ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Warner

TLC - TLC [2017 852 Musiq, Sony Music Red, Warner, Cooking Vinyl]

1992年、ニュー・ジャック・スウィングを取り込んだダイナミックなサウンドと、個性的な歌声を持つT-ボスとチリのヴォーカル、そして、レフト・アイのエネルギッシュなラップが一つの音楽の中で炸裂したダンス・ナンバー”Ain't 2 Proud 2 Beg”で、華々しいデビューを飾り、続く”Baby-Baby-Baby”では一転、ロマンティックなバラードを披露してR&Bチャートを制覇した、T-ボス、レフト・アイ、チリによるアトランタ発の3人組ガールズ・グループ、TLC。

上の2曲を含むデビュー・アルバム『Ooooooohhh... On the TLC Tip』が、アメリカ国内だけで400万枚以上のセールスを上げ、SWVやアン・ヴォーグと並ぶアメリカを代表するガールズ・グループの一つになった彼女らは、94年に2枚目のアルバム『CrazySexyCool』を発表。同郷のプロダクション・チーム、オーガナイズド・ノイズが制作した”Waterfalls”や、当時所属していたラ・フェイスの共同経営者で、アメリカを代表するヒット・メイカーの一人だったベイビーフェイス作のバラード”Diggin' on You”などを収めた同作は、アメリカ国内だけで1100万枚以上を売り上げ、女性ヴォーカル・グループ初のダイアモンド・ディスクを獲得。「史上最も売れた女性グループのアルバム」として、ポピュラー・ミュージックの歴史にその名を刻んだ。

紆余曲折を経て、99年には3枚目のアルバム『FanMail』を発表。アメリカ国内だけで600万枚、日本でも100万枚を売り上げるなど、健在っぷりをアピールしたが、2002年にレフト・アイが事故死。以後、ステージには何度か立っているものの、グループとしての活動は停滞する。

本作は、レフト・アイの没後に発表された2002年の『3D』から、実に15年ぶりとなる5枚目のアルバム。有名なプロデューサーを起用して、レフト・アイが生前に録音した音源を使った前作に対し、本作はT-ボスとチリの2人が中心になって制作している。

アルバムに先駆けてリリースされた“Way Back”は、今回が初共演となるスヌープ・ドッグをフィーチャー。アッシャーの”Mind Of Man”やラトーヤの”I'm Ready”などを手掛けてきたD’マイルがプロデュース。ミディアム・テンポのトラックに乗せて、甘くゆったりと歌う姿は”Diggin' on You”や”Baby-Baby-Baby”を彷彿させる。ミディアム・バラードの途中でラップを挟むスタイルは”Waterfalls”を思い起こさせるが、この曲でラップを披露しているのは、どんな曲でもアグレッシブなラップを聴かせるレフト・アイではなく、柳のように飄々と言葉を繋ぐスヌープ。TLCとスヌープの相性の良さに驚かされると同時に、レフト・アイの存在の大きさを再確認させられる。

また、今回のアルバムで異彩を放っているのがブラック・アイド・ピーズの”Where Is The Love”などに携わってきた、ロン・フェアのプロデュース作品。アース・ウィンド&ファイアの”September”やボビー・ヘブの”Sunny”のフレーズを引用したアップ・ナンバー。往年の名曲を引用したトラックは過去の作品でもあったが、メロディに取り込んだ楽曲はこれが初めて。新録曲を手掛けながら、再発ビジネスにも関わっているロンの持ち味が発揮されたキャッチーな曲だ。

また、本作の収録曲では一番最初に公開された”Hater”は、シャキーラやピンクに楽曲を提供しているマイケル・バスビーが手掛けた作品。彼女達が得意とするミディアム・テンポの楽曲だが、これまでのアルバムには少なかった明るい雰囲気に仕上げている。レフト・アイのかわりにラップ・パートも担当する二人の姿が印象的。二人の対称的な声質を活かしたポップでキャッチーなものだ。

そして、クリス・ブラウンなどの楽曲を手掛けているコリー・マークスが制作を担当したシングル”Joy Ride”は、彼女らの持ち味を活かした粘り強いメロディが魅力のミディアム。ヒップホップのビートをベースに、ギターやホーンの伴奏を盛り込んだトラックは『CrazySexyCool』の収録曲を連想させる。

今回のアルバムでは、彼女達の代表曲に多いミディアム・テンポの作品を中心に揃えつつ、時代の変化に合わせて新しい音色やフレーズを盛り込み、2017年のTLCの音楽として楽しめるものに纏めている。また、2人のヴォーカルも往時の雰囲気を残しつつ、経験を重ねてしなやかさを増していると思う。しかし、90年代の雰囲気を残している分、レフト・アイが欠けた穴の大きさが目立っており、素晴らしいパフォーマンスでありながら、どこか物足りなさを感じさせる。シュープリームスに始まり、ディスティニーズ・チャイルドやフィフス・ハーモニーまで、メンバーが入れ替わったり脱退したりしたグループは少なくないが、一人が欠けただけで大きく雰囲気が変わってしまうのは、三人全員がグループにとって欠かせない存在だった彼女達だけだと思う。

ポピュラー・ミュージックの歴史に残る名グループの集大成にふさわしい、充実した作品。ヴォーカル・グループの歴史上数少ない、全員が際立った個性を持っていた3人の偉大さを再確認させてくれる佳作だと思う。

Producer
Dunlap Exclusive, D'Mile etc

Track List
1. No Introduction
2. Way Back feat. Snoop Dogg
3. It’s Sunny
4. Haters
5. Perfect Girls
6. Interlude
7. Start a Fire
8. American Gold
9. Scandalous
10. Aye Muthafucka
11. Joy Ride
12. Way Back feat. Snoop Dogg (Extended Version)




TLC
TLC
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-06-30

Plaza - Shadow [2017 OVO Sound, Warner]

ドレイクパーティネクストドアといった人気アーティストが所属し、世界中の音楽ファンの関心をカナダに向けさせた、トロントに拠点を置くOVOサウンド。彼らのほかにも、ロイ・ウッズやマジッド・ジョーダンなど、実力に定評のある若手を数多く擁する同レーベルが、新たに送り出したのがトロント出身のシンガー、プラザだ。

6月10日のラジオ番組で契約を発表。その二日後にデビュー作『Shadow』を発表した彼は、2016年2月に契約したdvsn以来の新人。本名や年齢など、細かい情報は不明だが、声やアーティスト写真を見る限り、かなり若い男性シンガーのようだ。

このアルバムは、彼のメジャー・デビュー作となる5曲入りのEP。2016年に自主制作で発表したEP『One』以来となる新作で、前作同様、彼の中性的で美しいテナーが堪能できるR&B作品になっている。

1曲目に収められている”Karma”は、ピアノにもオルゴールにも似ている、切ない音色を使った伴奏が印象的なミディアム・バラード。繊細なテナー・ヴォイスが楽曲の物悲しい雰囲気を強調している。甘酸っぱいヴォーカルはテヴィン・キャンベルにも似ているし、ファルセットはマックスウェルっぽくも聴こえる。また、シンセサイザーを使ってヒップホップの要素を盛り込んだトラックはレーベルの先輩、パーティネクストドアを彷彿させる。デビュー作の1曲目にふさわしい、初々しい歌唱が魅力的だ。

続く”Personal”は、ビートを強調したトラックと、中音域を多用した大人っぽいヴォーカルが素敵なミディアム・ナンバー。コンピューターを使って作った、ヒップホップのビートとシンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックはトレイ・ソングスなどの楽曲に、爽やかな中音域を多用したヴォーカルはソーモに少し似ている。

そして、3曲目の”Over”は”Personal”同様、ヒップホップ色の強いトラックが印象的なミディアム。シンセサイザーの音を重ねた上物は、シャーデーなどの作品を思い起こさせる神秘的なものだ。硬い声質でラップをするように歌う姿は、アンダーソン・パックに通じるものがある。

また、”Run This”はヒップホップ色の強いトラックだが、ファルセットを多用したロマンティックなヴォーカルが光るミディアム・バラード。柔らかい声で切々と歌う姿はBJザ・シカゴ・キッドやスモーキー・ロビンソンに通じるものがある。ポップで聴きやすいが、切ない雰囲気も醸し出している素敵な曲だ。

そして、アルバムの最後を飾る”Love You Again”は、重いビートと物悲しい雰囲気のメロディの組み合わせが印象的なミディアム。性別は違うが神秘的で繊細なヴォーカルはインターネットのシドにも似ている。メロディを丁寧に歌う姿が光る曲だ。

今回のEPを聴く限り、彼はドレイクやパーティネクストドアのような、歌とラップを使い分ける人ではなく、ロイ・ウッズのような歌だけで勝負していくアーティストのようだ。年齢などはわからないが、若さ溢れる爽やかな歌声と、色々な表情を見せる歌唱力は、スモーキー・ロビンソンやマイケル・ジャクソンにも通じる稀有なものを感じさせる。また、トラックは奇抜なものが少なくシンプルで、彼の歌唱力をアピールするのに一役買っている。ドレイクやパーティネクストドアを聴いた時の新鮮さと、トレイ・ソングスやエリック・ベネイのような本格的なヴォーカルを楽しめる本作は、歌とラップを使い分けるアーティストが増えた現代では、とても新しい音楽に聴こえる。

ラップと歌を使い分けるスタイルで、世界中のミュージシャンに新しい表現手法を提示したドレイクとは正反対のアプローチで、音楽の面白さを提案した佳作。次はどんな曲を聴かせてくれるのか、今から楽しみな気鋭の新人だ。

Track List
1. Karma
2. Personal
3. Over
4. Run This
5. Love You Again





a

OVO Sound/Warner Bros.
2017-06-12

PARTYNEXTDOOR - Colour 2 EP [2017 OVO Sound, Warner]

ジャマイカ系の母とトリニダード系の父の間に生まれ、10代の頃から音楽活動を行っていた、オンタリオ州ミンサガ出身のシンガー・ソングライター、パーティネクストドアことジャーロン・アンソニー・ブラストウェイト。

インターネット上に公開した自作曲やミックステープが高い評価を受け、彼と同じカナダ出身の人気ミュージシャン、ドレイクが率いるOVOと契約。同レーベルの作品を配給しているワーナーからのメジャー・デビューを果たした。

OVOと契約した後は、2016年までに2枚のフル・アルバムと2枚のEPをリリース。それ以外にも多くの曲にフィーチャリング・アーティストやソングライターとして参加してきた。なかでも、2016年に発売した2枚目のアルバム『PartyNextDoor 3』は、アメリカとイギリスのR&Bチャートを制覇(アメリカではヒップホップチャートでも1位)。同作からシングル・カットされた”Come and See Me”はグラミー賞やビルボード・ミュージック・アワードにもノミネートするなど、破竹の勢いで音楽業界の頂点へと昇り詰めていった。

今回のEPは、自身の名義では『PartyNextDoor 3』以来、約1年ぶりとなる新作。もっとも、今年に入ってからも、元ワン・ダイレクションのゼインのシングル”Still Got Time”や、ドレイクのアルバム『More Life』に収録されている”Since Way Back”に客演し、ビヨンセとジェイZをフィーチャーしたDJキャレドのシングル”Shining”にソングライターとして参加するなど、精力的に活動していた彼だけに、予想以上に短い間隔で作られた印象すらある。

プロデュースは、彼とG.ライを中心に、前作にも携わっているニーンヨや40、ドレイクの『More Life』にも起用されたウォリス・レインやマージなどが参加。OVOとゆかりの深い面々が揃った、小粒だが味わい深い作品になっている。

アルバムの1曲目に収められている”Peace of Mind”は、ジャーロンとG.ライに加え、オズが制作に参加。チキチキというビートに、幻想的なシンセサイザーの上物が加わったトラックが、不思議な雰囲気を醸し出しているミディアム・ナンバーだ。ジャーロンは歌に専念しているものの、まるでミュージカルのように歌と言葉を使い分け、ラップとは違った形で、楽曲に起伏をつけている。ディアンジェロの抽象的なソウル・ミュージックと、マックスウェルの滑らかなメロディ、ドレイクのキャッチーで斬新なヒップホップが融合した面白い曲だ。

続く”Freak In You”は、ニーンヨやトップ・フレアなどが制作に携わった曲。オルゴールのような音色など、ロマンティックな音を詰め込んだトラックと、ジョデシーの”Come And Talk To Me”など、色々なR&Bのヒット曲からフレーズを引用しながら、落ち着いたメロディでじっくりと歌を聴かせる姿が印象的。サビ以外の部分のメロディを、ラップのように崩して歌うことで、ヴォーカルの表現の幅を広げている。ドゥー・ヒルやジャギド・エッジのような、90年代に多くの足跡を残したR&Bシンガー達のスタイルを取り入れながら、しっかりと2017年の自分の音楽に落とし込んでいる佳曲だ。

そして、トップ・フレアとマージが携わっている”Low Battery”は、ドレイクの”Passionfluit”を思い起こさせる、ハウス・ミュージックのビートを使ったアップ・ナンバー。”Passionfluit”は色々な音色を使い分け、カリプソなどを連想させる陽気で華やかな作品に纏め上げていたが、こちらは引き締まった低音と、しなやかなメロディが印象的な、洗練された雰囲気の曲。シンプルなトラックで彼の歌声を引き立てる手法が格好良い。多彩なビートに対応しつつ、きっちりと自分の曲に落とし込む制作技術が光っている。

そして、アルバムの最後を飾る”Rendezvous”は、『More Life』で”Nothings Into Somethings”を担当したウィリス・レーンとの共作。この曲も”Nothings Into Somethings”同様、スローテンポの曲で、歌い手のセクシーな一面を引き出す、艶めかしいメロディが特徴的。声域の幅が広く、声も太いだけでなく、ファルセットを多用したメロディからラップまでこなせる器用さを兼ね備えた彼との相性は抜群で、要所要所で色っぽいヴォーカルを聴かせながら、ラップや地声でしっかりと曲を引き締めている。

今回のアルバムは、前作の路線を踏襲した、音数の少ないトラックと、所々にラップを挟み込んで、滑らかな歌を際立たせたメロディが印象的なものだ。そのスタイルは、直近の客演仕事やソングライターとして携わった作品とは異なるものだが、ヴォーカルとして恵まれた声と技術を持ち、ラップもこなせる彼にとっては、本作のような曲が最適だと思う。また、前作と比べると、メロディが流麗でしなやかになっている。このように、自分の持ち味を生かしつつ、それにあった曲を作る技術に磨きをかけたところが、本作の面白いところだろう。

曲作りから歌やラップまで、なんでもこなせるパーティネクストドアの、更なる成長を感じさせる作品。レーベルのボス、ドレイクと並んでカナダを代表するミュージシャンになる日も近いと感じさせる。魅力的なR&B作品だ。

Producer
PARTYNEXTDOOR, G. Ry, OZ, Neenyo, 40, Top FLR, M3rge, Wallis Lane

Track List
1. Peace of Mind
2. Freak In You
3. Low Battery
4. Rendezvous






COLOURS 2 [Explicit]
OVO Sound/Warner Bros.
2017-06-03


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