ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

RCA

Pitbull - Climate Change [2017 Polo Music, RCA]

2004年にリリースした4枚目のアルバム『M.I.A.M.I.』の大ヒット以降、レゲトンやクランクに留まらず、様々なダンス・ミュージックを一手に扱うヒット・メイカーとして活躍している、フロリダ州マイアミのラッパーでトラックメイカーのピットブルことアルマンド・クリスティアン・ウリア・ルイス・ペレス。彼にとって、2015年の『Dale』以来となる通算10枚目のフル・アルバム。

彼の作品といえば、ヒップホップというよりも、ダンス・ポップやEDMにカテゴライズされそうな、明るくキャッチーな四つ打ちの曲が多いのは事実。だが、彼自身はリル・ジョンやベイビー・バッシュ、チャーリー・ウィルソンなどの楽曲に客演してきた経験豊かなヒップホップ・ミュージシャン。今回のアルバムでも、ロビン・シックやR.ケリー、タイ・ダラ・サインといったR&Bやヒップホップのシーンをリードする人気アーティストを集め、ヒップホップやR&Bのマナーに乗っ取りつつ、彼らの作品では耳にすることのない、意外な一面を引き出した楽曲に取り組んでいる。

アルバムのオープニングを飾るのは、カナダのカルガリー出身のシンガー・ソングライター、ケイザをフィーチャーした”We Are Strong”。レゲトンのビートを彷彿させる明るく鮮やかなシンセサイザーの音色を駆使したトラックと、ガラスのように冷たく透き通ったケイザの歌声が心地よいアップ・ナンバーだ。

それに続く”Bad Man”は、ロビン・シックの他にエアロスミスのジョー・ペリーとブリンク182のトラビス・ベイカーが参加したアグレッシブなロック・ナンバー。地鳴りのように迫り来るトラヴィスのドラムやジョーの激しいギター・プレイも格好良いが、その上でエルビス・プレスリーのようにクールなヴォーカルを響かせるロビンと、マイクに向かってラップを畳みかけるピットブルの存在も見逃せない。

一方、ピットブルと同じ、フロリダ州出身のミュージシャン、フロー・ライダーとランチマネー・ルイスを起用した”Greenlight”は、甘酸っぱいヴォーカルと流麗なサビのメロディが印象的な、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”を思い起こさせるアップ・ナンバー。派手なトラックを活かした高揚感たっぷりの楽曲が多い本作では異色の、切ない雰囲気を漂わせる楽曲だ。

しかし、タイ・ダラ・サインをフィーチャーした”Better Me On”では一転、これまでのピットブルの作風を踏襲した、華やかなトラックとキャッチーなメロディを組み合わせたパーティー・チューンを披露している。この曲のように、シンプルで明るくキャッチーなダンス・ナンバーは他にも見られ、ジェニファー・ロペスとのコラボレーション曲”Sexy Body”や、ジェイソン・デルーロが参加した”Educate Ya”など、本作でも複数の曲で取り入れられている。

そんな中で、異彩を放つのが50歳のR.ケリーと20歳のオースティン・マホーン(いずれも本稿執筆時点)を起用した”Dedicated”だ。他の曲同様、シンプルで高揚感たっぷりのトラックを前にしながら、普段と変わらない歌唱法で、楽曲を自分の色に染め上げるケリーの姿には、耳で覚えた”Satisfaction”を自分の曲に改編したオーティス・レディングのような存在感と技術力を感じさせる。

ピットブルのアルバムは、良くも悪くも彼自身の明確な個性が発揮された、よく言えば安定した、悪く言えば単調な作品だと思う。だが、彼の場合、ベテランのR&Bシンガーからロック・ミュージシャンまで、色々なアーティストを巻き込みながら、ゲストの個性を活かしつつ、彼らの作品では見られない意外な一面を引き出すコーディネータとしてのスキルによって、楽曲にバラエティをつけていると思う。

外部のミュージシャンを起用して、収録曲に個性と起伏をつけたアルバムはこれまでにもたくさんあったが、自身の作風を固定しつつ、ゲストのキャラクターで楽曲に個性をつける手法で高い完成度のアルバムを作った例は数少ない。アーティストとプロデューサー、異なる2つの役割を高いレベルで両立している点は彼の強みだと思う。クリエイターとゲスト・ミュージシャンの個性が相乗効果を生んだ好事例だ。

Producer Armando C. Perez, Edwin Paredes, Michael Calderon etc

Track List
1. We Are Strong feat. Kiesza
2. Bad Man feat. Robin Thicke, Joe Perry & Travis Barker
3. Greenlight feat. Flo Rida & LunchMoney Lewis
4. Messin' Around with Enrique Iglesias
5. Better On Me feat. Ty Dolla $ign
6. Sexy Body (Pitbull & Jennifer Lopez)
7. Freedom
8. Options feat. Stephen Marley
9. Educate Ya feat. Jason Derulo
10. Only Ones To Know feat. Leona Lewis
11. Dedicated feat. R. Kelly & Austin Mahone
12. Can't Have feat. Steven A. Clark & Ape Drums





Climate Change
Pitbull
Mr. 305 Records
2017-03-17

 

Khalid - American Teen [2017 RIGHT HAND MUSIC GROUP, RCA]

2016年に発表されたデビュー・シングル『Location』がR&Bチャート最高15位を含む、長期間に渡るヒットになったことで注目を集めた、ジョージア州フォート・スチュアート生まれ、テキサス州エル・パソ育ちのシンガー・ソングライター、カリードこと、カリード・ロビンソン。彼にとって、初のオリジナル・アルバムとなる『American Teen』が、RCA傘下のライト・ハンド・ミュージックからリリースされた。

軍の電源技術者だった母の元、全米各地を転々としていた彼は、ハイ・スクール生活の後半からエル・パソに定住。このころから、学業と並行して音楽活動を行うようになった彼は、2016年にデビュー曲”Location”を発表。この曲がリアリティ・ショーの司会者カイリー・ジェナーのスナップチャットで紹介されたことを切っ掛けに、局所的なヒットとなり、最終的に複数のネット・メディアで取り上げられるようになる。その後も、アリーナ・ベレズなどのシングルにフィーチャーされるなど、いくつかの作品に起用された彼は、2017年3月、満を持して初のフル・アルバムをリリースするに至った。

アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラック”American Teen”は、シェリルやアレクサンダー・オニールといった80年代のソウル・シンガーの楽曲を思い出させる、電子ドラムやシンセサイザーの軽い音色が新鮮なミディアム・ナンバー。90年代までのR&Bでは幾度となく見られた、一つ一つの言葉を丁寧に吐き出すヴォーカルが、ラップのように言葉を畳みかけるシンガーが主流になった2017年には却って斬新に映る。

また、アルバムに先駆けて発売された”Location”はブライソン・テイラー”Ten Nine Fourteen”やケリー・ローランドの”Love Me Til I Die”などに携わってきた、シックセンスなどが参加したミディアム・ナンバー。ネプチューンズの”Frontin’”などを連想させる限界まで音数を絞ったビートと、ドレイクやT-ペイン以降のR&Bのトレンドを踏襲した、ラップと歌の中間のような、緩いメロディのヴォーカルが心地よい楽曲だ。

続く、”Another Sad Love Song”は、柔らかい音色のシンセ・ドラムが、リル・ルイスの”French Kiss”やフランキー・ナックルズ”Whitsle Song”が流行していた90年代初頭のハウス・ミュージックを彷彿させる四つ打ちのダンス・ナンバー。DJDSが手掛けるハウス・ミュージックより少しテンポを落としたトラックに、中国の民謡っぽいメロディを組み合わせて、YMOの”東風”のような、異国情緒を感じさせる楽曲に落とし込んだ発想が面白い曲だ。

一方、シックセンスがプロデュースした”Saved”はチキチキ・ビートをベースに、温かい音色のギターと、クールなシンセサイザーの音色を使い分けた伴奏が不思議な雰囲気を醸し出すスロー・ナンバー。カリードの朴訥とした歌と、アッシャーやクリス・ブラウンが歌っても違和感のないモダンなトラックの組み合わせが新鮮だ。

それ以外にも、シンセサイザーの音色をホーン・セクションのように使った高揚感たっぷりのトラックと、どこかのんびりとした雰囲気さえ感じさせるカリードの歌声の対比が面白いアップ・ナンバー”Winter”や、パーティネクストドアの作品を思い出させる、電子音を組み合わせて作られたヒップホップのビートと、哀愁を帯びたメロディが印象的な”Therapy”、ゴリラズの新曲と勘違いしそうなコンピュータを駆使して作られた近未来的なサウンドの上で、武骨な歌声を響かせる”Shot Down”など。シンセサイザーを多用したモダンなトラックと、器用ではないが、太い声を使って丁寧に歌い上げた、牧歌的なヴォーカルが光る楽曲が並んでいる。

インタビューによると、彼はチャンス・ザ・ラッパーやフランク・オーシャン、ケンドリック・ラマーといった、同世代の若者が聴くような2010年代にブレイクした、先鋭的な作風のミュージシャンから強い影響を受けたらしい。確かに、彼の音楽から、ロックや電子音楽の要素を巧みに引用した、彼らのスタイルの影が全く見えないと言ったら嘘になる。だが、彼の音楽が他の人と大きく異なるのは、自身の武骨なヴォーカルを活かす形で、色々なミュージシャンのスタイルを取り込んでいるところだと思う。カリードの音楽は、新しいサウンドを取り入れつつも、自身の朴訥としたヴォーカルと混ぜ合わせることで、幅広い年代、地域の人に親しみやすい作風に落とし込んでいる点が、他の作品と大きく異なっている。

新鮮さと大衆性を両立したという意味では、ウィークエンドやドレイクの次を狙えるアルバムだと思う。保守的なテキサスの空気と若い感性がうまく融合した、面白い作品だ。

Producer

Alfredo Gonzalez, Bryan Medina, Daniel Picciotto, Dave Sava6e, DJDS, Hiko etc

Track List
1. American Teen
2. Young, Dumb & Broke
3. Location
4. Another Sad Love Song
5. Saved
6. Coaster
7. 8TEEN
8. Let’s Go
9. Hopeless
10. Cold Blooded
11. Winter
12. Therapy
13. Keep Me
14. Shot Down
15. Angels





American Teen
Khalid
RCA
2017-03-03

a
 

Charlie Wilson - In It To Win It [2017 RCA]

72年にギャップ・バンドのヴォーカル兼キーボーディストとして、アルバム『Magicians Holiday』でデビュー。14枚のスタジオ・アルバムと、"Outstanding"や"You Dropped a Bomb on Me"といった、今も多くの人に愛されていれるソウル・クラシックを残している、オクラホマ州タルサ出身のシンガー・ソングライター、チャーリー・ウィルソン。

92年に初のソロ・アルバム『You Turn My Life Around』発表した後は、スヌープドッグやR.ケリー、ジャスティン・ティンバーレイクといった、彼の音楽を聴いて育った若いミュージシャンと積極的にコラボレーションするしながら、カニエ・ウエストやタイラー・ザ・クリエイターといったラッパーの作品にも客演するなど、芸歴ウン十年のベテランとは思えない八面六臂の活躍を見せている。

今回のアルバムは、2015年の『Forever Charlie』以来2年ぶりとなる新作。近年の作品では、スヌープ・ドッグやT-ペインといった若者の間で人気があるヒップホップのミュージシャンを起用しつつ、ジャム&ルイスやベイビーフェイスのような、幅広い年代に支持される名プロデューサーも招くなど、80年代のソウル・ミュージックをベースにしつつ、新しいR&Bやヒップホップのトレンドもしっかりと押さえた、全年代向けの作風が魅力的だった。

本作は、収録された13曲のうち6曲に、個性的な作風で話題になったラッパーや、歌唱力に定評のあるR&Bシンガーが参加した豪華な作品。彼らのみずみずしい感性を取り入れつつ、自身の持ち味である、斬新なサウンドを器用に乗りこなす勘の良さと、豊かだが小回りの聴く歌声を生かした、2017年のチャーリー流ソウル・ミュージックを聴かせてくれる。

アルバムに先駆けて発表されたのは"I'm Blessed"と"Chills"の2曲。アトランタ出身のラッパー、T.Iが参加した前者は、使う音域を絞り込んで、喋るように歌うR.ケリーっぽいスタイルの楽曲。T.Iのラップも普段より大人しめで、スタイリッシュなバック・トラックと合わさって、ロマンティックで洗練された楽曲に纏まっている。

一方、"Chills"の方は、ヴォーカルの強弱や高低の幅を広げて、彼の豊かな表現力を存分に発揮させた、ドラマティックなミディアム・バラード。どんなに熱唱しても、クールなイメージが崩れない歌声が面白い。彼のシンガーとしての実力を堪能できる楽曲。

それ以外の曲では、ピットブルが参加して、ギャップ・バンド時代の録音を彷彿させるディスコ音楽に挑戦した"Good Time"や、アフリカの楽器みたいな柔らかい音色のパーカッションとクールな音色のシンセサイザーを組み合わせたトラックをバックに、スヌープ・ドッグと一緒に飄々としたパフォーマンスを聴かせる"Gold Rush"。ピッツバーグ出身のラッパー、ウィズ・カリファをフィーチャーして、"Chills"のように色っぽいメロディを、よりスローにした"Us Trust"など、ヒップホップのエッセンスをアクセントに使って、彼のセクシーでスタイリッシュな歌唱を際立たせた楽曲が目立っている。

だが、本当に面白いのは、2つのデュエット曲。まず、ロビン・シックを競演した"Smile for Me"は、ギターの音色を取り入れた伴奏と、耳元を爽やかに流れるメロディが印象的なミディアム・バラード。しなやかで強靭なチャーリーと、線が細いように見えて実はパワフルなロビンの歌声が、いい具合に互いの持ち味を引き出している。そして、本作の隠れた目玉、レイラ・ハザウェイと組んだ"Made for Love"は、彼のキャリアを代表すると言っても過言ではないクオリティの名バラード。80年代のソウル・ミュージックを思い起こさせる、軽い音のビートとキラキラとした音色のキーボードを使った伴奏が高級感を漂わせている。80年代のソウル・ミュージックには、スタイリッシュなサウンドに合わせて、あっさりと歌うヴォーカルも少なくないが、この曲では2人の豊かな表現力を、余すことなく存分に楽しませてくれる。

ベテラン・ミュージシャンのアルバムというと、絶頂期の作風を意識し過ぎて守りに入ってしまうケースや、時代の変化に適応しようとする余り、時間をかけて磨き上げた自身の持ち味を見失ってしまうケースも少なくない。だが、この作品では、軽妙なラップや電子楽器を駆使したトラックのような、自分のスタイルと相性の良い手法を中心に、それが得意なミュージシャンと組みながら録音することで、シンセサイザーを多用した洗練されたサウンドと、しなやかな歌声をフル活用した流麗なヴォーカルという持ち味を活かしつつ、現代的な楽曲に落とし込んでいる。

経験と実績が豊富なベテランと、新しいトレンドの付き合い方のお手本ともいえる作品。次はどんな音楽を聴かせてくれるのか、進化し続けるベテランの今後が楽しみで仕方ない。

Track List
1. I'm Blessed feat. T.I
2. Chills
3. Good Time feat. Pitbull
4. Us Trust feat. Wiz Khalifa
5. Precious Love
6. Smile for Me feat. Robin Thicke
7. In It To Win It
8. Dance Tonight
9. Made for Love feat. Lalah Hathaway
10. Better
11. Gold Rush feat. Snoop Dogg
12. New Addiction
13. Amazing God





In It to Win It
Charlie Wilson
RCA
2017-02-17

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