melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Empire

Eric Bellinger - Eazy Call [2018 YFS Empire]

ジャクソン5が歌ったことでも有名な、”Rockin’ Robin”の作者としても知られるボビー・デイを祖父に持ち、自身もソングライターとして活躍しているエリック・ベリンガー。

音楽グループAKNU(A Kind Never Understoodの略)の一員として、音楽の世界に足を踏み込んだ彼は、その後、ソングライターに転身して多くの楽曲を制作、ジャスティン・ビーバーからタイリースまで、様々なスタイルのミュージシャンに曲を提供してきた。

本作は、2017年4月にリリースされた『Cannabliss』以来、約1年ぶりとなる新作。前作の発表後も、テイマー・ブラクストンの『Bluebird Of Happiness』やラポーシャ・ラナエ『Already All Ready』‎に携わるなど、多忙な日々を送っていた彼。本作では「未発表曲によるグレイテスト・ヒッツ」をテーマに掲げ、多作な彼が厳選した新曲を収めている。

アルバムを聴いて最初に興味を持ったのは、メイスをフィーチャーした”Not a Love Song”。シンセサイザーを使ったスタイリッシュなビートの上で、歌ともラップとも形容しがたい、独特の節回しのメロディを繰り出す姿が魅力のミディアム・ナンバー。ドレイクを筆頭に多くのミュージシャンが用いている、現代のR&B、ヒップホップ界隈ではお馴染みのスタイルだが、力強い歌声と器用な歌唱技術を兼ねそなえた彼が披露すると違ったものに聴こえる。2018年の流行に合わせてトラックを用意し、流行の歌唱法を取り入れたエリックに対し、あくまでも自分が得意なスタイルで臨むメイスの姿に、ベテランの矜持を感じる。

これに続く”Main Thang”は、ロス・アンジェルスを拠点に活動するラッパー、ドン・ケネディをフィーチャーした作品。電子楽器を組み合わせてヒップホップのビートを作る手法や、しっとりとしたメロディを甘酸っぱい声で歌うスタイルは、クリス・ブラウンとよく似ている。もっさりとしたバリトン・ヴォイスでラップを披露するドン・ケネディの存在が、エリックのテナーの魅力を引き出している点も見逃せない。

また、本作に先駆けて発表された”Goat 2.0”は、2016年のアルバム『Eric B for President: Term 1』に収録されている同名曲のリメイク。ワシントンD.C.出身のナイジェリア系アメリカ人ラッパー、ウェイルを招いて、彼の代表曲を再録している。楽曲自体は、曲の途中で音を止めるなど、トラックを微妙に弄っているものの、大部分は原曲と同じ。低く、太い声を使って歌うようにラップを繰り出すウェイルの存在が、高い声で甘く歌うエリックのパート合わさって楽曲にメリハリをつけている。

そして、本作の収録曲で異彩を放っているのが、ニーヨと共演した”Dirty Dancin'”。エリックの作品では珍しい、カリプソのビートを取り入れたアップ・ナンバー。甘く爽やかなヴォーカルが魅力の二人による共演は、声域の違いを意識して聴かないと、どっちが歌っているか判別できないくらい一体感がある。ソングライターとして頭角を現し、自身名義の作品でも成功を収めるという経歴を歩んだ二人による、面白いコラボレーションだ。

今回のアルバムは、従来の作風を踏襲した、手堅い作品が目立つ。コンピュータを多用し、ミディアム・テンポのトラックをバックに歌とラップを織り交ぜたパフォーマンスを繰り広げる。また、バラエティ豊かなゲストも、彼のスタイルに大きな影響を与えるものではなく、楽曲の一部とした作品としている。この、一歩間違えればマンネリ化とも捉えられかねない方法で、50分を超えるアルバムを最後まで楽しませる手腕には唯々驚くしかない。

30代前半と比較的若い年齢ながら、自身名義の曲も含め、多くの録音作品にかかわってきた、彼の豊かな経験と老練な作曲、歌唱技術が遺憾なく発揮された佳作。人の声が生み出す豊かな音楽表現を存分に味わえる充実した内容のアルバムだ。

Producer
Ayo The Producer, Blast, Keyzbaby, London On Da Track, Nic Nac, Qorey, Scootie & Sleep Deez etc

Track List
1. Legs
2. Not a Love Song feat. Ma$e
3. Main Thang feat. Dom Kennedy
4. She feat. AD
5. Role Play feat. Scootie
6. Silent Treatment
7. Goat 2.0 feat. Wale
8. Dirty Dancin' feat. Ne-Yo
9. Y.A.K. feat. Chevy Woods & Sammie
10. Ain't Ya Ex feat. Mila J & Tink
11. Money Float
12. By Now
13. Luck
14. Bagged
15. Eric Bellinger





Eazy Call [Explicit]
YFS (Your Favorite Song) / EMPIRE
2018-04-06

Tyga - Kyoto [2018 Empire, Last Kings Entertainment]

N.W.A.やザ・ゲーム、ケンドリック・ラマーなど、多くの有名ヒップホップ・アーティストを輩出してきたカリフォルニア州コンプトン。同地出身のミュージシャンで、ひときわ異彩を放っているのが、タイガことマイケル・スティーヴンソンだ。

ベトナム系やジャマイカ系など、多彩な人々に囲まれて育った彼は、ファビュラスやリル・ウェインなどの作品に触れる中で、ヒップホップに興味を持つ。その後、2008年には、兄の所属するフォール・アウト・ボーイとも契約している、ディケイダンスから初のスタジオ・アルバム『No Introduction』を発表。インディ・レーベル発の作品ながら6000枚以上を売り上げ、同作に収録された”Diamond Life”がビデオ・ゲームのサウンドトラックに採用されるなど、大きな成功を収めた。

そんな彼は、20歳の時にリル・ウェイン率いるヤング・マネーと契約。同レーベルでは、30万枚以上のセールスを記録した2012年の『Careless World: Rise of the Last King』や、クリス・ブラウンとのコラボレーション作品『Fan of a Fan: The Album』など、複数のヒット作を世に送り出してきた。また、2016年には自身のレーベル、ラスト・キングに移籍。これまで以上に精力的に活動してきた。

このアルバムは、2017年の『BitchImTheShit2』から約9か月という、短い間隔でリリースされた通算6枚目の録音作品。これまでアルバムでは、カニエ・ウエストやマーダ・ビーツ、DJマスタードといった大物を起用することが多かった彼が、この作品ではバットギャングビーツやキャッシュマネーAPといった、比較的若いプロデューサーを起用。若い感性を取り入れ、これまで以上にキャッチーで新鮮なヒップホップに取り組んでいる。

本作の1曲目は、LTTBがプロデュースする”Temperature”。”Despacito”や”Turn Me On”を思い起こさせる、カリプソの要素を盛り込んだ艶めかしいトラックと、歌うようにラップをするタイガの軽妙なパフォーマンスが印象的な作品。ラテン音楽のエッセンスを盛り込みつつ、きちんとヒップホップに落とし込む技術が光っている。

これに対し、彼自身がペンを執った”U Cry”は、シンセサイザーを駆使したバラード。シンセサイザーを駆使したシンプルなトラックをバックに、切々と歌う姿が心に残るミディアム。物悲しい雰囲気のトラックと重々しいメロディを使っていながら、随所でラップの演出を取り入れた歌を聴かせることで、曲を通して聴くと重苦しく感じないのは面白い。

この路線を突き詰めたのが”King of the Jungle”。ドレイクやパーティーネクストドアの作品を思い起こさせる、しっとりとした雰囲気のトラックと、みずみずしい歌声の組み合わせが魅力のミディアム。粗い声質が魅力のタイガには珍しい、ロマンティックなラップが堪能できる曲だ。

また、アトランタ出身のラッパー、グッチ・メインを招いた”Sip a Lil”は、グッチ・メインが得意とするトラップ・ビートを採用した曲。キャッシュマネーAPとバットギャングビーツのが作るトラックは、グッチの作品に近いテイストだが、それを親しみやすさが魅力の自分の音楽に還元するタイガのスキルが聴きどころ。

彼の音楽の音楽の特徴は、クリス・ブラウンとのコラボレーション作品が象徴するように、本格的なヒップホップでありながら、コアなヒップホップ好き以外の人の琴線を刺激する大衆性を兼ね備えている点だ。言葉選びやフロウは、本格的なハードコア・ラップと比べても遜色のないものであるが、トラックには陽気でキャッチーなフレーズを盛り込み、ラップでは歌うような流麗な一面も見せるなど、硬派な一面とポップな一面を上手に使い分けている点が、ほかのラッパーとは一線を画している。

ヒット・チャートの上位を席巻し、アメリカ市場のシェアでロックを上回ったものの、未だに近寄り難い雰囲気のアーティストも多いヒップホップ。その中で、老若男女を問わず楽しめるポップスとしてのヒップホップの可能性を切り開いた彼は、とても貴重な存在だと思う。本格的なサウンドと親しみやすい雰囲気が同居した、ヒップホップ初心者にはとっつきやすい、マニアでも十分に楽しめる、面白いアルバムだろう。

Producer BatGangBeats, CashMoneyAP, Hitmaka, Jess Jackson, LTTB, Smash David

Track List
1. Temperature
2. Leather in the Rain
3. Come and Ball With Me
4. Boss Up
5. U Cry
6. King of the Jungle
7. Hard2Look
8. I Need a Girl Pt.3
9. Train 4 This
10. Hot Soup
11. Sip a Lil feat. Gucci Mane
12. Faithful feat. Tory Lanez
13. Ja Rule & Ashanti
14. Holdin On Feat. 24Hrs





KYOTO (IMPORT)
TYGA
LAST KINGS MUSIC / EMPIRE
2018-02-16

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