1993年にマドンナが経営するマーヴェリックから、レーベル初の男性ヴォーカル・グループとして、アルバム『Something's Goin' On』でデビュー。同作のタイトル曲をR&Bチャートの3位に送り込んだ、ミシガン州はランシング出身の4人組、ユニヴァーサル・ヌヴィアン・ヴォイス(以下UNV)。その中心人物で、近年はソロでも活躍しているジェイ・ポウが、新しい4人組ヴォーカル・グループUNV IIを結成。彼が関わった作品としては、2014年のゴスペル・アルバム『Savior Made』以来、カルテットでの作品としてはUNVの95年作『Universal Nubian Voices』以来となる新作を、自身のレーベル、パワー・ムーブス・レコードから発表した。

メンバーのうち、ジェイ・ポウを除く3人が新しいメンバーだが、均整の取れたハーモニーと滑らかな歌声はUNVと遜色ない。むしろ、円熟味を増したジェイ・ポウを中心に、地道に経験を積み上げた4人のダイナミックなコーラス・ワークは、UNV時代以上に豊かな表現を見せてくれる。

まず、このアルバムの特筆すべき点は、90年代の音楽シーンを盛り上げた、ヒップホップ・クラシックをサンプリングした楽曲の存在だ。キャンプ・ローの”Luchini AKA This Is It”を引用した”Sunshine”や、ファーサイドの同名曲のトラックを使った”Running”、クレイグ・マックの”Flava In Ya Ear”をサンプリングした”Grown Folks”など、UNVが活躍していた90年代中ごろに、ヒップホップやR&Bを聴いていた人なら、思わずニヤリとしてしまう大ネタ使いは本作の聴きどころの一つだ。

一方、それ以外のバラードやミディアム・ナンバーに目を向けると、90年代のジェラルド・レヴァートを彷彿させる洗練されたトラックと濃密なヴォーカルのコンビネーションが心地よい”Baby You Are”や、シルクやドゥー・ヒルを彷彿させる濃厚な歌声が折り重なったハーモニーが印象的な”Bad Case”など、90年代のR&Bのスタイルをベースに、ヴォーカルの技術を磨き上げた楽曲が光っている。

アルバム全体を通して、UNVが活躍した90年代のR&Bやヒップホップを意識したサウンドやメロディを、2016年に合わせてブラッシュ・アップすることで、往年の彼らを知るファンにアピールしたように感じられる。ジョデシィやアフター7など、90年代に活躍したグループが復活の狼煙を上げる中、その流れに乗りつつ、往年のサウンドを徹底的に突き詰めた、本格的な90年代リバイバルの一つといえるだろう。

Track List
1. Baby You Are
2. Sunshine
3. Bad Case
4. Take You Out Tonight
5. Wanna See You Dance
6. Running
7. Let You Go
8. Let Me Love You
9. Nobody
10. Grown Folks




Kings of the Quiet Storm
Powwer Moves Records LLC
2016-12-09