アフリカ系ジャマイカ人とインド系ジャマイカ人の血を引く、ブルックリン出身のシンガー・ソングライターにして、モデルや役者としても活動しているジャスティン・スカイ。動画投稿サイトにアップロードしたパフォーマンスが、200万回以上再生されたことをきっかけにアトランティックと契約、配信限定ながら、2枚のミニ・アルバムと3枚のシングルをリリースしている。

ミニ・アルバムとしては、2013年の『Emotionally Unavailable』以来となる本作は、2015年に彼が主催したボクシング・イベントの国歌斉唱を担当したことが縁で、ジェイ・Zが経営するロック・ネイションからのリリース。このアルバムでは、同時期に移籍したザ・ドリームと、ビヨンセの”Single Ladies (Put a Ring on It)”やリアーナの”Umbrella”などを手掛けているプロデューサー、トリッキー・ステュアートがソングライティングとプロデュースを担当し、これまでの作品とは一線を画した、2000年以降のR&Bの流行を踏まえたアルバムになっている。

マイアのような可愛らしい高音と、トニ・ブラクストンのような落ち着きと貫禄がある低音を兼ね備えたヴォーカルは本作でも健在。年齢(なんと録音当時21歳!)の割に落ち着いたヴォーカルで、しっとりとメロディを歌い込んだ”Love Song”にはじまり、シンセサイザーをホーン・セクションのように使い、テンポの遅いトラックの上に多くのメロディを詰め込んだスタイルがマイアの”My Love Is Like...Wo”を彷彿させる”Still”、マライア・キャリーの”Shake It Off”を彷彿させる複数のドラム音を使った躍動感のあるビートに、シンセサイザーの勇ましいリフが高揚感を掻き立てるトラックの上で、時に肉食獣のように凶暴な歌を、時にセクシーなファルセットを聴かせる”Girlfriend”、エレキ・ギターの伴奏をバックに、絹のような美しい声を響かせるミディアム・ナンバー”Jazebel”、ワシントンD.C.出身のラッパー、ワーレイが歌うようなラップでジャスティンのクールなヴォーカルに絡みつく、美女と野獣系バラード”Fun”などが続く。

過去の作品では、自身の鋭い感性を発揮した、奇抜で前衛的な楽曲が目立っていたが、外部のプロデューサーに制作の大部分を委ねた本作では、幅広い年代、趣向のリスナーを意識した、よく言えばキャッチーな、悪く言えば保守的な楽曲が多いように感じられる。

アルバムに先駆けてリリースされた2曲のシングル、”U Don’t Know feat. Wizkid”や”Dance”が収録されていない点は少し不満だが、多くのヒット曲を生み出したプロデューサー陣による楽曲のクオリティは、配信限定の作品とは思えないほどだ。次の新曲が待ち遠しい、期待の若手シンガーの一人だ。

Producer
The-Dream, Tricky Stewart

Track List
1. Love Song
2. Still
3. Girlfriend
4. Tonight
5. Jazebel
6. Too Young To Die
7. Strangers
8. Fun feat. Wale
9. Agenda