melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

eOne

En Vogue - Electric Café [2018 En Vogue, eOne]

80年代にクラブ・ヌーヴォなどを手掛けていた、フォスター&マッケルロイが主催するオーディションの合格者で結成。1990年にアルバム『Born to Sing』で華々しいデビューを飾った、カリフォルニア州オークランド発の4人組ガールズ・グループ、アン・ヴォーグ。

メンバー全員がリード・ヴォーカルを執れる高い技術とスター性、曲の途中でリードとコーラスを切り替える大胆で緻密なアレンジ。往年のドゥー・ワップ・グループを思い起こさせる端正の取れたヴォーカルと、有名ファッション誌から貰った「Vogue」の名前にふさわしい、洗練されたヴィジュアルが魅力の彼女達。ストリート色の強いファッションと、ヒップホップを取り入れた華やかな音楽性で人気を集めたTLCとは対極の、大人っぽい雰囲気がウリのグループとして、多くの人の記憶にその名を刻んだ。

しかし、2000年以降はメンバーの脱退やソロ転向などで、グループの活動は停滞。2002年には初のクリスマス・アルバム『The Gift of Christmas」を発表し、2004年にはアルバム『Soul Flower』を発売するが、商業面では苦戦。その後は、ライブや各人の活動に軸足を移すようになる。

このアルバムは、そんな彼女達にとって14年ぶりとなる通算7枚目のフル・アルバム。残念なことに、2011年に収録曲の一部が公開されたものの、後にお蔵入りになったEP『Rufftown Presents En Vogue』に入る予定だった楽曲は収められていない。だが、新たに録音された作品は、彼女達のヒット曲を生み出してきたフォスター&マッケルロイを中心に、元サムシン・フォー・ザ・ピープルのカーティス・ウィルソン、元メンバーのドーン・ロビンソンと組んだ音楽ユニット、ルーシー・パールも話題になったラファエル・サディークなど、彼女達と一緒に90年代のR&Bシーンを盛り上げてきた面々が参加。それ以外にも、ドクター・ドレの『Compton』で辣腕を振るっていたディム・ジョインズを起用するなど、西海岸出身の新旧の敏腕クリエイターが顔を揃えた力作になっている。

収録曲で最初に目を惹くのは、フォスター&マッケルロイがプロデュースした”Deja vu”だ。ロドニー・ジャーキンスのプロデュースで、2001年にソロ歌手としてデビュー、後にグループに加入したローナ・ベネットと、ソロ作品の発売経験もあるテリー・エリスがペンを執ったアップ・ナンバーだ。ピート・ロックやマーリー・マールを仕事を彷彿させる軽快なヒップホップのトラックの上で、艶めかしい歌声を響かせる3人の姿が印象的。複雑なヒップホップのグルーヴを巧みに乗りこなす、絶妙なさじ加減のメロディも見逃せない。

これに続く”Rocket”は、プロデュースをカーティス・ウィルソン、曲作りにニーヨとウィルソンが担当したスロー・ナンバー。電子楽器を多用したスタイリッシュなトラックと、みずみずしい歌声をじっくりと聴かせるスタイルは、カーティスが在籍していたサムシン・フォー・ザ・ピープルの音楽そのもの。その一方で、一聴したら忘れない、シンプルでキャッチーなメロディでは、ニーヨの持ち味がきちんと発揮されている。カーティスの色っぽいサウンドと、ニーヨの親しみやすいメロディ、透き通った歌声で精密なコーラスを聴かせる三人のヴォーカルがうまく噛み合った、良質なバラードだ。

また、スヌープ・ドッグが客演した”Have a Seat”は、キッド・モンローが制作に参加。ブリブリと唸るベースは、レイクサイドやオハイオ・プレイヤーズが70年代に録音したファンク・ミュージックを連想させる。ディスコ・サウンドをバックに、軽やかなメロディと息の合ったコーラスを披露する3人の姿は、70年代に一世を風靡したエモーションズにも少し似ている。2005年にスティーヴィー・ワンダーの『Time to Love』で軽妙なコーラスを披露していた彼女達らしい、ソウル・ミュージックとの相性の良さを感じさせる良曲だ。

そして、オークランドが世界に誇る名シンガー・ソングライター、ラファエル・サディークが手掛けた”I'm Good”は、本作に先駆けて公開された楽曲。生のバンドを使ったと思われる、太く荒々しい音色の伴奏をバックに、囁きかけるような歌声を聴かせる3人のパフォーマンスが魅力のバラード。一音一音の間に隙間を置いたメロディや、抽象的なフレーズを盛り込みながら、流麗なR&Bに纏めた構成は、トニ・トニ・トニの代表作『House of Music』を連想させる。

本作の聴きどころは、高いコーラス技術を活かした3人のパフォーマンスと、現代の流行を融合した曲作りだ。いまや、欧米のヒット・チャートではヴォーカル・グループが少数派になり、その希少なヴォーカル・グループも、ラッパーを交えたメンバー間の掛け合いがウリの、ソロ・アーティストの集合体のようなものになっている。その中で、彼女達は昔ながらのハーモニーで勝負している点は驚きだ。

また、本作は往年の輝きを懐かしむに留まらず、ディム・ジョーンズのような若いクリエイターを起用し、あくまでも「2018年の新作」として仕上げている。この前例や先駆者のいない作品に取り組んでいる点も、このアルバムの面白いところだろう。

「複数人の声を組み合わせることで、楽曲に色々な感情を吹き込む」という、言葉に起こすとシンプルだが、実践するのは難しい表現技法でポップスの歴史に名前を残した彼女達の新作にふさわしい、充実の内容。高いレベルの歌の技術と制作技術の両方が揃ったことで生まれた、味わい深い作品だ。


Producer
Foster & McElroy, Dem Jointz, Raphael Saadiq, Curtis "Sauce" Wilson etc

Track List
1. Blue Skies
2. Deja vu
3. Rocket
4. Reach 4 Me
5. Electric Cafe
6. Life
7. Love the Way
8. Oceans Deep
9. Have a Seat feat. Snoop Dogg
10. I'm Good
11. So Serious
12. Have a Seat (No Rap Ver)





ELECTRIC CAFE
EN VOGUE
EONE
2018-04-06

112 - Q MIKE SLIM DARON [2017 Entertainment One U.S.]

同じハイスクールに通っていた面々で結成。その後、メンバー交替を繰り返しながら、地元を中心に多くのライブを行い、豊かなバリトン・ヴォイスと滑らかなハイ・テナーが織りなす、美しいコーラスで名を上げてきた、アトランタ出身の4人組ヴォーカル・グループ、112。

93年にショーン・コムズが率いるバッド・ボーイと契約すると、95年に映画「Money Train」のサウンド・トラックに収録されている”Making Love”で、華々しく表舞台に登場した。

また、96年にアルバム『112』を発表するとノートリアスB.I.G.などをフィーチャーした”Only You”や、アーノルド・ヘニングスがプロデュースしたバラード”Cupid”などが立て続けにヒット。その後も、ショーン・コムズ作のノートリアスB.I.G.への追悼ソング”I'll Be Missing You”に客演する一方、自身の名義でも”Dance with Me”や”Peaches & Cream”などのヒット曲を発表。2007年以降はバッド・ボーイを離れ、複数のレーベルから作品をリリースしてきた。

本作は、2005年の『Pleasure & Pain』以来、実に12年ぶりとなる通算5枚目のスタジオ・アルバム。といっても、彼らはこの12年間にメンバーの大半がソロ作品を発表し、色々なミュージシャンの楽曲に参加するなど、精力的に活動し、力を蓄えてきた。このアルバムでは、SWVAfter7ラトーヤ・ラケットの作品を配給しているeOneをパートナーに選び、プロデューサーにはブライアン・マイケル・コックスやケン・ファンブロといった、90年代から活躍するクリエイターを起用。一世を風靡した112のサウンドをベースにしつつ、2017年に合わせてアップ・トゥ・デイトした楽曲を聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目となる”Come Over”は、ベティ・ライトとザ・ルーツのコラボレーション・アルバムにも携わっているショーン・マクミリオンが参加したスロー・ナンバー。メロー・ザ・プロデューサーとエクスクルーシブスが手掛けるトラックは、電子楽器を使ったシンプルなビートだ。90年代後半に流行したスタイルのトラックを使いつつ、これまでの4人の作品ではあまり聴けなかった、強くしなやかなヴォーカルを披露する手法が新鮮だ。線が細く色っぽい歌声が魅力の4人が、力強いパフォーマンスも使いこなせるようになったことに、時間の流れを感じさせる。

続く、”Without You”は、ビヨンセやアッシャーのような大物から、クリセット・ミッチェルやジニュワインのような通好みの名シンガーまで、多くの歌手の作品にかかわってきたエルヴィス・ヴィショップが制作を担当。シンセサイザーを使ったシンプルなトラックは、”Come Over”に似ているが、ヴォーカルのアレンジでは、彼らの繊細でしなやかな声を活かした、緻密な編曲技術を披露している。彼らの代表曲”Cupid”のフレーズを取り入れた点も含め、90年代から活躍する彼らの持ち味を尊重しつつ、それを現代向けにアレンジしたセンスが印象的だ。

そして、本作に先駆けてリリースされた”Dangerous Games”は、”Without You”も手掛けているエルヴィス・ヴィショップと共作したバラード。グラマラスで滑らかなヴォーカルと、美しいハーモニーの組み合わせは、112というよりボーイズIIメンの新曲っぽい。繊細さとしなやかさを兼ね備えた歌声で、ダイナミックな感情表現と正確無比で重厚なコーラスを披露するスタイルは新鮮だ。

だが、本作の目玉は何といっても”Both Of Us”だろう。マライア・キャリーやアッシャー、クリス・ブラウンなどに楽曲を提供してきたブライアン・マイケル・コックスのプロデュース、ゲスト・ヴォーカルとして、112と一緒に90年代以降のR&Bシーンを盛り上げてきたジャギド・エッジが参加したこの曲は、ロマンティックなトラックをバックに、美しいメロディを個性豊かなヴォーカルが歌い上げる豪華なバラード。ヴォーカル・グループが好きな人なら、最初の一声を聴いた瞬間に涙腺が崩壊すること間違いなしの、経験を積んで老獪さを増した8人のヴォーカルが堪能できる名バラードだ。強烈な個性がウリのラッパーやソロ・シンガーが流行っている2017年には貴重な、歌の技術で勝負した名演だ。

今回のアルバムは、これまでの作品同様、スマートで繊細なヴォーカルや、ヒップホップをベースにした硬質なトラックを軸に据えつつ、時に大胆に感情を吐き出し、時に力強く歌う場面や、分厚いハーモニーを聴かせるアレンジなど、旧作では見られなかった表現にも挑戦している。バッド・ボーイ時代から続くヒップホップをベースにしたスタイルと、経験を積んで深みを増した表現が融合したことが、本作に新鮮さと奥深さをもたらしていると思う。

若者向けのヒップホップをバックボーンに持ちつつ、大人向けのミュージシャンへと成長を遂げた4人のパフォーマンスを思う存分堪能できる良盤。ヴォーカル・グループに厳しい時代と言われる時代でも良質な音楽の魅力は変わらないと感じさせる、強い説得力のある音楽だ。

Producer
Bryan-Michael Cox, Marcus Devine, Elvis Williams, Ken Fambro etc

Track List
1. Intro
2. Come Over
3. Without You
4. Dangerous Games
5. Both Of Us feat. Jagged Edge
6. True Colors
7. 112/Faith Evans Interlude
8. Wanna Be
9. Still Got It
10. Lucky
11. 1’s For Ya
12. Thank You Interlude
13. Simple & Plain
14. My Love
15. Residue



Q Mike Slim Daron
112
Ent. One Music
2017-10-27

Wu-Tang Clan - The Saga Continues [2017 eOne]

往年のブラック・ミュージックをサンプリングしているにもかかわらず、他のミュージシャンとは一味違う不気味な雰囲気を醸し出すトラックと、ドスの効いた声で紡がれる攻撃的なラップが印象的だった93年のデビュー・アルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』で、多くの音楽ファンの度肝を抜いた、ニューヨークのスタッテン・アイランド出身のヒップホップ・グループ、ウータン・クラン。

91年にプリンス・ラキームの名義でトミー・ボーイからアルバムをリリースしているRZAを中心に、彼の従兄弟であるGZAやオール・ダーティー・バスタード(2004年に死去)、既にラッパーとして活動していたゴーストフェイス・キラーやU-ゴッドといった個性豊かな面々からなる彼らは、RZA達が生み出すおどろおどろしいのに中毒性の高いビートと、全身全霊で自分のキャラをアピールする各メンバーのラップを武器に、多くのヒット作を残してきた。

また、メアリーJ.ブライジとのコラボレーション曲でグラミー賞を獲得したメソッド・マンや、マライア・キャリーの”Fantasy”のリミックス版で、主役を押しのける強烈なパフォーマンスを披露したオール・ダーティー・バスタードをはじめ、映画「キル・ビル」の映画音楽を手掛けたRZAや、様々なコラボレーション作品を含む多くのアルバムを残しているゴーストフェイス・キラーなど、各メンバーがソロ・アーティストとしても成功を収めてきた。

このアルバムは、2014年の『A Better Tomorrow』 以来、約3年ぶりとなる新作。すべての楽曲をリーダーのRZAと、彼らのライブをDJとして支えているマスマティックスが制作し、各曲ではメンバーに加え、キラー・プリーストやストリート・ライフのような準メンバー、レッドマンやショーン・プライスなどの人気ミュージシャンが集結、地道な活動で鍛え上げた逞しさとしなやかさを兼ね備えたヒップホップを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Lesson Learn'd”は、インスペクター・デックとメソッド・マンのコラボレーション作品。デビュー当時の彼らを思い起こさせる、微妙な揺らぎが不安を掻き立てるビートの上で渋いラップを聴かせるインスペクター・デックと、軽い声質でがなり立てるようなラップを披露するレッドマンのコンビネーションが光る曲だ。どことなくだが、90年代に鮮烈なデビューを飾ったときのことを思い起こさせる。

これに対し、ゴーストフェイス・キラー、メソッド・マン、RZAというソロでも実績豊富な面々に加え、ブロンクス出身のベテラン・ラッパー、ショーン・プライスが参加した”Pearl Harbor”は、ドロドロとしたビートの上で繰り広げられるマイク・リレーが魅力の作品。楽器の演奏とサンプリングを混ぜ合わせたビートの上で、個性豊かな4人のラップが次々と繰り出されるスリリングな曲だ。タイトルからも予想できるように、日本人には少し引っ掛かる内容のリリックだが、それを割り引いても捨てがたい魅力がある。

また、本作に先駆けて公開された”People”は、本作の収録曲では唯一ウータン・クランのメンバー全員が集結した曲。ディプロマッツの”I've Got the Kind of Love”をサンプリングしたソウルフルなトラックの上で、各人が強烈な個性を発揮している佳作。ゲストとして招かれたレッドマンを含めると8人の大人数によるマイク・リレーだが、各人のキャラがきちんと立っているから恐ろしい。

そして、アルバムの収録曲では珍しい、ヴォーカル・パートが入っている”G'd Up”はメソッド・マンに加えてムジー・ジョーンズとR-ミーンが参加した作品。ウータンの面々に比べると、知名度では大幅に劣る面々だが、メソッド・マンに負けない存在感を発揮している。ほかの曲に比べると、ドラムの音を強調したシンプルなトラックだが、サビを担当する泥臭いヴォーカルと合わさるとちょうどいい感じに聴こえる。

尖ったビートとラップで華々しいデビューを飾った彼らだが、今回のアルバムでは2000年以降の彼らの作品で頻繁に見られるような、強烈な印象を与えつつ、聴き手を疲れさせないポップな楽曲が増えていると思う。音楽界のトップ・スターから気鋭のビート・メーカーまで、様々なタイプのアーティストとコラボレーションしながら、映画音楽にも携わるなど、様々な仕事で結果を残してきた経験が、先鋭的だけど大衆的という、独特な作風を育んだのだと思う。

強い個性と、それを支える確かな実力を備えた彼らにしか作れない唯一無二の作品。色々なラッパーが試行錯誤しながら新しい音楽を生み出していた、90年代のヒップホップ・シーンの熱気と、ベテランらしい高い完成度が同居した、懐かしさと新鮮さが同居した面白い音楽だ。

Producer
RZA, Mathematics

Track List
1. Wu-Tang the Saga Continues Intro feat. Rza
2. Lesson Learn'd feat. Inspektah Deck and Redman
3. Fast and Furious feat. Huehef and Raekwon
4. Famous Fighters (Skit)
5. If Time Is Money (Fly Navigation) feat. Method Man
6. Frozen feat. Method Man, Killa Priest and Chris Rivers
7. Berto and the Fiend (Skit) feat. Ghostface Killah
8. Pearl Harbor feat. Ghostface Killah, Method Man, RZA, and Sean Price
9. People Say Wu-Tang Clan feat. Redman
10. Family (Skit)
11. Why Why Why feat. RZA and Swinkah
12. G'd Up feat. Method Man, R-Mean and Mzee Jones
13. If What You Say Is True Wu-Tang Clan feat. Streetlife
14. Saga (Skit) feat. RZA
15. Hood Go Bang feat. Redman and Method Man
16. My Only One feat. Ghostface Killah, RZA, Cappadonna and Steven Latorre
17. Message D5. The Saga Continues Outro feat. RZA



WU-TANG: THE SAGA CONTINUES [CD]
WU-TANG CLAN
36 CHAMBERS ALC/EONE
2017-10-13

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