1999年にイギリスのシングル・チャートで2位になった、アートフル・ドジャーのシングル”Re-Rewind (The Crowd Say Bo Selecta)”のヴォーカルを担当したことで注目を集め、翌年には自身名義のメジャー・デビュー曲”Fill Me In”が同チャートで1位を獲得、アメリカでも総合シングル・チャートの15位に入る大ヒットとなった、ハンプシャー州サウスハンプトン出身のシンガー・ソングライター、クレイグ・デイヴィッド。
グレナダ系の父と、ユダヤ系の母(母方の親族がユダヤ教徒)の間に生まれ、8歳以降は母のもとで育てられた彼は、地元の大学を卒業後、ヴォーカル・グループの一員として活動を開始。その一方で、アートフル・ドジャーなどのクリエイターの作品にも客演するなど、活動の舞台を広げていった。
“Fill Me In”を収録したアルバム『Born to Do It』が、イギリスだけで180万枚を売り上げる大ヒットになった後も、2016年までに複数のレーベルで5枚のアルバムを発表。そのほとんどがゴールド・ディスクに認定されるなど、イギリスを代表するR&Bシンガーとして多くの足跡を残してきた。
このアルバムは、2016年の9月に発売された前作『Following My Intuition』からわずか1年という短い間隔でリリースされた通算7枚目のスタジオ・アルバム。ガラージとR&Bを組み合わせたスタイルで、デビュー・アルバム以来のアルバム・チャートを獲得した前作の流れを意識したのか、プロデューサーにはジャーン・マリーやフレーザーTスミスといった、R&Bとガラージの両方に強いイギリスのクリエイターを中心に起用。また、海外勢では前作に引き続きカナダのケイトラナダに加え、オランダのディズトーションなどを招き、エレクトロ・ミュージックとR&Bを融合した楽曲に取り組んでいる。
アルバムに先駆けて発表された”Heartline”は、色鮮やかな音色と四つ打ちのビートを組み合わせた作風が武器のクリエイター、ジョナス・ブルーがトラックを担当。ゆったりとしたテンポの四つ打ちのビートを取り入れて、ハウス・ミュージックのスタイリッシュな雰囲気を残しつつ、華やかな音色と軽妙なメロディを使ってポップにまとめたダンス・ナンバー。彼の持ち味である尖ったサウンドとキャッチーなメロディが両立された佳曲だ。
また、ディズトーションが制作に参加した”For The Gram”は、グライムを連想させる刺々しい音を多用したトラックと、トラップの手法を混ぜ合わせたビートが面白いミディアム。荒々しいビートや、ラガマフィンを組み合わせたスタイルが、レゲエやヒップホップ、ドラムンベースなどが混ざり合っているイギリスの音楽シーンを象徴しているようで興味深い。
そして、イギリスのロック・バンド、バスティルとのコラボレーション曲である”I Know You”は、フレーザーTスミスがプロデュースしたミディアム・ナンバー。バスティン・ケブやムラ・マサを彷彿させる繊細な音色を選ぶセンスと、90年代のティンバランドやジャーメイン・デュプリを連想させるチキチキ・ビートの組み合わせが魅力の作品だ。太くしなやかな声のクレイグと、ダン・スミスのスマートな歌唱の対比が光っている。
そして、ケイトラナダがプロデュースに名を連ね、ゴールドリンクがゲストとして参加した”Live In The Moment”は、本作では珍しい、ヒップホップ色の強い曲。ベンデス・バンドが81年に発表した”I Was There”を切り刻んで組み合わせたトラックは、ヒップホップの手法を踏襲したもの、しかし、洗練されたサウンドが心地よい原曲の雰囲気を残したアレンジは、アメリカの音楽ではあまり見られないもの。起承転結のはっきりした展開やメリハリのついたメロディは、”7 Days”や”Walking”のような初期のヒット曲を思い起こさせる。
今回のアルバムでは、彼の持ち味であるエレクトロ・ミュージックやヒップホップの要素を組み合わせたトラックと、キャッチーだけどスタイリッシュなメロディ、そして滑らかな歌声が一体になったR&B作品を披露している。R&Bの醍醐味である美しいメロディや歌声を大切にしつつ、アメリカのミュージシャンが使わない音を積極的に取り入れる姿勢が、多くのミュージシャンが鎬を削る、R&Bの世界で、彼の存在を差別化してきたと思う。
「2ステップの貴公子」の枠を超え、「UKソウルの帝王」と呼ぶにふさわしい存在となった彼の、音楽への造詣の深さと、高い表現力が遺憾なく発揮されたアルバム。アメリカの音楽とは一味違う、イギリスのR&Bを知る入門編にオススメ。
Producer
Tre Jean-Marie, Fraser T Smith, Kaytranada, Jonas Blue etc
Track List
1. Magic
2. Heartline
3. Brand New
4 . Going On
5. Love Me Like It's Yesterday
6. For The Gram
7. Get Involved feat. JP Cooper
8. I Know You feat. Bastille
9. Live In The Moment feat. GoldLink
10. Love Will Come Around
11. Somebody Like Me feat. AJ Tracey
12. Focus
13. Reload (Craig David and Chase & Status)
14. Talk to Me
15. Talk to Me Pt. II feat. Ella Mai
グレナダ系の父と、ユダヤ系の母(母方の親族がユダヤ教徒)の間に生まれ、8歳以降は母のもとで育てられた彼は、地元の大学を卒業後、ヴォーカル・グループの一員として活動を開始。その一方で、アートフル・ドジャーなどのクリエイターの作品にも客演するなど、活動の舞台を広げていった。
“Fill Me In”を収録したアルバム『Born to Do It』が、イギリスだけで180万枚を売り上げる大ヒットになった後も、2016年までに複数のレーベルで5枚のアルバムを発表。そのほとんどがゴールド・ディスクに認定されるなど、イギリスを代表するR&Bシンガーとして多くの足跡を残してきた。
このアルバムは、2016年の9月に発売された前作『Following My Intuition』からわずか1年という短い間隔でリリースされた通算7枚目のスタジオ・アルバム。ガラージとR&Bを組み合わせたスタイルで、デビュー・アルバム以来のアルバム・チャートを獲得した前作の流れを意識したのか、プロデューサーにはジャーン・マリーやフレーザーTスミスといった、R&Bとガラージの両方に強いイギリスのクリエイターを中心に起用。また、海外勢では前作に引き続きカナダのケイトラナダに加え、オランダのディズトーションなどを招き、エレクトロ・ミュージックとR&Bを融合した楽曲に取り組んでいる。
アルバムに先駆けて発表された”Heartline”は、色鮮やかな音色と四つ打ちのビートを組み合わせた作風が武器のクリエイター、ジョナス・ブルーがトラックを担当。ゆったりとしたテンポの四つ打ちのビートを取り入れて、ハウス・ミュージックのスタイリッシュな雰囲気を残しつつ、華やかな音色と軽妙なメロディを使ってポップにまとめたダンス・ナンバー。彼の持ち味である尖ったサウンドとキャッチーなメロディが両立された佳曲だ。
また、ディズトーションが制作に参加した”For The Gram”は、グライムを連想させる刺々しい音を多用したトラックと、トラップの手法を混ぜ合わせたビートが面白いミディアム。荒々しいビートや、ラガマフィンを組み合わせたスタイルが、レゲエやヒップホップ、ドラムンベースなどが混ざり合っているイギリスの音楽シーンを象徴しているようで興味深い。
そして、イギリスのロック・バンド、バスティルとのコラボレーション曲である”I Know You”は、フレーザーTスミスがプロデュースしたミディアム・ナンバー。バスティン・ケブやムラ・マサを彷彿させる繊細な音色を選ぶセンスと、90年代のティンバランドやジャーメイン・デュプリを連想させるチキチキ・ビートの組み合わせが魅力の作品だ。太くしなやかな声のクレイグと、ダン・スミスのスマートな歌唱の対比が光っている。
そして、ケイトラナダがプロデュースに名を連ね、ゴールドリンクがゲストとして参加した”Live In The Moment”は、本作では珍しい、ヒップホップ色の強い曲。ベンデス・バンドが81年に発表した”I Was There”を切り刻んで組み合わせたトラックは、ヒップホップの手法を踏襲したもの、しかし、洗練されたサウンドが心地よい原曲の雰囲気を残したアレンジは、アメリカの音楽ではあまり見られないもの。起承転結のはっきりした展開やメリハリのついたメロディは、”7 Days”や”Walking”のような初期のヒット曲を思い起こさせる。
今回のアルバムでは、彼の持ち味であるエレクトロ・ミュージックやヒップホップの要素を組み合わせたトラックと、キャッチーだけどスタイリッシュなメロディ、そして滑らかな歌声が一体になったR&B作品を披露している。R&Bの醍醐味である美しいメロディや歌声を大切にしつつ、アメリカのミュージシャンが使わない音を積極的に取り入れる姿勢が、多くのミュージシャンが鎬を削る、R&Bの世界で、彼の存在を差別化してきたと思う。
「2ステップの貴公子」の枠を超え、「UKソウルの帝王」と呼ぶにふさわしい存在となった彼の、音楽への造詣の深さと、高い表現力が遺憾なく発揮されたアルバム。アメリカの音楽とは一味違う、イギリスのR&Bを知る入門編にオススメ。
Producer
Tre Jean-Marie, Fraser T Smith, Kaytranada, Jonas Blue etc
Track List
1. Magic
2. Heartline
3. Brand New
4 . Going On
5. Love Me Like It's Yesterday
6. For The Gram
7. Get Involved feat. JP Cooper
8. I Know You feat. Bastille
9. Live In The Moment feat. GoldLink
10. Love Will Come Around
11. Somebody Like Me feat. AJ Tracey
12. Focus
13. Reload (Craig David and Chase & Status)
14. Talk to Me
15. Talk to Me Pt. II feat. Ella Mai