ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Universal

La'Porsha Renae - Already All Ready [2017 Motown]

ファンタジアやルーベン・スタッダード、ジョーダン・スパークスといった実力派シンガーを輩出し、スターへの登竜門として注目を集めている、アメリカの人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」。同番組の第15シーズンで、力強い歌声とダイナミックな表現が審査員や視聴者の耳目を惹き、ファイナル・ステージでは2位を獲得した、ミシシッピ州マッコム出身のシンガー、ラポーシャ・ラナエ。彼女にとって初のオリジナル・アルバム。

オーディションでは、アデルの”Hello”やレディオヘッドの”Creep”のような、ポップスやロックの有名曲に加え、ビヨンセの”Halo”やリアーナの”Diamonds”といった人気R&Bシンガーのヒット曲、ティナ・ターナーの”Proud Mary”やディオンヌ・ワーウィックの”A House Is Not a Home”などのソウル・クラシックも披露。決勝ではマーヴィン・ゲイとキム・ウェストンのデュエット曲”It Takes Two”で勝負するなど、高い歌唱力が求められる楽曲が中心の選曲で、圧倒的な実力を見せつけていた。

そんな彼女のデビュー・アルバムは、マーヴィン・ゲイを含む、多くの名シンガーを送り出してきた黒人音楽の名門、モータウン・レコードからのリリース。レーベルの経営にも携わっているニーヨが、ソング・ライティングで参加するなど、新人の作品としては異例の、豪華な布陣で制作されている。

アルバムの1曲目に収められている”What Is Love”は、ジャスティン・ビーバーやアッシャーの曲を手掛けてきた、ジェイソン・ボイドが制作したミディアム・ナンバー。キラキラとした音色のシンセサイザーを使った伴奏に乗せて、思いっきり声を張り上げるラポーシャの姿が印象的なミディアム・ナンバー。アレサ・フランクリンの”Think”や”Respect”を思い起こさせる、シンプルでキャッチーだが、どこか荘厳さを感じさせるメロディが、彼女の豊かな歌声と高い歌唱力を引き出している。

続く”Good Woman”は、エッジ・エチエンヌやティファニー・フレッドなどがペンを執ったバラード。ストリングスや三連符を取り入れた優雅な伴奏の上で、時に妖艶な、時にダイナミックなパフォーマンスを披露している。ポップスの仕事が多い作家らしい、親しみやすいメロディの楽曲だが、彼女の恵まれた歌声のおかげで、ディープなソウル・ミュージックに聴こえるのが面白い。

また、3曲目に入っている”Somebody Does”は、キース・スウェットの2016年作『Dress to Impress』の収録曲”Say”などに関わっている、アンドラエ・アレクサンダーが参加した作品。ドラムとベースを中心にしたシンプルなトラックの上で、ギターをかき鳴らしたフォーク・ソング風の伴奏の上で、乙女心を切々と歌い上げたミディアム・ナンバー。ヴィジュアルや歌声から「強い女性」のイメージを抱かれがちな彼女だが、まだ23歳(本作の発売時点)のうら若き乙女らしく、この曲のような甘酸っぱいメロディも良く似合っている。

そして、ニーヨがソングライティングに携わっている”Hideout”は、電子楽器を多用した、リアーナやビヨンセの楽曲を連想させるモダンなトラックと、”Sexy Love”や”Closer”のような、ニーヨのヒット曲を思い起こさせる、爽やかで流麗なメロディが魅力のミディアム・ナンバー。ハンマー投げのハンマーのような、重く力強いラポーシャの歌声を、爽やかなメロディが中和して、絶妙なさじ加減に落とし込んでいる。

それ以外の曲でも、アデルやワン・ダイレクションに代表される、ポップ・シンガーのスタイルと、ビヨンセやリアーナのようなR&Bシンガーの手法、それにアレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムスのような往年の名シンガー達の表現技法をうまく混ぜ合わせ。メロディやバック・トラックでは、黒人音楽好き以外の様々な人を意識しながら、ダイナミックな感情表現とパワフルな歌声の良さをきちんと引き出す、本格的なソウル・ミュージックを聴かせている。その作風は、アレンジ技術を含む総合的な歌唱力が問われる、同番組を勝ち上がった彼女の持ち味を生かしたものだ。

ファンタジアやルーベン・スタッダードに負けず劣らずの、類稀な歌唱力を持つ彼女の魅力を活かした、親しみやすいメロディと、高度なヴォーカル技術が合わさった本格的なR&B作品。アレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムスから、ビヨンセやリアーナへと続く、力強い女性シンガーの系譜を継ぐ有望な新人のデビュー作だと思う。

Track List
1. What Is Love
2. Good Woman
3. Somebody Does
4. Hideout
5. When in Rome
6. Breathe
7. No Problem (Self Talk)
8. Already All Ready
9. Will You Fight
10. Lock You Down
11. Send Me Your Love
12. Stay
13. Cover Up





Already All Ready
La'Porsha Renae
Motown
2017-03-31

6LACK - Free 6LACK [2016 LoveRenaissance, Interscope]

メリーランド州ボルティモア生まれ、ジョージア州アトランタ育ちのシンガー・ソングライター、6LACK(どうやら「ブラック」と読むらしい)こと、ロドリゲス・バルデス・ヴァレンティン。2011年にインディペンデント・レーベルと契約したことをきっかけに、当時通っていた大学を中退して音楽活動に専念。サウンドクラウドに自作曲などをアップロードするなどして、新しい音に敏感な人々を中心に、少しずつ着実にファンを増やしてきた。

その甲斐もあって、2016年にはインタースコープと契約。同年7月にフューチャーの”Perkys Calling”をサンプリングしたシングル『Ex Calling』でデビューすると、同9月には2作目のシングル『PRBLMS』を発表。こちらは、ビルボードのホット100チャートで最高88位という、新人R&Bシンガーとしては上々の結果を残した。

このアルバムは、上の2枚のシングルを収録した、彼にとって初のフル・アルバム。2016年11月に発売されると、配信限定ながらアルバム・チャートの54位(R&Bのアルバム・チャートでは最高11位)まで上り詰め、翌年にはCD盤、LP盤も発売されるヒット作になった。

まず、本作の新録曲から目を向けると、2曲目に収められた”Rules”は、リュダクリスなどの作品を手掛け2017年にはキャリッドのデビュー作『American Teen』を手掛けたことでも話題になったシック・センスがプロデュースした作品。メロディを乗せやすい、起伏にとんだ変則ビートとトラックを巧みに乗りこなすブラックの歌唱力が光る、味わい深い楽曲だ。

これに対しミュージック・ビデオも制作された”Free””は、カナダ出身の女性ヒップホップ・アーティスト、ノヴァ・ロッカフェラがプロデューサーとして参加した楽曲。シンセサイザーを駆使した、ダークで重いビートに乗せて、切々と歌う彼の姿が印象的なミディアム・バラード。中盤でビートが変化して、楽曲にメリハリをつけるテクニックも面白い。シンガーらしい、トラックの特徴や展開に応じて、声をコントロール技術と、ラッパーのように言葉を上手につなぐスキルが見事に両立された佳曲だ。

一方、ジェイソン・デルーロやブリトニース・ピアーズにも曲を提供している、ブライアン・アイザックが手掛けた”Gettin' Old”は、ブラックの歌唱力にスポットを当てた本格的なヴォーカル曲。恋人に語り掛けるような優しいヴォーカルが心地よいミディアム・バラードだ。ドラムを軸にした、主役の歌声を引き立てる役に徹したシンプルなトラックも、楽曲の切ない雰囲気を盛り立てている。

だが、本作の目玉といえば、やっぱりシングル化された2曲だろう。アトランタ出身のラッパー、フューチャーのミックステープ『Purple Reign』に収められている楽曲のトラックを引用した"Ex Calling"は、原曲の制作もおこなっているアトランタ出身のプロデューサー、サウスサイドがプロデュースをを担当。バウンズ・ビートと哀愁を帯びたピアノの伴奏が印象的なトラックを活かした、切ない雰囲気のミディアム・ナンバーだ。R&Bシンガーというよりもラッパーに近いガラガラとした声で、淡々と言葉を紡ぎ出す姿が耳に残る、どこか悲しい雰囲気の楽曲だ。

そして、ノヴァをプロデューサーに招いたヒット曲”PRBLMS”は、シンセサイザーを使ったダークな雰囲気の伴奏とビートに乗せて、歌ともラップとも形容しがたい、絶妙な起伏のヴォーカルを聴かせてくれるミディアム・ナンバー。なんとなくだけど、 ドレイクパーティネクストドアの作風に似ている気がするのは自分だけだろうか。

アルバムをリリースした時点で24歳(パーティネクストドアの1歳年上で、ウィークエンドよりも2歳若い)と、若者らしい新鮮な視点を見せつけてくれる一方、シンガー・ソングライターとして5年以上活動してきた経験に裏付けられた、自身の感性を具体的な作品に落とし込む確かな技術も兼ね備えている。実力派シンガー、華やかさやスター性では見劣りする部分もあるが、それ以上に、聴き手の心を確実に惹きつける、存在感のある声とフロウが光っている。

同作がヒットした翌年には、ガラントのデビュー・アルバム『Ology』で強烈なパフォーマンスを聴かせてくれた、日系アメリカ人シンガーのジェーン・アイコとコラボレーションしたシングル『First Fuck』を発表するなど、1作目の結果に驕ることなく、素敵な新曲を生み出し続けている。アンダーソン・パックケラーニと並んで、これからのR&B業界をけん引する台風の目になるかもしれない。2010年代のR&Bの醍醐味が凝縮された、現代のR&Bを象徴する作品だと思う。

Producer

6LACK, Frank Dukes, Dot da Genius, Breyan Isaac etc

Track List
1. Never Know
2. Rules
3. PRBLMS
4. Free
5. Learn Ya
6. MTFU
7. Luving U
8. Gettin' Old
9. Worst Luck
10. Ex Calling
11. Alone / EA6





Free 6lack
6lack
Interscope Records
2017-03-17

 

Kendrick Lamar - Damn. [2017 Top Dawg Entertainment]

2000年代初頭に音楽活動を開始。2004年にK-ドットの名義で発表したミックス・テープ『Youngest Head Nigga in Charge (Hub City Threat: Minor of the Year)』が、現在も所属するトップ・ドッグ・エンターテイメントのオーナー、アンソニー・ティフスの目に留まり、同レーベルと契約。ザ・ゲームなどの、西海岸出身のヒップホップ・アーティストのオープニング・アクトなどを務めながら、自身の作品をレコーディングしてきた、カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマーことケンドリック・ラマー・ダックワーズ。

2010年に配信限定で発表したミックス・テープ『Overly Dedicated』が, ビルボードのヒップホップ・R&Bアルバム・チャートに入ると、往年のギャングスタ・ラップを彷彿させるリリックと、様々なビートを自在に乗りこなすスキルが注目を集め、ドクター・ドレが率いるアフターマスと契約。2011年に初のフル・アルバム『Overly Dedicated』をトップ・ドッグから発売すると、気鋭の新人ヒップホップ・アーティストとして多くのメディアに取り上げられる。翌年にはアフターマスからメジャー・デビュー・アルバムとなる『good kid, m.A.A.d city』をリリース。2015年には2枚目のフル・アルバム『To Pimp a Butterfly』を発売。2作連続でプラチナ・セールスを獲得する一方、多くのメディアや愛好家のコミュニティから絶賛され、2016年にはヒップホップ・アーティストでは史上最多となる、グラミー賞11部門にノミネートする快挙を成し遂げた。

本作は、前作から約2年ぶりの新作となる通算3枚目のオリジナル・アルバム。といっても、前回のアルバムが発売されたあとも、編集盤『Untitled Unmastered.』やマルーン5とのコラボレーション・シングル『Don’t Wanna Know』など、多くの作品をリリースしていたので、どちらかと言えば「まだ3作目なのか」という印象を抱いてしまう。

今回のアルバムは、演奏者やゲスト・ミュージシャンが多数参加していた前作に比べると、本作のゲストは少なく、主役のラップとトラックにスポットを当てたシンプルなもの。だが、それ故に彼の実力の高さと、メジャー・デビュー後に更なる進化を遂げたラップのスキルが明確になったように思える。

アルバムの実質的な1曲目”DNA”は前作でも演奏しているギタリストのマット・シェファーが参加した楽曲。マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースしたトラックは、2000年代初頭のジャーメイン・デュプリやリル・ジョンが手掛けたようなバウンズ・ビートだが、ケンドリックは滑らかなラップで軽やかに乗りこなしている。曲の前半と後半で異なるビートを採用している点も面白い。決して斬新な曲ではないのだが、彼の手にかかると新鮮に聞こえるのはなぜだろうか。

これに対し、ドクター・ドレやエミネムの作品にも携わっている、ベーコンことダニエル・タンネンバウムがプロデュースを担当した”Element”はキッド・カプリがヴォーカルで、ジェイムズ・ブレイクがソングライティングで参加している。ウータン・クランの楽曲を彷彿させる不気味なピアノやキーボードの音色が鳴り響き、声ネタやスクラッチを使っているが、特定の楽曲をサンプリングしたものではないらしい。おどろおどろしいトラックに乗せて、言葉を畳みかけるスタイルは、ウータン・クランの一員として華々しいデビューを飾ったころのRZAを思い起こさせる。

一方、本作の中で異彩を放っているのは、リアーナをフィーチャーした”Loyalty”。DJダーヒらが手掛けたトラックは、ブルーノ・マーズの”24K Magic”をサンプリングしたものだ。原曲を知る人にはお馴染みのフレーズを、テンポを落としてループさせたトラックの上で、歌うようにラップする2人の姿が印象的。高揚感が魅力のダンス・ナンバーを陰鬱な雰囲気のヒップホップに組み換える発想の豊かさと、それを具体的な楽曲に落とし込む各人のスキルが光っている。

そして、本作のハイライトともいえるのが、マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースした”Humble”だ。シンセサイザーとギターによるシンプルな変則ビートに乗せて、リズミカルに言葉を繋ぐ姿が格好良い曲。かつてはポップな印象を与えていたバウンズ系のビートを、緊迫感あふれるヒップホップ・ナンバーに生まれ変わらせるケンドリック・ラマーの個性を再認識させられる楽曲だ。

今作は、シンセサイザーを使ったトラックが多く、ゲスト・ミュージシャンも少なくなっているなど、前作や『Untitled Unmastered.』で彼の音楽を知った人には少し地味に映るかもしれない。だが、あらゆるトラックを器用に乗りこなすだけでなく、ダークでスリリングな、ストリートの雰囲気を楽曲に吹き込む彼のスキルは、トラックで使われる音色に関係なく、本作でも堪能できる。

流行の変化に抵抗することも、過剰に順応することもなく、独自の解釈を加えて自身の音楽に染め上げるスキルは、現役のミュージシャンの中では頭一つ抜けている。このアルバムは2017年のヒップホップ・シーンを代表する作品の一つになると思う。

Producer
Anthony "TopDawg" Tiffith, Dr. Dre, Dave "miyatola" Free etc

Track List
1. Blood
2. DNA
3. Yah
4. Element
5. Feel
6. Loyalty feat. Rihanna
7. Pride
8. Humble
9. Lust
10. Love feat. Zacari
11. XXX feat. U2
12. Fear
13. God
14. Duckworth



Damn
Kendrick Lamar
Aftermath
2017-04-14

 
記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ