melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Motown

Ne-Yo – Good Man [2018 Compound, Motown]

2006年に発売した初のスタジオ・アルバム『In My Own Words』 がアメリカ国内だけで140万枚 も売れ、多くの音楽賞を獲得したことで、ソングライターがアーティストの有力なキャリア・パスとして再評価されるきっかけになった、アーカンソー州カムデン出身のシンガー・ソングライター、ニーヨことシャイファー・シミア・スミス。

デビュー作が成功した後も、2017年までにリリースした5枚のアルバム全てをアメリカの総合アルバム・チャートの10位以内に送り込みながら、ソングライターやプロデューサーとして、リアーナラトーヤといったR&Bシンガーから、セリーヌ・ディオンのようなポップ・スターまで、多くのアーティストに楽曲を提供。2012年にモータウンへ移籍してからは、A&R(アーティストの発掘と育成を担当する部門)のヴァイス・プレシデント(トップを補佐する役員)に就任。BJザ・シカゴ・キッドラポーシャ・ラナエリル・ヨッティといった、高いセンスとスキルが魅力の名手を送り出してきた。

このアルバムは、彼にとって通算7枚目のスタジオ・アルバム。ソングライター、クリエイターであり、会社経営者としても多くの仕事を抱えながら録音された本作は、全ての曲で彼自身がソングライティングを担当。プロデューサーには、彼の代表曲”So Sick”を一緒に制作したスターゲイトのほか、OGパーカーやステレオタイプスといったヒット・メイカーが多数参加。しなやかで親しみやすいメロディと爽やかな歌声というニーヨの魅力を引き出した作品になっている。

アルバムの実質的な1曲目となる”1 MORE SHOT”は、エリック・ベネイアン・ヴォークなどを手掛けてきたカーティス”ソース”ウィルソンをフィーチャーし、メイジャーの名義でも活躍するブランドン・グリーンと気鋭のクリエイター、マントラ・ビーツを制作者に迎えたダンス・ナンバー。ジェイソン・デルーロの近作を彷彿させる、鮮やかな音色を多用したカリプソっぽいアレンジと、ニーヨの繊細なメロディが光る好作。ハウス・ミュージックのビートを取り入れつつ、上物を強調してラテン音楽っぽく仕立てるアレンジが面白い。

これに対し、スターゲイトがプロデュースを担当した”PUSH BACK”は、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、ビービー・レクサとロンドン出身のラッパー、ステフロン・ドンをゲストに招いた作品だ。この曲は、スタイリッシュな作風が持ち味のスターゲイトのプロデュース曲では珍しい、レゲトンのビートを用いたダンス・ナンバー。ニーヨの流麗なヴォーカルと、ステフロンのラガマフィン、ポップス畑出身らしい、硬い声質のビービーのヴォーカルのコントラストが聴きどころ。

また、本作のリリース直前に発表された”APOLOGY”は、彼同様、ソングライターの実績が評価され、エンパイア配給のスタジオ・アルバムも発売しているコンプトン出身のシンガー・ソングライター、エリック・ベリンガーと共作したバラード。重いドラムの音を土台にしたヒップホップ色の強いトラックと、ラップのように多くの言葉を詰め込んだメロディという、エリックのカラーが強い曲。 爽やかな歌声としっとりとしたメロディが魅力のニーヨが、ラップのようなメロディに取り組む姿は新鮮だ。

それ以外の曲では、本作のタイトル・トラック”GOOD MAN”も見逃せない作品だ。DJキャンパーがプロデュースを担当、ソングライティングにラファエル・サディークが参加したこの曲は、ディアンジェロが2000年に発表した”Untitled (How Does It Feel)”をサンプリングしたバラード。随所に印象的なフレーズを織り込みつつ、楽曲全体の展開に目を配る構成が特徴的なニーヨの楽曲では珍しい、様々なメロディをモザイクのように組み合わせたスタイルの作品だ。ディアンジェロの楽曲を引用して、彼のスタイルを取り入れつつ、ニーヨの洒脱な歌唱法の組み合わせが新鮮なスロー・ナンバーだ。

このアルバムで彼が披露したのは、多くのソングライターやプロデューサーを招き、彼らの作風を取り入れることで、音楽の幅を広げているところだろう。エリック・ベリンガーやパーティー・ネクストドアといった、楽曲とキャラクターの両方が評価されて頭角を現したシンガー・ソングライターや、ステレオタイプスやDJキャンパーのような尖った作風がウリのヒット・メーカーを揃えつつ、自身も制作に関与することで、楽曲のバラエティと一貫性を確保している。このアルバムからは、「実績豊富なミュージシャンのニーヨ」を「音楽プロデューサーのニーヨ」の目で分析し、伸びしろを活かそうとしているように映る。

マネージメントという新しい仕事を通して、自分の可能性を広げた魅力的な作品。プレイヤーの能力ととマネージメントの技術は相対するものではなく、互いの可能性を引き出す車の両輪であることを教えてくれる優れたアルバムだ。

Producer
Ne-Yo, Darhyl Camper Jr, OG Parker, StarGate, The Stereotypes, DJ Camper etc

Track List
1. ""Caterpillars 1st"" (INTRO)
2. 1 MORE SHOT
3. LA NIGHTS
4. NIGHTS LIKE THESE feat. Romeo Santos
5. U DESERVE
6. SUMMERTIME
7. PUSH BACK feat. Bebe Rexha & Stefflon Don
8. BREATHE
9. ON UR MIND feat. PARTYNEXTDOOR
10. BACK CHAPTERS
11. HOTBOX feat. Eric Bellinger
12. OVER U
13. WITHOUT U
14. APOLOGY
15. OCEAN SURE feat. Candice Boyd & Sam Hook
16. ""The Struggle..."" (Interlude)
17. GOOD MAN





グッド・マン
NE-YO(ニーヨ)
ユニバーサル ミュージック
2018-06-08

Migos - Culture II [2018 Quality Control, Motown, Capitol]

2009年に、ジョージア州のローレンスビルを拠点に活動していたクアヴォ、テイクオフ、オフセットの三人が結成。2013年にアトランティックからデビュー・シングル”Versace”を発表すると、50万枚を売り上げ、ゴールド・ディスクを獲得する大ヒットになったヒップホップ・グループ、ミーゴス。

その後は、ヒット曲を引っさげて、複数のラジオ番組に出演。躍動感あふれるパフォーマンスで喝采を浴びる一方、合間を縫って立て続けにミックス・テープを発表。これらの作品が高い評価を受けた彼らは、2015年に初のスタジオ・アルバム『Yung Rich Nation』をリリースする。同作はアルバムチャートの17位に入り、グッチ・メインや2チェインズ、フューチャーとともに、アメリカ南部発の人気ヒップホップ・ミュージシャンとして、世界中のヒップホップ好きから注目を集めるようになる。また、2017年には2枚目のアルバム『Culture』を発表。同作はアメリカ国内だけで100万枚を売り上げ、全米総合アルバムチャートの1位を獲得。グラミー賞のベスト・ラップ・アルバムにノミネートする大ヒット作となった。

このアルバムは、前作からわずか1年という短い間隔でリリースされた通算3枚目のフル・アルバム。アトランティック系の300YRNから、ユニヴァーサル系のモータウンに移籍して制作された本作では、メンバーのクエヴォと、彼らのサウンドを支えてきたDJデュレルが制作を主導。それに加え、マーダ・ビーツやカニエ・ウエスト、メトロ・ブーミンといった、アメリカやカナダを代表するヒット・メイカーが参加。流行の最先端を意識した音楽を聴かせている。

本作の収録曲で最初に目を惹いたのは、デビュー作にも携わっているホノラブルC.N.O.T.E.がプロデュースした”Supastars”だ。ブリブリと唸る低音と、軽快なビートを組み合わせたトラックの上で、軽妙な掛け合いを見せる作品。ジョージア州出身の彼ららしい、トラップ・ビートを使った格好良い楽曲だ。

これに対し、ファレル・ウィリアムスをプロデューサーに起用した”Stir Fry”は口笛のような音色の上物と、ゴムボールのように跳ねるビートが面白い作品。リル・ジョンやクリス・ブラウンのヒット曲で有名になったクランクやトラップをベースにしつつ、ファレルが多用する軽やかな音色を組み合わせている点が新鮮だ。彼がプロデュースした作品にもかかわらず、3人のラップを聴かせることに力を注いだ構成も面白い。

そして、トラヴィス・スコット、タイ・ダラ・サイン、ビッグ・ショーンという人気ラッパー3人を迎えた”White Sand”は、アトランタ出身のプロデューサー、ウィージーがトラックを制作。オートチューンを使ったトラヴィス・スコットとタイ・ダラ・サインのフックから始まるこの曲では、リズミカルなラップが魅力のミーゴスと、荒っぽいラップが武器のゲストの対比が聴きどころ。ヴォーカル曲もこなせるタイ・ダラ・サインとトラヴィス・スコットの存在が、表現の幅を広げている点にも注目してほしい。

だが、本作の目玉はなんといっても、マーダ・ビーツがプロデュースを担当した”MotorSport”だろう。ニッキー・ミナージュとカルディBという、現代のヒップホップ・シーンをけん引する女性ラッパーとコラボレーションしたこの曲は、重厚なビートの上で、5人が個性豊かなラップを披露している。一度聴いたら忘れられない、強烈な個性を持つゲストのラップを引き立てるため、あえて堅実なパフォーマンスを聴かせる3人の存在が光る良作だ。

彼らの音楽の特徴は、現代のアメリカで流行している手法を積極的に取り入れているところだろう。彼らの地元ジョージア州を含むアメリカ南部で流行している、シンセサイザーを多用したトラップやクランクのサウンドを軸に、カニエ・ウエストや、ファレル・ウィリアムスといったヒット・メイカーや、ニッキー・ミナージュやドレイクといったトップ・ミュージシャンを集め、彼らのスタイルを盛り込んだ楽曲を録音している。この、一貫した個性を持ちつつ、周囲の変化を積極的に吸収していく手法が、彼らの音楽の人気の秘訣だろう。

現代のアメリカのヒップホップの美味しいところを凝縮したといっても過言ではない良盤。「今、どんな音楽が流行しているか知りたい」という人はぜひ聴いてほしい。

Producer
Quavo, DJ Durel, Honorable C.N.O.T.E., Kanye West, Metro Boomin, Murda Beatz, Pharrell Williams etc

Track List
1. Higher We Go (Intro)
2. Supastars
3. Narcos
4. BBO (Bad Bitches Only) feat. 21 Savage
5. Auto Pilot (Huncho on the Beat)
6. Walk It Talk It feat. Drake
7. Emoji a Chain
8. CC feat. Gucci Mane
9. Stir Fry
10. Too Much Jewelry
11. Gang Gang
12. White Sand feat. Big Sean, Travis Scott & Ty Dolla $ign
13. Crown the Kings
14. Flooded
15. Beast
16. Open It Up
17. MotorSport by Migos, Nicki Minaj & Cardi B
18. Movin' Too Fast
19. Work Hard
20. Notice Me feat. Post Malone
21. Too Playa feat. 2 Chainz
22. Made Men
23. Top Down On Da NAWF
24. Culture National Anthem (Outro)





Culture 2
Migos
Quality Control
2018-01-26

Lil Yachty - Teenage Emotions [2017 Quality Control Music, Capitol, Motown]

2015年ごろに音楽活動を開始。多くのステージや客演を経験する一方で、ファッション・リーダーとして情報サイトにも登場するなど、様々な分野で活躍。若者の間で人気を博してきた、ジョージア州メイブルトン生まれ、アトランタ育ちのラッパー、リル・ヨッティこと、マイルス・パークス・マッコルン。

2015年に発表したEP『Summer Songs』が、自主制作による配信限定の作品ながら、キャッチーで斬新な作風で注目を集め、その後に発売された3枚のEPも一定の成果を残した。また、2016年にはカニエ・ウエストが経営するブランドでモデルを務める一方、モータウンキャピトル、クオリティ・コントロールと同時に契約(ただし、前2社はユニバーサル傘下)。同年には2枚のミックス・テープをリリースしてヒットさせた。そして、2017年には、アメリカの雑誌フォーブスが選ぶ「30歳以下の重要人物30人」に19歳の若さで選ばれるなど、早くから将来を嘱望されてきた(余談だが、10代のアーティストは、彼以外にラッパーのデザイナー、シンガー・ソングライターのデイヤがいる。また、20代のミュージシャンでは、ウィークエンドガラントブライソン・ティラーなどが取り上げられている)。

本作は、彼にとって待望のファースト・アルバム。プロデューサーには、ディプロやステレオタイプス、レックス・ルガーなどのヒット・メイカーが名を連ね、ゲスト・ミュージシャンとして、ミーゴスやYGなどが参加した、新人の作品としては異例の、豪華な面々が集結したものになっている。

アルバムに先駆けて発表された”Peek A Boo”は、アトランタ出身のリッキー・ラックスがプロデュース、グイネット群出身で、レーベルの大先輩でもあるミーゴスが客演した、ジョージア州の出身の3人による作品。90年代終盤、ジャーメイン・デュプリなどが頻繁に作っていた、ドラムのテンポを落としつつ、シンバルを通常の半分の間隔で刻むことで、アップ・テンポの音楽のように聴かせるトラック、いわゆるバウンズ・ビートと、対照的な声質を活かした二人のラップが格好良い曲。太いバリトン・ボイスのミーゴスがサビで煽ったあとに、ヨッティが荒々しい声で飄々と言葉を繋いでいくマイク・リレーを堪能してほしい。

これに対し、コンプトン出身のYGと、オークランド出身のカマイヤーを招き、レックス・ルーガーがトラックを制作した”All Around Me”は、ゆったりとした雰囲気のトラックと、三者三様のラップが印象的なミディアム・ナンバー。オートチューンで声を加工したヨッティがサビを担当し、YGのワイルドなラップと、カマイヤーのセクシーなフロウを引き立てている。シンセサイザーを駆使したトラックと、オートチューンで加工した声によるリラックスした雰囲気のヴォーカルは、T-ペインにも少し似ている。

彼がヴォーカルを披露した曲で、もう一つ見逃せないのが、バーミンガム出身の女性ラッパー、ステフロン・ドンを起用した ”Better”だ。エイコンの”Don’t Matter”を連想させる、レゲエとヒップホップを融合したトラックと、肩の力を抜いた歌声が心地よいミディアム・ナンバー。レゲエのリズムをきっちりと乗りこなすステフロンのラップも格好良い。ジャスティン・ビーバーやダニティ・ケインなど、多くの人気ミュージシャンに携わってきた、ステレオタイプスの手掛けるトラックも光っている。

そして、アルバムに先駆けて公開されたもう一つの楽曲”Bring It Back”は、フリー・スクールのプロデュース作品。デュラン・デュランやデイヴィッド・ボウイのような、80年代のロック・ミュージシャンのヒット曲を思い起こさせる、電子ドラムやシンセサイザーの音色を多用した、ロック寄りの楽曲。音数を絞った伴奏に乗って、朗々と歌う姿はカニエ・ウエストの『808s & Heartbreak』っぽくも聴こえる。

彼の面白いところは、飄々と言葉を繋ぐラップと、地声で歌うヴォーカルを使い分けながら、オートチューンも使いこなすという風に、変幻自在にスタイルを変えるヴォーカルと、バウンズ・ビートやトラップだけでなく、レゲエやロック、アフリカ音楽まで乗りこなす器用さだと思う。その手法は、まるでファッション・ショーに出演するモデルが、様々なデザインの服と一体になりながら、しっかりと自分の個性を表現する姿とダブって見える。

積極的に個性を主張しなくても、他人とは違う自分らしさを表現することは可能だということを証明したような、自然体のラップと、色々な音楽を取り入れる器用さが魅力の佳作。過剰なくらい個性を際立たせることが良しとされたヒップホップの世界に、新しい価値観を吹き込んでくれそうだ。

Producer
Digital Nas, Ricky Racks, Lex Luger, K Swisha, The Stereotypes, Diplo, Free School etc

Track List
1. Like A Star
2. DN Freestyle
3. Peek A Boo feat. Migos
4. Dirty Mouth
5. Harley
6. All Around Me feat. Kamaiyah, YG
7. Say My Name
8. All You Had To Say
9. Better feat. Stefflon Don
10. Forever Young feat. Diplo
11. Lady In Yellow
12. Moments In Time
13. Otha Sh*t (Interlude)
14. X-Men
15. Bring It Back
16. Running With A Ghost
17. FYI (Know Now)
18. Priorities
19. No More
20. Made Of Glass
21. Momma (Outro) feat. Sonyae Elise





Teenage Emotions
Lil Yachty
Quality Control
2017-05-26

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