2013年に膵癌を公表して以来、病と闘いながらステージに立ち続けていたシャロン・ジョーンズ。このアルバムは、そんな彼女の活動を追いかけた、ドキュメンタリー映画のサウンドトラックとして発表された。

もっとも、本作はサウンドトラックと銘打っているものの、その中身は、これまでに彼女が発表してきた楽曲から選りすぐった編集盤。この中には、2007年に発売された『100 Days, 100 Nights』から、2014年に発表された『Give The People What They Want』までの、3枚のオリジナル・アルバムに収められた楽曲と、2011年にリリースされた編集盤『Soul Time!』で初めてCD化された、レコード限定で発表された楽曲から選び抜かれた16曲(2枚組のアナログ盤は19曲)が収録されている。

このアルバムを聴いて強く感じるのは、彼女達の一本筋が通った音楽性と、それを実現する高い技術力。本作のオープニングを飾る、『100 Days, 100 Nights』が初出のアップ・ナンバー”Tell Me”で見せる、シュープリームスを彷彿させる打楽器の音色を効果的に使った明るいダンス・サウンドから、2004年に7インチ・レコードのみで発表されたバラード”Longer & Stronger”で楽しめる、エタ・ジェイムスを彷彿させる迫力のある歌声と緊張感あふれる演奏。グラミー賞のベストR&Bアルバム部門にもノミネートした『Give The People What They Want』の収録曲、”Stranger To My Happiness”で見せる、レイ・チャールズとレイレッツのようなヴォーカルとコーラスの絶妙な掛け合いまで、彼女らの音楽の根底には、モータウンやスタックスのソウル・ミュージックや、ジェイムズ・ブラウンのファンクに代表される、往年のブラック・ミュージックから受けた影響が流れている。そして、デビュー以降、ヒップホップのように一つのフレーズを繰り返し演奏したり、ジャズで使われるような変拍子を取り入れたりしながら、先人とは違う自分達の音楽を作り上げていたように思う。

だが、彼女らの最大の魅力といえば、何よりもシャロン嬢の歌声だ。アレサ・フランクリンやエタ・ジェイムスの系譜に立つ豊かな声量と、アップテンポの曲が多いバンドのレパートリーの中でも、強烈なシャウトやファルセットを正確に放つ技術は、長い黒人音楽の歴史でも屈指のものだろう。

残念なことに、本作はシャロン嬢にとって生前最後のリリースになってしまった。しかし、このアルバムは彼女が残した足跡とその魅力を知る、最良の1枚になったと思う。このアルバムを通して、シャロン・ジョーンズという素晴らしいシンガーと彼女を支えてきた一流のバンドがいたことを、心の中に刻んでほしい。

Producer
Bosco Mann

Track List
1. Tell Me
2. Retreat!
3. Genuine Pt.1
4. Longer and Stronger
5. If You Call
6. 100 Days, 100 Nights
7. People Don't Get What They Deserve
8. Humble Me
9. I'll Still Be True
10. Let Them Knock
11. Stranger to My Happiness
12. Keep on Looking
13. Mama Don't Like My Man
14. I Learned the Hard Way
15. Slow Down, Love
16. I'm Still Here

 





Miss Sharon Jones!
Sharon Jones & The Dap-Kings
Daptone
2016-08-28