日本のSMAPとともに、東アジアのボーイズ・グループの存在感を世界に知らしめた神話(シンファ)にはじまり、韓国人ミュージシャンの海外戦略に大きな影響を与えたBoAや東方神起など、多くの人気タレントを送り出してきた韓国最大手の芸能事務所、SMエンターテイメント。同社から2008年にデビューしたのが、5人組のボーイズ・グループ、シャイニーだ。
デビュー作『The Shinee World』を発表した彼らは、韓国の音楽賞の新人部門を総なめにする一方、事務所の先輩である東方神起や少女時代のツアーに帯同したり、事務所主催のツアーに参加したりするなどして、地道に経験を積んでいく。また、2010年以降は、自分達の名義でも日本を含むアジア地域で多くのライブを敢行。着実に評価を高めてきた。また、ライブと並行して2016年までに韓国で6枚、日本で4枚のアルバムをリリース。特に、2012年に発表した”Sherlock”は二つの曲を繋ぎ合わせる手法と、90年代初頭のニュー・ジャック・スウィングの手法を取り入れた作風、美しいコーラス・ワークが注目を集め、同曲を収録したEPがビルボードのワールド・アルバム・チャートの5位に入ったほか、ローリング・ストーン誌の特集「ボーイズ・グループの名曲トップ50」に、事務所の先輩である東方神起や、日本勢では唯一ランク・インしたKAT-TUNなどを押しのけて、アジア勢では最高位となる12位で紹介される。
このアルバムは、日本盤としては2016年の『D×D×D』以来、約1年ぶり、韓国盤も含めると『1 of 1』のリパッケージ盤『1 and 1』以来、約3か月ぶりとなる5枚目の日本語版アルバム。最年長者のオンユが、2018年から兵役に就き、その後も他のメンバーが続く予定のため、本作は長いブランクを前にした彼らの、キャリアを総括するような作品になっている。
本作のオープニングを飾る”Gentleman”は、スウェーデンのプロデューサー、アンドレアス・オーバーグらが曲を作り、SMAPやクリス・ハートなどの作品でもペンを執っているいしわたり淳治が詞をつけたミディアム・ナンバー。60年代のシカゴ・ソウルを彷彿させるホーンのような音色が心を掻き立てるトラックをバックに、美しいハーモニーやコール&レスポンスを繰り出す作品。「新しい世界のドア、レディ・ファーストがマイ・マナー」という歌い出しや、「踊ろう、僕がエスコートしてあげる」というフレーズのとおり、聴き手を彼らの世界に引き込んでくれる。ゴスペラーズやラッツ&スターが得意としていた本格的なコーラス・ワークと、彼らのスター性が同居した面白い曲だ。
また、デンマークのプロデューサー、イラガーク・ラムハルトが曲を書いた”Get The Treasure”は、ハウス・ミュージックとR&Bの要素を混ぜ合わせたアップ・ナンバー。キラキラとした音色のシンセサイザーを駆使した伴奏と、滑らかなテナー・ヴォイスのコンビネーションが素敵な良曲。「ルーレットは回る」「伸るか反るかどうする?」という歌詞の通り、躍動感溢れるトラックと、緊迫感に満ちたヴォーカルの組み合わせが光っている。
また、韓国で2016年に発表されたシングル”1 of 1”は、カナダのソング・ライター、マイク・ディレイなどが制作を担当。イントロを聴いた瞬間、ガイの”Teddy’s Jam”を連想してしまう、軽快に跳ねるビートと、女性に語り掛けるように歌う軽妙なヴォーカルが魅力のアップ・ナンバーだ。サラ・サクライが作る甘酸っぱい雰囲気の歌詞は、80年代後半から90年代前半にかけて多くのヒット曲を残した、ニュー・エディションやベイビーフェイスの作風を連想させる。
そして、本作に先駆けて発表された”Winter Wonderland”は、スウェーデンのプロデューサー、エリック・リボムと日本のプロデューサー、田中秀典の共作によるバラード。東方神起や嵐にも楽曲を提供しているエリックが生み出すメロディは、起承転結がはっきりした展開と、日本人の琴線を突くメロディが心地よい。しなやかなテナー・ヴォイスを駆使した美しいコーラス・ワークは、R&Bグループのそれとは少し違うが、年齢、性別を問わず人の心を引き付ける不思議な魅力を持っている。日本を含む、アジア各国に多くのファンがいるという話も納得の内容だ。
彼らの音楽の面白いところは、80年代後半から90年代前半のR&Bという、若い人には馴染みの薄い音楽を取り入れつつ、彼らに愛されるポップス作品に落とし込んでいるところだろう。日本でもゴスペラーズやFOHのような、R&Bをベースにしたヴォーカル・グループはあるが、ポップ・スターというポジションで、このような音楽を作るグループは珍しい。
また、彼らのもう一つの強みは、結成以来、変わらない5人による隙のないコンビネーションだと思う。メンバーのソロ作品を除くほぼ全ての曲で、5人全員が一丸になって、美しいハーモニーやマイク・リレーを披露する彼らのパフォーマンスは、誰か一人が欠けても同じ音楽にはならないし、新しいメンバーや外部のシンガーを加えても同じクオリティのものにはならない。完成度の高いものだ。
誰もが厳しい競争にさらされる、韓国の音楽シーンの中で、音楽に誠実に向き合ってきた彼らの姿勢が垣間見える優れたヴォーカル作品。5人が揃ったステージは二度と見れない今、彼らが残してくれた素敵な音楽を大切にしたい。そう思わせる説得力のあるアルバムだ。
Producer
Lee Soo Man etc
Track List
1. Gentleman
2. Mr. Right Guy
3. ABOAB
4. 君のせいで
5. Do Me Right
6. Become Undone
7. Get The Treasure
8. 1 of 1 (Japanese Ver.)
9. Nothing To Lose
10. Melody
11. Winter Wonderland
12. Diamond Sky
デビュー作『The Shinee World』を発表した彼らは、韓国の音楽賞の新人部門を総なめにする一方、事務所の先輩である東方神起や少女時代のツアーに帯同したり、事務所主催のツアーに参加したりするなどして、地道に経験を積んでいく。また、2010年以降は、自分達の名義でも日本を含むアジア地域で多くのライブを敢行。着実に評価を高めてきた。また、ライブと並行して2016年までに韓国で6枚、日本で4枚のアルバムをリリース。特に、2012年に発表した”Sherlock”は二つの曲を繋ぎ合わせる手法と、90年代初頭のニュー・ジャック・スウィングの手法を取り入れた作風、美しいコーラス・ワークが注目を集め、同曲を収録したEPがビルボードのワールド・アルバム・チャートの5位に入ったほか、ローリング・ストーン誌の特集「ボーイズ・グループの名曲トップ50」に、事務所の先輩である東方神起や、日本勢では唯一ランク・インしたKAT-TUNなどを押しのけて、アジア勢では最高位となる12位で紹介される。
このアルバムは、日本盤としては2016年の『D×D×D』以来、約1年ぶり、韓国盤も含めると『1 of 1』のリパッケージ盤『1 and 1』以来、約3か月ぶりとなる5枚目の日本語版アルバム。最年長者のオンユが、2018年から兵役に就き、その後も他のメンバーが続く予定のため、本作は長いブランクを前にした彼らの、キャリアを総括するような作品になっている。
本作のオープニングを飾る”Gentleman”は、スウェーデンのプロデューサー、アンドレアス・オーバーグらが曲を作り、SMAPやクリス・ハートなどの作品でもペンを執っているいしわたり淳治が詞をつけたミディアム・ナンバー。60年代のシカゴ・ソウルを彷彿させるホーンのような音色が心を掻き立てるトラックをバックに、美しいハーモニーやコール&レスポンスを繰り出す作品。「新しい世界のドア、レディ・ファーストがマイ・マナー」という歌い出しや、「踊ろう、僕がエスコートしてあげる」というフレーズのとおり、聴き手を彼らの世界に引き込んでくれる。ゴスペラーズやラッツ&スターが得意としていた本格的なコーラス・ワークと、彼らのスター性が同居した面白い曲だ。
また、デンマークのプロデューサー、イラガーク・ラムハルトが曲を書いた”Get The Treasure”は、ハウス・ミュージックとR&Bの要素を混ぜ合わせたアップ・ナンバー。キラキラとした音色のシンセサイザーを駆使した伴奏と、滑らかなテナー・ヴォイスのコンビネーションが素敵な良曲。「ルーレットは回る」「伸るか反るかどうする?」という歌詞の通り、躍動感溢れるトラックと、緊迫感に満ちたヴォーカルの組み合わせが光っている。
また、韓国で2016年に発表されたシングル”1 of 1”は、カナダのソング・ライター、マイク・ディレイなどが制作を担当。イントロを聴いた瞬間、ガイの”Teddy’s Jam”を連想してしまう、軽快に跳ねるビートと、女性に語り掛けるように歌う軽妙なヴォーカルが魅力のアップ・ナンバーだ。サラ・サクライが作る甘酸っぱい雰囲気の歌詞は、80年代後半から90年代前半にかけて多くのヒット曲を残した、ニュー・エディションやベイビーフェイスの作風を連想させる。
そして、本作に先駆けて発表された”Winter Wonderland”は、スウェーデンのプロデューサー、エリック・リボムと日本のプロデューサー、田中秀典の共作によるバラード。東方神起や嵐にも楽曲を提供しているエリックが生み出すメロディは、起承転結がはっきりした展開と、日本人の琴線を突くメロディが心地よい。しなやかなテナー・ヴォイスを駆使した美しいコーラス・ワークは、R&Bグループのそれとは少し違うが、年齢、性別を問わず人の心を引き付ける不思議な魅力を持っている。日本を含む、アジア各国に多くのファンがいるという話も納得の内容だ。
彼らの音楽の面白いところは、80年代後半から90年代前半のR&Bという、若い人には馴染みの薄い音楽を取り入れつつ、彼らに愛されるポップス作品に落とし込んでいるところだろう。日本でもゴスペラーズやFOHのような、R&Bをベースにしたヴォーカル・グループはあるが、ポップ・スターというポジションで、このような音楽を作るグループは珍しい。
また、彼らのもう一つの強みは、結成以来、変わらない5人による隙のないコンビネーションだと思う。メンバーのソロ作品を除くほぼ全ての曲で、5人全員が一丸になって、美しいハーモニーやマイク・リレーを披露する彼らのパフォーマンスは、誰か一人が欠けても同じ音楽にはならないし、新しいメンバーや外部のシンガーを加えても同じクオリティのものにはならない。完成度の高いものだ。
誰もが厳しい競争にさらされる、韓国の音楽シーンの中で、音楽に誠実に向き合ってきた彼らの姿勢が垣間見える優れたヴォーカル作品。5人が揃ったステージは二度と見れない今、彼らが残してくれた素敵な音楽を大切にしたい。そう思わせる説得力のあるアルバムだ。
Producer
Lee Soo Man etc
Track List
1. Gentleman
2. Mr. Right Guy
3. ABOAB
4. 君のせいで
5. Do Me Right
6. Become Undone
7. Get The Treasure
8. 1 of 1 (Japanese Ver.)
9. Nothing To Lose
10. Melody
11. Winter Wonderland
12. Diamond Sky