毀誉褒貶はあるが、平成の日本のポップス界を代表するクリエイターの一人は、間違いなく小室哲哉だろう。ミリオンセラーを記録した楽曲を幾つも残している彼だが、自身が率いるユニット、globeが1996年に発表した4枚のシングルでは、そんな彼の創造力とビジネスセンスが遺憾なく発揮されている。中でも、ヨーロッパで流行していたドラムン・ベースを日本のポップスに落とし込んだこの曲は、日本のポップスでは厳しいとされる重低音を強調した硬質なビートをポップスに組み込んだ匠の技が聴きどころ。前作「SA YO NA RA」に続く2週連続1位という記録は、2019年にDrakeがアメリカで達成するまで、世界唯一の記録だった。
ポップスの世界にラップの存在を知らしめた「今夜はブギーバック」や「DA YO NE」、日本語によるハードコア・ヒップホップの可能性を示した「人間発電所」や「空からの力」など、多くのヒップホップ・クラシックが生まれた平成時代。その中でも後の音楽シーンに大きな影響を与えたのが、5人組のヒップホップ・グループ、RIP SLYMEが2000年に発表したメジャー・デビュー曲だろう。ドラムン・ベースを取り入れた、テンポが速く音数の多い複雑なビートの上で、コミカルなラップを次々と繰り出す姿は、アメリカのヒップホップにも日本のポップスにも見られない独創的なもの。日本の歌謡曲ともアメリカのヒップホップとも一定の距離を置きながら、ヒップホップの実験精神とポップスの親しみやすさを両立した音楽は、後の作品に多くの影響を与えている。余談だが、彼らの所属するヒップホップ・クルー、Funky Grammar Unitは、EAST END、RHYMESTER、KICK THE CAN CREWなど、多くの人気グループを輩出している。