melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

RocNation

Jay Park - Ask Bout Me [2018 AOMG, Leon, Roc Nation]

”Gangnam Style”が、非英語曲の最多ダウンロード販売を記録したPSYや、アジア人では初めてアメリカとイギリスのアルバム・チャートを制覇したBTSなど、海外での成功が目立つ韓国発のアーティスト達。欧米の流行を取り入れ、自国の文化と融合した独自の音楽が発展する過程では、ビッグバンや2Ne1の作品を手掛けてきたテディ・パクや、エピック・ハイのタブロのような、欧米出身の韓国人や韓国系ミュージシャンが貢献してきた。

ジェイ・パクことパク・ジェボムは、そんな韓国系アメリカ人のアーティストの一人。ワシントン州のエドモンズ生まれ、シアトル育ちの彼は、ハイスクール時代からブレイク・ダンスに夢中だったという。そんな彼は、母親が好きな歌手が在籍していたことがきっかけで、JYPエンターテイメントのオーディションに応募し合格。韓国に移り、大学に通いながらデビューを目指していた。

そんな彼は、2008年にボーイズ・グループ2PMのリーダーとしてデビューするものの、アメリカとは異なる文化を持つ韓国での活動に苦しみ直ぐに脱退。アメリカに帰国する。

その後は、ハイスクール時代からの仲間と組んだクルー、AOMGで活動しながらシンガー・ソングライターやプロデューサーとして活動。高いスター性と本格的なヒップホップを同居させたスタイルで、テレビからクラブ・イベントまで、幅広い舞台で活躍。2017年には、アジア系のミュージシャンとしては初めて、ジェイZが率いるロック・ネイションと契約した。

本作は、彼が率いるAOMGとロック・ネイションの共同配給による初のEP。プロデュースはチャ・チャ・マローンやグルーヴィー・ルームといったAOMGの面々が担当する一方、ゲスト・ミュージシャンにはレーベル・メイトのヴィック・メンサを中心に、2チェインズやリッチ・ザ・キッドといった、アメリカ各地の実力派ラッパーが集結した豪華なものになっている。

アルバムの1曲目”FSU”は、元2Ne1のミンジーの”Flashlight”を手掛け、2017年にはジェイ・パクのレーベル、ハイヤー・ミュージックからアルバム『Everywhere』を発表している韓国のプロダクション・チーム、グルーヴィールームが制作を担当。リビア出身のラッパー、ガシと、アトランタ出身のリッチ・ザ・キッドをフィーチャーしている作品。トラップのビートに乗って、歌ともラップとも言い難い独特の抑揚のメロディを繰り出している。ヴォーカル・グループ出身らしいパクの甘い歌声と、ゲストの太い声のラップの組み合わせが面白い。

これに対し、AOMGの一員であるチャ・チャ・マローンが制作に加わった”Sexy 4 Eva”は、トラップの要素を盛り込んだトラックに、ロマンティックなメロディを組み合わせたスロー・バラード。シンセサイザーを使ったヒップホップのトラックと甘酸っぱい歌声の組み合わせは、アッシャークリス・ブラウンに似ている。だが、彼らの曲に比べると、よりしなやかなメロディが印象的。ヒップホップの要素と、じっくりと歌を聴かせる韓国のポップスの手法が上手く混ざった佳曲だ。

また、チャ・チャ・マローンがプロデュースを担当し、韓国の人気ラッパー、シックKがラップを吹き込んだ、2017年のシングル”Yacht”のリメイクでは、ロック・ネイション所属のヴィック・メンサがゲストで参加。甘い音色のシンセサイザーと、パクの色っぽい歌声の組み合わせが心地よい、ロマンティックな雰囲気のミディアム・ナンバーだ。絶妙なタイミングで入り込み、曲を引き締めるヴィック・メンサのラップをがいい味を出している。

そして、本作の最後を締めるのが2チェインズを起用した”Soju”(韓国語で「焼酎」の意味)。チャ・チャ・マローンとウージーが作るチキチキ・ビートの上で、セクシーな歌声を響かせるスタイルは、ジニュワインやジョデシーが一時代を築いた90年代のR&Bを思い起こさせる。全体的にどこか懐かしい雰囲気の曲だ。所々で使われるオートチューンが、トークボックスっぽく聴こえるのも面白い。ジェイZにそっくりなフロウを聴かせる、2チェインズのラップも思わずニヤリとしてしまう演出。余談だが、こちらの曲にはサイモン・ドミニクやチャンモといった、韓国ヒップホップ界の新旧の実力者が参加したリミックスが存在する。両者のラップを聴き比べてほしい。

本格的なアメリカ・デビュー作となる今回のアルバムは、ゲストをアメリカのラッパーで固めて、自身のパートも英語で歌う一方、AOMGの面々を中心に韓国のプロデューサーを起用するなど、アメリカと韓国、両方の国の音楽を取り入れた少々意外なものだ。ロック・ネイションという名門レーベルと契約しながら、昔からの付き合いのあるクリエイターを多数起用する。ヒップホップの世界ではしばし見られる手法を、アジア系の彼が行う姿からは、自分達のキャリアと音楽に対する絶対的な自信を感じさせる。

インターネットの普及によって、各国の音楽を気軽に楽しめる時代を経て、「どこの国の音楽か」より「誰の音楽か」「どんな音楽か」が重要になったことを再認識させられる良作。アッシャーやクリス・ブラウン、トレイ・ソングスなど、多くの名シンガーが鎬を削るR&Bの世界に、彼のようなアジア系シンガーがどんな影響を与えるか、今後の展開が楽しみだ。

Producer
Cha Cha Malone, GroovyRoom, Slom & Woogie

Track List
1. FSU feat. GASHI & Rich The Kid
2. Chosen1
3. Sexy 4 Eva
4. Million
5. Yacht feat. Vic Mensa
6. Ask Bout Me
7. Soju feat. 2 Chainz






The Carters - Everything Is Love [2018 Roc Nation, Parkwood Entertainment, Sony Music]

総合エンターテイメント企業のロック・ネイションや、音楽ストリーミング・サービスのTIDALなどを経営しながら、コンスタントに新作を発表し、ヒップホップ界をけん引する、ジェイZことショーン・カーター。2003年に初のソロ・アルバム『Dangerously in Love』を発表して以来、稀代の名シンガー、エッタ・ジェイムスを演じきった映画「キャデラック・レコード」や、ストリーミング限定(後にダウンロード版やCD盤も発売)した『Lemonade』など、新しいことに挑戦し、成功してきた、ビヨンセことビヨンセ・ジゼル・ノウルズ-カーター。

このアルバムは、21世紀の音楽業界で最も成功している夫婦による、初のコラボレーション作品。

これまでにも、ビヨンセの”Crazy In Love”や”Déjà Vu”などで共演してきた二人だが、アルバム1枚を一緒に録音するのは今回が初。事前のプロモーションをほとんど行わず、『Lemonade』に続いてTIDALで先行配信されるなど、斬新な試みに挑んできた彼女達らしい作品になっている。

本作に先駆けて公開された”Apeshit”は、ファレル・ウィリアムスがプロデュースした楽曲。使われている楽器の音色こそ、ファレルが多用するシンセサイザーのものだが、彼が提供したビートはミーゴスグッチ・メインのアルバムに入っていそうなトラップ。その上では、ラップのような抑揚を抑えたメロディを歌うビヨンセと、普段通りのダイナミックなラップを繰り出すジェイZという、今までの作品ではなかったタイプのパフォーマンスを披露している。トラップのビートを取り入れているからか、ファレルのプロデュース作品にも関わらず、彼のかわりにミーゴスのクェーヴォとオフセットがコーラスで参加している点も新鮮だ。

これに対し、TLCメアリーJ.ブライジの作品にも携わっているD’マイルと、アーティストとソングライターの両方で活躍しているタイ・ダラ・サインを起用した”Boss”は、ヒップホップの要素を取り入れたスロー・バラード。タイ・ダラ・サインの端正なコーラスは、ヨーロッパの教会音楽にも少し似ている。ビヨンセのヴォーカル・パートは、滑らかなメロディとラップを組み合わせたもの。近年流行のスタイルを、自分の音楽に咀嚼したパフォーマンスに注目。

一方、ジェイZのラップに重きを置いた”713”はクール&ドレがプロデュースを担当。威圧的にも感じるキーボードの伴奏が印象的なビートに乗せて、パンチの効いたパフォーマンスを繰り出すジェイZの姿が聴きどころ。キーボードの伴奏を強調したトラックに引っ掛けて、Dr.ドレの”Still Dre”やコモンの”The Light”などのフレーズを引用した点も面白い。

それ以外では、内田裕也やジョー山中が在籍していた日本のサイケデリック・バンド、フラワー・トラベリング・バンドの”"Broken Strings”をサンプリングした”Black Effect”も見逃せない。昔のレコードから、ヴォーカルや楽器の演奏など、様々なフレーズを抜き出して組み合わせる手法は、ヒップホップではお馴染みのものだが、サンプルの組み合わせ方を変えることで新しい音楽に聴かせている。

本作の面白いところは、既に多くのアーティストが取り組んできた手法を用いながら、他の作品とは一線を画した独自の音楽に仕立て上げているところだろう。歌とラップを組み合わせる手法やサンプリング、トラップといった、流行のスタイルを盛り込みつつ、少し変化をつけることで、独自性を打ち出している。この引用とアレンジのセンスの良さが、二人の音楽の醍醐味だ。

音楽業界のトップをひた走る二人の、鋭い感性と作品に落とし込む技術が光る良作。「ヒップホップはみんな同じ」と思っている人にこそ聴いてほしい、流行のサウンドを用いながら、他のアーティストとは一味違う新鮮に聴こえるセンスと技術が楽しめると思う。

Producer
Beyoncé, Jay-Z, Cool & Dre, Pharrell Williams, D'Mile etc

Track List
1. Summer
2. Apeshit
3. Boss
4. Nice
5. 713
6. Friends
7. Heard About Us
8. Black Effect
9. Lovehappyt
t


EVERYTHING IS LOVE [Explicit]
Parkwood Entertainment/Roc Nation
2018-06-18


Justine Skye – ULTRAVIOLET [2018 Republic, Roc Nation]

2008年にジェイZがライブ・ネイションとの合弁企業として設立すると、リアーナやザ・ドリーム、T.I.などの人気ミュージシャンの作品を配給し、近年は女性ラッパーのラプソディや、元2PMのジェイ・パクと契約するなど、猛烈な勢いで勢力を拡大しているロック・ネイション

ジャスティン・スカイは、2016年に21歳の若さで同社と契約したブルックリン出身のシンガー・ソングライター。アフリカ系とインド系のジャマイカ人をルーツに持つ彼女は、動画投稿サイトにアップロードしたパフォーマンスが注目を集め、2013年に18歳の若さでアトランティックと契約。配信限定ながら2枚のEPと1枚のミックス・テープを発表し、R&Bチャートに名を刻む一方、ケラーニやロジックとともに、フォーブス誌の「30Under30」で取り上げられるなど、気鋭の若手アーティストとして、高く評価されてきた。

このアルバムは、2016年末にリリースした移籍後初の録音作品『8 Ounces』以来、約1年ぶりとなる新作。彼女にとって初のフル・アルバムで初のフィジカル・リリースとなる本作は、前作同様、ユニヴァーサル傘下のリパブリックが配給を担当。プロデューサーにはフランク・デュークスやヒット・ボーイ、ケイジーベイビーなどのヒット・メイカーを中心に、バラエティ豊かな面々が参加。これまでの作品同様、彼女自身も制作にかかわった力作になっている。

本作の収録曲で目を引くのは、アルバムに先駆けて発表された”U Don't Know ”だ。カイリー・ミノーグやエミリー・サンデーなどを手掛けているイギリスの音楽プロデューサー、クリス・ロコが制作を担当、ナイジェリア出身のヒップホップ・アーティスト、ウィズキッドがゲストとして参加した国際色豊かなダンス・ナンバーだ。クリスが用意したトラックは、ウィズキッドの作品を思い起こさせるレゲトンの要素を含むアフロ・ビート。軽快なリズムが魅力のダンス・ナンバーを艶めかしいメロディと伴奏で、妖艶なダンス・ナンバーに仕立て上げている。

これに続く”Back For More”は、ニッキー・ミナージュやリル・ウェインなどの楽曲に携わっている、シカゴのプロデューサー、ヤング・バーグを制作に起用し、同じくシカゴ出身のシンガー、ジェレミーをフィーチャーしたアップ・ナンバー。エイコンやケヴィン・リトルを彷彿させる、ソカやダンスホール・レゲエのエッセンスを盛り込んだビートが、ラテン音楽が流行っている現代のアメリカっぽい。地声を使ったパワフルな歌唱から、滑らかな高声を使った美しいメロディまで、切れ目なく繋ぐジャスティンの歌唱力と、R.ケリーを思い起こさせるジェレミーのセクシーなヴォーカルのコンビネーションが聴きどころ。しっとりとしたメロディと、軽やかなトラックが一体化した面白い曲だ。

また、エミリー・サンデーやリトル・ミックス、ワン・ダイレクションなどに楽曲を提供しているプロダクション・チーム、TMSのメンバーがペンを執った”Don't Think About It”は、エムトゥーメイの”Juicy Fruit”を彷彿させるゆったりとしたトラックが心地よいミディアム・ナンバー。22歳とは思えない、大人の色気を感じさせるヴォーカルと、歌とラップを使い分けて曲にメリハリをつけるセンスが光っている。年齢以上に老練したヴォーカルを聴かせる彼女のスキルと、ポップス分野で多くの名曲を残してきた制作者のスキルが生み出した本作の目玉といっても過言ではない楽曲だ。

そして、本作の収録曲でも特に異彩を放っているのが、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、ビジネス・ボーイとカナダのミシサガ出身のグラミー賞アーティスト、パーティーネクストドアとジャスティンの3人で制作したのが”You Got Me”だ。重いビートの上で、歌とラップを織り交ぜたヴォーカルを聴かせるスタイルは、パーティーネクストドアの作品を思い起こさせるもの。しかし、この曲では、サビの部分で豊かな歌声を響かせるなど、ヒップホップ寄りのパーティーネクストドアの楽曲というより、クリセット・ミッシェルリーラ・ジェイムスに近い、本格的な女性ヴォーカルのR&B作品になっている。流行の音を積極的に取り込む鋭い感性と、力強いヴォーカルが合わさった。魅力的な佳曲だ。

今回のアルバムでは、彼女の持ち味である先鋭的な音を取り込むセンスを活かしつつ、より多くの人に受け入れられるような、ポップな楽曲が目立っている。ワン・ダイレクションなどを手掛けているイギリスのプロデューサーを起用し、アフロ・ビートやレゲトンのエッセンスを組み込んだ楽曲で、意外性を感じさせつつ、要所要所で20代前半とは思えない、セクシーな歌を披露する。この若い感性を生かした斬新な作風と、円熟した歌唱技術の同居が、この作品のウリだと思う。

初めてのフル・アルバムとは思えない高い完成度と、最初から最後まで新鮮さを感じさせる楽曲のラインナップが素晴らしい。2018年の初頭にリリースされた作品だが、今年一年を通して楽しめそうな密度の濃い作品だ。

Producer
Pete Kelleher, Ben Kohn, Tom Barnes, Frank Dukes, Hit-Boy, Bizness Boi,Yung Burg etc

Track List
1. Wasteland
2. Goodlove
3. U Don't Know feat. Wizkid
4. Back For More feat. Jeremih
5. Don't Think About It
6. You Got Me
7. Heaven
8. Push Ya
9. Lil' Boy
10. Best For Last






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