ジェニファー・ロペス feat. フロー・ライダーの”Goin' In”やアレシア・カラの”Here”などを手掛けてきた、アラバマ州バーミンガム出身のソング・ライター、セバスチャン・コールにとって初となるソロ・アルバム。

彼は、子供のころからゴスペルに親しみ、アラバマ大学では音楽技術を専攻してきたという、ソウル・シンガーの保守本流みたいな経歴を歩みながら、プロデビュー後はジェニファー・ロペスやマルーン・ファイブといった、幅広い層から親しまれているミュージシャンとも仕事をしてきたという異色の経歴の持ち主。この幅広い経験は、自身の作品でも存分に発揮されていて、2016年にモータウンからリリースされた本作では、50~60年代のソウル・ミュージックをベースにしつつ、R&Bなどの新しいブラック・ミュージックや、シンディー・ローパーやカーペンターズといった白人のポピュラー・ミュージックからエッセンスを取り入れた、ポップでありながら本格的なソウル・ミュージックを聴かせてくれる。

オープニングを飾る”Home”は、往年のドゥー・ワップ・グループを思い出させる重厚なアカペラのコーラスの上で、スモーキー・ロビンソンを彷彿させるしっとりとしたメロディが光るミディアム・ナンバー。洗練されたメロディにゴスペル仕込みのダイナミックなヴォーカル乗るスタイルは、初期のジョン・レジェンドにも似ているが、アレンジがシンプルな分、彼の方が歌の力強さが際立っているように思う。また、続く”Love Doctor”はロックっぽい荒々しいギターとシンセサイザーが光るアップ・ナンバー。R&Bというよりも、ブラッドオレンジやツイン・デンジャーなどのオルタナティブ・ロックに近いトラックだが、豊かな声量と表現力で本格的なソウルに纏め上げているところに、彼の実力の高さが伺える。

この他にも、R&Bのトラックの上にフォークソングを思い起こさせるギター・リフを織り込んだ”Carry On”や、アリシア・キーズを彷彿させるピアノの弾き語りと、ゴスペルで鍛え上げた強烈なヴォーカルを活かしたミディアム・バラード”Pour Me”など。色々なスタイルの音楽を取り入れた楽曲を揃えることで、表現の幅を広げつつ、幅広い層にアピールできる作品になっている点も心憎い。

ソウル・ミュージックをベースにしつつ、メロディ・ラインやトラックに新旧様々なジャンルのスタイルを取り入れたことで、音楽性の幅とファンの裾野を広げた面白い作品。ソングライターとしての能力も素晴らしいが、それ以上に魅力的な歌声と表現力を持つ、これからの成長が楽しみなアーティストだ。

Track List
1. Home
2. Love Doctor
3. Forgive Me For Trying
4. Carry On
5. Priceless
6. Choose You Again
7. Purple Heart Blvd
8. Pour Me
9. Love’s On The Way
10. Giants
11. Stay
12. Naked (Feat. Alessia Cara)



Soup
Sebastian Kole
Motown
2016-10-07