社会学者と父と心理学者の母の間に生まれ、彼女自身もマルーン5のアダム・レヴィンやフージーズのワイクリフ・ジョンを輩出したファイブ・タウン・カレッジでヴォーカル・パフォーマンスを専攻。卒業後には、プロのシンガーとして活動を開始し、レコード・デビュー前の新人にも関わらず、ジェイZの”Lost One”や、ナズの”Can't Forget About You”、ゴーストフェイス・キラーの”Slow Down”など、名だたる大物の楽曲にフィーチャーされてきた、ニューヨークのセントラル・アイスリップ地区出身のシンガー・ソングライター、クリセット・ミッチェルこと、クリセット・ミッチェル・ペイン。
2007年にデフ・ジャムから満を持してデビュー作『I Am』を発表すると、20代前半(当時)とは思えない、貫禄のある落ち着いた歌唱と妖艶な歌声を披露。おしゃれな音楽に敏感な人から、熱狂的なソウル愛好家まで、多くの人々から注目を集めた。中でも、アルバムのオープニングを飾る”Like A Dream”は、近年でもラジオやライブの開演前BGMなどでしばし耳にするR&Bクラシックとなっている。
その後も、2015年までにデフ・ジャムやモータウンなどから、3枚のフル・アルバムと3枚の1枚のEP、3作のミックス・テープを発表。その一方で、自身名義のツアーをこなしつつ、メアリーJ.ブライジやキーシャ・コールの公演にも携わるなど、多忙な日々を送ってきた。だが、激務の中でも作品の質は衰えることなく、2009年にはウィル・アイ・アムをフィーチャーした”Be OK”でグラミー賞を獲得。他の作品でも、グラミー賞やソウル・トレイン・アワードなど、多くの音楽賞にノミネート、好セールスを記録してきた。
今回のアルバムは2015年に発表したEP『The Lyricists' Opus』と同じく、自身のレーベル、リッチ・ヒップスターからのリリース。配給元がモータウンからキャロラインに変わったが、制作の指揮をデビュー作から彼女の録音に携わっているダグ・エリソンがプロデュースを担当するなど、新たな環境でもスタイルを大きく変えることなく、従来の路線を踏襲した、豪華でロマンティックな大人向けのR&B作品に纏め上げている。
アルバムに先駆けて発表されたシングル曲”Unbreakable”は、シンセサイザーの低音を効果的に使ったスタイリッシュな伴奏と、ミッチェルのセクシーな歌声が格好良いミディアム・ナンバー。地声を使って歌うメロディ部分から、喉の負担が心配になるほど強烈な裏声を響かせるサビへと続く難解なメロディ楽曲を作り、歌ってしまう彼女の作曲技術と歌唱力にはびっくりしてしまう。
一方、フレンチ・モンタナなどを手掛けてきた、アンソニー・ノリスが携わっている”To the Moon”は、重厚なビートの上で、喉を絞った荒々しい歌声を張り上げるミディアム・バラード。メロディ部分で多用される中~低音域の力強い歌声は、タイプこそ違うがビヨンセの声と少し似ている気がする。壮大なスケールのメロディと、それを引き立てる荘厳なトラックはアデルの”Hello”にも見劣りしない、高い完成度が光る楽曲だ。
これに対し、ヤング・ストークスが手掛けた”Soulmate”は、音量を抑えた繊細なシンセサイザーの伴奏に乗って、繊細な表現を聴かせるスロー・ナンバー。芯の太い声で囁きかけるように歌う彼女の姿が光る、ロマンティックな楽曲。デビュー当時から表現の幅は広い歌手だったが、この曲ではその技術に一層の磨きをかけたように見える。
そして、2014年のアルバム『Mali Is...』も記憶に新しいマリ・ミュージックとのデュエット曲”Reinvent the Wheel”は、ホセ・ジェイムスの『 Love in a Time of Madness』を手掛けているアンタリオ・ホルムズが手掛けたアップ・テンポよりのミディアム。ピットブルやエイコンの作品を彷彿させる、鮮やかな音色のシンセサイザーを使ったトラックをバックに、ラップと歌を織り交ぜたパフォーマンスを披露している。一つ一つの言葉を丁寧に紡ぎ出す真摯な姿勢が光るミッチェルを横目に、子供がボールで遊んでいるかのように、軽妙でリズミカルなラップを聴かせるマリの対照的な姿も面白い。
デビューから10年近く経ち、新しい流行が次々と生まれる中で発表された新作だが、今回のアルバムでも、彼女の作風はぶれることなく、少しずつだが着実に、磨き上げてられているように映った。彼女の音楽は、ビヨンセやリアーナのような爆発的なヒットや、トレンドをけん引する先進性には乏しいかもしれないが、発表から長い時間が経っても聴かれ続けているこれまでの作品のように、長きに渡って愛される求心力と普遍性があると思う。
シンプルだが味わい深い、スルメイカのようなR&B作品。新しい音楽を追いかけるのに疲れたとき、ふと手に取りたくなる隠れた名作だと思う。
Producer
Doug "Biggs" Ellison, Young Strokes, Blickie Blaze, Antario Holmes, Austin Powers
Track List
1. Diamond Letter
2. Steady
3. Meant to Be feat. Meet Sims
4. Soulmate
5. Unbreakable
6. To the Moon
7. Make Me Fall
8. Equal feat. Rick Ross
9. These Stones
10. Indy Girl
11. Us Against the World
12. Reinvent the Wheel feat. Mali Music
2007年にデフ・ジャムから満を持してデビュー作『I Am』を発表すると、20代前半(当時)とは思えない、貫禄のある落ち着いた歌唱と妖艶な歌声を披露。おしゃれな音楽に敏感な人から、熱狂的なソウル愛好家まで、多くの人々から注目を集めた。中でも、アルバムのオープニングを飾る”Like A Dream”は、近年でもラジオやライブの開演前BGMなどでしばし耳にするR&Bクラシックとなっている。
その後も、2015年までにデフ・ジャムやモータウンなどから、3枚のフル・アルバムと3枚の1枚のEP、3作のミックス・テープを発表。その一方で、自身名義のツアーをこなしつつ、メアリーJ.ブライジやキーシャ・コールの公演にも携わるなど、多忙な日々を送ってきた。だが、激務の中でも作品の質は衰えることなく、2009年にはウィル・アイ・アムをフィーチャーした”Be OK”でグラミー賞を獲得。他の作品でも、グラミー賞やソウル・トレイン・アワードなど、多くの音楽賞にノミネート、好セールスを記録してきた。
今回のアルバムは2015年に発表したEP『The Lyricists' Opus』と同じく、自身のレーベル、リッチ・ヒップスターからのリリース。配給元がモータウンからキャロラインに変わったが、制作の指揮をデビュー作から彼女の録音に携わっているダグ・エリソンがプロデュースを担当するなど、新たな環境でもスタイルを大きく変えることなく、従来の路線を踏襲した、豪華でロマンティックな大人向けのR&B作品に纏め上げている。
アルバムに先駆けて発表されたシングル曲”Unbreakable”は、シンセサイザーの低音を効果的に使ったスタイリッシュな伴奏と、ミッチェルのセクシーな歌声が格好良いミディアム・ナンバー。地声を使って歌うメロディ部分から、喉の負担が心配になるほど強烈な裏声を響かせるサビへと続く難解なメロディ楽曲を作り、歌ってしまう彼女の作曲技術と歌唱力にはびっくりしてしまう。
一方、フレンチ・モンタナなどを手掛けてきた、アンソニー・ノリスが携わっている”To the Moon”は、重厚なビートの上で、喉を絞った荒々しい歌声を張り上げるミディアム・バラード。メロディ部分で多用される中~低音域の力強い歌声は、タイプこそ違うがビヨンセの声と少し似ている気がする。壮大なスケールのメロディと、それを引き立てる荘厳なトラックはアデルの”Hello”にも見劣りしない、高い完成度が光る楽曲だ。
これに対し、ヤング・ストークスが手掛けた”Soulmate”は、音量を抑えた繊細なシンセサイザーの伴奏に乗って、繊細な表現を聴かせるスロー・ナンバー。芯の太い声で囁きかけるように歌う彼女の姿が光る、ロマンティックな楽曲。デビュー当時から表現の幅は広い歌手だったが、この曲ではその技術に一層の磨きをかけたように見える。
そして、2014年のアルバム『Mali Is...』も記憶に新しいマリ・ミュージックとのデュエット曲”Reinvent the Wheel”は、ホセ・ジェイムスの『 Love in a Time of Madness』を手掛けているアンタリオ・ホルムズが手掛けたアップ・テンポよりのミディアム。ピットブルやエイコンの作品を彷彿させる、鮮やかな音色のシンセサイザーを使ったトラックをバックに、ラップと歌を織り交ぜたパフォーマンスを披露している。一つ一つの言葉を丁寧に紡ぎ出す真摯な姿勢が光るミッチェルを横目に、子供がボールで遊んでいるかのように、軽妙でリズミカルなラップを聴かせるマリの対照的な姿も面白い。
デビューから10年近く経ち、新しい流行が次々と生まれる中で発表された新作だが、今回のアルバムでも、彼女の作風はぶれることなく、少しずつだが着実に、磨き上げてられているように映った。彼女の音楽は、ビヨンセやリアーナのような爆発的なヒットや、トレンドをけん引する先進性には乏しいかもしれないが、発表から長い時間が経っても聴かれ続けているこれまでの作品のように、長きに渡って愛される求心力と普遍性があると思う。
シンプルだが味わい深い、スルメイカのようなR&B作品。新しい音楽を追いかけるのに疲れたとき、ふと手に取りたくなる隠れた名作だと思う。
Producer
Doug "Biggs" Ellison, Young Strokes, Blickie Blaze, Antario Holmes, Austin Powers
Track List
1. Diamond Letter
2. Steady
3. Meant to Be feat. Meet Sims
4. Soulmate
5. Unbreakable
6. To the Moon
7. Make Me Fall
8. Equal feat. Rick Ross
9. These Stones
10. Indy Girl
11. Us Against the World
12. Reinvent the Wheel feat. Mali Music