melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Maybach

French Montana - Jungle Rules [2017 Bad Boy Entertainment Epic]

モロッコのラバットに生まれ、13歳の時にアメリカへ移住。MCバトルで腕を磨いた後、友人とDVDやミックステープを発表して、叩き上げのラッパーとして名を上げた、ニューヨーク州ブロンクス地区出身のラッパー、フレンチ・モンタナこと、カリーム・カルブシ。

その実績を買われ、複数のレーベルから誘いを受けた彼は、2012年にショーン・コムズ率いるバッド・ボーイとリック・ロス率いるメイバッハの2社と契約。翌年には初のフル・アルバム『Excuse My French』を発表。全米ラップ・アルバム・チャートの1位を獲得し、同作からのシングル曲”Pop That”はプラチナ・ディスクも獲得する。その後も、フィーチャリング・アーティストとして、多くの作品に客演。ウィル・アイ・アムの”Feelin' Myself”や、クリス・ブラウンの”Loyal”など、色々なアーティストのヒット曲で存在感を発揮してきた。

このアルバムは、彼にとって4年ぶり2枚目のフル・アルバム。所属レーベルの都合で、配給がインタースコープからエピックに変わっているものの、今作でも、バッド・ボーイらしいキャッチーなサウンドと、彼の荒々しいラップが堪能できる良質なヒップホップを聴かせている。

本作のオープニングを飾る”Whiskey Eyes”はニューヨーク出身のラッパー、チンクスをフィーチャーした曲。ロンドン出身の女性シンガー、フェのヴォーカルを効果的に使ったトラックと、二人の刺々しいラップの組み合わせが光っている。

一方、スワエ・リーが参加した”Unforgettable”は、レゲトンやカリプソの要素を取り込んだアップ・ナンバー。聴き手を幻想的な世界に引きずり込むトラックやヴォーカルは、モロッコのダンス・ミュージック、ジャシューカに通じるものがある。アメリカではあまり知られていない音楽のエッセンスをさりげなく盛り込むプロデューサーのセンスが素晴らしい楽曲だ。

また、メジャー・レーベルと契約する前からの盟友、ハリー・フラウドが制作を主導した”A Lie”は『Starboy』も好評のウィークエンドと、ニューヨークのハーレム出身のラッパー、マックスBを起用した作品。ウィークエンドやドレイクの楽曲に近い、シンセサイザーを多用した近未来的な雰囲気のトラックと、ウィークエンドの繊細な歌声が印象的な作品。ドレイクに代表される歌うようなラップを聴かせるアーティストがヒット・チャートを席巻する時代に、彼らのサウンドを取り入れつつ、LLクールJやノートリアスB.I.G.のような、荒々しいラップを聴かせる手法が魅力的。往年のヒップホップと現在のサウンドが融合した、本作最大の聴きどころだと思う。

それ以外の曲では、2017年も「Despicable Me 3(邦題:怪盗グルーのミニオン大脱走)」のサウンドトラックや、カルヴィン・ハリスの”Feels”などに携わるなど、活躍を続けているファレル・ウィリアムスが参加した”Bring Dem Things ”が面白い。ハリー・フラウドが作ったトラックは、ファレルが作りそうな、音数を絞ったキャッチーなもの。その上で、フレンチ・モンタナがリズミカルに言葉を繋ぐ姿は堂に入ってる。ファレルのスタイルを借りつつ、自分の音楽に染め上げるスキルの高さは流石の一言だ。

今回の作品は、多くの人気ミュージシャンを招き、流行のサウンドを積極的に取り入れた、バッド・ボーイらしいアルバムだ。しかし、妄信的にトレンドを追いかけるのではなく、太く、荒々しいフレンチ・モンタナのラップが活きるシンプルなトラックを中心に揃えることで、硬派だけど聴きやすい、絶妙なバランスの音楽に落とし込まれている点が面白い。恐らく、ノートリアスB.I.G.やメイスなど、ハードなラップをウリにするミュージシャンをヒット・チャートに送り込んできたショーン・コムズのビジネス・センスと、フレンチ・モンタナの確かなラップ・スキルが揃ったから、作れたのだろう。

ヒップホップが人気ジャンルの一つになった時代だからこそ新鮮に聴こえる、ワイルドなラップを活かした佳作。90年代からヒップホップを聴いてきた、年季の入ったファンにこそ聴いてほしい、本格的なヒップホップ・アルバムだ。


Producer
Puff Daddy, French Montana, Rick Steel etc

Track List
1. Whiskey Eyes feat. Chinx Drugz
2. Unforgettable feat. Swae Lee
3. Trippin
4. A Lie feat. Max B, The Weeknd
5. Jump feat. Travis Scott
6. Hotel Bathroom
7. Bring Dem Things feat. Pharrell Williams
8. Bag feat. Ziico Niico
9. Migo Montana feat. Quavo
10. No Pressure feat. Future
11. Push Up
12. Stop It feat. T.I.
13. Black Out feat. Young Thug
14. She Workin feat. Marc E. Bassy
15. Formula feat. Alkaline
16. Famous
17. Too Much
18. White Dress





JUNGLE RULES
FRENCH MONTANA
EPIC
2017-07-21

‎Wale - Shine [2017 Maybach Music Group, Atlantic]

2009年にアルバム『Attention Deficit』でメジャー・デビューすると、ラップ・チャートで2位、R&Bチャート3位を獲得。一気に人気ミュージシャンの仲間入りを果たし、その後は2016年までに6枚のアルバム(うち3枚はコラボレーション作品)を発表。全ての作品を総合チャートの5位以内に送り込み、ラップ・チャートとR&Bチャートでは1位に入っている、ワシントンD.C.出身のラッパー、ワーレイこと、ワーレイ・ビクター・フォーラリン。

ナイジェリア出身の両親を持ち、ヨルバ人の血を引く彼は、ワシントン発のダンス・ミュージック、ゴー・ゴーから多大な影響を受け、ハック・ア・バックスの”Sexy Girl”をサンプリングした曲を発表するなど、ラップの技術だけでなく、往年の黒人音楽への造詣も深かった。そんな彼はマーク・ロンソンが手掛けた、リリー・アレンの”Smile”のリミックスに客演したことをきっかけに、彼のレーベルと契約。その後、リック・ロス率いるメイバッハに移籍し、多くの作品を発表している。また、自身名義の作品だけでなく、ウェイク・フロッカ・フレイムの”No Hands”や、ミゲルの”Coffee”などに参加。存在感を発揮してきた。

本作は、オリジナル・アルバムとしては2015年の『The Album About Nothing』以来2年ぶり、ミックス・テープも含めると、2016年の『Summer on Sunset』以来、約10か月となる新作。前作同様、多くのヒット・メイカーにトラック制作を依頼し、豪華なゲストを集めている。

さて、収録曲に目を向けると、アルバムの2曲目に収められている”Running Back”は、トロント出身のプロデューサー、スピンズ・ビーツがトラックを作り、ニュー・オーリンズ出身の人気ラッパー、リル・ウェインが客演している。トラップのような隙間の多いビートを作りつつ、柔らかい音色のシンセサイザーを組み合わせることで、トラップとは一味違う雰囲気と、ドレイクやウィークエンドの作品のように、ポップでキャッチーな作品に纏め上げている。トラックの雰囲気を活かしつつ、ほかの曲と変わらないラップを聴かせる二人の姿も印象的だ。

また、映画「The Fate Of The Furious」のサウンドトラックに収録されている”Good Life”も好評なオークランド出身のラッパー、G-イージーを招いた”Fashion Week”は、ラテン音楽の要素を取り入れた躍動感あふれるアップ・ナンバー。シカゴ出身のプロダクション・チーム、クリスチャン・リッチが手掛けたこの曲では、ハンド・クラップやパーカッションの音色を組み合わせた軽妙なトラックに乗って、歌とラップを織り交ぜた、器用なパフォーマンスを聴かせてくれる。人気ミュージシャンの貫禄と高い技術が光る佳曲だ。

そして、クリス・ブラウンをフィーチャーした”Heaven on Earth”は、テキサス州アーリントン出身のプロデューサー、スーパー・マイルズの作品。”Fashion Week”同様、パーカッションなどを使った軽妙なビートだが、一緒にピアノの音色を取り入れるなど、よりクールで洗練されたサウンドになっている。クリス・ブラウンのセクシーなヴォーカルも、ロマンティックなトラックと上手く噛み合っている。ジャンルは少し違うがウェイン・ワンダーの”No Letting Go”を思い起こさせる、メロウでダンサブルな曲だ。

だが、本作の目玉はなんといっても”My PYT”だろう。ドープ・ボーイズがプロデュースしたこの曲は、マイケル・ジャクソンの”PYT”とマーヴィン・ゲイの”Sexual Healing”をサンプリング。シンセサイザーを多用したモダンなビートに、2曲のフレーズをうまく埋め込んで、モダンで甘い雰囲気のトラックに纏め上げている。この上で、歌うように言葉を繋ぐワーレイのラップも見逃せない。

これまでに発表してきた作品がすべてヒットしてきた彼だけあり、今回のアルバムでもキャッチーなトラックやラップの曲が目立っている。ただ、彼の場合はゴー・ゴーなどのダンス・ミュージックから多くの影響を受けてきたこともあり、あくまでもブラック・ミュージックの手法をベースにしている点が特徴的だと思う。その象徴ともいえるのが”My PYT”で、ブラック・ミュージックの歴史に残る名曲のフレーズを引用し、往年のソウル・ミュージックの雰囲気を取り入れつつ、現代風に落とし込んだ、面白い発想の曲だと思う。

2010年代を代表するヒップホップ・アーティストらしい、過去の音楽の手法を踏襲しつつ、現代の音楽に還元した、親しみやすさと奥深さを感じる佳作。

Producer
Rick Ross, Wale Folarin etc

Track List
1. Thank God
2. Running Back feat. Lil Wayne
3. Scarface Rozay Gotti
4. My Love feat. Major Lazer, WizKid & Dua Lipa
5. Fashion Week feat. G-Eazy
6. Colombia Heights (Te Llamo) feat. J Balvin
7. CC White
8. Mathematics
9. Fish n Grits feat. Travis Scott
10. Fine Girl feat. Davido & Olamide
11. Heaven on Earth feat. Chris Brown
12. My PYT
13. DNA
14. Smile feat. Phil Adé & Zyla Moon





Shine
Wale
Atlantic
2017-05-12

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