ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Epic

Jidenna - The Chief [2017 Wonderland Records, EPIC]

会計士の母と、ナイジェリア地域のイボ人(アフリカ大陸西部に住む民族)を研究する学者の父の間に生まれ、彼自身も一時期はナイジェリアに住んでいたという、アメリカ中西部の小都市、ウィスコンシン・ラピッズ出身のシンガー・ソングライター、ジデーナことジデーナ・セオドア・モビソン。

アメリカに戻った後は、同じハイスクールに通う友人とラップ・グループ、ブラック・スペーズを結成。同グループでは、学校の卒業制作としてアルバム1枚を録音している。同校を卒業した後、彼はアイビー・リーグの一つであるスタンフォード大学へと進む。大学時代は、リチュアリスティック・アート(直訳すると「儀式主義の芸術」だが、おそらく宗教などの特定の文化や制度と結びついた形式の芸術のことだと思われる)を専攻する一方で、サウンド・エンジニアリングなどの制作技術を習得している。卒業後は、教師の仕事をしながら本格的な音楽活動を開始。そして、2012年にジャネル・モネイが設立したワンダーランド・レコードと契約する。

2015年にデビュー・シングル『Classic Man』をリリースすると、全米R&Bチャートの6位、総合チャートの22位を獲得。デビュー曲ながら、ダブル・プラチナ・ディスクを獲得する大ヒットになった。また、同年には初のEP『Wondaland Presents:The Eephus』を発売。こちらもR&Bチャートの5位、総合チャートの22位と、R&Bシンガーのデビュー作としては異例のヒットを記録した。そして、同年のソウル・トレイン・アワードやグラミー賞では、複数の部門にノミネート。このうち、ソウル・トレイン・アワードでは新人賞を獲得している。

今回のアルバムは、前作から約2年の間隔を経て発表された、彼にとって初めてのフル・アルバム。 前作の発売後に発表されたシングルの収録曲のうち、”Knickers”と”Extraordinaire”を除く4曲のほか、ナナ・クワベナやロマン・ジャンアーサーといったワンダーランド所属のアーティストを中心に、多くの人気ミュージシャンやプロデューサーが参加した新曲を収録。華々しいデビューを飾った彼にふさわしい、豪華な作品に仕上げている。

さて、収録曲に目を向けると、アルバムの2曲目に収められている”Chief Don't Run”が存在感を発揮している。ナナ・クワベナがプロデュースしたトラックはカニエ・ウエストの”Jisus Walk”を彷彿させる、重いドラムとベースの上に、ゴスペル・クワイアっぽい荘厳なコーラスが乗っかったもの。このビートの上で、カニエ・ウエストの近作やかつてのエイコンを彷彿させる、ラップのようなヴォーカルを聴かせるジデーナが、重々しい伴奏の曲を聴きやすいものにしている。ゲスト・シンガーにロマン・ジャンアーサーの名前が入っている点も見逃せない。

これに対し、彼自身がプロデュースを担当した”Bambi”は、アフリカの民謡っぽいメロディを引用したトラックが、エイコンっぽくも聴こえる曲。ほのぼのとした雰囲気のトラックは、彼のふくよかで柔らかく、温かい歌声との相性が抜群に良い。ナイジェリアに住み、アメリカの大学でアートを学んできた彼にしか作れない、視野の広さと引用の巧みさが光るミディアム・ナンバーだ。

一方、2015年にシングルで発売された”Long Live The Chief”は、ウェイルやライムフェストなどの作品を手掛けている、ワシントンD.C.を拠点に活動するプロダクション・クルー、ベスト・ケプト・シークレットが制作した楽曲。ブリブリと唸りを上げるシンセ・ベースがキモのトラックに乗せて、荒々しいラップを聴かせるヒップホップ・ナンバーだ。ワイルドな声と、言葉数を絞って一つ一つのフレーズをじっくり聴かせるライムは、彼が敬愛するKRSワンのスタイルを踏襲したもの。80年代から続くラップの手法と、現代のトレンドを取り込んだトラックが融合した、懐かしさと新鮮さが同居した楽曲だ。

そして、R&Bが好きな人にはぜひ聴いてほしいのが、ロマン・ジャンアーサーがペンを執った”Little Bit More”だ。レゲトンにも似たコミカルなビートが面白いアフリカのポピュラー・ミュージック、ハイライフを取り入れたトラックの上で、柔らかい歌声を響かせたダンス・ナンバーだ。シンセサイザーを多用したアップ・テンポの曲にもかかわらず、どこか牧歌的な音楽に聴こえるのは、パーカッションを織り交ぜた華やかなリズムと、彼の優しい歌声のおかげだろうか。

本作も、既発のシングルやEP同様、アメリカのヒップホップやR&Bに、アフリカや中南米のポップスの要素を盛り込んだ、軽妙で親しみやすい曲が目立っている。先鋭的で通好みのフレーズを織り交ぜながら、色々な人に親しまれるポップな作品に仕上がっているのは、キャッチーなメロディを生み出す彼のセンスと、親しみやすい歌声のおかげだと思う。

様々なリスナーを引き付ける大衆性と、コアな音楽好きを納得させる緻密さや斬新さを兼ね備えた、親しみやすく奥深いアルバム。彼が所属するレーベルのボス、ジャネル・モネイのような音楽が好きな人は是非きいて欲しい。

Producer
Fear & Fancy, Jidenna, Nana Kwabena, The Wondaland Arts Society

Track List
1. A Bull's Tale
2. Chief Don't Run feat. Roman GianArthur
3. Trampoline
4. Bambi
5. Helicopters / Beware
6. Long Live The Chief
7. 2 Pointt
8. The Let Out feat. Nana Kwabena
9. Safari feat. Janelle Monáe, Nana Kwabena, St. Beauty
10. Adaora
11. Little Bit More
12. Some Kind Of Way
13. White N****s
14. Bully Of The Earth





Chief
Jidenna
Wondaland Records
2017-02-17

DJ Khaled – Shining feat. Beyonce & Jay Z [2017 Epic]

プロデューサーとしてファビュラスの”Gangsta”やファット・ジョーの”Get It for Life”、リック・ロス”I'm A G”などを手掛け、2006年以降は自身名義のアルバムを年に1枚のペースでリリースしている、フロリダ州マイアミ出身のDJでプロデューサーのDJキャレドことカリッド・カリッド。彼にとって通算10枚目となるスタジオ・アルバム『Grateful』からのリード・シングルが、この『Shining』だ。

グラミー賞の授賞式直前、2月12日にリリースされたこの曲は、ニッキー・ミナージュやクリス・ブラウンをフィーチャーした1つ前のシングル『Do You Mind』に引き続き、ヴォーカルが主役のR&Bナンバー。ゲスト・ヴォーカルにビヨンセとジェイZを起用し、ソングライターとしてアルバム『PARTYNEXTDOOR 3』やドレイクの”Come and See Me”がヒットした、カナダ出身のシンガー・ソングライター、パーティネクストドアが参加するなど、2016年のR&B,ヒップホップ・シーンを代表する豪華な面々が終結したパーティー・チューンになっている。

ビヨンセとジェイZが一緒に新曲を録音するのは、2013年の”Part II(On The Run)”(ジェイZのアルバム『Magna Carta... Holy Grail』に収録)と”Drunk In Love”(ビヨンセのアルバム『Beyonce』に収録)以来4年ぶり。ジェイZがキャレドの作品に参加するのは2016年の”I Got The Keys”以来だが、ビヨンセとパーティネクストドアにとっては、初のコラボーレーションとなる。

今回のシングルは、ディオンヌ・ワーウィックが70年に発表した”Walk The Way You Talk”をサンプリングしたソウルフルな楽曲。ヴォーカルやストリングスの繊細なタッチが魅力の原曲を、ファットなベース・ラインや思わず踊りだしたくなる高揚感たっぷりのビートで、現代的なR&Bに組み替えた、キャッチーでスタイリッシュな曲になっている。

歌とラップの比率は大体7:3程度で、ビヨンセの”Crazy In Love”に近い構成。だが、彼女が歌うのは、マーク・ロンソンがネイト・ドッグを起用した”Ooh Wee”、ファンクマスター・フレックスがフェイス・エヴァンスをフィーチャーした”Good Life”のような、流れるような洗練されたメロディで、どちらかといえば奇抜な楽曲が多かった彼女の近作をイメージしている人には、拍子抜けする内容かもしれない。また、電子楽器を多用することの多いキャレドの作品では珍しい、有名名曲を原曲がわかる形でサンプリングしたトラックも、過去の作品のような新曲を期待する人には、ちょっと違和感があるかもしれない。

だが、余計な情報を遮断してこの曲と向き合うと、その完成度に驚かされるのも事実だ。一つ一つの音が繊細なディオンヌ・ワーウィックの楽曲を、原曲の魅力を損ねることなく、しなやかなメロディとダンサブルなビートのR&Bナンバーに取り込む技術は恐るべきものだし、豊かな声量と表現力を兼ね備えたビヨンセの持ち味を生かしつつ、流麗なメロディを歌わせる作曲技術も極めて高いものだ。そして、終盤に絶妙なタイミングで入り込み、リスナーを盛り上げつつ、楽曲のアクセントとしても機能しているジェイZのラップも非常に刺激的だ。過去のシングル曲を考えると、この曲がアルバム全体の方向性を指し示しているとは考えにくいが、この曲に関わった面々が、今まで見せてこなかった隠れた魅力を引き出していると思う。

ファンクマスター・フレックスやDJケイスレイのような、コーディネーターとしての才能が魅力のキャリドの持ち味が発揮された面白い楽曲。ファンクマスター・フレックスの”Good Life”やケイスレイの”Not Your Average Joe”、トニー・タッチの”I Wonder Why(He’s The Greatest DJ)”に比類する、DJ発のR&Bクラシックになりそうだ。

Producer
Dj Khaled, Danja


Mariah Carey – I Don’t feat YG [2017 Epic]

1990年にアルバム『Mariah』でデビュー、現在までに『Music Box』、『Daydream』、『The Emancipation of Mimi』などの全米ナンバー・ワン・ヒット獲得した作品を含め22枚のアルバムを残し、『Fantasy』、『Honey』、『Don’t Forget About Us』、『Touch My Body』など、18枚のシングルをビルボード・チャートの第1位に送り込んできた、ポピュラー・ミュージック界を代表する歌姫、マライア・キャリー。彼女にとって1年半ぶりの新曲が発表された。

正式にリリースされた作品としては、2015年にエピックから発売したベスト・アルバム『#1 to Infinity』に収録されている”Infinity”以来となる新曲は、ジャーメイン・デュプリとブライアン・マイケル・コックスがプロデュースしたミディアム・ナンバー。

この曲を手掛けているジャーメイン・デュプリは、マライアに”Sweetheart”や”We Belong Together”を提供して、グラミー賞のベストR&Bソング部門を獲得したり、アッシャーの”You Make Me Wanna”や”My Boo”などを手掛けてきたリと、多くの実績を残しているヒット・メイカー。また、今回参加した、ブライアン・マイケル・コックスは”Shake It Off”(ジャーメイン・デュプリ等との共作)や “I Stay In Love”などを手掛ける一方で、メアリーJ.ブライジの”Be Without You”やアッシャーの”Burn”といったヒット曲でペンを執っている実力派のプロデューサー。過去にも何度か共作している両者による新作は、大人の女性として成熟したマライアにふさわしい、ポップで色っぽいR&B作品に仕上がっている。

グラマラスなシンセサイザーの伴奏からチキチキ・ビートに続き、ラップみたいな粗っぽいメロディが続く展開は、ドレイクやチャンス・ザ・ラッパーのブレイク以降、ブラック・ミュージック業界のスタンダードになりつつある、ラップっぽいメロディとコンピュータを使った奇抜なビートを採用したものだと思う。過去の作品を振り返ると、”Boy (I Need You)”のようにレコードからサンプリングしたフレーズを早回しした曲を作ったり、昔のソウル・ミュージックをそのままリメイクした”Don't Stop (Funkin' 4 Jamaica)”を録音したりと、色々なスタイルを取り入れてきたマライアだが、今回の新曲でも新しいトレンドを積極的に取り入れ、違和感なく自分のものにしている。だが、見逃してはならないのは、ドレイクとは大きく異なる彼女の声量と表現力だろう。幅広い声域と豊かな声量を巧みに操り、比較的起伏の少ないラップ風のメロディと、ダイナミックな表現が求められるサビの部分を歌い分けている点は、ドレイクを含む他の歌手の曲とは大きく異なっている。

そして、本作のもう一つの面白みはゲストとして参加したカリフォルニア州コンプトン出身のラッパーYGの存在だろう。2016年に発表した2枚目のアルバム『Still Brazy』がヒップホップ・アルバム・チャートの3位を獲得するなど、勢いのある若手が、エロティックな上に癖のあるビートに乗せて、マライアの歌を引き立てるような地味だけど味わい深いラップを聴かせている。これまでの作品でも、”Fantasy(Remix)”に客演したオール・ダーティ・バスタードや”Migrate”でフィーチャーされたTペインなど、多くのラッパーが雄姿を見せてくれたが、彼ほど「曲の一部」になった人はおそらくいなかったと思う。

ヒットメイカーの実力が遺憾なく発揮された、完成度の高さが魅力のポップなR&B。風向き次第では一気に盛り上がりそうだけど、どうなるのかな…。

Producer
Jermaine Dupri, Bryan-Michael Cox



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