melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2018年06月

Epik High & End Of The World(SEKAI NO OWARI) - Sleeping Beauty [2018 YG Entertainment, avex]

2001年に、韓国系カナダ人のTabloと韓国出身のMithra Jin、DJ Tukutzによって結成。サンプリングを多用した本格的なヒップホップから、ロックや韓国の歌謡曲まで、あらゆるサウンドを飲み込んだ音楽性と、様々なメッセージを含蓄とウィットに富んだ表現で綴るラップの技術が高く評価され、お茶の間からクラブ・シーンまで、幅広く支持を集めてきた韓国のヒップホップ・グループ、Epik High。

2000年代中頃(現在の編成になったのは2008年)に幼馴染の4人によって結成。詞、メロディ、演奏、ヴィジュアルなど、自分達の音楽に関するあらゆる要素を用いて独特の世界を表現するスタイルで、海外にも多くのファンがいる、日本を代表する人気ロック・バンド、SEKAI NO OWARI。

以前から、ラジオ番組やSNSで親交があることを示唆していた両者が、2018年6月末に突如発表したのがこの曲だ。

SEKAI NO OWARIの”眠り姫”(英題は”Sleeping Beauty”)とは同名異曲であるこの作品。制作には双方のメンバーに加え、Mariah CareyやZeddなど、Eminemなどの楽曲に携わってきたアメリカのプロデューサー、Rock Mafiaが参加。ジャンルの枠を飛び越えた作風が魅力の両者の持ち味が遺憾なく発揮された良曲になっている。

エレキ・ギターの伴奏(これはNAKAJINのものだろうか?)と、Tabloの囁くようなラップで幕を開けるこの曲は、FUKASEの歌、Tabloのラップ、再び FUKASEの歌、Mithra Jinのラップ、 再び FUKASEの歌という風に、両者がマイクを繋ぐという滑らかな構成の作品。Mithra のパートでは、途中でメロディを歌ったり、Tabloが合いの手を挟んだりするなど、切ない雰囲気を醸し出しながら、随所に遊び心を盛り込んでいる。また、英語詞の曲自体は何曲かリリースしているものの、Tablo以外のメンバーにとって、母国語ではない英語を使って、自分達の世界観を綴った歌詞(ただし、これは日本語曲のオンエアが難しい韓国と、韓国語のポップスをオン・エアすることに抵抗のある日本の音楽事情も影響している)も見逃せない。

また、本作のバックトラックでは、両者の尖った作風を土台にしつつも、双方の個性がきちんと一つの演奏に落とし込まれている。ロックとクラブ音楽を融合する技術には定評のあるSEKAI NO OWARIと、ロックやフォーク・ソングですらヒップホップの一部にしてしまうEpik Highの個性があわさったこの曲では、Epik Highらしい、サンプリングを用いたビートと、ヒップホップのリズムをフォーク・ソングのアレンジに溶け込ませるSEKAI NO OWARIの演奏いう、両者の作品でも、他のミュージシャンの作品でもあまり見ない手法を披露している。

今回の曲は、両者が得意とするバラードをベースにしているが、SEKAI NO OWARIの作品には珍しいヒップホップのリズムを用い、Epik Highの作品では異色の本格的なヴォーカルとの共演という新しいスタイルに取り組むなど、両者の単独名義の作品とは一線を画している。また、今回の作品は「ロック・バンドとヒップホップ・グループのコラボレーション」という、多くのミュージシャンが取り組んできたものだが、両者の持つ、繊細な感性と尖ったセンスのおかげで、他の作品とは一味違う、独創的な作品に仕上がっている。

ヒップホップとロック、異なる音楽ジャンルを土台にしているものの、鋭い眼差しと豊かな感受性で色々な音楽を取り込んできた両者の魅力が4分間に凝縮された珠玉の1曲。Linkin Parkとコラボレーションも話題になったJay-Zや、新作を出す度に、Snoop DoggやMos Defといったヒップホップ・アクトとのコラボレーションしてきたGorillazなど、アメリカやヨーロッパでは盛んな「ロックとヒップホップの融合」に新しい視点から切り込んだ、面白い作品だ。

Producer
Epik High, End Of The World, Rock Mafia

Track List
1. Sleeping Beauty






BLACKPINK - Square Up EP [2018 YG Entertainment]

平昌オリンピックの入場時にも使われた“Fantastic Baby”などのヒット曲を残し、アジア屈指の人気グループとして、多くの大記録を打ち立ててきたBIGBANGを筆頭に、”Fire”や”I am The Best”といった名曲を発表し、アジア人女性によるヒップホップ・グループのロール・モデルとなった2Ne1など、多くの名グループを輩出してきた韓国のYGエンターテイメント

近年は、メンバーがラッパーのオーディション番組で、ストリート出身の参加者を押しのける活躍を見せたWinnerやiKonといった新しい世代のグループのほか、クラブ・シーンで絶大な人気を誇る、エピック・ハイやザイオンTなどの移籍組、R&Bにフォークソングの要素を盛り込んだ作風で注目を集めている楽童ミュージシャンなど、個性豊かなタレントを擁立。ヒップホップを中心に、幅広いジャンルの音楽に強い総合エンターテイメント企業となった。

ブラックピンクは、同社にとって7年ぶりとなる女性ヴォーカル・グループ。韓国出身のジスとジェニー、オーストラリア出身のロゼ、タイ出身のリサかならる4人組だ。6年以上の長い研修生期間を経て、2016年にシングル”Boombayah”でメジャー・デビューした彼女達は、BIGBANGや2Ne1を手掛けてきたYGの看板プロデューサー、テディ・パクが作る本格的なヒップホップのサウンドと、流行のファッションを身にまとったセクシーなビジュアル。キュートだけど安定感のある歌声で、着実にファンを増やしてきた。

本作は、彼女達にとって初のEP(それ以外にも日本語作品『Blackpink』があるが)。制作陣にはテディ・パクやチョイス37といった事務所所属のプロデューサーのほか、BIGBANGのテヤンの代表曲”"Eyes, Nose, Lips" を手掛けたことでも知られるアメリカのソングライター、レベッカ・ジョンソンなどが参加。YGエンターテイメントらしい、アメリカのヒップホップ、R&Bを咀嚼したクールなサウンドを聴かせている。

本作の1曲目は、アルバムと同時にミュージック・ビデオが発表された、本作からのシングル曲。テディ・パクが制作を主導したトラックは、レゲトンを連想させる華やかな音色を使いつつ、トラップやクランクのエッセンスを盛り込んだビートが格好良いヒップホップ作品。レベッカ・ジョンソンや24、R.ティーを共同制作者に迎え、こまめに曲調を変えたアレンジと、ビートとは真逆のキュートな4人の歌声が聴きどころ。

続く、”Forever Young”はテディに加え、フューチャー・バウンスが制作に参加したアップ・ナンバー。BTSの”Blood Sweat Tears”を彷彿させる。鮮やかな音色のビートを使った情熱的な雰囲気のナンバー。レゲトンの要素を盛り込み、彼女達のセクシーな一面を引き出した演出が格好良い。

これに対し、”Really”はチョイス37がプロデュースを担当、ソングライティングをテディと韓国系アメリカ人のダニー・チャンが担当したゆったりとしたテンポの曲。フィフス・ハーモニーTLCのアルバムで聴けるような、遅めのテンポのヒップホップのトラックと、リラックスした雰囲気で歌う4人の姿が心に残る楽曲。SWVや3LWのような、90年代から2000年代にかけてアメリカで活躍した、スター性と実力を兼ね備えたガールズ・グループの流れを汲んだ楽曲だ。

そして、本作の最後を飾るのが”See U Later”。R.ティーと24がプロデュースしたアップ・ナンバー。ムーンバートンのビートを取り入れているものの、低音は控えめで、サビの印象的なフレーズに重きを置きつつ、起承転結がはっきりしたメロディを聴かせることに力を入れた、韓国のポップスのトレンドを取り入れたアレンジの作品だ。

彼女達の面白いところは、プロダクションではアメリカのヒップホップに傾倒しつつ、パフォーマンスではヒップホップの臭いを感じさせないところだ。音楽性こそヒップホップが土台になっているが、ファッションやヴォーカルからはヒップホップの影響を感じさせない。このヒップホップのクールなサウンドと、同世代の女性が憧れる格好良いガールズ・グループというロール・モデルを同時に打ち出したところが、彼女達の特徴だと思う。

TLCやデスティニーズ・チャイルドのような、R&Bの枠を超え、多くの人の心に訴えかける力を持つ稀少なアルバム。近年少なくなった「ポップスのいちジャンルとしてのR&B」の面白さを堪能できる良作だ。

Producer
Teddy Park, Bekuh Boom, Future Bounce, R.Tee, 24, Choice37

Track List
1. Ddu-Du Ddu-Du
2. Forever Young
3. Really
4. See U Later





【番外編】インフラ勉強会半年記念イベントに参加してきた

「おい、melOn、つまらない前々回は資格試験の話で、今回は勉強会の話か?音楽の四方山話はどこへ行った!?」

最近、ブログのタイトルを裏切る内容が続いて、大変申し訳ありません。
今後は音楽の話も増やしていきますので、今回だけはご容赦を。

去る6月23日(土)、都内某所で行われたインフラ勉強会の半年記念イベントに参加してきました。
自分はゴリゴリのシステム屋さんではないですが、自分の腕を磨き、見識を深めるため、色々なイベントに顔を出したり、参加したりしてきました。

今回、参加したのはそのうちの一つ「インフラ勉強会」の設立半年記念のイベント。
自分はあまり積極的に参加していないですが、泥酔した状態で発表をしたり、あちこちに喧嘩を売ったり情報交換に参加したりと色々関わってきました。

当日は、護身用具自己紹介グッズと、ご縁があっていただけるというネットワーク機器を持ち帰るための袋を用意して渋谷へ・・・。


余談ですが、丈夫な布袋を買った渋谷のロフトでは、最近日本デビューを果たしたアイドル・グループ、SEVENTEENとのコラボレーション・カフェをやってました。ファンの女性で入場制限がかかってましたね。

IMG_4922

さて、今回のイベント、会費はPaypalで事前に支払い、入館受付時に必要な画面はQRコードを使って呼び出し、会場では参加者は全員名札を使用していました。

このシステムは非常に便利で、支払いに時間を取られることもなければ、金銭の授受にまつわるトラブルも避けられるなど、とても快適でした(もちろん、100人規模のイベントだからできる面も大きいでしょうが)。

あと、当日は名札(カードホルダーを持ち込んでいる人もいた)を着用して、名前やTwitterなどのアカウント、飲酒等の可否などを表明できたのは良かったです。発言内容は覚えていても、直接お会いする機会のない人と話すことが多いので、目印になるものがあると便利ですね。

自分も当日、PC経由で色々な文字列を表示させる名札と、自前の名刺(こちらはあまり使わなかったけど)を用意しました。

IMG_4925
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さて、今回のイベントは半年記念ということで、技術の話題よりも設立経緯や現在に至る流れについてのまとめが主流でした。

ざっくりいえば、少数のメンバーで始めた勉強会は、とびぬけた技術を持った人だけでなく、色々な技術、経験を持った人が学べる場、発表する場として、着実に拡大し、現在では2500人が登録するまでになったということです。

また、発表テーマも多岐に渡っていて、PCパーツショップで働いていた方のパーツ講座や、メイドカフェから中継する簿記講座(余談ですが、この回の次が自分の発表でした)、分厚い書籍の輪読会など、各人がの興味や特技を活かして、色々な勉強会を開いています。ただ、初心者向けの企画は少なくなってきているので、その点は課題という指摘もありました。

それ以外にも、、技術者向けの書籍を発表しているような方が、一発表者として参加したり、参加者として登壇者に鋭い質問を投げかけたりする一方で、新しい分野に挑戦している方が、基本的だけど上級者が見落としがちなポイントについて確認したりと、登壇者を含む、参加者同士のコミュニケーションで、コンテンツがを作っている点にも言及されてました。

発表の内容以外に目を向けると、当日は、大阪でも同時に開催し、東京で行なっている発表を大阪で視聴したり、大阪の発表を東京で視聴したりしている点も斬新でした。また、配信内容自体は一般公開していたので、都市部に来れない方や、子育て中の方が、両会場以外のところから参加している(これはチャットやSNS経由で確認できた)のも面白かったです。

ここで、いち参加者の立場から、当日の発表も踏まえて、インフラ勉強会のメリットを簡単にまとめたいと思います。

1.性別、年齢、学歴、職歴が異なる人達と知り合うきっかけになる
インフラ勉強会の登壇者、参加者には色々な人がいます。PCショップでパーツを売っていた人や、大学院で畑違いの分野の研究をしていた人、ソフトウェア会社で開発をしている人から、コンプライアンスに煩い大企業で管理の仕事をしている人などなど、参加者のバックグラウンドは多種多様です。ただ、多くの人はITインフラ(以外のテーマも多いけど)への興味という共通点を持って参加しています。職場や学生時代の友人、ご近所付き合いとは違う形で他人とコミュニケーションを取れる勉強会は、ともすれば同じような価値観の人と付き合いがちな私達にとって、視野を広げたり考えを柔軟にする良い機会だと思います。

2.自分のペースで参加できる
オンラインのインフラ勉強会は、平均すると1回1時間弱、1日1コマ~3コマ、週7日のペースで開かれています。これは、職業訓練の学校や通信教育に比べると非常に多い分量です。これは見方を変えれば「全部の勉強会に参加している人、参加できる人はいない」って意味でもあります。自分が興味のあるもの、必要あるものに絞ってマイペースに参加できることは大きいと思います。実際、育児などを理由に、外部のセミナーに参加できない方が、インフラ勉強会で登壇したことは何度もあります(過去には、発表中に子供や奥さんの声が聞こえたことも)。この敷居の低さが始めやすく、途中で挫折しても復帰しやすい雰囲気づくりに一役買っていると思います。

3.自分なりのアプローチで貢献できる
「インフラ勉強会」と銘打ってますが、勉強会のテーマは多岐に渡ります。特定の技術に関するものから、ソフトウェアのハンズオン(手を動かしながら学ぶ機会)、資格試験の反省会まで、その範囲は多岐に渡ります。自分の得意な分野、学びたい分野、伝えたいことのある分野で、他の人に有益な情報を提供できるのは大きいと思います。

最後に
最後になりましたが、運営の皆さん、懇親会や二次会で声をかけてくださった皆さん。ネットワーク機器や書籍をくださった@hmatsuさん。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

 いただいた書籍や機材の写真。

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