少ない人数と比較的安価な機材で作れるヒップホップやR&B、電子音楽の隆盛によって、不利な立場に置かれている、ロック・バンド。
アメリカのポップス史を振り返ると、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやアイズレー・ブラザーズ、ファンカデリックなど、黒人によるロック・バンドが多くの名作を残していたが、近年は少数派になっていた。そんな中、数少ない黒人によるロック・バンドとして頭角を現しているのが、ナッシュビルを拠点に活動する4人組、ザ・ニュー・リスペクツだ。
彼女達は、ヴォーカル兼ギターのジャスミン・マレン。ギターのザンディ、ベースのレキシのフィッツジェラルド姉妹、彼女達の兄弟であるドラムのダリウスからなる4人組。10代の頃からゴスペル・シンガーであるジャスミンの母、ニコールのステージで演奏するなど、多くのステージを経験してきた叩き上げのバンドである。
本作は2017年の『Here Comes Trouble』以来となる新作で、彼女達にとって初のフル・アルバム。10曲の新曲に加え、前作に収められている”Come As You Are “、”Frightening Lightning”、”Trouble”を収録したものになっている。
新曲のうち、本作に先駆けて公開されたのは7曲目の”Something To Believe In”。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの”Family Affaire”を思い起こさせる軽快なビートと、陽気な歌声が心に残るアップ・ナンバー。リズミカルなギターの演奏と、パワフルでありながら適度に力を抜いたジェシーの歌声が印象的な曲だ。キュートでセクシーなコーラスは、スリー・ディグリーズやエモーションズに少し似ている。
これに対し、本作のリリース直前に発表された”Before The Sun Goes Down”は、しなやかなベース・ラインと少しゆったりとしたテンポの演奏、流麗なメロディと可愛らしい歌声の組み合わせが心地よい楽曲。粗削りな音色の楽器を組み合わせて、ポップで洗練された楽曲を生み出すセンスと技術に驚かされる。ベース・ラインがカーティス・ブロウなどの80年代のヒップホップに少し似ているのも見逃せない。
また、エミネムなどを手掛けているセロン・フェムスターが制作に参加した”Freedom”は、ゴツゴツとしたサウンドを活かした泥臭いミディアム・ナンバー。60年代のスタックス・レコードや、70年代のハイ・レコードのような、往年のアメリカ南部の音楽レーベルが遺したお蔵入り作品ではないかと思わせる、泥臭い演奏が魅力のミディアム・ナンバー。重く荒々しい伴奏をバックに、雄叫びのような力強い歌声を響かせるジャスミンには、エッタ・ジェイムスやビヨンセのような威圧感すらある。
それ以外の曲では、”Future”も見逃せない。エフェクターを使って電子楽器っぽく仕立てたベースが生み出すグルーヴと軽快にリズムを刻むギターの伴奏が心地よい曲。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの尖った雰囲気と、ザ・ルーツの安定感が融合したような曲だ。
このアルバムの聴きどころは、ツイン・ギターにベース、ドラムにヴォーカルという、ビートルズの時代から現代まで、多くのバンドが取り入れてきたスタイルを用いながら、独自性を発揮しているところだ。シンプルな編成のバンドでありながら、様々なアーティストの演奏手法を引用し、独自性を発揮しているところだ。ロックという成熟した分野で、過去の蓄積を利用しつつ、それらを組み合わせて独自の作品を組み立てているのが彼女達の面白いところだと思う。
ヒップホップやエレクトロ・ミュージックのような打ち込み音楽に押されがちなバンド・サウンドの魅力と可能性を感じさせる良作。アルバムを聴き終えた後、楽器が弾きたくなる魅力的な作品だ。
Track List
Ben Shive, Jeremy Lutito, Theron Feemster
Track List
1. Ain't Goin' Nowhere
2. Before The Sun Goes Down
3. What You Really Want
4. Trigger
5. Hands Up
6. Freedom
7. Something To Believe In
8. Come As You Are
9. What Makes The World
10. Trouble
11. Frightening Lightning
12. Future
13. Rich
アメリカのポップス史を振り返ると、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやアイズレー・ブラザーズ、ファンカデリックなど、黒人によるロック・バンドが多くの名作を残していたが、近年は少数派になっていた。そんな中、数少ない黒人によるロック・バンドとして頭角を現しているのが、ナッシュビルを拠点に活動する4人組、ザ・ニュー・リスペクツだ。
彼女達は、ヴォーカル兼ギターのジャスミン・マレン。ギターのザンディ、ベースのレキシのフィッツジェラルド姉妹、彼女達の兄弟であるドラムのダリウスからなる4人組。10代の頃からゴスペル・シンガーであるジャスミンの母、ニコールのステージで演奏するなど、多くのステージを経験してきた叩き上げのバンドである。
本作は2017年の『Here Comes Trouble』以来となる新作で、彼女達にとって初のフル・アルバム。10曲の新曲に加え、前作に収められている”Come As You Are “、”Frightening Lightning”、”Trouble”を収録したものになっている。
新曲のうち、本作に先駆けて公開されたのは7曲目の”Something To Believe In”。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの”Family Affaire”を思い起こさせる軽快なビートと、陽気な歌声が心に残るアップ・ナンバー。リズミカルなギターの演奏と、パワフルでありながら適度に力を抜いたジェシーの歌声が印象的な曲だ。キュートでセクシーなコーラスは、スリー・ディグリーズやエモーションズに少し似ている。
これに対し、本作のリリース直前に発表された”Before The Sun Goes Down”は、しなやかなベース・ラインと少しゆったりとしたテンポの演奏、流麗なメロディと可愛らしい歌声の組み合わせが心地よい楽曲。粗削りな音色の楽器を組み合わせて、ポップで洗練された楽曲を生み出すセンスと技術に驚かされる。ベース・ラインがカーティス・ブロウなどの80年代のヒップホップに少し似ているのも見逃せない。
また、エミネムなどを手掛けているセロン・フェムスターが制作に参加した”Freedom”は、ゴツゴツとしたサウンドを活かした泥臭いミディアム・ナンバー。60年代のスタックス・レコードや、70年代のハイ・レコードのような、往年のアメリカ南部の音楽レーベルが遺したお蔵入り作品ではないかと思わせる、泥臭い演奏が魅力のミディアム・ナンバー。重く荒々しい伴奏をバックに、雄叫びのような力強い歌声を響かせるジャスミンには、エッタ・ジェイムスやビヨンセのような威圧感すらある。
それ以外の曲では、”Future”も見逃せない。エフェクターを使って電子楽器っぽく仕立てたベースが生み出すグルーヴと軽快にリズムを刻むギターの伴奏が心地よい曲。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの尖った雰囲気と、ザ・ルーツの安定感が融合したような曲だ。
このアルバムの聴きどころは、ツイン・ギターにベース、ドラムにヴォーカルという、ビートルズの時代から現代まで、多くのバンドが取り入れてきたスタイルを用いながら、独自性を発揮しているところだ。シンプルな編成のバンドでありながら、様々なアーティストの演奏手法を引用し、独自性を発揮しているところだ。ロックという成熟した分野で、過去の蓄積を利用しつつ、それらを組み合わせて独自の作品を組み立てているのが彼女達の面白いところだと思う。
ヒップホップやエレクトロ・ミュージックのような打ち込み音楽に押されがちなバンド・サウンドの魅力と可能性を感じさせる良作。アルバムを聴き終えた後、楽器が弾きたくなる魅力的な作品だ。
Track List
Ben Shive, Jeremy Lutito, Theron Feemster
Track List
1. Ain't Goin' Nowhere
2. Before The Sun Goes Down
3. What You Really Want
4. Trigger
5. Hands Up
6. Freedom
7. Something To Believe In
8. Come As You Are
9. What Makes The World
10. Trouble
11. Frightening Lightning
12. Future
13. Rich