melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2021年04月

George Porter Jr. And Runnin' Pardners - Crying For Hope [2021George Porter Jr.]

ジョージ・ポーターJr.はニューオーリンズ出身のファンク・ミュージシャン。ネイヴィル・ブラザーズのアート・ネイヴィルと結成したバンド、ミーターズの中心人物としても知られるベーシストだ。

また、ミーターズだけでなく、PBSやディープ・フライドなどのプロジェクトに参加し、ポール・マッカートニーやパティ・ラベル、Dr.ジョンの作品でも演奏している。彼は、同地を代表するベーシストとして、八面六臂の活躍を見せている大物ミュージシャンなのだ。

今回のアルバムを制作したランニング・パードナーズは、ミーターズが活動を再開した1989年に結成したバンド。結成30年を超えながら、スタジオ録音は3枚と少ない。だが、各メンバーが多忙な日々の合間を縫って集まり、多くのステージに立ってきた、ニューオーリンズが誇る実力派グループなのだ。 

13年ぶりのスタジオ・アルバムとなる本作は、近年のステージを支える、馴染みのメンバーと録音している。ここでは、ジョージの安定感抜群のベースを軸に、ドラムやギター、オルガンなどの楽器が、時に軽快に、時にダイナミックなパフォーマンスを披露している。その演奏は、メンバーの個性が正面からぶつかり合った、50年代のハード・バップのグループとよく似ている。

しかし、これだけ強い個性が揃っても、見るものがバンドとしての一体感を抱けるのは、ジョージの高い演奏技術と、アレンジ能力のおかげだろう。常に安定したグルーヴを生み出しつつ、曲の展開に合わせて表情を変える彼の演奏のおかげで、他のメンバーは遠慮なく自分の個性を発揮することができるのだ。

ベースと言えば「バントの下支え役」というイメージが強い。だか、ジョージの演奏はバンドの土台であり、他のメンバーを牽引するコンダクター(指揮者)でもあるのだ。ニューオーリンズを代表する名演奏者は、自身の作品を通して、バンドにおけるベースの役割と可能性を僕らに教えてくれる。

Producer
George Porter Jr.

Track List
1. Crying For Hope
2. Porter 13A
3. A Ladder
4. Get Back Up
5. I'm Barely
6. Cloud Funk
7. Wanna Get Funky
8. Spanish Moss
9. Just Start Groovin'
10. A Taste of Truth
11. Too Hot Too Cold
12. You Just Got Tired  

 
 

Crying For Hope
Controlled Substance Sound Labs
2021-03-26

 

ELHAE - Aura III[2021 Motown Universal]

シュープリームス、スティーヴィー・ワンダー、ボーイズIIメン、数多の名ミュージシャン達を世に送り出してきたモータウン・レコード。自身も稀代の名シンガー、プロデューサーであるニーヨがCEOに就任してからは、BJ ザ・シカゴ・キッドエリック・ベリンガーなど、スケールの大きな歌唱を得意としている、実力派シンガー達のアルバムを次々と繰り出し、黒人音楽の名門として、音楽シーンを牽引している。

同レーベルの仲間に新しく加わったのが、エルハエことジャマール・ジョーンズだ。 2019年に出した『Trouble in Paradise』以来となる今回のアルバム。本作では、リック・ロスやマセーゴといった、アメリカ南部のヒップホップに強い面々をゲストと、トラップを土台にした尖ったビートを並べ、現代のトレンドを意識した作品に仕上げている。

しかし、癖の強いビートでもきちんと乗りこなしつつ、美しいメロディを丁寧に歌う、エルハエのパフォーマンスは紛れもないR&Bなのだ。このアルバムでは、アメリカ南部特有の変速ビートを器用に乗りこなしながら、ジェラルド・レバートやタンクのように、力強い声と艶かしい表現を聴かせている。このアルバムは、多くのミュージシャンが取り組んできた、人間の声の魅力を活かしつつ、その時代の流行を取り入れた新しいサウンドを乗りこなす、ソウル・ミュージックやR&Bの伝統を踏襲したものなのだ。

それぞれの時代で黒人音楽のスタンダードを生み出してきたモータウンのブランドを裏切らない。王道であり最先端でもある、本格的なR&B作品だ。

Producer
Akxen, Andrei Andrei, Black Fridayy, Matt Busco etc

Track List
1. Fun Fact feat. Rick Ross
2. My City feat. Masego
3. U Know
4. Separated
5. Face
6. Cold (Interlude)
7. Only One
8. Sick Of Playing feat. Xavier Omär
9. In My Corner
10. I Can See
11. Fun Fact Ballad  
Aura III [Explicit]
Motown Records
2021-04-09

 

Merry Clayton - Beautiful Scars [2021 Motown Gospel]

メリー・クレイトンの名前を知らなくても、映画「バックコーラスの歌姫達」に出演した、ローリング・ストーンズのバックコーラスの女性といえば思い出すかもしれない。

レイ・チャールズのバック・コーラスであるレイレッツの一員だった彼女は、同グループから発展したシスターズ・ラヴとしても多くの傑作を残している。特に、シスターズ・ラヴ時代の楽曲は、そのレアリティと内容の良さから、多くのファンが追い求めていることでも知られており、インターネットが発達し、再版市場が成熟した今も、幻の名作と評されている。

また、グループを離れた後も、ローリング・ストーンズやキャロル・キングなどバックコーラスを務め、ローリング・ストーンズの“Gimme Shelter”で見せた彼女のパフォーマンスは、主役のミック・ジャガーを喰ったと例えられる名演として知られている。

そんな彼女の27年ぶりとなる新作は、シスターズ・ラヴのアルバムを残したモータウン発のアルバム。本格的なゴスペル作品を目指したということもあり、アップテンポ、スローテンポの楽曲ともに、彼女のパワフルな歌声が堪能できる。

だが、それ以上に面白いのはオリジナル曲と一緒におさめられたカヴァー曲のラインナップだろう。レオン・ラッセルの"A Song For You"やファイブ・ステアステップスの"Ooh Child"のカヴァーでは、原曲の要素を残しつつ、本格的なゴスペルにアレンジする大技も見せている。ダイナミックな歌声と絶妙な匙加減のアレンジ、この二つが本作の聴きどころだと思う。

20世紀の音楽シーンに多くの伝説を残した名歌手の確かな実力を確認できる名盤。ゴスペルだからって敬遠してると損するよ。

Producer 
Leon Adler, Terry Young

Track List
1. A Song for You
2. Touch the Hem of His Garment
3. Beautiful Scars
4. Love Is a Mighty River
5. God's Love
6. Deliverance
7. Room at the Altar
8. He Made a Way
9. Oh What a Friend
10. Ooh Child Medley




Beautiful Scars
Merry Clayton
Motown
2021-04-09


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