ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

OVO

Drake - More Life (A Playlist By October Firm) [2017 OVO Sound, Young Money Entertainment, Cash Money Records]

同じハイスクールに通う友人の父が経営するエージェントと契約したことをきっかけに、俳優として芸能活動をスタート。学園ドラマ『Degrassi: The Next Generation』などでレギュラーを務めたあと、ミュージシャンに転身して、複数のミックス・テープをリリース。ルーペ・フィアスコやトレイ・ソングスといった有名ミュージシャンも参加したこれらの作品が、音楽好きの間で注目を集めたことをきっかけに、ユニヴァーサル傘下のヤング・マネー、キャッシュ・マネーと契約を結んだ。カナダのトロント出身のシンガー・ソングライター、ドレイクことオーブリー・ドレイク・グラハム。

その後は、2017年までに4枚のフル・アルバムと複数のミックス・テープやコンピレーション・アルバムを発表。それらの作品は、彼に、全米チャートの1位やグラミー賞、ブリット・アワードを含む、多くの栄光をもたらした。本作は、そんな彼にとって、2016年の『Views』から僅か1年という短い期間を経て発表された22曲入りの新作がこのアルバム(プレスリリース等では「プレイリスト」と表記)。

今回の新作では、2016年10月にリリースされたシングル曲”Fake Love”が収録されている一方、同時期にリリースされた”Sneakin'”や”Two Birds, One Stone”、2017年に発表されたニッキー・ミナージュやリル・ウェインとのコラボレーション曲”No Frauds”等は収録されていない。だが、22曲81分超と、リリースの間隔を短くしつつ、リスナーの集中力も維持するために曲数を絞った作品が多い現代では珍しい、CD1枚の収録可能時間を超える大作に取り組んでいる。

アルバムに先駆けて発表されたのは”Fake Love”のほか、”Passionfruit”、”Free Smoke”の計3曲。まず、本作の収録曲で一番最初に公開された"Fake Love"だが、この曲は彼の作品に何度も参加しているニューヨーク出身のプロデューサー、ヴィニールズが手掛けた曲。エイコンやリアーナが使いそうな、南国風の煌びやかな音色のシンセサイザーを上物に使ったミディアム・ナンバー。遅いテンポのビートとラップ寄りの歌唱(歌うようなラップ?)は、ウォーの”Cisco Kid”にもちょっと似ている、爽やかな季節に似合いそうだ。

一方、ピアノの弾き語りから始まる”Free Smoke ”は、こちらも彼の曲を数多く手掛けているボイ・ワンダーがトラックを担当。遅いテンポのビートと重低音を基調にしたダークな雰囲気のトラックをバックに、刺々しい言葉を畳みかけるラップ・ナンバー。息継ぎも少なめに言葉を繋ぐ技術が光る曲だ。

そして、今回が初参加となるローグがプロデュースした”Passionfruit”は、少し遅いテンポの四つ打ちのビートを取り入れたハウス風のダンス・ナンバー。"Fake Love"でも使われたカリプソっぽい明るい音色やハンド・クラップを織り交ぜたトラックが心地よい楽曲。少し毛色は違うがアリーヤの"Rock The Boat"にも似た涼し気なメロディも聴きどころだ。

もちろん、本作が初披露の楽曲にも魅力的なものが揃っている。全部を紹介するわけにはいかないので、特に気になった曲に絞って紹介すると、ロンドン出身のラッパー、ギブスが参加した”No Long Talk”は緊迫感溢れるトラックの上で、青龍刀のように太く鋭い言葉を畳みかけるラップが格好良い楽曲。彼は、オーケストラっぽいフレーズを持ち込んだ"Kmt"でも、巧みなラップ技術を披露している。一方、今後の動向が気になるカニエ・ウエストがラップとプロデュースで参加した”Glow”は、ドレイクが歌に徹したロマンティックなスロー・ナンバー。歌とラップの両方を経験している二人らしい、息の合ったパフォーマンスとトラックが面白い。また、それ以外でも、アトランタ出身のラッパー、ヤング・サグをフィーチャーしたスロー・ナンバー”Ice Melts”も見逃せない曲だ。テンポを落としたトラップ・ビートを使い、歌うようにラップをする二人の姿が印象的だ。

このアルバムがリリースされる前、彼は自身の作品がグラミー賞の「ラップ部門だけ」にノミネートしていることを不満だと表明していたが、本作を聴けば、それも納得だと思う。彼の音楽には、メロディのついたラップや、多くの言葉を畳みかける歌など、歌orラップに分類するのが難しい曲も少なくない。良くも悪くも、歌とラップという分類を越えた曲が多いのだ。それは今回の作品も同じで、トラックの持ち味を引き出す、ジャンルにとらわれないパフォーマンスが多く収められている。

今回のアルバムは、「プレイリスト」と呼んでいるものの、その内容はCD等で販売されているフル・アルバムと何ら変わるものではないと思う。R&Bとラップという分類が過去のものになる時代、本作はその端緒となる優れた"プレイリスト"だと思う。

補足&訂正(3/27)
3月31日にフィジカル・リリースもされるようです。
あと、2017年時点のCDの収録可能時間は最大89分でした。
以上、補足、訂正いたします。

Producer
Drake, Oliver El-Khatib, 40 etc

Track List
1. Free Smoke
2. No Long Talk feat. Giggs
3. Passionfruit
4. Jorja Interlude
5. Get It Together feat. Black Coffee, Jorja Smith
6. Madiba Riddim
7. Blem
8. 4422 feat. Sampha
9. Gyalchester
10. Skepta Interlude
11. Portland feat. Quavo, Travis Scott
12. Sacrifices feat.2 Chainz, Young Thug
13. Nothings Into Somethings
14. Teenage Fever
15. KMT feat. Giggs
16. Lose You
17. Can't Have Everything
18. Glow feat Kanye West
19. Since Way Back feat. PARTYNEXTDOOR
20. Fake Love
21. Ice Melts feat. Young Thug
22. Do Not Disturb



More Life
Drake
Republic
2017-03-31

 

PARTYNEXTDOOR - PARTYNEXTDOOR 3 [2016 OVO Sound, Warner]

2010年にドレイクがアルバム『Thank Me Later』でブレイクして以降、アメリカのヒップホップ、R&Bシーンで存在感を増し続けているカナダ出身のミュージシャン達。そのムーブメントを牽引する、ドレイクとノア・シャビブ率いるOVOサウンドの一員で、彼に次ぐ成功を期待されているのが、オンタリオ州ミシサガ出身のシンガーソングライター、パーティネクストドアことジャーロン・アンソニー・ブラスウェイトだ。

ジャマイカ系の母とトリニダード系の父の間に生まれた彼は、10代のころからシンセサイザーを使ってヒップホップやR&Bを作っていたらしい。その後、本名で発表した曲が音楽情報サイトで高い評価を受けた彼は、友人達と自身のウェブサイトを作成。同サイトで発表したミックス・テープが注目を集め、ワーナーと契約、OVOへの加入と至った。

OVOに加入した彼は、2013年にEP『PARTYNEXTDOOR』を、2014年にフル・アルバム『PartyNextDoor Two』を発表。この2作品では、ドゥー・ヒルの”Share My World”をサンプリングした”SLS”やリル・ジョン&イースト・サイド・ボーイズの”Who U Wit?”を引用した”Welcome to the Party”を収録するなど、ヒップホップのミックス・テープやダンスホール・レゲエを連想させる、既存のヒット曲から巧みに引用、アレンジしたフレーズを盛り込んだ、熱心な音楽ファンなら思わずニヤリとしてしまいそうな楽しい曲を聴かせてくれた。

前作から2年ぶりの新作となる、今回のアルバムでも、彼の音楽性に大きな変化はなく、色々な音楽のエッセンスを取り込みつつ、それに手を加え、自分の音楽として再編集した、新鮮だけど耳馴染みの良い音楽を聴かせている。

前作でも見せてくれた、巧みなサンプリング技術は、アルバムのオープニングを飾る”High Hopes”で既に発揮されている。スウェーデンの電子音楽家、ヴァルグの”Skaeliptom”を使ったこの曲は、陰鬱で繊細な電子音楽の特徴をうまく取り込んだ、音と音の隙間を活かしたダークなトラックが格好良い。その上に乗っかる、ドレイクのようなラップっぽい荒々しいヴォーカルが、突然ブラックストリートの”No Diggity”のフレーズを歌い出す演出も面白い。93年生まれの彼が96年のヒット曲を使って新しい音楽を作る姿に、時間の流れを感じずにはいられない。

それ以外にも、過去のヒット曲を引用した楽曲は複数収められており、T.O.K.が2001年に発表した”Eagles Cry”のトラックを再利用したレゲエ・ナンバー”Only U”や、アメリカのシンガー・ソングライター、デヴァンドラ・バンハートが2013年に公開した”Daniel”を使ったフォークソング風の楽曲”Joy”、ウェイルが2015年にリリースしたアルバム『The Album About Nothing』の収録曲”The Need to Know”のビートを、フィーチャーされたSZAのヴォーカルごと引用した”Nobody”など、色々なジャンルの新旧の名曲を使ったトラックが登場している。

だが、彼の一番の魅力は、多彩なトラックにキャッチーなメロディを乗せるソングライティングとヴォーカルの技術だろう。ドレイクをフィーチャー”Come and See Me”では、彼の作品を彷彿させるコンピュータを使ったチキチキと鳴るビートの上で、胸がキュンと締め付けられるような切ない歌を聴かせてくれるスロー・ナンバー。ラップっぽい歌唱のジャーロンと、メロディのついたドレイクのラップが、楽曲から重苦しい雰囲気を取り払い、切ない印象だけを残している。

また、本作からシングル・カットされた”Nobody”でも、トラックこそウェイルの曲を下敷きにしているが、そこから独特のメロディを紡ぎ出し、ドレイクとは異なるアプローチで、ヒップホップにもR&Bにも分類できない、彼独自の音楽を生み出している。

彼の音楽は、シンセサイザーを多用したシンプルなトラックや、ラップにも歌にも聴こえる明確なメロディを持ちながら音節数が異常に多いヴォーカルなど、ドレイクの影響を伺わせる要素が多いのは事実だと思う。だが、レゲエ作品やミックス・テープ文化からの影響を感じさせる、既存の曲からビートやメロディを引用して、自分の音楽に組み込むセンスや、ヴォーカルの表現の幅など、ドレイクにはない持ち味も数多く見受けられる。

本作には粗削りな部分もあるが、彼はまだ23歳。このアルバムが発表された後、リアーナの『Anti』やアッシャーの『Hard II Love』に起用されるなど、ポップ・スターの作品で着々と実績を積み上げながら、彼自身の音楽にも磨きをかけている。彼自身の将来性も含め、R&Bの今後を左右しそうな、とても面白い作品だ。

Producer
PARTYNEXTDOOR, Sevn Thomas, L8 Show etc

Track List
1. High Hopes
2. Don't Run
3. Nobody
4. Not Nice
5. Only U
6. Don't Know How
7. Problems & Selfless
8. Temptations
9. Spiteful
10. Joy
11. You've Been Missed
12. Transparency
13. Brown Skin
14. 1942
15. Come and See Me feat. Drake
16. Nothing Easy to Please





Partynextdoor 3
Partynextdoor
Warner Bros / Wea
2016-10-07

Roy Woods – Nocturnal [2016 OVO Sound,Warner]

ドレイクやウィークエンドのブレイクもあり、近年、アメリカの音楽シーンで存在感を増しているカナダ出身のアーティスト。その中でも、特に活躍著しいのがトロント出身のシンガー・ソングライター、ドレイクと彼が率いるレーベル、OVOサウンドの面々だ。

彼のほかにも、パーティーネクストドアやマジッド・ジョーダンなどの売れっ子シンガーを輩出し、40やT-マイナスといった、アメリカの有名ミュージシャンを相手に仕事をしているプロデューサーを抱える同レーベル。その影響力は、今や北米地域に留まらず、全世界に及んでいる。

そんなOVOで現在、最も精力的に活躍しているアーティストの一人が、オンタリオ州の40万人都市、ブランプトン出身のロイ・ウッズことデンゼル・スペンサーだ。彼は2014年に若干19歳でレーベルと契約したあと、僅か2年の間に、本作を含め2枚のEPと1枚のLPをリリースしている、気鋭のシンガー・ソングライター。2015年にはドレイクをフィーチャーした”Drama”を含むEP『Exis』を、2016年7月にはカナダ出身のプロデューサーが数多く参加した初のフル・アルバム『Waking At Dawn』を、配信限定の作品にも関わらず、ビルボードのR&Bチャートの上位に送り込むなど、破竹の勢いでヒット作を生み出してきた。

その前作から5か月という短い間隔で発表された、彼にとって2枚目のEP『Nocturnal』は、これまでの作品同様、カナダ出身のミュージシャンと録音した作品。本作では、過去の2作にも参加しているトロント出身のプロデューサー、サニー・ダイアモンズやフランシス・ゴット・ヒートなどが集結。ポスト・ドレイクと言っても過言ではない、デジタル楽器を駆使した近未来的で洗練されたR&Bを聴かせてくれる。

彼の音楽の特徴は、コンピューターを駆使した洗練されたトラックと、ラップのように多くの言葉を詰め込んだメロディ。レーベルのボス、ドレイクとよく似たスタイルだが、ドレイクに比べて10歳近く若いロイは、デビュー当初のアッシャーやテヴィン・キャンベルを彷彿させる甘酸っぱい声で、爽やかに歌い上げているのが大きな違いだ。

アルバムのオープニングを飾る”Magic”は、ふわふわとしたシンセサイザーのリフとゴム毬のように跳ねるビートが特徴的なスロー・ナンバー。ネリーやT-ペインを彷彿させる、メロディがついたラップのような歌唱が印象的な切ない雰囲気の楽曲だ。続く”Four Seasons”は、ギターとハンド・クラップを軸にした隙間の多いバウンズ・ビートに乗せて、若々しい声で言葉を畳み掛ける哀愁たっぷりのメロウなヒップホップ。艶のある歌声が、高速ラップにメロディを感じさせてくれる。

だが、本作のハイライトはその後の3曲だ。まず、レーベル・メイトのマジッド・ジョーダンが参加した”Chilli Peppers”は、シンセサイザーを使った幻想的な伴奏と、ジニュワインのバラードを思い起こさせる歯切れのよいビートとメロディのコンビネーションが印象的なスロー・バラードだ。泥臭い歌声のマジッドと、ロイの可愛らしい歌声の対比も面白い。続く”Involved”は、Akonの”I Wanna Love You”を暗くしたような、ドラムとシンセサイザーが中心のシンプルなトラックの上にキャッチーなメロディを乗せたミディアム・ナンバー。彼の曲では珍しく、熱く猛々しいヴォーカルを聴かせている。

そして、アトランタ出身のラッパー、メイドインTYOが参加した”Instinct”は、シンセサイザーをパーカッションの代わりに使ったモダンなビートの上で、訥々と言葉を紡ぎ出すメイドインTYOと、言葉の数を絞って、歌っぽく聴かせたロイの対比が光るミディアム・バラード。彼が影響を受けた、ネリーの作品のように、言葉の量を増やしたラップっぽいメロディのヴォーカルと、歌のようにメロディがついたラップを組み合わせた、シックだがキャッチーな楽曲だ。

シンセサイザーを駆使した、シンプルで飾らないトラックと、流麗なメロディに乗せてラップのように多くの言葉を詰め込むヴォーカルは、ドレイクの登場以降、R&Bの主流になった手法だ。だが、そこに若々しく、艶のある声を乗せたスタイルとなると、彼だけの個性といってもいいと思う。「ドレイク以降」のR&Bとして、見逃すことができない佳作。次の作品こそ、フィジカル・リリースをしてほしいな。

Producer
Sunny Diamonds, Francis Got Heat

Track List
1. Magic
2. Four Seasons
3. Chilli Peppers feat. Majid Jordan
4. Involved
5. Instinct feat. MadeinTYO
6. Love You
7. Dangerous





Nocturnal [Explicit]
OVO Sound/Warner Bros.
2016-12-24


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