ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

StonesThrow

Karriem Riggins - Headnod Suite [2017 Stones Throw]

90年代にコモンやジェイ・ディラといった、多くの人気ヒップホップ・ミュージシャンの作品を手掛けたことで名を上げ、近年はエリカ・バドゥやカニエ・ウエストなどの作品にも起用されている、ミシガン州デトロイト出身のドラマー兼プロデューサー、カリーム・リギンス。

そんな彼は、演奏者としてもオスカー・ピーターソンやダイアナ・クラールの作品に参加するなど、多くの実績を残していることで知られている。2016年には、カナダ出身のクリエイター、ケイトラナダのアルバム『99.9%』に収録されている”Bus Ride”にフィーチャーされたことも記憶に新しい。

本作は、そんな彼にとって、2012年の『Alone Together』以来となる通算2枚目のオリジナル・アルバム。前作同様、ヒップホップの制作手法とドラムの演奏を組み合わせた、彼らしい作品になっている。

アルバムの実質的な1曲目である”Other Side of the Track”は、ジュニー・モリソンの”Spirit”をサンプリングしたミディアム・ナンバー。DJシャドウとカット・ケミストのツアーでプレイされたことも話題になった”A Whole Lot Of Love”(原曲はレッド・ツェッペリン、シャドウ達はデニス・コフィーのカヴァー・ヴァージョンをプレイ)を彷彿させる、荒々しいギターのサウンドが格好良い楽曲。”Spirit”からサンプリングされたキーボードの音色が、刺々しい雰囲気のトラックをマイルドにしている。

これに対し、同じ”Spirit”をサンプリングしながら、”Other Side of the Track”全く違う雰囲気を醸し出しているのが、デトロイト出身の詩人、ジェシカ・ケア・ムーアをフィーチャーした”Suite Poetry”だ。キーボードの音色をサンプリングした前者に対し、こちらはピアノの演奏を中心に引用。ニッキ・ジョヴァンニを連想させる透き通った声と、重厚で存在感のある言葉が印象的。同じレコードを使いながら、対極の作品を生み出せる彼のスキルとセンスが光る曲だ。

また、ロックやソウルをサンプリングした本作では異色の、電子音楽を使った曲が”Pay.gio”だ、ジョエル・ヴァンドローゲンブロエックが81年に発表した”Computer Groove”を引用したこの曲は、80年代の電子音楽で多用されていたアナログ・シンセサイザーの音色を効果的に使った近未来的な雰囲気の曲。電子音楽をジャズやソウルと同じように、ヒップホップの素材として分解、再構築する姿は、彼とも縁の深いジェイ・ディラの作風を思い起こさせる。

だが、本作の目玉はなんといっても”Bahia Dreamin’”だろう。彼がプロデュースしたエルザイの”Two 16's”のトラックを組み替えた曲で、原曲の雰囲気を生かしつつ、打楽器などの音を追加したインストゥメンタル作品になっている。中盤以降にジャズのピアノトリオの演奏を挟み込み、混ぜ合わせるセンスは、ヒップホップのプロデューサーとジャズ・ドラマーという、二つの顔を持っている彼の持ち味が発揮された楽曲だ。

今回のアルバムでも、彼のビート・メイカーとしての高いセンスと、豊富な演奏経験が反映された正確無比、かつ躍動感溢れるグルーヴが堪能できる。これだけ確固たる作風を持ちながら、収録された29曲一つ一つに個性を与えられるのは、ヒップホップやR&B、ジャズの世界で、いろいろなスタイルのアーティストと一緒に作品を生み出してきたからだろう。

長いキャリアを通して、多くの音楽を見聞きし、経験してきた彼にしかつくれない、魅力的なインストゥメンタル作品。歌やラップが入っていない音楽は苦手な人、ヒップホップや電子音楽のようなコンピュータを使った音楽が苦手な人にこそ、ぜひ聞いてほしい。トラックメイカーの奥深い世界の一端を垣間見れると思う。

Producer
Karriem Riggins

Track List
1. Suite Intro
2. Other Side of the Track
3. Yes Yes Y’all
4. Invasion
5. Trombone Love
6. Crystal Stairs
7. Sista Misses
8. Detroit Funk
9. Oddness
10. Tandoor Heat
11. Chop Chop
12. My Reflection
13. Dirty Drum Warm Up
14. Pay.gio
15. Suite Poetry feat. Jessica Care Moore
16. 4Es’J
17. Joy and Peace
18. Cheap Suite 1
19. Cheap Suite 2
20. Cheap Suite 3
21. Cheap Suite 4
22. Never Come Close
23. Re-doze
24. Bahia Dreamin’
25. Cheap Suite 5
26. Cia
27. Keep It On
28. Fluture
29. Suite Outro – Hodge, Poyser, Riggins





Headnod Suite
Karriem Riggins
Stones Throw
2017-02-24

Tuxedo - Tuxedo II [2017 Stones Throw]

2017年初頭に約1年半ぶりの新作となる3曲入りのEP『Fux with the Tux』を発表。70年代終盤から80年代前半にかけて一斉を風靡した、電子楽器を多用したディスコ・ミュージックを現代のトレンドに合わせて再構築した楽曲で健在っぷりをアピールした、メイヤー・ホーソンとジェイク・ワンによるユニット、タキシード。同EPの発表からわずか1ヶ月という短い期間を経て、彼らにとって2枚目のフル・アルバムとなる新作『Tuxedo II』がリリースされた。

『Fux with the Tux』にも収録されている3曲"Fux With The Tux"、"Special"、"July"は別の記事で触れているので、ここでは簡単な説明に留めて置くが、実際に音を聴いてみた印象では、これらの既発曲はEPのヴァージョンをそのまま再録しているようだ。新しい発見といえば、"Fux With The Tux"の途中で挟まるMCがスヌープ・ドッグだったことだ。飄々とした声で煽るスタイルは、彼らしいといえば彼らしいが、大物な上、フォロワーの多いラッパーなので、ちょっと予想外だった。

さて、新録曲に目を向けると、2曲目に収められている"2nd Time Around"は"Fux With The Tux"の路線を踏襲したアップ・ナンバー。80年代のディスコ音楽を彷彿させるアナログ・シンセサイザーっぽい音色を使ったモダンなトラックと洗練されたメロディが光る楽曲。ゲヴィン・トゥレックの爽やかなバック・コーラスが、メイヤー・ホーソンの甘い歌声を引き立てている点も見逃せない。続く"Take A Picture"も同系統の曲だが、こちらはギターやホーンを加えたバック・トラックで、バーケイズなどのファンク・バンドを思い起こさせる華やかな雰囲気が印象的だ。

一方、中盤の2曲"Rotation"や"Shine"はギャップ・バンドの"Outstanding"やケニ・バーグの"Risin' to the Top"を連想させる。スタイリッシュな伴奏が心地よいミディアム・ナンバー。"Rotatiom"はキラキラとしたシンセサイザーのリフをアクセントに使った煌びやかな演奏をバックに、ゆったりとしたメロディを丁寧に歌った"Outstanding"風の楽曲。レイドバックしたトラックのせいか、サビの歌声がLVやネイト・ドッグのような西海岸のヒップホップ・シンガーっぽく聴こえるのがちょっと面白い。そして、"Shine"は太いベースの音と、ピアノっぽいキーボードや煌びやかなシンセサイザーの伴奏が高級感を漂わせる楽曲。ゲヴィンの甘酸っぱい歌声と絡み合うメイヤーのヴォーカルが、普段以上に色っぽいエロティックな楽曲だ。

それ以外の曲でも、色々な音色のシンセサイザーを使い分けた極彩色の演奏が印象的なインストゥルメンタル・ナンバー”Scooter’ s Groove”や、この曲の手法をヴォーカル曲に取り入れたディスコ・ブギーの”U Like It”など、前作でも見せたディスコ音楽への愛着を惜しげもなく披露した良質なトラックが揃っている。

ブルーノ・マーズの『24K』やマーク・ロンソンの『Uptown Special』のような大ヒット作から、ストーンズ・スロウの同僚だったディム・ファンクもメンバーに名を連ねるユニット、ナイト・ファンクの『Nite-Funk EP』や本作にも参加しているゲヴィン・トゥレックの『Good Look For You EP』のようなコアなファン向けのアルバムまで、多くの作品が70年代末から80年代中盤のディスコ音楽から刺激を受けている。その中で、2人の作品が多くのファンを引き付けてきたのは、機材選びからヴォーカルのアレンジまで曲の全てに気を配って、当時の雰囲気を忠実に再現してきたからだと思う。

もちろん、彼らの作品は過去の音楽の単純なトレースではなく、当時の手法を使いながら、現在のリスニング環境や二人の持ち味を意識して作られている。だからこそ、往年の音楽の手法を取り入れても、しっかりと独自性を発揮しているのだと思う。彼らの作品は偶然の産物ではない、実力によって構築されたものだと再認識させられる、良質なソウル・ミュージックのアルバムだと思う。

Producer
Tuxedo

Track List
1. Fux With The Tux feat. Snoop Dogg
2. 2nd Time Around
3. Take A Picture
4. Rotational
5. Shine
6. Scooter’ s Groove
7. U Like It
8. Back In Town
9. Special
10. Livin’ 4 Your Lovin’
11. July





Tuxedo II
Tuxedo
Stones Throw
2017-03-24

Gabriel Garzón-Montano – Jardin [2017 Stones Throw]

コロンビア人の父とフランス人の母の間に生まれ、幼いころからバッハの作品やクンビア、ファンクなど、色々な音楽を吸収してきた、ブルックリン出身のシンガー・ソングライター、ガブリエル・ガルゾン・モンターノ。ギターやドラムからバイオリンまで、色々な楽器の演奏技術を習得しながら、独学で作曲を始めた彼は、レニー・クラビッツなどの作品を手掛けたプロデューサー、ヘンリー・ヒルシュと出会ったところで大きな転機を迎える。

彼の協力のもと、2014年にリリースしたEP『Bishouné: Alma del Huila EP』は、楽曲制作だけでなく、ハンドクラップを含む演奏のほとんどを、自身の手で行ったという、DIY感満載の作品だった。だが、このアルバムは、ジャイルズ・ピーターソンなどのDJやミュージシャン達の間で注目を集め、フル・アルバムを出す前にもかかわらず、メイヤー・ホーソンやレニー・クラビッツなどのツアーでオープニング・アクトに起用されるきっかけになるほど、好評を博していた。

そんな前作から3年ぶりとなる、彼にとって初のフル・アルバム『Jardin』は、ロス・アンジェルスのインディー・レーベル、ストーンズ・スロウからのリリース。

ストーンズ・スロウといえば、マッドリヴのようなサンプリングを多用したクリエイターから、ジェイムズ・パンツのような電子音楽にシフトしたもの。そして、メイヤー・ホーソンのように70年代のソウルを独自の解釈で現代の音楽に落とし込んだものなど、一癖も二癖もある、個性豊かなアーティストが揃っているレーベル。その中で、彼がどんな音楽を生み出すのか、とても楽しみだった。

曲の感想を言う前に、結論だけ言ってしまうと。このアルバムは前作の前衛的な音楽性を継承しつつ、それを磨き上げた魅力的な作品だった。

まず、アルバムに先駆けて発表された、”Sour Mango”に耳を傾けると、こちらはどっしりとした重いビートの上で、耳に刺さるようなシンセサイザーのリフとハンドクラップの音が、楽曲に彩を添えているミディアム・ナンバー。ジェイムズ・パンツの作品にも通じる耳に刺さるような電子音の隙間で、線の細いしゃがれた声を上手に操って切々とうたい上げる姿が、なんとも切ない雰囲気を醸し出している良曲だ。

この曲につづく”Fruitflies”は、彼のクラシック音楽の素養が発揮された、鍵盤楽器の弾き語りをベースにしたバラード。もっとも、彼の音楽が単純な弾き語りのバラードなわけもなく、この曲では、鈴から電子音まで、色々な音を曲の随所に埋め込んで、ガブリエルがしっとりと歌うバラードに神秘的な空気を吹き込んでいる。

また、もう一つの先行リリース曲”The Game”は、90年代のヒップホップで使われていそうな、ポップだけど重みのあるバス・ドラムと、シンセサイザーの柔らかい伴奏を軸にした、音数の少ないシンプルなトラックの上で、ディアンジェロやジョージ・アン・マルドロウを連想させる、ラップと歌の中間のような、少し崩したメロディが乗っかるミディアム・ナンバー。ビートの作りはストーンズ・スロウ時代のアロー・ブラックの作品に似ているし、ヴォーカルはディアンジェロと似ているところが散見される。だが、この曲が彼らの音楽と決定的に異なるのは、彼の音楽が洗練されていることだ。耳を爽やかに抜けていくビートと、粗削りだがスマートな歌唱が、「ヒップホップとソウルの融合」という、多くのミュージシャンが取り組んだ題材に、新しい可能性を提示したと思う。

だが、本作の収録曲の中で、最も聴き逃せないのは"Crawl"だと思う。デビュー当時のジョン・レジェンドが好きな人にはたまらない、太く温かい音を使ったビートに乗せて、少し荒々しい歌声で、丁寧にメロディを歌い込む、ミディアム・ナンバー。細い声を振り絞って出す、ファルセットを効果的に使ったこの曲は、彼の作品の中では珍しく、前衛的な音楽の要素が非常に少ないものだ。

このアルバムは、前作で見せた先鋭的な側面を丁寧に磨き上げることで、斬新さと作品としての完成度を両立した良作だと思う。しかし、それ以上に面白いのは、前衛音楽にあるような、奇抜さや難解さを抑え込み、R&Bの枠組みに収めつつ、その枠組みを拡張したところだと思う。使う音色は、ジェイムズ・パンツやジョンティなどの電子音楽に近いものだし、ビートの中には、ジェイ・ディラやマッドリヴのような癖のあるものも少なくない。しかし、それだけにとどまらず、これらの音を使いつつ、ソウル・ミュージックとしても違和感なく聴けるメロディを組み込むことで、斬新さと保守的な側面の両方が混ざり合った楽曲に落とし込まれている。このセンスの良さは、クラシックから民族音楽まで、色々な音楽に慣れ親しんできた彼の視野の広さのおかげじゃないかと思う。

ここ10年、R&B業界の一大潮流になりつつある、異分野の音楽を取り込んだいわゆるオルタナティブR&B。この手法は、成功すればR&Bの新たな魅力を引き出すことができるが、援用する要素の選別、編集に失敗して、「R&Bっぽい何か」になってしまう作品も少なくなかった。その点、本作は、電子音楽を中心に、ファンク、クラシックなど要素を取り入れながら、R&Bの枠組みを拡張することに成功した、先鋭的だが、保守的なファンにも納得させることができそうなアルバムだ。アンダーソン・パックに続く、西海岸発の名作と呼ばれる日は来るのか、今から期待してしまう傑作だ。

Track List
1. Trial
2. Sour Mango
3. Fruitflies
4. The Game
5. Long Ears
6. Crawl
7. Bombo Fabrika
8. Cantiga
9. My Balloon
10. Lullaby




Jardin
Gabriel Garzon-Montano
Stones Throw
2017-01-27


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