ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

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Kamasi Washington - Harmony Of Difference [2017 Young Turks]

カリフォルニア州ロス・アンジェルス生まれ、イングルウッド育ちのサックス奏者、カマシ・ワシントン。

高校時代から音楽を学んでいた彼は、大学に進むと音楽民族学を専攻しながら、ジャズ・ミュージシャンとしても活動を開始。ケニー・バレルやビリー・ヒギンスといった大物とも共演してきた。その後、ハービー・ハンコック等のジャズ・ミュージシャン達と仕事をしながら、ローリン・ヒルやスヌープ・ドッグといった、ヒップホップやR&Bのミュージシャンともレコーディングをするようになった彼は、名うての演奏者として同業者の間では知られた存在となった。

その一方で、2000年代中頃から、自身の名義でも2000年代中頃から継続的に作品を録音するなど、精力的に活動していた彼。そんな彼は2014年から2015年にかけて、フライング・ロータスの『You're Dead! 』、ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly 』、サンダーキャットの『The Beyond / Where The Giants Roam』という3枚の傑作に携わったことで注目を集める。これらの作品で印象的な演奏を残した彼は、2015年にフライング・ロータス等の作品を配給しているブレインフィーダーからアルバム『The Epic』をリリース。CD3枚組という大作ながら、壮大なスケールと先鋭的なアレンジ、緻密な構成で高く評価された。

このアルバムは、今年の4月に配信限定で発売した13分にも及ぶ大作シングル”The Truth”から約5か月という、短い間隔でリリースされたEP。同曲に5作の新録曲を加えた本作では、ベーシストのマイルズ・モズリーや、サンダーキャットの実兄としてもお馴染みのドラマー、ロナルド・ブルーナー、アルバム『Planetary Prince』も好評なキャメロン・グレイブスなど、彼と縁の深い人気ミュージシャン達が集結。高い演奏技術と豊かな表現力を惜しみなく聴かせている。

本作の1曲目は、艶めかしいサックスの音色が印象的な”Desire”。マイルス・モズリーのグラマラスなベースと、目立たないが安定した演奏で主役を引き立てるロナルド・ブルーナーのドラム。そして、各人が絶妙なタイミングで流麗なフレーズを挟み込む構成が魅力の作品だ。ミディアム・テンポで滑らかなメロディの楽曲ということもあり、過去の録音にはないくらい、ロマンティックな印象を受ける。

また、これに続く”Humility”は、前曲とほぼ同じ編成でダンス・サウンドに取り組んだ作品。カマシ・ワシントンを含む3人のホーン・セクションが奏でるダイナミックなメロディと、荒々しいアドリブ、脇を固めるリズム・セクションと鍵盤楽器のコンビネーションが光っている。60年代初頭、ハンク・モブレーやリー・モーガンが残したような、力強く躍動感に溢れるパフォーマンスが堪能できる佳作だ。

それ以外の曲では、サックスが奏でる滑らかなメロディが魅力の”Perspective”が目立っている。ヒップホップやファンクのビートを取り入れたミディアム・ナンバーは、スライ&ザ・ファミリーストーンの”Family Affair”を連想させるしなやかなグルーヴが格好良い曲だ。

そして、本作の収録曲では異彩を放っているのが、5曲目の”Integrity”だ。この曲で取り入れたのは、なんとボサノバのリズム。軽妙で洗練されたボサノバのグルーヴに乗って、艶っぽい演奏を披露している。キャノンボール・アダレイやスタン・ゲッツなど、ブラジル音楽のエッセンスを取り入れたジャズ・ミュージシャンは沢山いるが、彼のような極端にセクシーなパフォーマンスを披露した例はあまりないかもしれない。

今回のアルバムでは、前作の路線を踏襲しつつ、60年代のジャズに歩み寄った作品といえるかもしれない。ファンクやブラジル音楽など、ジャズ以外の音楽エッセンスを取り入れた音楽は、60年代から70年代にかけて流行したが、彼はそこにヒップホップやエレクトロ・ミュージックのミュージシャンとコラボレーションする中で培った、DJやトラックメイカーの編集技術を盛り込むことで、異なる音楽を混ぜることで生まれる違和感をコントロールし、楽曲に起伏を付けている。

DJやトラック・メイカーの柔軟な発想と、求める音を確実に具体化する演奏者としての高い技術が同居した魅力的な作品。昔のジャズに慣れ親しんだ人にも、ジャズをあまり聞かない人にも、親しみやすく新鮮な面白いアルバムだと思う。


Track List
1. Desire
2. Humility
3. Knowledge
4. Perspective
5. Integrity
6. Truth




Kamasi Washington - Truth [2017 Young Turk]

スヌープ・ドッグやロビン・シックといった有名なヒップホップ、R&Bアクトの作品をはじめ、ケニー・バレルやジョージ・デュークなどの大物ジャズ・ミュージシャンの録音、はたまた、ケンドリック・ラマーやフライング・ロータス等の気鋭のミュージシャンの楽曲まで、様々な音源に携わってきた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のテナー・サックス奏者、カマシ・ワシントン。

色々なミュージシャンの楽曲に参加する一方で、自身の名義でも、2005年にザ・ネクスト・ステップとのコラボレーション作品『Live At 5th Street Dick's 』でレコード・デビュー。その後、2015年までに自主制作で発表した3作品を含む5枚のアルバムを発表してきた。

そんな彼が、多くの人から注目を集めるようになったのは、2014年から2015年にかけて参加した3枚のアルバムによる部分が大きい。フライング・ロータスの『You're Dead! 』、ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly 』、サンダーキャットの『The Beyond / Where The Giants Roam』という、傑作と称される録音で印象的な演奏を聴かせた彼は、いち演奏家でありながら、多くの人から知られる存在になった。

そして、2015年には、フライング・ロータス達の作品を配給しているブレインフィーダーからCD3枚(LP盤も同じ)、約3時間という大作『Epic』を発表。ヒップホップやソウル・ミュージック、アフリカ音楽などの要素を楽曲の隅々にまで盛り込んだ作風で、昔からのジャズ愛好家からヒップホップのサンプリング・ソースを通してジャズの古典に触れた若者まで、幅広い世代から注目を集めた。

今回のEPは、自身の名義では『Epic』以来、約1年半ぶりの新作で、TheXX等の作品を配給している、ヤング・タークスからリリースされた、彼にとって初のEPでもある。

EPといっても、収録されているのは13分にも及ぶタイトル曲”The Truth”のみ。だが、この曲には、彼の豊かな経験と実績が生み出した、壮大な音の絵巻物が盛り込まれている。

参加ミュージシャンの一覧を見て驚いたのは、その人数。過去の作品でも2~30人規模での録音は残しているが、本作ではサックスが2名(もちろん、テナーサックスの担当はカマシ自身だ)に、ベースが2名、ドラムが2名(うち1名はパーカッションと兼任)に、チェロやバイオリン、キーボードやコーラスなど総勢17パート約30名のミュージシャンが、たった1曲のために終結ている。

しかも、この中には、エレキ・ベース担当のサンダーキャットことステファン・バーナーや、ダブル・ベース担当のマイルズ・モーズリー、ドラム担当のロナルド・バーナー・ジュニアなど、2017年に入って新作を発表した、人気と実力を兼ね備えたプレイヤー達も名を連ね、カマシの新作に華を添えている。

さて、肝心の内容だが、この曲では、キャメロン・グレイブスの滑らかなピアノ演奏から幕を開ける。その後は、ダブル・ベースやギターの艶めかしいフレーズが続くと、ヴィブラフォンやキーボード、ホーン・セクションなど、次々と色々な楽器が加わっていき、中盤からは、ストリングスやコーラスなども入り、まるでクラシック音楽の交響曲のような、雄大でロマンティックな演奏が展開される。

しかし、後半に入るとサックス、ドラム、ベースを軸にした、所謂ステレオタイプの「モダン・ジャズ」に近いスタイルの演奏を挟み、再び壮大なオーケストラへ。その後も、ベースやストリングスのソロ(ストリングスは複数なので厳密には「ソロ」ではないが)へと続き、エレキ・ギターVSストリングスの演奏バトルや、彼らの演奏に絡みつくコーラスなど、音と音が混ざり合ったバロック絵画のように鮮やかで躍動感たっぷりの演奏で幕を閉じる。

彼の新作を聴いた後に、真っ先に思い出したのはアリス・コルトレーンの『World Galaxy』やファラオ・サンダースの『Karma』のような、70年代前後にリリースされたジャズのレコードだ。ストリングスやコーラスといった、ジャズの世界ではあまり使われない楽器を加え、大人数で録音。レコード盤の片面をフルに使った、ジョン・コルトレーンの『Om』や、ファラオ・サンダースの『Black Unity』のように、収録曲を絞り、1曲でアルバム1枚分の起承転結を表現する。カマシの演奏からは、彼らの影響を強く感じた。

おそらく、本作の背景には、サンプリング文化や、レアグルーヴ・ムーヴメント、彼を取り巻く環境(『The Epic』を配給したブレインフィーダーの主催者、フライング・ロータスはジョンとアリスの甥だ)など、色々な要素があると思う。だが、一番大きいのは、物心がついたころからヒップホップやR&B、エレクトロ・ミュージックが身近にある現代のミュージシャンにとって、ソウル・ミュージックやアフリカ音楽を包括した彼らの音楽は、親しみやすく、刺激的だったのだと思う。

ヒップホップなどを聴いて育った新しい世代が、フリー・ジャズやソウル・ジャズを自分の時代に合わせてアップトゥデイトした演奏が繰り広げた、壮大かつ刺激的な作品。この録音が気に入った人は、ぜひ往年のジャズのレコード(できれば『Impulse!』のロゴが入ったもの)を手に取って欲しい。今から40年近く前に、ソウルやファンク、アフリカ音楽などが入り混じった複雑なのにキャッチー、緻密なのにダイナミックな音楽を作り上げた人々がいたことに驚かされると思う。

Producer
Kamasi Washington

Track List
1. The Truth



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