ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

RocNation

Vic Mensa - The Autobiography [2017 Roc Nation, Captol]

ガーナ出身の父と、ホワイト・アメリカンの母の間に生まれ育った、イリノイ州シカゴ出身ラッパー、ヴィック・メンサことヴィクター・クウェシ・メンサ。

ハイスクール時代に、後にチャンス・ザ・ラッパーとして活躍するチャンセラー・ベネットと知り合い、本格的に音楽に取り組むようになった彼は、2012年に初のミックス・テープ『Traphouse Rock』を発表。2013年には、ゴリラズなどの活動で知られるデーモン・アルバーンの公演でパフォーマンスを披露し、その高いスキルで話題となった。

その後も、ミックス・テープ『Innanetape』などをリリースし、音楽雑誌で気鋭の若手ラッパーとして取り上げられるなど、注目を集めた彼は、2016年にジェイZが率いるロック・ネイションと契約。同年にメジャー・デビュー作となるEP『There's Alot Going On』を発表した。

本作は、同月にリリースされたEP『The Manuscript』から、僅か3週間という短い間隔でリリースされた、初のフル・アルバム。同郷のノーI.D.を中心に、多くの人気プロデューサーを迎え、流行のビートを積極的に取り入れた豪華な作品になっている。

『The Manuscript』にも収録されている”Rollin' Like A Stoner”はロス・アンジェルスを拠点に活動する1500オア・ナッシンとノーI.Dの共同プロデュース作品。シンセサイザーを多用したビートは、チャンス・ザ・ラッパーの音楽にも少し似ている。太く、温かい声質を活かした軽妙なラップも格好良い。

これに対し、ジ・インターネットのシドを招いた”Gorgeous”は、ジェイZの”Girls Girls Girls”にも通じる、スロー・テンポのロマンティックな楽曲。1500オア・ナッシングとノーI.D.が共作したトラックは、シンセサイザーを駆使した近未来的な雰囲気のものだ。しかし、オーティス・レディングやバリー・ホワイトを連想させる太いバリトン・ヴォイスのおかげで、往年のソウル・ミュージックのような温かい雰囲気を醸し出している。シドの透き通った歌声と、ラップの要素を取り入れたヴォーカルも、トラックやヴィックのラップと一体化して面白い。

また、ファレル・ウィリアムスとソウル・ウィリアムス(この二人に血縁関係はない)を起用した本作からのリード・シングル”Wings”は、ファレル・ウィリアムスのプロデュース。ファレルらしい、乾いた音色のキーボードと、ゴムボールのように跳ねるビートを使ったトラックが光るスロー・ナンバー。ゆったりとしたテンポの曲だが、躍動感のあるラップのおかげで、最後まで退屈せずに楽しめる佳曲。後半部分でアップテンポになる展開に意外性を感じる。

そして、タイ・ダラ・サインが参加した”We Could Be Free”は1500オア・ナッシングが制作を担当。ギターの演奏をバックに、繊細な歌声を響かせるタイ・ダラ・サインと、次々と言葉を繰り出すヴィックのラップという、意外性に富んだ組み合わせが面白い作品だ。エド・シーランやジャスティン・ビーバーのアルバムに収められていても不思議ではない、爽やかなポップソングだ。

彼の音楽は、高いスキルに裏打ちされたワイルドなラップと、色々な音楽を研究し、そのエッセンスを取り込んだバラエティ豊かなビートが魅力だと思う。その作風は、ジェイZが『In My Lifetime, Vol. 1』で見せた、幅広い層の心に訴えるバラエティ豊かなサウンドと、ハードなラップの融合を、再現したようにも思える。この、大衆性と奥深さの両立が、彼の音楽の醍醐味だろう。

カニエ・ウエストやトゥイスタ、チャンス・ザ・ラッパーに続き、シカゴ発のヒップホップ・アーティストとして、私たちの耳を長い間、楽しませてくれそうなシンプルで分かりやすい作風と奥深さが魅力の佳作。ヒット曲を欠かさず耳にしている人なら、思わずニヤリとしてしまいそうな、凝った演出を楽しんでほしい。

Producer
No I.D., Vic Mensa, Kosine

Track List
1. Say I Didn't
2. Memories On 47th St.
3. Rollin' Like A Stoner
4. Homewrecker feat. Weezer
5. Gorgeous feat. Syd
6. Heaven On Earth feat. The Dream
7. Card Cracker (Skit)
8. Down For Some Ignorance (Ghetto Lullaby) feat. Chief Keef & Joey Purp
9. Coffee & Cigarettes
10. Wings feat. Pharrell Williams and Saul Williams
11. Heaven On Earth (Reprise)
12. The Fire Next Time
13. We Could Be Free feat. Ty Dolla $ign
14. Rage (Bonus Track)





The Autobiography
Vic Mensa
Roc Nation
2017-07-28

Jay-Z - 4:44 [2017 Roc Nation]

1996年にアルバム『Reasonable Doubt』でメジャー・デビュー。以後、多くの作品でプラチナ・ディスクを獲得。全米アルバム・チャートの1位に送り込むだけでなく、シンセサイザー主体のトラックが中心だった時代に、ソウル・ミュージックをサンプリングしたトラックで、ヒップホップ・シーンの流行を一変させた『The Blueprint』など、沢山の傑作を残してきた、ニューヨークのブルックリン出身のラッパーで実業家、ジェイZことショーン・カーター。

本作は彼にとって通算13枚目のオリジナル・アルバム。自身が経営するロック・ネイションからのリリースで、彼が経営陣に名を連ねるストリーミング・サイト「TIDAL」で1週間早く公開。その後、CDや配信で発売、という戦略を採用した作品だ。

過去の作品では、気鋭の若手を含む多くのプロデューサーを起用してきたジェイZだが、本作ではプロデュースを自身とシカゴ出身のプロデューサー、ノーI.Dの手で行っている。しかし、ゲストにはフランク・オーシャンやダミアン・マーリーなどが参加。ヒップホップ界のトップ・ランナーにふさわしい、斬新でキャッチーな作品を聴かせている。

アルバムに先駆けてMVが公開された”The Story of O.J.”は、ニーナ・シモンの”Four Women”とファンク・インクの”Kool Is Back”をサンプリングしたおどろおどろしいトラックが印象的な曲。ニーナ・シモンのピアノとヴォーカルを解体、引用したトラックはオーティス・レディングの楽曲をサンプリングした”Otis”にも匹敵するソウルフルなもの。肩の力を抜いてゆったりとラップを繰り出すジェイZの存在が、楽曲の不気味さに拍車をかけている。ソウル・ミュージックをサンプリングしつつ、過去の作品とは違うものを生み出すセンスに驚かされる。

それ以外の曲に目を向けると、フランク・オーシャンをフィーチャーした ”Caught Their Eyes”は、ニーナ・シモンの代表曲”Baltimore”をサンプリング。レゲエのゆったりとしたビートに、ニーナ・シモンの泥臭い歌声を組み合わせる手法は、予想外の一言。レゲエの要素を盛り込んだトラックでも、普段の荒々しいフロウで自分の音楽に染め上げるジェイZの姿が格好良い。曲の隙間を埋めるフランク・オーシャンのヴォーカルもいい味を出している。

また、本作のタイトル・トラックである”4:44”では、ハンナ・ウィリアムス&ザ・アファーメイションズの"Late Nights and Heartbreak"を引用。『The Blueprint』でも多用された、ヴォーカルを中心にソウル・ミュージックの印象的なフレーズを繰り返し使う手法を採用したトラックが印象的な作品。過去の作品では、テンポを変えるなど、色々と加工を施していたが、この曲では原曲のフレーズの切り取り方に工夫を凝らすことで、トラックに起伏を与える。ジェイZのラップも安定している。

そして、2002年の『The Blueprint 2: The Gift & The Curse』以降、多くの作品で共演している妻、ビヨンセとのコラボレーション曲”Family Feud”は、ゴスペル・グループ、クラーク・シスターズの”Ha-Ya”を引用。ゴスペル曲を引用したトラックといえば、カニエ・ウエストの”Jesus Walks"を思い起こさせる。また、ビヨンセのヴォーカルはこれまでの作品と比べると控えめで、ヴォーカルというよりは声ネタに近い扱い。ジェイZのダイナミックなフロウが堪能できる佳曲だ。

今回のアルバムは、4年ぶりの新作ということで、多くの期待を抱いた人も少なくないと思うが、そういう人からすると、物足りない作品かもしれない。ソウル・ミュージックやジャズをサンプリングしたトラックも、過去の楽曲とは一味違うが、音楽シーンの潮流を塗り替えるものではないと思う。しかし、どんなトラックもしっかりと乗りこなし、自分の色に染め上げるジェイZのパフォーマンスは、彼が紛れもないトップ・ランナーであることを裏付けていると思う。

ヒップホップ業界を揺るがし続けてきたトップ・ランナーのアルバムでは異色の、安定したパフォーマンスが光る佳作。彼の音楽を聴いて育った大人にこそ聴いてほしい、落ち着いた雰囲気の作品だ。

Producer
Jay-Z, No I.D.

Track List
1. Kill Jay Z
2. The Story of O.J.
3. Smile feat. Gloria Carter
4. Caught Their Eyes feat.Frank Ocean
5. 4:44
6. Family Feud feat. Beyoncé
7. Bam feat. Damian Marley
8. Moonlight
9. Marcy Me
10. 11.Adnis
12. We Family
13. MaNyfaCedGod



4:44
Jay-Z
Roc Nation
2017-07-07

Rihanna – Anti [2016 Roc Nation]

2005年にデフ・ジャムから『Music of the Sun』でデビュー。同作に収められた”Pon de Replay”が大ヒットしたことでトップ・スターの仲間入りを果たした、バルバドス出身のシンガー・ソングライター、リアーナことロビン・リアーナ・フェティ。その後も、2015年までに7枚のオリジナル・アルバムと、ジェイZをフィーチャーした”Umbrella”やクリス・ブラウンが制作に参加した”Disturbia”、カルヴィン・ハリスを起用した”We Found Love”などのヒット曲を残し続け、ビヨンセと並ぶ2000年以降のR&Bシーンを代表する女性シンガーに上り詰めた。そんな彼女にとって、2012年の『Unapologetic』以来、約3年ぶり通算8枚目となるフル・アルバムがこの『Anti』だ。

祖国バルバドスの音楽とアメリカのR&Bを融合した”Pon de Replay”でブレイクした当初は、若者向けのダンス・ナンバーを歌うポップスターのように見られていたが、”Umbrella”をはじめとする重厚なミディアムやスロー・ナンバーをヒットさせたあとは、本格的な歌唱力を備えたディーヴァとして保守的なソウル・ファンからも一定の評価を得られるようになった。

本作は、ジェイZが率いるロック・ネイションに移籍後第一作目となるフル・アルバム。といっても、デビュー前の彼女をデフ・ジャムに紹介するなど、以前から縁の深い二人だけあって、作風に大きな変化はない。

アルバムの1曲目、セントルイス出身のシンガー、SZAをフィーチャーした”Consideration”は、ケンドリック・ラマーの作品でもペンを執ったタイラン・ドナルドソン作のスロー・ナンバー。ゆったりとしたビートの上で、貫禄のある歌声を響かせるリアーナと、ちょっと癖のあるSZAのヴォーカルが絡み合う不思議な曲だ。電子楽器を使っているのに、エリカ・バドゥの楽曲かと錯覚するくらい、大きく揺らぐリズムが面白い。

一方、ビヨンセやアリシア・キーズの作品も手掛けているジェフ・バスカーがプロデュースした”Kiss It Better”は、力強いビートと派手なギター演奏を盛り込んだロック風のバラード。毛色は多少違うが、同年にリリースされたアデルの”Hello”にも通じるところがある、流行り廃りのない安定したメロディと壮大なスケールのアレンジが気になる楽曲だ。

これに対し、R&Bのトレンドの最先端を走ったのはドレイクが参加した”Work”だ。ドレイクの作品を数多く手掛けているプロデューサー、ノア・シャビブが手掛けるこの曲は、デビュー当時の彼女の音楽を思い起こさせる、西インド諸島のリズムとメロディを取り入れたダンスナンバー。ドレイクの音楽が好きな人にはお馴染みの、透き通った音色のシンセサイザーを使ったトラックが、陽気なメロディに切ない雰囲気を盛り込んでいる。アレクサンダー・オニールの85年のヒット曲”If You Were Here Tonight”や、パーティネクストドアのコーラスといった小ネタを盛り込むセンスも見逃せない。

これ以外にも、グッチ・メインなどを手掛けているDJマスタードがプロデュースした、重苦しいトラックとラップ風歌唱が印象的な”Needed Me”や、オーストラリアのポップ・シンガー、ケヴィン・パーカーが手掛ける、強烈な音響効果が生み出す、シャーデーを彷彿させる幻想的なパフォーマンスが斬新な”Same Ol’ Mistakes”。エミネムの”Stan”にサンプリングされたことでも有名な、ダイドの”Thank You”を大幅に改変した、陰鬱な雰囲気のミディアム・ナンバー”Never Ending”といった、新旧の流行を取り入れつつ、それを再解釈した、懐かしさと新鮮さが入り混じった曲が並んでいる。

本作でも、彼女の音楽のクオリティは高いレベルで安定している。だが、それ以上に印象的なのは、彼女同様、2000年以降のR&B業界を代表する女性シンガーの一人で、ジェイZとも縁の深い、ビヨンセの2016年作『Lemonade』との対比だと思う。ジェイムス・ブレイクやケンドリック・ラマーといった気鋭のクリエイターを起用し、積極的に新しいトレンドを生み出そうとするビヨンセに対し、ドレイクやティンバランドといった、既に多くのヒット作を残しているアーティストを招いて、流行のサウンドに新しい解釈を加えた楽曲を生み出すリアーナという対照的な手法は、好き嫌いは抜きにして大変興味深い。

服飾の世界には、斬新なデザインで積極的に新しいトレンドを生み出すモード系のデザイナーと、過去のデザインを踏襲しつつ、時代の空気を捉えてそれをアップデートするクラシック系のデザイナーがいる。R&Bシンガーに置き換えれば、ビヨンセは前者で、リアーナは後者のタイプなのだと思う。直近の流行を踏まえた上で、そのちょっと先の流行を意識した彼女の音楽は、若者向けの人気シンガーらしい新鮮さと、年を重ねた人々でも安心して楽しめる安定感を両立した、幅広い層にウケるものだと思う。

Producer
Robyn Rihanna Fenty, Kuk Harrell etc

Track List
1. Consideration feat. SZA
2. James Joint
3. Kiss It Better
4. Work feat. Drake
5. Desperado
6. Woo
7. Needed Me
8. Yeah I Said It
9. Same Ol’ Mistakes
10. Never Ending
11. Love On The Brain
12. Higher
13. Close To You
14. Goodnight Gotham
15. Pose
16. Sex With Me





Anti (Deluxe, Explicit)
Rihanna
ユニバーサルミュージック合同会社
2016-02-05

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