ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

eOne

Wu-Tang Clan - The Saga Continues [2017 eOne]

往年のブラック・ミュージックをサンプリングしているにもかかわらず、他のミュージシャンとは一味違う不気味な雰囲気を醸し出すトラックと、ドスの効いた声で紡がれる攻撃的なラップが印象的だった93年のデビュー・アルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』で、多くの音楽ファンの度肝を抜いた、ニューヨークのスタッテン・アイランド出身のヒップホップ・グループ、ウータン・クラン。

91年にプリンス・ラキームの名義でトミー・ボーイからアルバムをリリースしているRZAを中心に、彼の従兄弟であるGZAやオール・ダーティー・バスタード(2004年に死去)、既にラッパーとして活動していたゴーストフェイス・キラーやU-ゴッドといった個性豊かな面々からなる彼らは、RZA達が生み出すおどろおどろしいのに中毒性の高いビートと、全身全霊で自分のキャラをアピールする各メンバーのラップを武器に、多くのヒット作を残してきた。

また、メアリーJ.ブライジとのコラボレーション曲でグラミー賞を獲得したメソッド・マンや、マライア・キャリーの”Fantasy”のリミックス版で、主役を押しのける強烈なパフォーマンスを披露したオール・ダーティー・バスタードをはじめ、映画「キル・ビル」の映画音楽を手掛けたRZAや、様々なコラボレーション作品を含む多くのアルバムを残しているゴーストフェイス・キラーなど、各メンバーがソロ・アーティストとしても成功を収めてきた。

このアルバムは、2014年の『A Better Tomorrow』 以来、約3年ぶりとなる新作。すべての楽曲をリーダーのRZAと、彼らのライブをDJとして支えているマスマティックスが制作し、各曲ではメンバーに加え、キラー・プリーストやストリート・ライフのような準メンバー、レッドマンやショーン・プライスなどの人気ミュージシャンが集結、地道な活動で鍛え上げた逞しさとしなやかさを兼ね備えたヒップホップを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Lesson Learn'd”は、インスペクター・デックとメソッド・マンのコラボレーション作品。デビュー当時の彼らを思い起こさせる、微妙な揺らぎが不安を掻き立てるビートの上で渋いラップを聴かせるインスペクター・デックと、軽い声質でがなり立てるようなラップを披露するレッドマンのコンビネーションが光る曲だ。どことなくだが、90年代に鮮烈なデビューを飾ったときのことを思い起こさせる。

これに対し、ゴーストフェイス・キラー、メソッド・マン、RZAというソロでも実績豊富な面々に加え、ブロンクス出身のベテラン・ラッパー、ショーン・プライスが参加した”Pearl Harbor”は、ドロドロとしたビートの上で繰り広げられるマイク・リレーが魅力の作品。楽器の演奏とサンプリングを混ぜ合わせたビートの上で、個性豊かな4人のラップが次々と繰り出されるスリリングな曲だ。タイトルからも予想できるように、日本人には少し引っ掛かる内容のリリックだが、それを割り引いても捨てがたい魅力がある。

また、本作に先駆けて公開された”People”は、本作の収録曲では唯一ウータン・クランのメンバー全員が集結した曲。ディプロマッツの”I've Got the Kind of Love”をサンプリングしたソウルフルなトラックの上で、各人が強烈な個性を発揮している佳作。ゲストとして招かれたレッドマンを含めると8人の大人数によるマイク・リレーだが、各人のキャラがきちんと立っているから恐ろしい。

そして、アルバムの収録曲では珍しい、ヴォーカル・パートが入っている”G'd Up”はメソッド・マンに加えてムジー・ジョーンズとR-ミーンが参加した作品。ウータンの面々に比べると、知名度では大幅に劣る面々だが、メソッド・マンに負けない存在感を発揮している。ほかの曲に比べると、ドラムの音を強調したシンプルなトラックだが、サビを担当する泥臭いヴォーカルと合わさるとちょうどいい感じに聴こえる。

尖ったビートとラップで華々しいデビューを飾った彼らだが、今回のアルバムでは2000年以降の彼らの作品で頻繁に見られるような、強烈な印象を与えつつ、聴き手を疲れさせないポップな楽曲が増えていると思う。音楽界のトップ・スターから気鋭のビート・メーカーまで、様々なタイプのアーティストとコラボレーションしながら、映画音楽にも携わるなど、様々な仕事で結果を残してきた経験が、先鋭的だけど大衆的という、独特な作風を育んだのだと思う。

強い個性と、それを支える確かな実力を備えた彼らにしか作れない唯一無二の作品。色々なラッパーが試行錯誤しながら新しい音楽を生み出していた、90年代のヒップホップ・シーンの熱気と、ベテランらしい高い完成度が同居した、懐かしさと新鮮さが同居した面白い音楽だ。

Producer
RZA, Mathematics

Track List
1. Wu-Tang the Saga Continues Intro feat. Rza
2. Lesson Learn'd feat. Inspektah Deck and Redman
3. Fast and Furious feat. Huehef and Raekwon
4. Famous Fighters (Skit)
5. If Time Is Money (Fly Navigation) feat. Method Man
6. Frozen feat. Method Man, Killa Priest and Chris Rivers
7. Berto and the Fiend (Skit) feat. Ghostface Killah
8. Pearl Harbor feat. Ghostface Killah, Method Man, RZA, and Sean Price
9. People Say Wu-Tang Clan feat. Redman
10. Family (Skit)
11. Why Why Why feat. RZA and Swinkah
12. G'd Up feat. Method Man, R-Mean and Mzee Jones
13. If What You Say Is True Wu-Tang Clan feat. Streetlife
14. Saga (Skit) feat. RZA
15. Hood Go Bang feat. Redman and Method Man
16. My Only One feat. Ghostface Killah, RZA, Cappadonna and Steven Latorre
17. Message D5. The Saga Continues Outro feat. RZA



WU-TANG: THE SAGA CONTINUES [CD]
WU-TANG CLAN
36 CHAMBERS ALC/EONE
2017-10-13

Tamar - Bluebird Of Happiness [2017 Logan Land, eOne]

テイマー・ブラクストンこと、テイマー・エスティーヌ・ブラクストンはメリーランド州セヴァーン出身のシンガーソングライター。

彼女は自身の姉妹と結成した5人組ヴォーカル・グループ、ブラクストンズとして5歳の頃から活動。多くのステージを経験していく中で実力を認められ、アリスタ・レコードと契約。90年にシングル”Good Life”をリリースする。その後、長女のトニはソロに転向、多くのヒット曲を残し90年代を代表する女性シンガーの一人となった。

その後、トニ以外の4人のうちトレイシーを除く3人は、96年にブラクストンズの名義でアルバム『So Many Ways』を発表。”Slow Flow”や”The Boss”(ダイアナ・ロスの同名曲のリメイク)などをヒットさせた。

また、彼女は1999年のEP『Tamar: Just Cuz』でソロ・デビューすると2016年までに4枚のフル・アルバムと8枚のシングルを録音。その中でも、2013年に発表した2枚目のアルバム『Love and War』と同作のタイトル・トラック”Love and War”は全米R&Bチャートを制覇する大ヒットとなった。

このアルバムは、自身の名義では2015年の『Calling All Lovers』以来となる通算5枚目のフル・アルバム。彼女が設立したレーベル、ローガン・ランドからの発売。しかし、ミュージックラトーヤなどの作品を扱っているeOneが配給を担当し、プロデューサーとして、ロドニー・ジャーキンスやヴォンセント・ハーバートといった有名ミュージシャンを数多く手掛けている面々が参加。可愛らしさと老練さを兼ね備えたヴォーカルを引き立てる、美しいメロディのR&B作品を揃えている。

本作のオープニングを飾る”My Forever”は、フェイス・エヴァンスの”I Love You”やジェニファー・ロペスの”All I Have”を連想させる、生演奏風の音色を使ったソウル・ミュージック色の強いトラックと、艶めかしいメロディが印象的なスロー・ナンバー。ボビー・ヴァレンチノやオマリオンなどに曲を提供しているコ・キャプテンズが制作に携わり、大人の色気を前面に押し出したスタイルは、姉のトニ・ブラクストンによく似ている。90年代にこの曲が発売されていたら、大ヒットしていたと思わせる、ロマンティックなバラードだ。

これに対し、トロイ・テイラーがプロデュースした”Run Run”は、彼女の作品では異色のレゲエ・ナンバーだ。ジェイZやカニエ・ウエストなどがサンプリングしたことでも知られているシスター・ナンシーの82年のヒット曲”Bam Bam”を引用した本作は、ミュージカル・ユースの”Pass The Dutchie”を思い起こさせるポップで躍動感あふれるトラックの上で、貫禄のある歌声を聴かせている。 丁寧な歌唱が持ち味のテイマーだが、この曲ではリディムの持つ陽気で軽快な雰囲気を上手く咀嚼した、軽妙なヴォーカルを披露している。

しかし、本作の目玉は何といっても彼女の歌唱力を前面に押し出したスロー・バラード”Blind”だろう。ロドニー・ジャーキンスが手掛けたこの曲は、映画「キャデラック・レコード」のクライマックスでビヨンセがカヴァーしたことも話題になった、エッタ・ジェイムスが68年に発表した名バラード”I'd Rather Go Blind”のフレーズを引用した作品。複雑なメロディを力強い歌声でねじ伏せたエッタやビヨンセに比べると、パワーでは見劣りする部分もあるが、ピアニッシモからフォルテッシモ、地声から裏声まで、途切れることなく繋ぐ技術は、彼女達に負けていない。ヴォーカリストとしてのテイマーの実力の高さを再確認できる良曲だ。

そして、本作に先駆けて後悔された”My Man”はTLCやボーイズIIメンなどの作品を手掛けているプロダクション・チーム、ティム&ボブのボブ・ロビンソンと制作したスロー・ナンバー。シンセサイザーを多用したスタイリッシュなトラックに乗って、艶やかなヴォーカルを披露する、ムーディーなバラード。彼女の代表曲”Love and War”や姉トニの”Un-Break My Heart”の路線を踏襲した作風からは、彼女達が20年以上の間貫いてきたスタイルが普遍的なものであることが伝わってくる。

このアルバムでは、90年代のブラクストンズやトニの作品を彷彿させる、主役の歌を引き立てるシンプルな伴奏と流麗なメロディ、美しい歌声を存分に聴かせるヴォーカルという組み合わせた曲が数多く収められている。安価で高性能な機材が流通し、斬新なサウンドが次々と生まれている中で、彼女のようにシンプルなアレンジと歌唱力で勝負する作品は珍しいが、このような録音が残せるのは、彼女が自身の歌唱力を武器に20年以上戦ったきた実績と実力があるからだろう。

スタイリッシュなサウンドとしなやかで美しいヴォーカルを思いっきり楽しめる希少なヴォーカル・アルバム。トニ・ブラクストンやメアリーJブライジの作品に心躍った90年代のR&Bシーンを経験した世代にはたまらない、本格的なR&Bを楽しみたい人にオススメ。

Producer
Tamar Braxtone, Rodney Jerkins, Vincent Herbert, Troy Taylor, Bob Robinson etc

Track List
1. My Forever
2. Wanna Love You Boy
3. Run Run
4. Hol' Up feat. Yo Gotti
5. The Makings Of You
6. Heart In My Hands
7. Blind
8. My Man
9. Pick My Up
10. How I Feel
11. Empty Boxes




Bluebird of Happiness
Tamar Braxton
Tamartianland
2017-09-29

Musiq Soulchild - Feel The Real [2017 eOne]

映画「ナッティー・プロフェッサー2」のサウンドトラックに収録された”Just Friends(Sunny)”で注目を集め、同曲を収録したファースト・アルバム『Aijuswanaseing』が全米R&Bアルバムチャートの4位に入り、プラチナ・ディスクにも認定された、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター、ミュージック・ソウルチャイルドことターリブ・ジョンソン。

その後も、2016年までに8枚のアルバムを発表。うち、2作目の『Juslisen』と4作目の『Luvanmusiq』は全米総合アルバム・チャートの1位を獲得。往年のソウル・ミュージックを現代の音楽に還元した作風が認められ、人気ミュージシャンの一人になった。

このアルバムは、前作から僅か1年という短い間隔で発表された9枚目のフル・アルバム。前作に引き続き、ワイクリフ・ジョンラトーヤなど、多くのベテラン・ミュージシャンのアルバムを配給しているeOneからのリリース作品。だが、何よりも驚くのはその曲数。彼のキャリアでは初の2枚組24曲という大作だが、マンネリに陥ることなく、彼の豊かな想像力と歌唱力を遺憾なく発揮している。

本作の1曲目は、マイケル・ジャクソンの”Butterfly”の作者としても知られているイギリスの女性デュオ、フロエトリーのマーシャ・アンブロジウスとコラボレーションした曲。”Butterfly”を思い起こさせるゆったりとしたテンポのトラックをバックに、朗々と歌う姿が印象的なミディアム・ナンバー。遅いテンポのトラックの上で敢えてメロディを崩して歌うミュージックの歌唱が格好良い。曲の途中、絶妙なタイミングで入り込み、素晴らしい掛け合いを聴かせるマーシャの存在も見逃せない。

これに対し、ベル・ヴィウ・デヴォーの新曲でもペンを執ったサイラス・デシールドが制作を担当した”Start Over”は、ストリングスを使ったスロー・テンポの伴奏に乗って、しなやかな歌声を響かせるバラード。太く柔らかいミュージックの歌声を際立たせる、流れるようなメロディと温かい音色のトラックの組み合わせは、彼の代表曲”Halfcrazy”を思い起こさせる。デビューから15年以上の時が経っても、変わらない彼の良さと、時間をかけて磨き上げたヴォーカル技術が光る良い曲だ。

また、2枚目の1曲目に収められている”Humble Pie”は、前作にも参加しているウィリー・ヒンと作ったミディアム・ナンバー。ダニー・ハザウェイやマーヴィン・ゲイを思い起こさせる、柔らかい音色を駆使した優雅な伴奏に乗って、軽やかな歌を聴かせるダンス・ナンバー。曲の途中にラップのようなメロディを挟み込み、メリハリをつけている点が面白い。2007年に発表したヒット曲”B.U.D.D.Y.”の手法を踏襲した、ヒップホップとソウル・ミュージックが融合したスタイルが魅力の佳曲だ。

そして、本作の最後を飾るのがアルバムからの先行シングル”Simple Things”だ。ギターとシンセサイザーを組み合わせたロマンティックな演奏に乗せて、ロマンティックなメロディを丁寧に聴かせるスロー・ナンバー。ミュージックのみずみずしい歌声が、流麗なメロディの良さを引き立てている。斬新なメロディも奇抜な演奏もない、シンプルな楽曲だが、それ故に彼の声と制作能力の高さが際立っている。

今回のアルバムには、過去のアルバムの2倍近い量の曲を収めている。それだけの曲を準備するエネルギーも凄いが、それ以上に意外なのは、奇抜な作品や実験的な楽曲を集めたものではなく、従来のスタイルを踏襲しつつ、それを磨き上げたものになっていることだ。だが、そんな作品でも最後まで聴き手を飽きさせることなく、楽しませることができるのは、彼の音楽がジョーブライアン・マックナイトのように、一つのスタイルを磨き上げ、確固たる個性を確立したものだからだろう。

ソウル・ミュージックとヒップホップを融合した独特の作風を突き詰め、一つの芸風として確立したことを感じさせる佳作。ノスタルジーとも目新しさとも違う、楽曲の魅力で勝負している稀有なアーティストだと思う。

Producer
Musiq Soulchild, BLAQSMURPH, Christopher Bradley, Phil Cornish, Gmjr, J'rell etc

Disc 1
1. Feel The Real feat. Marsha Ambrosius
2. Benefits
3. Serendipity feat. Willie Hyn
4. Sooner Or Later
5. My Bad feat. Willie Hyn
6. Start Over
7. Hard Liquor
8. Shudawudacuda
9. Broken Hearts
10. Love Me Back
11. I'm Good
12. Jussa Lil Bih feat. BLAQGxLD
Disc 2
1. Humble Pie
2. Party Life
3. One More Time feat. The Husel, Willie Hyn
4. Let Go
5. Test Drive
6. Like The Weather
7. Fact Of Love
8. Heaven Only Knows
9. The Moon feat. Neil deGrasse Tyson
10. We Go Together Now
11. Sunrise Serenade feat. BLAQGxLD, Chris Theory
12. Simple Things



a


Feel the Real
Musiq Soulchild
Ent. One Music
2017-09-15

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ