできないものだと思う。

ビヨンセやメアリーJ.ブライジとは違うアプローチで、自身の個性を確立した彼女の持ち味を発揮しつつ、新しい一面をしっかりとみせてくれた魅力的なEP。これは次回作も期待できそうだ。

Producer
Anonxmous, Gwen Bunn, Ricci Riera, Full Crate, Jameel "Kintaro" Bruner

Track List
1. Moving Mountains
2. Bad Dream / No Looking Back
3. On the Road






Tyler, The Creator - Scum Fuck Flower Boy [2017 Columbia]

フランク・オーシャンやジ・インターネットなどを輩出した、ロス・アンジェルス発の実力派ヒップホップ集団、オッド・フューチャー。その中心人物が、カリフォルニア州ラデラ・ハイツ出身のラッパーでプロデューサー、タイラー・ザ・クリエイターことタイラー・グレノリー・オコンマだ。

ナイジェリア系アメリカ人の父と、アフリカ系アメリカ人の母親の間に生まれた彼は、7歳の頃からジャケットのイラストを描くようになり、14歳になるとピアノも演奏するようになる。

16歳でオッド・フューチャーを結成した彼は、18歳の時に、自身の名義では初の録音作品となるミックステープ『Bastard』を発表。自主制作の作品ながら、音楽情報サイトの年間ランキングで32位を獲得するなど、高い評価を受けた。その後も、自身の名義で3枚を発表する一方、クルーの中心人物として多くの作品を収録。2017年に入ってからは、フランク・オーシャンの”Bikingに客演して話題になった。

そんな彼にとって、自身名義では4枚目のフル・アルバムにして、初のメジャー・レーベル配給作品となるのが本作。全ての曲を自らの手でプロデュースし、ゲストにはフランク・オーシャンやジ・インターネットのスティーヴ・レイシー(ただし、彼はオッド・フューチャーのメンバーではない)のようなオッド・フューチャーと縁の深い人のほか、エイサップ・ロッキーやリル・ウェインなどの人気アーティストが参加した意欲作になっている。

アルバムに先駆けて発表された”Who Dat Boy?”は、エイサップ・ロッキーをフィーチャーした楽曲。サイレンのようなシンセサイザーのリフが不気味な雰囲気を醸し出している。電子楽器を多用した作品だが、デビュー当初のウータン・クランを思い起こさせる、おどろおどろしいビートが格好良い。そんなトラックの上で、ワイルドなラップを聴かせる二人の存在も光っている。

これに対し、カップリング曲の”911/Mr. Lonely ”は、フランク・オーシャンとスティーヴ・レイシーがゲストで参加。バック・コーラスにはスクール・ボーイQやジャスパー・ドルフィンも加わるなど、オッド・フューチャー色の強い作品。前半部分の”911”は、多くのヒップホップ作品にサンプリングされてきたギャップ・バンドの”Outstanding”を使用したミディアム・ナンバーで、シンセサイザーの音色を効果的に使いながら、ビートの音圧を落としたトラックを用意することで、ロマンティックな曲に仕上げている。流れるように言葉を繋ぐ、歌うようなラップも、メロウなビートと合っている。また、後半の”Mr. Lonely”は90年代のジャーメイン・デュプリを連想させる、躍動感溢れるチキチキ・サウンドが格好良い曲。前半との流麗なトラックとのギャップもあり、強烈なインパクトを感じさせる。

また、もう一つのシングル曲”Boredom”は電子音楽畑のシンガー、レックス・オレンジ・カントリーとアンナ・オブ・ザ・ノースを招いた曲。電子楽器を多用しつつ、往年のソウル・シンガーの作品を彷彿させる、生演奏っぽいアレンジのトラックを作ることで、斬新さと親しみやすさを両立している。フィーチャリング・シンガー達の繊細な歌声が、太く荒々しいタイラーのラップを際立たせている点も見逃せない。

今回のアルバムは、彼にとってメジャー・デビュー作品だが、リスナーの目を意識したポップス志向や、豪華なゲストを集結させることもなく、あくまでもマイペースに、自身の音楽を貫いているように見える。既に、ソロ活動やプロデューサー、クルーの中心人物として多くの実績を上げてきた自信もあるのだろうが、フランク・オーシャンやジ・インターネット、そのメンバーであるシド(ただし、彼女はソロ・デビューの時点でクルーを離れている)やマット・マーシャンズが次々と成功を収めるなど、彼らのサウンドが注目を集めていることを踏まえて、敢えて自身の作風を貫いているようにも映る。

彼に先駆けてメジャー・デビューを果たした、クルーの面々にも負けず劣らずの先鋭的かつ緻密な作品。「大物は最後にやってくる」を体現したような、充実した内容と安定感が魅力の傑作だ。

Producer
Tyler, The Creator

‎ Track List
1. Foreword feat. Rex Orange County
2. Where This Flower Blooms feat. Frank Ocean
3. Sometimes...
4. See You Again feat. Kali Uchis
5. Who Dat Boy? feat. ASAP Rocky
6. Pothole feat. Jaden Smith
7. Garden Shed feat. Estelle
8. Boredom feat. Rex Orange County and Anna of the North
9. I Ain't Got Time!
10. 911 / Mr. Lonely feat. Frank Ocean and Steve Lacy
11. Dropping Seeds feat. Lil Wayne
12. November
13. Glitter
14. Enjoy Right Now Today






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