ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

R&B

Mike City - Feel Good Agenda Vol.1 [2017 BBE]

99年にリリースされたカール・トーマスの”I Wish”が、全米ヒップホップ・R&Bチャートで6週連続の1位を獲得(その後、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”に奪われるものの、再度取り返している)する大ヒットになったことで名を上げ、その後もサンシャイン・アンダーソンの” Heard It All Before”や、ブランディの”Full Moon”、デイヴ・ホリスターの”One Woman Man”などヒット曲を手掛けてきた、フィラデルフィア出身のプロデューサー、マイク・シティことマイク・フラワーズ。近年はレイラ・ハザウェイやフェイス・エヴァンスなどの作品にも携わっている彼の、98年作『City Limits』以来となるフル・アルバムが本作だ。

前作は、自身がヴォーカルをとっていたが、本作では多くのゲスト・ヴォーカルを起用。カール・トーマスやレイラ・ハザウェイのような、彼とは縁の深いミュージシャンを中心に、フェイス・エヴァンスやメイサ・リークなど、人気と実力に定評のあるシンガーが集結している。

彼の出世作となった”I Wish”を歌っている、カール・トーマスをフィーチャーした”100 Miles”は、シンセサイザーを使った煌びやかなバック・トラックが印象的なアップ・ナンバー。”I Wish”の時はシンプルなメロディを丁寧に歌っていたカールだが、この曲では”She Is”に近いしなやかなメロディの上で美しい声を響かせている。ルイ・ヴェガやマスターズ・アット・ワークを思い起こさせるお洒落なトラックも心地よい。

一方、フェイス・エヴァンスが参加した”When I Luv”は、跳ねるようなベースの演奏と華やかな伴奏が格好良い曲。パワフルな歌声が魅力のフェイスには珍しい、クールなヴォーカルが光るダンス・ナンバーだ。自作のトラックの上で、軽やかなヴォーカルを披露するマイクの存在が、楽曲に軽快なイメージを与えている。ダフト・パンクの”Get Lucky”にも通じる、ディスコ音楽の影響が見え隠れする良曲だ。

また、2017年のアルバム『Love Is A Battlefield』も好評な、メイサ・リークを起用した”Head Over Heels”は、太いシンセサイザーの音色を使ったハウス・ナンバー。”100 Miles”同様、華やかな伴奏が印象的だが、メイサの流れるようなヴォーカルのおかげで、洗練されたダンス・ミュージックのように聴こえる。この曲でもマイクが歌声を披露しているが、こちらの曲では、スタイリッシュなメイサの歌唱を引き立てるように、軽妙なヴォーカルを聴かせてくれる。

そして、レイラ・ハザウェイを招いた”You’re In Heaven”は、本作では珍しいミディアム・テンポの楽曲。キラキラとしたキーボードと切れ味の良いギターの伴奏をバックに、じっくりとメロディを歌い込むj二人の姿が素晴らしい。” Heard It All Before”や”One Woman Man”を連想させる、ゆったりとしたメロディとミディアム・テンポのトラックが気持ちいい。

今回のアルバムは、カール・トーマスやフェイス・エヴァンスのように、恵まれた歌声と高い歌唱技術を兼ね備えたシンガーを集めて、ハウス・ミュージックのような四つ打ちのビートと、シンセサイザーを駆使したスタイリッシュな伴奏を組み合わせたという、アーティストとシンガー、両方にとって異色の作品だと思う。高い歌唱力がウリのシンガーを集めたハウス・ミュージック作品は、90年代から数多くあったが、味わい深い歌声の歌手を揃えて、今回のような作品を録音したものは非常に珍しい。おそらく、マイクが20年以上の長い間、R&Bの世界でじっくりと「歌」を聴かせる作品をたくさん手掛けてきた経験が、この作品に反映されているのだと思う。

EDMやトラップのような、華やかで高揚感のあるサウンドとは一味違う。クールで洗練された大人向けのダンス・ミュージック。ダフト・パンクやマーク・ロンソン、ブルーノ・マーズなどの音楽が好きな人にはぜひ聴いてほしい、おしゃれでロマンティックなR&Bだ。

Producer
Mike City

Track List
1. I Rock Wit U feat. Dwele
2. Everybody Loves A Winner
3. 100 Miles feat. Carl Thomas
4. When I Luv feat. Faith Evans
5. Been Too Afraid feat. Teedra Moses
6. Head Over Heels feat. Maysa
7. Up To It
8. More Of Me feat. Crystal Johnson
9. Here Together feat. Terri Walker
10. You’re The Kind
11. Sang & Dance feat. Junior
12. You’re In Heaven feat. Lalah Hathaway





▼CD/THE FEEL GOOD AGENDA VOL. 1 (解説付) (輸入盤国内仕様)/マイク・シティ/BBEACDJ-419 [6/21発売]
▼CD/THE FEEL GOOD AGENDA VOL. 1 (解説付) (輸入盤国内仕様)/マイク・シティ/BBEACDJ-419 [6/21発売]

October London - Color Blind: Hate & Happiness [2017 October London, Cadillacc Music]

2016年に、スヌープ・ドッグの”Revolution”に客演したことで一躍有名になり、同じ年に初のEP『Color Blind: Love』を発表。50年代のドゥー・ワップや70年代のスウィート・ソウルから影響を受けたロマンティックな作風で、配信限定ながら音楽ファンの間で話題になった、インディアナ州のサウスベント出身のシンガー・ソングライター、オクトーバー・ロンドン。今年に入ってからもスヌープの新作『Never Left』に収録されている”Go On”にフィーチャーされるなど、精力的に活動している彼の、半年ぶり2枚目のEP。

前作同様、配信限定の作品のため、プロデューサーなどは不明だが、作風は前回のアルバムに引き続き、往年のソウル・ミュージックの要素を随所に取り入れた、甘く、ロマンティックなものになっている。

アルバムのオープニングを飾る”One Shot to Love”は、デイヴィッドT.ウォーカーを彷彿させる艶めかしいギターの伴奏と、流麗なストリングスが印象的なミディアム・ナンバー。R.ケリーなどが採用したことで、若者の間でも有名になったシカゴ発祥のダンス音楽、シカゴ・ステッパーズっぽい洗練されたリズムに乗って、リラックスした歌唱を聴かせるオクトーバー・ロンドンが格好良い佳曲だ。

続く”Top Down”は、彼がブレイクするきっかけを作った、スヌープ・ドッグをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。アリシア・キーズの”You Don’t Know My Name”を思い起こさせる、甘いコーラスを多用したトラックの上で、優しくラップするスヌープの存在感が光る曲。スヌープに合わせるかのように、R.ケリーを思い起こさせるラップっぽい歌唱を披露する、オクトーバー・ロンドンのヴォーカルも心地よい。スウィート・ソウルの雰囲気を残しつつ、ヒップホップ寄りのR&Bに落とし込んだアレンジ技術が魅力的な楽曲だ。

これに対し、”Dramatic”はマーヴィン・ゲイの”Inner City Blues”を連想させる、哀愁を帯びたアップ・ナンバー。触れたら崩れそうな、繊細なファルセットを多用したヴォーカルは、70年代のマーヴィン・ゲイにそっくりだ。しかし、古いレコードからサンプリングしたような温かい音色を使った、重いビートとシンセサイザーの音色を駆使した伴奏のおかげで、当時の雰囲気を残しつつ、現代の音楽として聴かせている点は見逃せない。

そして、本作では唯一のバラードが”Driving Me to Drink”だ。三拍子を取り入れた優雅な伴奏に乗って、悠々と歌う姿が印象的。低音を中心に、声域をフルに使ったダイナミックなヴォーカルと、 荒々しいピアノや、スティーブ・クロッパーを思い起させる武骨なギターを組み合わせた伴奏が素敵な楽曲だ。アンソニー・ハミルトンやライフ・ジェニングスのような泥臭いR&Bシンガーが好きな人にはたまらないと思う。

今回の作品でも、前作同様、ドゥー・ワップやスウィート・ソウル、シカゴ・ステッパーズなど、色々なスタイルのソウル・ミュージックを取り入れた、懐かしさと新鮮さの同居した素敵な音楽が揃っている。彼の音楽は、サンプリングやアレンジで往年のサウンドを再現しているだけでなく、声の出し方や、言葉同士のつなぎ方など、細かいところにまで気を配ることで、当時の音楽の雰囲気を再現しているのだと思う。だからこそ、自身名義の作品以外でも、ソウルフルなパフォーマンスを披露できるのではないだろうか。

ソウル・ミュージックを丹念に研究し、現代の音楽と融合した、本格的なヴォーカル作品。ヒップホップを通して往年のソウル・ミュージックを知った人にこそ是非聴いてほしい。歌の面白味が堪能できる傑作だ。

Track List
1. One Shot to Love
2. Top Down feat. Snoop Dogg
3. Dramatic
4. Driving Me to Drink
5. Somebody's Getting My Love
6. Where's the Justice
7. Sail Away






Plaza - Shadow [2017 OVO Sound, Warner]

ドレイクパーティネクストドアといった人気アーティストが所属し、世界中の音楽ファンの関心をカナダに向けさせた、トロントに拠点を置くOVOサウンド。彼らのほかにも、ロイ・ウッズやマジッド・ジョーダンなど、実力に定評のある若手を数多く擁する同レーベルが、新たに送り出したのがトロント出身のシンガー、プラザだ。

6月10日のラジオ番組で契約を発表。その二日後にデビュー作『Shadow』を発表した彼は、2016年2月に契約したdvsn以来の新人。本名や年齢など、細かい情報は不明だが、声やアーティスト写真を見る限り、かなり若い男性シンガーのようだ。

このアルバムは、彼のメジャー・デビュー作となる5曲入りのEP。2016年に自主制作で発表したEP『One』以来となる新作で、前作同様、彼の中性的で美しいテナーが堪能できるR&B作品になっている。

1曲目に収められている”Karma”は、ピアノにもオルゴールにも似ている、切ない音色を使った伴奏が印象的なミディアム・バラード。繊細なテナー・ヴォイスが楽曲の物悲しい雰囲気を強調している。甘酸っぱいヴォーカルはテヴィン・キャンベルにも似ているし、ファルセットはマックスウェルっぽくも聴こえる。また、シンセサイザーを使ってヒップホップの要素を盛り込んだトラックはレーベルの先輩、パーティネクストドアを彷彿させる。デビュー作の1曲目にふさわしい、初々しい歌唱が魅力的だ。

続く”Personal”は、ビートを強調したトラックと、中音域を多用した大人っぽいヴォーカルが素敵なミディアム・ナンバー。コンピューターを使って作った、ヒップホップのビートとシンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックはトレイ・ソングスなどの楽曲に、爽やかな中音域を多用したヴォーカルはソーモに少し似ている。

そして、3曲目の”Over”は”Personal”同様、ヒップホップ色の強いトラックが印象的なミディアム。シンセサイザーの音を重ねた上物は、シャーデーなどの作品を思い起こさせる神秘的なものだ。硬い声質でラップをするように歌う姿は、アンダーソン・パックに通じるものがある。

また、”Run This”はヒップホップ色の強いトラックだが、ファルセットを多用したロマンティックなヴォーカルが光るミディアム・バラード。柔らかい声で切々と歌う姿はBJザ・シカゴ・キッドやスモーキー・ロビンソンに通じるものがある。ポップで聴きやすいが、切ない雰囲気も醸し出している素敵な曲だ。

そして、アルバムの最後を飾る”Love You Again”は、重いビートと物悲しい雰囲気のメロディの組み合わせが印象的なミディアム。性別は違うが神秘的で繊細なヴォーカルはインターネットのシドにも似ている。メロディを丁寧に歌う姿が光る曲だ。

今回のEPを聴く限り、彼はドレイクやパーティネクストドアのような、歌とラップを使い分ける人ではなく、ロイ・ウッズのような歌だけで勝負していくアーティストのようだ。年齢などはわからないが、若さ溢れる爽やかな歌声と、色々な表情を見せる歌唱力は、スモーキー・ロビンソンやマイケル・ジャクソンにも通じる稀有なものを感じさせる。また、トラックは奇抜なものが少なくシンプルで、彼の歌唱力をアピールするのに一役買っている。ドレイクやパーティネクストドアを聴いた時の新鮮さと、トレイ・ソングスやエリック・ベネイのような本格的なヴォーカルを楽しめる本作は、歌とラップを使い分けるアーティストが増えた現代では、とても新しい音楽に聴こえる。

ラップと歌を使い分けるスタイルで、世界中のミュージシャンに新しい表現手法を提示したドレイクとは正反対のアプローチで、音楽の面白さを提案した佳作。次はどんな曲を聴かせてくれるのか、今から楽しみな気鋭の新人だ。

Track List
1. Karma
2. Personal
3. Over
4. Run This
5. Love You Again





a

OVO Sound/Warner Bros.
2017-06-12

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ