2015年にデビュー・シングル”My Type”を発表すると、韓国のシングル・チャートで1位を獲得。同年の新人賞を総なめにするなど、一気に人気グループの仲間入りを果たしたYGエンターテイメント発のボーイズ・グループ、アイコン。
ボビー(韓国ではバビと発音するらしい)こと、キム・ジウォンは、同グループの核となるラップ担当。ソウルの生まれだが、両親の仕事の関係でヴァージニア州のフェアファクスで育った彼は、16歳の時に現在の事務所のオーディションを受け、契約を結ぶ。
そんな彼は、2011年に現在のメンバーとグループを結成するも、デビューを賭けたオーディション企画で敗北。デビューは延期となる。その後、彼は、プロとアマチュアが真剣勝負を披露することで人気のラップ・バトル番組『Show Me The Money』に参加。同僚のB.I.を含む多くのラッパーを押しのけて優勝する一方、2014年にはエピック・ハイのシングル”Born Hater”に客演。ベテランのラッパーや、彼らに先駆けてデビューしたウィナーのミノとともに「自分を嫌う奴らへのメッセージ」というテーマのラップを披露。デビュー前ながら鮮烈な印象を残した。
この作品は、アイコンのメンバーでは初めてとなるソロ・アルバム。セオ・タジ&ザ・ボーイズで、韓国のお茶の間にR&Bを広めたYGエンターテイメントのCEO、ヤン・ヒュンソクが陣頭指揮を執り、ビッグバンのG-ドラゴンやSOLの作品にも携わっているチョイス37や、グループが2017年に発表した”Bling Bling”を手掛けているミレニアムが制作を担当。ボビー自身も全ての曲でペンを執った力作になっている。
アルバムの1曲目は、本作からの先行シングル”I Love You”は、ウィナーの”Really Really”などを手掛けているカン・ウ・ジンがプロデュース。ウィズ・キッドやワーレイの作品を思い起こさせる、アフロ・ビートを取り入れた爽やかなトラックが心地よい作品。硬い声質のテナー・ヴォイスを聴かせるサビから、荒々しいラップへと繋ぐボビーのヴォーカルもいい味を出している。ボビーの持ち味である、ワイルドなパフォーマンスを活かしつつ、ポップにまとめた良作だ。
続く”Runaway”は、チョイス37が制作に参加。ゆったりとしたテンポのビートの上で、攻撃的なラップとレイド・バックした歌を披露する姿が印象的な作品だ。のんびりとしたムードはビッグ・バンの”Looser”にも似ているし、ラップとヴォーカルを使い分けて雰囲気を切り替える手法は、同グループの”Fxxk It”に通じるものがある。歌とラップ、両方をこなせる彼の長所が遺憾なく発揮された佳作だ。
だが、本作のハイライトは、なんといってもミノを招いた”UP”だろう。チョイス37が提供したトラックは、ミーゴスや2チェインズを彷彿させる、シンセサイザーを多用した重々しい雰囲気のトラップ・ビート。その上で、ドスの効いたバリトン・ヴォイスが格好良いミノと、鋭利な刃物のようなテナー・ヴォイスが魅力のボビーが、熾烈なラップ・バトルを繰り広げている。若者に人気のボーイズ・グループに所属しながら、本職のラッパー顔負けのハードなパフォーマンスを披露する二人の姿が聴きどころだ。
それ以外の曲では、ミレニアムがプロデュースした”Swim”も捨て難い曲だ。アッシャーやクリス・ブラウンを彷彿させる、トラップやバウンズ・ビートの要素を取り入れたトラックに乗って、熱い歌声と高速ラップを披露したミディアム・ナンバー。アメリカのシンガーであればゲスト・ミュージシャンを招いて録音するような曲だが、歌とラップ、両方をこなせる彼は一人で歌い切っている。ラッパーでありながら、ヴォーカルを担当することも多い、彼の持ち味を活かした作品だ。
彼の音楽の魅力は、アメリカのトレンドを丁寧に取り込みつつ、きちんと自分の個性を盛り込んでいるところだと思う。YGエンターテイメントといえば、ディプロやミッシー・エリオットとコラボレーション作品を録音しているG-ドラゴン、スヌープ・ドッグをフィーチャーした曲をリリースしたPSY、アメリカを拠点に活躍し、ブラック・アイド・ピーズとの共演も記憶に新しいCLや、ガラントと組んだ”Cave Me In”も記憶に新しいエピック・ハイのタブロなど、韓国の芸能事務所の中でも、特に欧米の音楽に傾倒していることで有名だ。彼の作品は、その強靭な声質を活かして、先達の路線を踏襲しつつ、トラップなどのアメリカで流行っているサウンドを、アジア人向けに咀嚼することなく、本場の音に近い形で取り込んでいる点が特徴的だ。”Born Hater”で見せた新人離れしたハードなラップのような「本場に負けないヒップホップ」と、人気ボーイズ・グループで培った「本格的なR&B」を一人で両立できることが、彼の良さだと思う。
事務所の偉大な先輩であるG-ドラゴンとは異なるアプローチで、アメリカのブラック・ミュージックに取り組んだ魅力的な作品。ボーイズ・グループ出身というキャリアの彼にしか作れない、ヒップホップとR&Bが高いレベルで融合した音楽だと思う。
Producer
Yang Hyun-suk, Bobby, Choice37, Diggy, Kang Uk-jin
Track List
1. I Love You
2. Runaway
3. I Love You -KR Ver.-
4. Runaway -KR Ver.-
5. Alien -KR Ver.-
6. Tendae -KR Ver.-
7. UP feat. Mino -KR Ver.-
8. SECRET feat. Dk, Katie -KR Ver.-
9. IN Love -KR Ver.-
10. Swim -KR Ver.-
11. Firework -KR Ver.-
12. Lean on Me -KR Ver.-
ボビー(韓国ではバビと発音するらしい)こと、キム・ジウォンは、同グループの核となるラップ担当。ソウルの生まれだが、両親の仕事の関係でヴァージニア州のフェアファクスで育った彼は、16歳の時に現在の事務所のオーディションを受け、契約を結ぶ。
そんな彼は、2011年に現在のメンバーとグループを結成するも、デビューを賭けたオーディション企画で敗北。デビューは延期となる。その後、彼は、プロとアマチュアが真剣勝負を披露することで人気のラップ・バトル番組『Show Me The Money』に参加。同僚のB.I.を含む多くのラッパーを押しのけて優勝する一方、2014年にはエピック・ハイのシングル”Born Hater”に客演。ベテランのラッパーや、彼らに先駆けてデビューしたウィナーのミノとともに「自分を嫌う奴らへのメッセージ」というテーマのラップを披露。デビュー前ながら鮮烈な印象を残した。
この作品は、アイコンのメンバーでは初めてとなるソロ・アルバム。セオ・タジ&ザ・ボーイズで、韓国のお茶の間にR&Bを広めたYGエンターテイメントのCEO、ヤン・ヒュンソクが陣頭指揮を執り、ビッグバンのG-ドラゴンやSOLの作品にも携わっているチョイス37や、グループが2017年に発表した”Bling Bling”を手掛けているミレニアムが制作を担当。ボビー自身も全ての曲でペンを執った力作になっている。
アルバムの1曲目は、本作からの先行シングル”I Love You”は、ウィナーの”Really Really”などを手掛けているカン・ウ・ジンがプロデュース。ウィズ・キッドやワーレイの作品を思い起こさせる、アフロ・ビートを取り入れた爽やかなトラックが心地よい作品。硬い声質のテナー・ヴォイスを聴かせるサビから、荒々しいラップへと繋ぐボビーのヴォーカルもいい味を出している。ボビーの持ち味である、ワイルドなパフォーマンスを活かしつつ、ポップにまとめた良作だ。
続く”Runaway”は、チョイス37が制作に参加。ゆったりとしたテンポのビートの上で、攻撃的なラップとレイド・バックした歌を披露する姿が印象的な作品だ。のんびりとしたムードはビッグ・バンの”Looser”にも似ているし、ラップとヴォーカルを使い分けて雰囲気を切り替える手法は、同グループの”Fxxk It”に通じるものがある。歌とラップ、両方をこなせる彼の長所が遺憾なく発揮された佳作だ。
だが、本作のハイライトは、なんといってもミノを招いた”UP”だろう。チョイス37が提供したトラックは、ミーゴスや2チェインズを彷彿させる、シンセサイザーを多用した重々しい雰囲気のトラップ・ビート。その上で、ドスの効いたバリトン・ヴォイスが格好良いミノと、鋭利な刃物のようなテナー・ヴォイスが魅力のボビーが、熾烈なラップ・バトルを繰り広げている。若者に人気のボーイズ・グループに所属しながら、本職のラッパー顔負けのハードなパフォーマンスを披露する二人の姿が聴きどころだ。
それ以外の曲では、ミレニアムがプロデュースした”Swim”も捨て難い曲だ。アッシャーやクリス・ブラウンを彷彿させる、トラップやバウンズ・ビートの要素を取り入れたトラックに乗って、熱い歌声と高速ラップを披露したミディアム・ナンバー。アメリカのシンガーであればゲスト・ミュージシャンを招いて録音するような曲だが、歌とラップ、両方をこなせる彼は一人で歌い切っている。ラッパーでありながら、ヴォーカルを担当することも多い、彼の持ち味を活かした作品だ。
彼の音楽の魅力は、アメリカのトレンドを丁寧に取り込みつつ、きちんと自分の個性を盛り込んでいるところだと思う。YGエンターテイメントといえば、ディプロやミッシー・エリオットとコラボレーション作品を録音しているG-ドラゴン、スヌープ・ドッグをフィーチャーした曲をリリースしたPSY、アメリカを拠点に活躍し、ブラック・アイド・ピーズとの共演も記憶に新しいCLや、ガラントと組んだ”Cave Me In”も記憶に新しいエピック・ハイのタブロなど、韓国の芸能事務所の中でも、特に欧米の音楽に傾倒していることで有名だ。彼の作品は、その強靭な声質を活かして、先達の路線を踏襲しつつ、トラップなどのアメリカで流行っているサウンドを、アジア人向けに咀嚼することなく、本場の音に近い形で取り込んでいる点が特徴的だ。”Born Hater”で見せた新人離れしたハードなラップのような「本場に負けないヒップホップ」と、人気ボーイズ・グループで培った「本格的なR&B」を一人で両立できることが、彼の良さだと思う。
事務所の偉大な先輩であるG-ドラゴンとは異なるアプローチで、アメリカのブラック・ミュージックに取り組んだ魅力的な作品。ボーイズ・グループ出身というキャリアの彼にしか作れない、ヒップホップとR&Bが高いレベルで融合した音楽だと思う。
Producer
Yang Hyun-suk, Bobby, Choice37, Diggy, Kang Uk-jin
Track List
1. I Love You
2. Runaway
3. I Love You -KR Ver.-
4. Runaway -KR Ver.-
5. Alien -KR Ver.-
6. Tendae -KR Ver.-
7. UP feat. Mino -KR Ver.-
8. SECRET feat. Dk, Katie -KR Ver.-
9. IN Love -KR Ver.-
10. Swim -KR Ver.-
11. Firework -KR Ver.-
12. Lean on Me -KR Ver.-