1987年に、ロンドン出身のDJ兼プロデューサーであるジャジーBが率いるサウンド・システムとして活動を開始。翌88年にはローズ・ウィンドロスをフィーチャーしたシングル『Fairplay』でデビューすると、97年までの約10年間に5枚のオリジナル・アルバムと”Keep On Moving”や”Back To Life”、”Get A Life”などのヒット曲を残してきた英国の音楽グループ、ソウルIIソウル。今世紀に入ってからは活動のペースが落ちているものの、2012年にはロンドン・オリンピックの開会式で”Back To Life”がプレイされるなど、英国を代表するソウル・グループとして現在も多くの人から愛されている。
本作は、90年に発表された『A New Decade: Live From Brixton Academy』以来、実に27年ぶりとなるライブ・アルバム。メイン・ヴォーカルは”Keep On Moving”などのヒット曲でヴォーカルを務めたキャロン・ウィーラーが担当する一方で、バック・トラックの大部分を生バンドに差し替えるなど、全盛期の雰囲気を意識しつつ、リズム・マシンやシンセサイザーが中心のオリジナル・ヴァージョンとは違うパフォーマンスを聴かせている。
イントロに続く実質的な1曲目は、彼らのデビュー曲である”Fariplay”。原曲ではパーカッションとキーボードで刻んでいたリズムが、本作ではエレキ・ギターとキーボードに入れ替わっているほか、ベースやドラムの演奏を強調するなど、重心の低い、落ち着いたアレンジになっている。ドラム、ベース、ギター、キーボードの演奏が強調されたサウンドは、心なしか同時期にイギリスからデビューしたブランニュー・ヘヴィーズっぽくも聴こえる。
これに続くのは、彼らの代表曲の一つ”Keep On Moving”。屋敷豪太がプログラミングで参加した原曲では、リズム・マシーンの個性的な音色が淡々とリズムを刻むビートが印象的だったが、この作品では生演奏による力強いドラムに変わるなど、人間の演奏を活かした温かい雰囲気に仕上がっている。オリジナル・ヴァージョンでもリード・ヴォーカルを担当したキャロン・ウィーラーのパフォーマンスは、当時よりも滑らかで感情表現も豊かになっている。
一方、90年にリリースされた2枚目のアルバム『Vol. II: 1990 - A New Decade』からのシングル曲である”Missing You”は、ギターやキーボード、パーカッションの華やかな演奏が格好良いジャズ風の演奏にアレンジし直されている。オリジナル・ヴァージョンでは透き通った歌声でクールな歌唱を聴かせてくれたキム・メイゼルに対し、今回のアルバムでは、キャロンがじっくりと粘り強いヴォーカルを聴かせている。
だが、本作のハイライトは、なんといっても終盤を盛り上げる”Get A Life”、”Back To Life”、”Jazzie’s Groove”の3曲だろう。
原曲を知る人にはお馴染みの、ストリングスを使ったイントロから始まる”Get A Life”では、ジャジーBの淡々としたラップや、小鳥のさえずりのようなコーラス、重厚なビートなどが、オリジナル・ヴァージョンそっくりに再現されている。リード・ヴォーカルも、マルシア・ルイスの妖艶な雰囲気を忠実に踏襲している。また、メアリーJ.ブライジがカヴァーしたことでも話題になった”Back To Life”では、同曲を有名にしたイントロ部分を原曲よりも長めにとって観客の歓心を惹きながら、トラックの大部分が生演奏になったことで、感情表現がより豊かになった本編へと繋いでいる。キャロン・ウィーラーのヴォーカルは原曲よりも貫禄が増し、バンドによる伴奏と合わさって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。そして、ジャジーBがリード・ヴォーカルを担当する”Jazzie’s Groove”では、各楽器のソロ・パートを設けるなど、色々な意味で「ジャジー」な作品に仕上げている。
今回のライブ・アルバムは、これまでに発表したヒット曲が中心のセット・リストで、新曲を期待する人には物足りない内容かもしれない。だが、生演奏による起伏に富んだサウンドや、経験を積んで表現の幅を増したキャロン・ウィーラーのヴォーカルによって、リズム・マシンやシンセサイザーの使い方が斬新だったオリジナルとは違った意味で、新鮮な演奏が楽しめる。
90年代のイギリスを代表するバンドが、リスナーと一緒に成熟していった軌跡を堪能できる。魅力的なライブ録音。この勢いで新作も出してくれないかなあ。
Track List
1. Intro
2. Fairplay
3. Keep On Moving
4. I Care
5. Missing You
6. Universal Love
7. Love Enough
8. Get A Life
9. Back To Life
10. Jazzie’s Groove
11. Zion
注:以下の動画はオリジナル・ヴァージョンのもの
本作は、90年に発表された『A New Decade: Live From Brixton Academy』以来、実に27年ぶりとなるライブ・アルバム。メイン・ヴォーカルは”Keep On Moving”などのヒット曲でヴォーカルを務めたキャロン・ウィーラーが担当する一方で、バック・トラックの大部分を生バンドに差し替えるなど、全盛期の雰囲気を意識しつつ、リズム・マシンやシンセサイザーが中心のオリジナル・ヴァージョンとは違うパフォーマンスを聴かせている。
イントロに続く実質的な1曲目は、彼らのデビュー曲である”Fariplay”。原曲ではパーカッションとキーボードで刻んでいたリズムが、本作ではエレキ・ギターとキーボードに入れ替わっているほか、ベースやドラムの演奏を強調するなど、重心の低い、落ち着いたアレンジになっている。ドラム、ベース、ギター、キーボードの演奏が強調されたサウンドは、心なしか同時期にイギリスからデビューしたブランニュー・ヘヴィーズっぽくも聴こえる。
これに続くのは、彼らの代表曲の一つ”Keep On Moving”。屋敷豪太がプログラミングで参加した原曲では、リズム・マシーンの個性的な音色が淡々とリズムを刻むビートが印象的だったが、この作品では生演奏による力強いドラムに変わるなど、人間の演奏を活かした温かい雰囲気に仕上がっている。オリジナル・ヴァージョンでもリード・ヴォーカルを担当したキャロン・ウィーラーのパフォーマンスは、当時よりも滑らかで感情表現も豊かになっている。
一方、90年にリリースされた2枚目のアルバム『Vol. II: 1990 - A New Decade』からのシングル曲である”Missing You”は、ギターやキーボード、パーカッションの華やかな演奏が格好良いジャズ風の演奏にアレンジし直されている。オリジナル・ヴァージョンでは透き通った歌声でクールな歌唱を聴かせてくれたキム・メイゼルに対し、今回のアルバムでは、キャロンがじっくりと粘り強いヴォーカルを聴かせている。
だが、本作のハイライトは、なんといっても終盤を盛り上げる”Get A Life”、”Back To Life”、”Jazzie’s Groove”の3曲だろう。
原曲を知る人にはお馴染みの、ストリングスを使ったイントロから始まる”Get A Life”では、ジャジーBの淡々としたラップや、小鳥のさえずりのようなコーラス、重厚なビートなどが、オリジナル・ヴァージョンそっくりに再現されている。リード・ヴォーカルも、マルシア・ルイスの妖艶な雰囲気を忠実に踏襲している。また、メアリーJ.ブライジがカヴァーしたことでも話題になった”Back To Life”では、同曲を有名にしたイントロ部分を原曲よりも長めにとって観客の歓心を惹きながら、トラックの大部分が生演奏になったことで、感情表現がより豊かになった本編へと繋いでいる。キャロン・ウィーラーのヴォーカルは原曲よりも貫禄が増し、バンドによる伴奏と合わさって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。そして、ジャジーBがリード・ヴォーカルを担当する”Jazzie’s Groove”では、各楽器のソロ・パートを設けるなど、色々な意味で「ジャジー」な作品に仕上げている。
今回のライブ・アルバムは、これまでに発表したヒット曲が中心のセット・リストで、新曲を期待する人には物足りない内容かもしれない。だが、生演奏による起伏に富んだサウンドや、経験を積んで表現の幅を増したキャロン・ウィーラーのヴォーカルによって、リズム・マシンやシンセサイザーの使い方が斬新だったオリジナルとは違った意味で、新鮮な演奏が楽しめる。
90年代のイギリスを代表するバンドが、リスナーと一緒に成熟していった軌跡を堪能できる。魅力的なライブ録音。この勢いで新作も出してくれないかなあ。
Track List
1. Intro
2. Fairplay
3. Keep On Moving
4. I Care
5. Missing You
6. Universal Love
7. Love Enough
8. Get A Life
9. Back To Life
10. Jazzie’s Groove
11. Zion
注:以下の動画はオリジナル・ヴァージョンのもの