ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

RCA

SZA - Ctrl [2017 Top Dawg RCA]

2014年4月、ケンドリック・ラマーやスクールボーイQなどが所属する、トップ・ドッグ初の女性シンガーとして、デビュー作となるEP『Z』をリリースした、ミズーリ州セントルイス生まれ、ニュージャージー州メイプルウッド育ちのシンガー・ソングライター、SZA(シザ)ことソラーナ・イマーニ・ロウェ。

放送局のプロデューサーでムスリムの父と、大手通信会社勤務でクリスチャンの母の間に生まれた彼女は、一般のアメリカ人向けの教育と並行して、ムスリムとしての教育も受けてきた。そのため、9.11のテロ事件が起きた後には、身に着けていたヒジャブを巡って、いじめを受けたこともあるなど、苦労もしてきたようだ。

その後、進学した大学では海洋生物学を専攻。世界を股にかける科学者になることを夢見たが、資金の問題もあり一度断念。お金を稼ぐために音楽活動を始めたという。

そんな彼女は、2011年に、当時のボーイフレンドの会社が、ケンドリック・ラマーのライブのスポンサーをしていた縁で、レーベルのオーナーであるテレンス・ヘンダーソンの知己を得る。そして、彼のレーベルでレコーディングをする機会を得た彼女は、2012年には自身初のミックステープとなる『See.SZA.Run』を録音。ドレイクフランク・オーシャンにも匹敵する先鋭的な作風で、熱心な音楽ファンの間で注目を集めた。また、翌年には2枚目のミックステープ『S』を公開。こちらも高い評価を受けた。

今回のアルバムは、彼女にとって初のフル・アルバムで、メジャー・デビュー作でもある。ブライソン・ティラーカリードなどの作品を扱っているRCAからの配給で、ケンドリック・ラマーやスクールボーイQなどのレーベル・メイトのほか、ファレル・ウィリアムスやフランク・デュークスといった売れっ子プロデューサーが多数参加した、豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目に入っている”Supermodel”は、ファレルとニコ・シーガルがプロデュースした作品。ファレルがかかわった曲では珍しい、爪弾くように演奏されるギターをバックに訥々と歌う姿が印象的な、フォーク・ソングっぽい作品。しかし、フォーク・ソングの要素を盛り込みながら、太いベースの音や力強いヴォーカルで、きちんとソウル・ミュージックに落とし込む技は流石の一言。シザの歌唱力と、ファレル達のプロデュース能力の高さを再確認させられる曲だ。

続く”Love Galore”は、2015年に”Ok Alright”で共演しているトラヴィス・スコットをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。メンフィス出身のプロデューサー、サンクゴット4コディが制作を担当。90年代のR&Bを連想させる、柔らかい音色のシンセサイザーを使ったトラックと、シザのキュートな歌声が光るミディアムだ。ドレイクを彷彿させる、ラップのような歌い方も格好良い。脇を固めるトラヴィス・スコットのラップも存在感を発揮している。全体的に、インターネットのシドの作品とよく似た雰囲気の、90年代テイスト溢れる曲だ。

また、新作『Damn.』も好評なケンドリック・ラマーを招いた”Doves In the Wind”は、ラスヴェガス出身のキャメロン・オスティーンがプロデュース。古いレコードからサンプリングしたような、太く温かい音色のビートをバックに、可愛らしい歌声でラップをするように言葉を繋ぐミディアム・ナンバー。シザのヴォーカルにあわせて、高音を多用してゆっくりとラップをするケンドリック・ラマーの器用な一面も面白い。”Love Galore”同様、90年代の音楽の影響が垣間見えるが、ヒップホップ寄りのビートと、若き日のモニカやブランディを連想させるキュートな歌唱が印象的な曲だ。

そして、本作に先駆けて公開された”Drew Barrymore”は、彼女が客演したリアーナの”Consideration”を一緒に制作している、カーター・ラングやタイラン・ドナルドソンと共作したもの。スロー・テンポのトラックに乗せて、エネルギーを発散するかのように、自由かつ大胆に歌う彼女の姿が印象的な曲。ゆったりとしたテンポのトラックや、荒々しいメロディ、奔放なヴォーカルは”Consideration”とよく似ているが、こちらのほうがビートの音圧が低い分、リスナーの耳を歌に引き付けやすいと思う。

本作の面白いところは、90年代以降の色々なR&B作品のエッセンスを取り入れつつ、過去の楽曲とは違う独自色を打ち出しているところだ。その象徴ともいえるのが”Drew Barrymore”のような曲で、メロディやトラックにリアーナの”Consideration”の要素を盛り込みつつ、ヴォーカルに気を惹かせる編曲で、きちんと差別化を図っている。柔軟な発想で色々なスタイルを取り込みつつ、細部まで気を配ったアレンジが彼女の魅力だと思う。

ビリー・ホリデーからウータン・クランまで、色々な音楽に親しんできた豊かな感性が生み出す新鮮な音楽と、それを形にする豊かな表現力、そして、細部にまで気を配った演出が一体化した、懐かしいようで新鮮な作品。今時のR&Bが好きな人はもちろん、それ以前の時代のヴォーカル作品が好きな人にもお勧めできる、魅力的な作品だ。

Producer
Anthony "Top Dawg" Tiffith, Best Kept Secret, Frank Dukes, Pharrell Williams, Terrace Martin etc

Track List
1. Supermodel
2. Love Galore feat. Travis Scott
3. Doves In the Wind feat. Kendrick Lamar
4. Drew Barrymore
5. Prom
6. The Weekend
7. Go Gina
8. Garden (Say It Like Dat)
9. Broken Clocks
10. Anything
11. Wavy (Interlude) feat. James Fauntleroy II
12. Normal Girl
13. Pretty Little Birds feat. Isaiah Rashad
14. 20 Something





Ctrl
Sza
RCA
2017-06-09

Bryson Tiller - True to Self [2017 RCA]

2011年、18歳の時に発表したミックステープ『Killer Instinct Vol.1』をきっかけに注目を集め、R&Bとトラップを融合した独特の作風が、熱心な音楽ファンの間だけでなく、一般の音楽好きからも高い評価を受けた、ケンタッキー州ルイスヴィル出身のシンガー・ソングライターでラッパーの、ブライソン・ティラーことブライソン・ジャン・ティラー。

そんな彼は、『Killer Instinct Vol.1』を公開した後も、ストリーミング・サイトなどを通して楽曲を発表。そこで公開した楽曲がティンバランドやドレイクの目に留まり、RCAOVOからメジャー・デビューのオファーを受け、RCAと契約する。

2015年には、メジャー・デビュー作となるフル・アルバム『Trapsoul』をリリース。その名の通り、トラップとR&Bを融合した彼の音楽は、ヒップホップが好きな人、R&Bが好きな人の両方から愛聴され、全米総合チャートの8位、R&B、ヒップホップ・チャートの2位を獲得。プラチナ・ディスクにも認定された。また、同作からカットされた3枚のシングル”Don’t”、”Exchange”、”Sorry Not Sorry”もプラチナ・ディスクを獲得、前二者はダブル・プラチナにも認定される大ヒットとなった。

本作は、前作から2年ぶりとなる、2枚目のオリジナル・アルバム。前作がR&Bシンガーのデビュー作としては異例のヒットになり、2017年には、アメリカの雑誌フォーブスの特集で、「30歳以下の重要人物30人」の一人に選ばれる(ほかには、ガラントウィークエンドジャスティン・スカイなどが選ばれている)など、多くの人が期待する中で発売された新作だ。

プロデューサーには、前作で”Sorry Not Sorry”など、3曲を担当したティンバランドの名前こそないものの、リアーナの”Work”などを手掛けたボーイ・ワン・ダやアヨが前作に引き続き参加、それ以外にも、フランク・デュークスやテディ・ウォルトンなど、豪華な面々が並んでいる。

アルバムの実質的な1曲目である”No Longer Friends”は、スウィフDとグレイブズがプロデュースした曲。電子音を使った重いドラムと、チキチキという音色が印象的なトラップ・ビートに乗って、じっくりと歌を聴かせるスロー・ナンバー。歌に重きを置きながら、随所でラップに切り替えることでリスナーを飽きさせない配慮が心憎い。トゥイートの”My Place”をサンプリングしたトラックも、いい味を出している。

これに対し、NESが手掛けた”We Both Know”は、バス・ドラムの音を軸にしたシンプルなトラックをバックに、語りかけるように歌う姿が印象的なバラード。チェンジング・フェイシスの”Stroke It Up”を引用したトラックも格好良い。歌とラップを使い分ける技術が彼の魅力だが、この曲のように、メロディのついたラップもこなせるから凄い。

また、ボーイ・ワン・ダがペンを執った”Run Me Dry”は、本作では珍しいアップ・ナンバー。ドレイクの”Passionfruit”にも似ている、明るい音色を使ったレゲトン風のビートに乗って、軽妙な歌を聴かせている。ドレイクの”Passionfruit”はメロディをしっかりと歌ったR&B作品だったが、こちらは喋るように歌うラップ寄りの曲。南国風の明るいビートを前にして、ラッパーのドレイクと、R&Bシンガーのブライソンが対称的な解釈を加えた点は興味深い。

そして、本作からの先行シングルでもある”Somethin Tells Me”は、ドレイクの”The Motto”やリュダクリスの”How Low”などを手掛けてきた、カナダ出身のプロデューサー、T-マイナスが制作した曲。電子音を組み合わせたトラックは、トラップのスタイルそのものだが、テンポを徹底的に落としたスロー・バラード。トレイ・ソングスやマーカス・ヒューストンの作品を思い起こさせる、じっくりと「歌」を聴かせる曲だが、華やかな電子音を盛り込んだビートのおかげで、キャッチーで聴きやすい雰囲気にまとまっている。ある意味、彼の作風を象徴する曲。

彼の音楽は、R&Bとトラップを融合させた斬新さに目が向けられやすいが、メロディや歌にじっくりと耳を傾けてみると、その緻密さに驚かされる。曲のタイプに応じて声色を使い分け、ラップと歌を融合させた歌唱や、声色を変えて疑似デュエットのように仕立てたものなど、多彩な演出を用意している。それだけでなく、歌声やメロディを聴かせるタイプのバラードでは、丁寧でダイナミックなヴォーカルも聴かせてくれる。この本格的なヴォーカルと色々なスタイルを取り込む器用さ、トラップの要素を取り入れたキャッチーなビートを組み合わせた作風が、彼の音楽をキャッチーだけど奥深いものにしていると思う。

ヒップホップの技術を用いて、とっつきにくいと感じる人もいる本格的なR&Bを、聴きやすいものに仕立て直した面白い作品。R.ケリーやドレイクのように、ヒップホップとR&Bの融合しつつ、彼らとは違うアプローチを見せた彼の音楽は、多くの人にR&Bの魅力を気づかせるきっかけになりそうだ。

Producer
Boi-1da, Frank Dukes, Illmind, Hollywood Hot Sauce, Keyz, T-Minus, Wondagurl etc

Track List
1. Rain on Me (Intro)
2. No Longer Friends
3. Don't Get Too High
4. Blowing Smoke
5. We Both Know
6. You Got It
7. In Check
8. Self-Made
9. Run Me Dry
10. High Stakes
11. Rain Interlude
12. Teach Me a Lesson
13. Stay Blessed
14. Money Problems / Benz Truck
15. Set It Off
16. Nevermind This Interlude
17. Before You Judge
18. Somethin Tells Me
19. Always (Outro)





True to Self
RCA
2017-06-23

Pitbull - Climate Change [2017 Polo Music, RCA]

2004年にリリースした4枚目のアルバム『M.I.A.M.I.』の大ヒット以降、レゲトンやクランクに留まらず、様々なダンス・ミュージックを一手に扱うヒット・メイカーとして活躍している、フロリダ州マイアミのラッパーでトラックメイカーのピットブルことアルマンド・クリスティアン・ウリア・ルイス・ペレス。彼にとって、2015年の『Dale』以来となる通算10枚目のフル・アルバム。

彼の作品といえば、ヒップホップというよりも、ダンス・ポップやEDMにカテゴライズされそうな、明るくキャッチーな四つ打ちの曲が多いのは事実。だが、彼自身はリル・ジョンやベイビー・バッシュ、チャーリー・ウィルソンなどの楽曲に客演してきた経験豊かなヒップホップ・ミュージシャン。今回のアルバムでも、ロビン・シックやR.ケリー、タイ・ダラ・サインといったR&Bやヒップホップのシーンをリードする人気アーティストを集め、ヒップホップやR&Bのマナーに乗っ取りつつ、彼らの作品では耳にすることのない、意外な一面を引き出した楽曲に取り組んでいる。

アルバムのオープニングを飾るのは、カナダのカルガリー出身のシンガー・ソングライター、ケイザをフィーチャーした”We Are Strong”。レゲトンのビートを彷彿させる明るく鮮やかなシンセサイザーの音色を駆使したトラックと、ガラスのように冷たく透き通ったケイザの歌声が心地よいアップ・ナンバーだ。

それに続く”Bad Man”は、ロビン・シックの他にエアロスミスのジョー・ペリーとブリンク182のトラビス・ベイカーが参加したアグレッシブなロック・ナンバー。地鳴りのように迫り来るトラヴィスのドラムやジョーの激しいギター・プレイも格好良いが、その上でエルビス・プレスリーのようにクールなヴォーカルを響かせるロビンと、マイクに向かってラップを畳みかけるピットブルの存在も見逃せない。

一方、ピットブルと同じ、フロリダ州出身のミュージシャン、フロー・ライダーとランチマネー・ルイスを起用した”Greenlight”は、甘酸っぱいヴォーカルと流麗なサビのメロディが印象的な、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”を思い起こさせるアップ・ナンバー。派手なトラックを活かした高揚感たっぷりの楽曲が多い本作では異色の、切ない雰囲気を漂わせる楽曲だ。

しかし、タイ・ダラ・サインをフィーチャーした”Better Me On”では一転、これまでのピットブルの作風を踏襲した、華やかなトラックとキャッチーなメロディを組み合わせたパーティー・チューンを披露している。この曲のように、シンプルで明るくキャッチーなダンス・ナンバーは他にも見られ、ジェニファー・ロペスとのコラボレーション曲”Sexy Body”や、ジェイソン・デルーロが参加した”Educate Ya”など、本作でも複数の曲で取り入れられている。

そんな中で、異彩を放つのが50歳のR.ケリーと20歳のオースティン・マホーン(いずれも本稿執筆時点)を起用した”Dedicated”だ。他の曲同様、シンプルで高揚感たっぷりのトラックを前にしながら、普段と変わらない歌唱法で、楽曲を自分の色に染め上げるケリーの姿には、耳で覚えた”Satisfaction”を自分の曲に改編したオーティス・レディングのような存在感と技術力を感じさせる。

ピットブルのアルバムは、良くも悪くも彼自身の明確な個性が発揮された、よく言えば安定した、悪く言えば単調な作品だと思う。だが、彼の場合、ベテランのR&Bシンガーからロック・ミュージシャンまで、色々なアーティストを巻き込みながら、ゲストの個性を活かしつつ、彼らの作品では見られない意外な一面を引き出すコーディネータとしてのスキルによって、楽曲にバラエティをつけていると思う。

外部のミュージシャンを起用して、収録曲に個性と起伏をつけたアルバムはこれまでにもたくさんあったが、自身の作風を固定しつつ、ゲストのキャラクターで楽曲に個性をつける手法で高い完成度のアルバムを作った例は数少ない。アーティストとプロデューサー、異なる2つの役割を高いレベルで両立している点は彼の強みだと思う。クリエイターとゲスト・ミュージシャンの個性が相乗効果を生んだ好事例だ。

Producer Armando C. Perez, Edwin Paredes, Michael Calderon etc

Track List
1. We Are Strong feat. Kiesza
2. Bad Man feat. Robin Thicke, Joe Perry & Travis Barker
3. Greenlight feat. Flo Rida & LunchMoney Lewis
4. Messin' Around with Enrique Iglesias
5. Better On Me feat. Ty Dolla $ign
6. Sexy Body (Pitbull & Jennifer Lopez)
7. Freedom
8. Options feat. Stephen Marley
9. Educate Ya feat. Jason Derulo
10. Only Ones To Know feat. Leona Lewis
11. Dedicated feat. R. Kelly & Austin Mahone
12. Can't Have feat. Steven A. Clark & Ape Drums





Climate Change
Pitbull
Mr. 305 Records
2017-03-17

 
記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ