ミシガン大学に併設されている音楽学校に通っていた学生達が結成、母校に併設されている音楽ホールでのパフォーマンスをきっかけに活動を開始した、アナーバー発の4人組ファンク・バンド、ヴァルフパーク。

ディープ・パープルやT.レックス、クウィーンなどを手掛けている名プロデューサー、レインホルド・マックの知己を得た彼らは、ドイツ向けの楽曲を制作。2011年に動画投稿サイトで公開した”Beastly”を皮切りに、ストリーミング・サイトや音楽配信サイト、フィジカル・リリースなど、様々な媒体を経由して作品を発表。ファンク・ブラザーズやレッキン・クルー、マッスル・ショールズ・サウンド・セクションのような、60年代から70年代にかけて、音楽シーンを彩ってきた名バンドを思い起こさせる、ダイナミックな演奏で多くのリスナーを沸かせてきた。

このアルバムは、2016年にリリースされた『The Beautiful Game』以来となる、通算3枚目のスタジオ・アルバム。制作と演奏は、これまでの作品同様ジャック・スタートンを中心としたメンバーの手によるもの。しかし、驚くべきは膨大な人数のゲスト達。デイビッドT.ウォーカーやブーツィー・コリンズのようなビッグ・ネームを中心に、チャールズ・ジョーンズやジェイムス・ギャドソンといった大ベテランや、ココOのような同世代のアーティストまで、幅広い世代の実力派ミュージシャン達が、この作品のために集結している。

アルバムの1曲目”Birds Of A Feather, We Rock Together”は、彼らの作品に何度も携わっているアントワン・スタンリー・スタントリーをフィーチャーした作品。70年代のアイズレー・ブラザーズを連想させる流麗な伴奏と、マックスウェルや初期のロビン・シックを思い起こさせる繊細なヴォーカルの組み合わせが心地よいスロー・ナンバー。音数を絞ることで、一つ一つの楽器を丁寧に聴かせるアレンジと、滑らかな演奏が気持ちよい曲だ。

続く”Baby I Don’t Know Oh Oh”は、60年代から70年代にかけて複数の録音を残し、近年はジョス・ストーンなどの作品にかかわっているシンガー・ソングライターのチャールズ・ジョーンズをヴォーカルに起用したスロー・ナンバー。各メンバーが楽器を叩くような演奏を聴かせるバック・トラックは、を他の曲とは一線を画している。泥臭いヴォーカルと、荒々しい伴奏の組み合わせはウィリアム・ベルの2016年作『This Is Where I Live』 にも似ているが、少しパワーが足りないのが気にかかる。

そして、本作の目玉といっても過言でないのが”Running Away”と”Grandma”の2曲だ。マーヴィン・ゲイの『I Want You』やビル・ウィザーズの『Still Bill』などで、気持ちいいグルーヴを聴かせてきたジェイムス・ギャドソンと、ビリー・プレストンやメリー・クレイトンの作品に携わりながら、自身の名義でも多くの作品を録音してきた、20世紀を代表するギタリスト、デイビッドT.ウォーカーを招いた楽曲。

”Running Away”は、静かにリズムを刻むジェイムスのドラムと、艶めかしい音色を響かせるデイビッドのギターが心に浸みるミディアム・バラード。マーヴィン・ゲイを連想させるジョーイ・ドシックの繊細なヴォーカルが心に残る。

また、”Birds Of A Feather, We Rock Together”でもマイクを握っている、アントワン・スタンリーをヴォーカルに招いた”Grandma”は、太い音色を使ったグラマラスな伴奏と、強靭なヴォーカルの組み合わせが心に浸みるバラード。豊かな声量を存分に聴かせながら、エロティックに聴かせるスタイルは、往年の名シンガー・ソングライター、リオン・ウェアの姿を彷彿させる。リオン・ウェアの『Musical Massage』やジョニー・ブリストルの『Bristol's Creme』などで、ロマンティックな演奏を披露してきた大先輩を招き、当時のサウンドを2017年に再現している。

彼らの音楽の面白いところは、ミシガン州の出身でありながら、所謂モータウン・サウンドに捉われず、色々なスタイルを取り込んでいるところだろう。本作でも、モータウンを支えた名シンガー、リオン・ウェアやジョニー・ブリストルの作品で演奏していた面々を起用しているもの、そのスタイルはモータウンが西海岸に移った70年代の作風を取り入れている。それ以外にも様々な地域で流行したジャズやファンクのエッセンスを曲の随所に取り込み。自分達の糧にしていることは、本作で披露された多彩な演奏スタイルからもよくわかる。そんな音楽性はもっと評価されるべきだろう。

過去の名作に慣れ親んだ若い世代が、現代人の感性でそれらの音楽を解釈した魅力的な作品。ジャズ、ソウル、ファンク、ヒップホップ、色々なジャンルの要素が詰まった本作からは、多くの人から受け入れられるポテンシャルを感じる。

Producer
Jack Startton

Track List
1. Birds Of A Feather, We Rock Together feat. Antwaun Stanley
2. Baby I Don’t Know Oh Oh feat. Charles Jones
3. Mr. Finish Line feat. Christine Hucal, Theo Katzman
4. Tee Time
5. Running Away feat. David T. Walker, James Gadson, Joey Dosik
6. Hero Town feat. Michael Bland
7. Business Casual feat. Coco O
. 8. Vulf Pack
9. Grandma feat. Antwaun Stanley, David T. Walker, James Gadson
10. Captain Hook feat. Baby Theo, Bootsy Collins, Mushy Kay