ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

DiggyDown

T-Groove - Move Your Body [2017 Diggy Down Recordz]

2014年に、ソフィスティケイテッド・ファンクの名義で発表したシングル”Move Your Body”(本作のタイトル・トラックとは同名異曲のインストゥメンタル作品)を皮切りに、多くの楽曲をリリース。トム・グラインドの”Soul Life”をリミックスして、大手クラブ・ミュージック配信サイトで1位を獲得したほか、マックレイの”Show Me”や、サン・ソウル・オーケストラの”Can't Deny It”、レネ・ローズの”Funky Attitude”などのリミックスをUKソウル・チャートの2位に送り込み、自身の名義の作品でも、ソーシー・レディーをフィーチャーした”Spring Rain”や、ダイアン・マーシュが参加した”Everybody Dance”などが、ヨーロッパのラジオ番組でヘビー・プレイされている、青森県八戸市出身、東京在住のプロデューサー、T-グルーヴこと高橋佑貴。彼の待望のフル・アルバムが本作だ。

5月にリリースされたフランスの音楽ユニット、トゥー・ジャズ・プロジェクトとのコラボレーション作品『Cosmos 78』から、僅か1か月という短い間隔で発売された今回のアルバム。”Spring Rain”こそ入っていないが、それ以外の既発曲は全て収録。配給は、エノイス・スクロギンスなどのディスコ・ミュージック、ファンク作品を扱っていることで知られている、フランスの名門、ディギー・ダウン・レコーズで、ゲスト・ミュージシャンには、レーベル・メイトのエノイスやブライアン・トンプソンのほか、日本やヨーロッパで人気のある、オハイオ州トレド出身のトーク・ボクサー、ウィンフリーや、『Cosmos 78』での共演も記憶に新しいトゥー・ジャズ・プロジェクト。ボストンを拠点に活動しているプロデューサー兼マルチ・プレイヤーのモノローグこと金坂征広や、ゴスペル・ギタリストの上条頌、T-グルーヴの作品には欠かせない存在となっている、なかしまたかおベイベーらが集結。実力派ミュージシャンを惹きつけて止まない、彼の魅力が遺憾なく発揮された本格的なソウル作品になっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、ブライアン・トンプソンを起用したタイトル・トラック”Move Your Body”。グレッグ・ドジェット(from ドジェット・ブラザーズ)のボコーダーと、ブーツィー・コリンズを彷彿させる、なかしまたかおのグルーヴィーなベースが心地よいダンス・ナンバー。ボコーダーを駆使したスタイリッシュなサウンドは、ダフト・パンクの”Get Lucky”を思い起こさせるが、こちらの曲では、ブライアン・トンプソンが恵まれた歌声を惜しげもなく披露して、ソウルフルに纏めている点が大きく異なる。

これに対し、ウィンフリーをフィーチャーした”I'll Be Right Here”は、セオ・パリッシュやムーディマンを連想させる、洒脱な雰囲気が印象的なアップ・ナンバー。ハウス・ミュージックと生演奏を融合したモダンなトラックの上で、トーク・ボックスが武器のウィンフリーに、そのままの声で歌わせる発想の柔軟さと、それを形にする各人の高い技術力が光る佳曲だ。

また、エノイス・スクロギンスを招いた”Let Your Body Move”は、エノイスの作品ではあまり聴けないディスコ・ブギー。ストリングスのような音色のシンセサイザーを使い、音数を絞ったメロディで彼のバリトン・ヴォイスをじっくりと聴かせている。ストリングスっぽい音を使った流麗な伴奏と、一音一音をじっくり聴かせるヴォーカルはバリー・ホワイトを連想させる。バリーが今も生きていたら、こんな曲を歌っていたんじゃないかという想像が膨らむエレガントなディスコ音楽だ。

そして、本作では珍しいハウス・ミュージックのシンガーを起用した”Everybody Dance (Gotta Get Up & Get Down Tonight)”は、ダイアン・マーシュがヴォーカルを担当したミディアム・ナンバー。煌びやかな音色を散りばめたトラックと、ダイナンのキュートな歌声が心地よい。フランキー・ナックルズのハウス・ミュージックのような華やかで緻密な音作りと、ダイアンのソウルフルなヴォーカルを思う存分堪能できる。

このアルバムを聴いて真っ先に思い出したのは、ディー・ライトの一員としてデビューしたテイ・トウワの存在だ。留学先のニューヨークでデビューしたテイと、インターネットの音楽投稿サイトから火が付いたT-グルーヴでは、経歴も音楽性も全く異なる。だが、欧米のポピュラー・ミュージックに自身の解釈を加え、本場のミュージシャンと互角に戦える独創性な作品を生み出すT-グルーヴの作品からは、ディー・ライトの一員として国籍や人種の壁を感じさせない音楽で大きな足跡を残したテイの姿がダブって見える。

また、日頃、色々な国のミュージシャンの作品を聴いていて感じることだが、日本人ミュージシャンの最大の弱みは「日本人であること」に固執していることだと思う。ヒップホップやR&Bでは特に顕著だが、「ジャパニーズ〇〇」に固執するあまり、自身の実像や音楽シーンの潮流からかけ離れた、独り善がりな作品に陥ることが少なくない。フランク・デュークスやミッシー・エリオットと組んで、アメリカのヒップホップをアジア人向けにカスタマイズした韓国G-ドラゴンや、スーダンアメリカイギリスの3ヵ国で過ごした経験をフルに活かした作風がウリのシンケイン、アメリカのヒップホップを意識しつつ、時刻アフロ・ビートを取り入れて独自性を発揮したナイジェリアワイシーのような、「人種や国籍などのアイデンティティ」「ミュージシャンとしての個性や技術」「時代の変化を嗅ぎ取る嗅覚」のバランスが取れた人は、日本人では非常に希少だと思う。

東京の雑駁さなど、日本人的な要素を随所に盛り込みながら、人種や国籍を意識させない普遍性も兼ね備えた唯一無二の作品。ソウル・ミュージックが好きな人からクラブ・ミュージックが好きな人まで、あらゆる人の琴線に引っ掛かりそうな面白い作品だ。

Producer
Yuki "T-Groove" Takahashi

Track List
1. Move Your Body feat. B. Thompson
2. Roller Skate feat. The Precious Lo's
3. I'll Be Right Here feat. Winfree
4. Family feat. Jovan Sammy
5. Let Your Body Move feat. Enois Scroggins
6. Everybody Dance (Gotta Get Up & Get Down Tonight) feat. Diane Marsh
7. Let's Get Close feat. –Ice
8. Why Oh Why feat. Winfree
9. Call It Love feat. B. Thompson
10. Stuck Like Glue feat. Maddam Mya
11. All Night Long "T-Groove Remix" feat. B. Thompson
12. Do You Feel The Same? Feat. Leon Beal
13. Move Your Body (Rob Hardt Remix) feat. B. Thompson






Enois Scroggins & The Touch Funk ‎– Real-E [2017 Diggy Down Recordz]

オクラホマ州マスコギーの出身、49歳の時にフランスのディスコ・ミュージック専門レーベル、ブーギー・タイムズからアルバム『One For Funk And Funk For All 』でデビューした、異色の経歴のシンガー・ソングライター、エノイス・スクロギンス。その後も、オクラホマ州のタルサに拠点を構えながら、ウィンフリーやワズ・ザ・ファンクファザーといった、アメリカやフランスで活躍する、80年代のディスコ・ミュージックや、90年代前半にアメリカの西海岸で流行したヒップホップのような、アナログ・シンセサイザーとリズム・マシーンの音色を活用したモダンな作風を得意とするミュージシャン達とコラボレーションするなど、精力的に活動。多くの録音をファンキーサイズやディギー・ダウンといったファンク・ミュージックに力を入れているフランスのレーベルから発表してきた。

本作は、2015年の『On A Roll』以来、約2年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム。同時に、今回のアルバムは、これまでにも複数の楽曲で制作に参加してきたフランスのプロデューサー・ユニット、ザ・タッチ・ファンクとの初のコラボレーション作品でもある。

アルバムの1曲目に収められている、本作からのリード・シングル”I Just Wanna Sing”は、ロス・アンジェルスを拠点に活動する女性シンガー、Jマリーをフィーチャーしたアップ・ナンバー。プリンスやミント・コンディションに触発され、エレクトリック・サウンドを取り入れたR&B作品を録音してきたマリーの、クールな歌声が聴きどころ。彼女の歌声に呼応するかのように、グラマラスで流麗な歌を聴かせるエノイスや、シンプルで洗練されたトラックも見逃せない。

一方、ティスミジーが参加した”You Got To Boogie”は、乾いたギターの音色や様々なリズム・マシーンの音色を組み合わせた華やかなトラックが印象的な、ディスコ・ナンバー。アナログ・シンセサイザーの柔らかい音色と鋭い音色のシンセ・ベースが、スレイヴやワンウェイなどのディスコ・バンドを思い起こさせるキャッチーなダンス・ナンバーだ。

また、2015年にシングル盤で発表された”Steppin’ Out”は、ハウス・ミュージックに近い、テンポの速いビートに乗せて、流れるような歌声を披露する、力強い演奏の中にも優雅さを感じさせるダンス・ナンバー。疾走感は魅力的だが、個人的には同作のB面に収められている”What Can I Do ”の方がお勧めだ。こちらは、ゴリゴリとしたシンセ・ベースと、他の曲よりも控えめに鳴るシンセサイザーの伴奏が特徴的な、ファンク色の強い曲。パーカッションの使い方はエムトゥーメイに、ベースの使い方はリック・ジェイムズに少し似ている、先鋭的なサウンドが特徴的だ。80年代後半のソウル・ミュージックが好きな人なら、思わずニヤリとしてしまう演出が盛り沢山な点も心憎い。

だが、本作で一番の聴きどころといえば、やはりブラック・ロスを起用したミディアム・ナンバー“Let's Fall In Love Again Tonight”だろう。勇壮なホーンで幕を開けるこの曲は、メアリー・ジェーン・ガールズの”All Night Long”を思い起こさせる、重厚で落ち着いた雰囲気とポップさを兼ね備えたグルーヴに乗せて、エノイスが年季を重ねた声でしみじみと歌い上げる、ロマンティックな楽曲。電子楽器の音色を取り入れた楽曲も、甘い歌声が魅力の歌手も決して珍しくないが、酸いも甘いも嚙み分けてきたベテラン歌手が、生楽器とシンセサイザーを組み合わせたモダンで華やかなサウンドをバックにその実力を遺憾なく発揮する姿は、やはり格別のものがある。

本作はコラボレーション・アルバムと銘打っているものの、今までのエノイスの作品と基本路線は変わっていない。アナログ・シンセサイザーやリズム・マシンを使ったモダンだけど温かみのあるトラックの上で、ボコーダーやトークボックスを織り交ぜながら、バリー・ホワイトを彷彿させるふくよかで柔らかい歌声を響かせるスタイルは、本作でも健在だ。あえて違いを強調するなら、今回のアルバムでは、ヒップホップ畑のクリエイターと共同作業をすることで、ディスコ・ミュージック寄りの楽曲が増えた点だ。

メイヤー・ホーソンもメンバーに名を連ねるタキシードや、ディム・ファンクも一因であるナイト・ファンクなど、80年代のディスコ・ミュージックから多くの刺激を受け、現代の音楽として再構成しようとする試みが各所で見られる中、2000年代から一貫してディスコ・ミュージックに取り組んできたシンガーが、経験の差を見せつけた本格的なソウル作品。彼らやブルーノ・マーズなどの音楽が好きな人は、ぜひ一度耳を傾けてほしい。

Producer
The Touch Funk

Track List
1. I Just Wanna Sing feat. J Marie (Radio Edit)
2. Coody Funk feat. Lonnie Barker Jr.
3. You Got To Boogie feat. Tysmizzy
4. This is What I Do
5. Miracle Potion feat. Hic Box, Shawn Biel
6. You Whisper Another Man's Name
7. What Can I Do (Main Version)
8. Get Down (Interlude)
9. This is For The B-Boys
10. Rewind Time feat. MNMsta
11. Let's Fall In Love Again Tonight feat. Black Los
12. Steppin' Out (Main Version)





Real-E
Diggy Down Recordz
2017-03-15

 
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