2010年代以降、クラブ・ミュージックの主役になりつつあるEDM。ディプロやカルヴィン・ハリスのようなDJやクリエイターは、ウィル・アイ・アムやリアーナといったヒップホップ、R&B畑のミュージシャンを巻き込むことで、お茶の間にも進出。オーディオ機器のアイコンとして採用されるなど、クラブとは縁遠い人々の間も知られる存在となった。
スティーヴ・アオキも、このムーブメントを代表するクリエイターの一人。フロリダ州のマイアミに生まれ、カリフォルニア州のニューポートで育った彼は、ロッキー青木の名前でプロレスラーとして活躍し、のちに鉄板焼きレストラン「ベニハナ」を創業した青木廣彰を父に持つ日系人。大学生のころから、音楽活動をしていた彼は、96年に自身のレーベルを設立。アクロバティックなDJとキャッチーな作風で人気を集めてきた。
そんな彼は、2010年にウィル・アイ・アムとのコラボレーション曲”I'm in the House”を発表すると、イギリスのシングル・チャートにランクイン。2012年には初のアルバム『Wonderland』をリリース。LMFAOやリル・ジョンを招いた本作は、エレクトロ・ミュージックのアルバムとしては異例の全米アルバム・チャート入りを果たした。
その後も、DJやレコーディングを精力的にこなした彼は、現在では世界で五指に入る人気DJと称されるまでになった。
このアルバムは、2015年の『Neon Future』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。前作同様、多くのラッパーを招いた、ヒップホップ色の強い作品になっている。
本作の収録曲で最初に目を引いたのは、オランダを拠点に活動するDJチーム、イエロー・クロウとのコラボレーション・シングル”Lit”。オートチューンを使ったT-ペインのヴォーカルと、グッチ・メインの重いラップが格好良い作品。シンセサイザーを刺々しいビートと、T-ペインのロボット・ヴォイスがうまく噛み合った良作だ。
また、カナダのDJユニット、DVBBSやジョージア州出身のラッパー、2チェインズが参加した”Without You”は、サイレンのような音色が印象的なビートをバックに、泥臭いラップを聴かせる2チェインズの存在が光っている。2チェインズの作品同様、シンセサイザーを駆使したトラップ寄りの楽曲だが、エレクトロ・ミュージックの世界で育った面々がトラックを作ると、よりキャッチーで躍動感のあるものに聞こえるから不思議だ。
また、ミーゴスとリル・ヨッティをフィーチャーした”Night Call”は、本作の収録曲でも特にヒップホップ寄りの作品。チキチキという高音と、唸るような低音の組み合わせが心地よいビートに乗って軽妙なラップを聴かせている佳曲。リル・ヨッティやミーゴスのアルバムに入っていそうな作品だが、細かいところに工夫を凝らして、差別化を図っている点は流石の一言。
そして、バッド・ボーイに多くの作品を残しているメイスを招いた”$4,000,000”は、スティーヴ・アオキと同じ西海岸発のEDMユニット、バッド・ロイヤルが制作に携わり、ビッグ・ギガンティックのサックスやドラムの演奏を盛り込んだ作品。昔のソウル・ミュージックをサンプリングしたサウンドで一世を風靡したバッド・ボーイの音楽を彷彿させる部分と、EDMの手法を混ぜ合わせたトラックが新鮮に映る。
今回のアルバムは、彼の前作やディプロやカルヴィン・ハリスの近作同様、ヒップホップやR&Bのトレンドをエレクトロ・ミュージックに取り入れたものだ。その中でも、彼の音楽はEDMの高揚感とヒップホップの奇抜さを丁寧に取り入れたサウンドが印象的、EDM畑のクリエイターは、変則的なビートにも対応できる、アメリカ南部出身のラッパーや、海外のミュージシャンとコラボレーションが多いが、彼もその流れを踏襲している。
本格的なクラブ・ミュージックでありながら、自宅や通勤、通学中の鑑賞にも耐えうる良質なポップス作品。エレクトロ・ミュージックを聴いたことがない人にこそ、手に取ってほしいアルバムだ。
Producer
Steve Aoki, Yellow Claw, DVBBS, Bad Royale, Ricky Remedy
Track List
1. Kolony Anthem feat. Bok Nero, ILoveMakonnen
2. Lit feat. Gucci Mane, T-Pain
3. Without You feat. 2 Chainz
4. How Else feat. ILoveMakonnen, Rich The Kid
5. Been Ballin feat. Lil Uzi Vert
6. Night Call feat. Lil Yachty, Migos
7. $4,000,000 feat. Big Gigantic, Ma$e
8. If I Told You That I Love You feat. Wale
9. No Time feat. Jimmy October
10. Thank You Very Much feat. Sonny Digital
スティーヴ・アオキも、このムーブメントを代表するクリエイターの一人。フロリダ州のマイアミに生まれ、カリフォルニア州のニューポートで育った彼は、ロッキー青木の名前でプロレスラーとして活躍し、のちに鉄板焼きレストラン「ベニハナ」を創業した青木廣彰を父に持つ日系人。大学生のころから、音楽活動をしていた彼は、96年に自身のレーベルを設立。アクロバティックなDJとキャッチーな作風で人気を集めてきた。
そんな彼は、2010年にウィル・アイ・アムとのコラボレーション曲”I'm in the House”を発表すると、イギリスのシングル・チャートにランクイン。2012年には初のアルバム『Wonderland』をリリース。LMFAOやリル・ジョンを招いた本作は、エレクトロ・ミュージックのアルバムとしては異例の全米アルバム・チャート入りを果たした。
その後も、DJやレコーディングを精力的にこなした彼は、現在では世界で五指に入る人気DJと称されるまでになった。
このアルバムは、2015年の『Neon Future』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。前作同様、多くのラッパーを招いた、ヒップホップ色の強い作品になっている。
本作の収録曲で最初に目を引いたのは、オランダを拠点に活動するDJチーム、イエロー・クロウとのコラボレーション・シングル”Lit”。オートチューンを使ったT-ペインのヴォーカルと、グッチ・メインの重いラップが格好良い作品。シンセサイザーを刺々しいビートと、T-ペインのロボット・ヴォイスがうまく噛み合った良作だ。
また、カナダのDJユニット、DVBBSやジョージア州出身のラッパー、2チェインズが参加した”Without You”は、サイレンのような音色が印象的なビートをバックに、泥臭いラップを聴かせる2チェインズの存在が光っている。2チェインズの作品同様、シンセサイザーを駆使したトラップ寄りの楽曲だが、エレクトロ・ミュージックの世界で育った面々がトラックを作ると、よりキャッチーで躍動感のあるものに聞こえるから不思議だ。
また、ミーゴスとリル・ヨッティをフィーチャーした”Night Call”は、本作の収録曲でも特にヒップホップ寄りの作品。チキチキという高音と、唸るような低音の組み合わせが心地よいビートに乗って軽妙なラップを聴かせている佳曲。リル・ヨッティやミーゴスのアルバムに入っていそうな作品だが、細かいところに工夫を凝らして、差別化を図っている点は流石の一言。
そして、バッド・ボーイに多くの作品を残しているメイスを招いた”$4,000,000”は、スティーヴ・アオキと同じ西海岸発のEDMユニット、バッド・ロイヤルが制作に携わり、ビッグ・ギガンティックのサックスやドラムの演奏を盛り込んだ作品。昔のソウル・ミュージックをサンプリングしたサウンドで一世を風靡したバッド・ボーイの音楽を彷彿させる部分と、EDMの手法を混ぜ合わせたトラックが新鮮に映る。
今回のアルバムは、彼の前作やディプロやカルヴィン・ハリスの近作同様、ヒップホップやR&Bのトレンドをエレクトロ・ミュージックに取り入れたものだ。その中でも、彼の音楽はEDMの高揚感とヒップホップの奇抜さを丁寧に取り入れたサウンドが印象的、EDM畑のクリエイターは、変則的なビートにも対応できる、アメリカ南部出身のラッパーや、海外のミュージシャンとコラボレーションが多いが、彼もその流れを踏襲している。
本格的なクラブ・ミュージックでありながら、自宅や通勤、通学中の鑑賞にも耐えうる良質なポップス作品。エレクトロ・ミュージックを聴いたことがない人にこそ、手に取ってほしいアルバムだ。
Producer
Steve Aoki, Yellow Claw, DVBBS, Bad Royale, Ricky Remedy
Track List
1. Kolony Anthem feat. Bok Nero, ILoveMakonnen
2. Lit feat. Gucci Mane, T-Pain
3. Without You feat. 2 Chainz
4. How Else feat. ILoveMakonnen, Rich The Kid
5. Been Ballin feat. Lil Uzi Vert
6. Night Call feat. Lil Yachty, Migos
7. $4,000,000 feat. Big Gigantic, Ma$e
8. If I Told You That I Love You feat. Wale
9. No Time feat. Jimmy October
10. Thank You Very Much feat. Sonny Digital