おそらく、90年代以降の音楽業界では、作品のクオリティとセールスの両面で最も安定した成果を残し続けている女性シンガーの一人、メアリー・J.ブライジの、2014年以来となるオリジナル・アルバムからの先行シングル。
彼女といえば、1991年のデビュー以降、ショーン・コムズにはじまり、ローリン・ヒルにDr.ドレ、ザ・ドリームにサム・スミスと、作品ごとにその時代をリードするクリエイターと組んできた。だが、その一方で、流行のサウンドからは一歩距離を引いた、保守的なメロディとアレンジの作品が中心で、音楽業界の台風の目でありながら、ゲームのルールを変えるような影響力を発揮することはなかった。
今回の新曲は、ジョン・レジェンドの『Love In The Future』やニーヨの『Non-Fiction』などを手掛けてきた、ダリル”DJ”キャンパーをプロデューサーに迎え、ジャズミン・サリヴァンが楽曲制作に参加したミディアム・バラード。ジャズミンが生み出すメロディは、ラップと歌の中間のようなもので、粗削に聴こえる分、聴き手には親しみやすい。だが、高声から低声までフルに使って、話し声の起伏や強弱を『歌』に変えなければいけないこの手の曲は、歌い手の視点に立つと大変厄介なものだと思う。
だが、こんな新しいタイプの曲でも、メアリーの歌声は怯むことなく、自分の色に染め上げている。彼女の特徴ともいえる、太く強靭なファルセットや強烈だが丸みを帯びた地声を器用に使い、ラップや話し声が持つ抑揚や起伏に対応しつつ、きちんとメロディを聴かせることに成功している。しかも、ラップの起伏を歌に取り入れることで、表現の幅をこれまで以上に広くしているようにも見える。
デビュー当初の弾けるようなヴォーカルから、恵まれた歌声を器用に使いこなす大人のシンガーへ、着実に進化し続ける姿を楽しめる。さて、新作はどんな内容になるのだろうか。今から楽しみだ。
Producer
Darhyl "DJ" Camper Jr.
彼女といえば、1991年のデビュー以降、ショーン・コムズにはじまり、ローリン・ヒルにDr.ドレ、ザ・ドリームにサム・スミスと、作品ごとにその時代をリードするクリエイターと組んできた。だが、その一方で、流行のサウンドからは一歩距離を引いた、保守的なメロディとアレンジの作品が中心で、音楽業界の台風の目でありながら、ゲームのルールを変えるような影響力を発揮することはなかった。
今回の新曲は、ジョン・レジェンドの『Love In The Future』やニーヨの『Non-Fiction』などを手掛けてきた、ダリル”DJ”キャンパーをプロデューサーに迎え、ジャズミン・サリヴァンが楽曲制作に参加したミディアム・バラード。ジャズミンが生み出すメロディは、ラップと歌の中間のようなもので、粗削に聴こえる分、聴き手には親しみやすい。だが、高声から低声までフルに使って、話し声の起伏や強弱を『歌』に変えなければいけないこの手の曲は、歌い手の視点に立つと大変厄介なものだと思う。
だが、こんな新しいタイプの曲でも、メアリーの歌声は怯むことなく、自分の色に染め上げている。彼女の特徴ともいえる、太く強靭なファルセットや強烈だが丸みを帯びた地声を器用に使い、ラップや話し声が持つ抑揚や起伏に対応しつつ、きちんとメロディを聴かせることに成功している。しかも、ラップの起伏を歌に取り入れることで、表現の幅をこれまで以上に広くしているようにも見える。
デビュー当初の弾けるようなヴォーカルから、恵まれた歌声を器用に使いこなす大人のシンガーへ、着実に進化し続ける姿を楽しめる。さて、新作はどんな内容になるのだろうか。今から楽しみだ。
Producer
Darhyl "DJ" Camper Jr.