melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

男性グループ

BTS - Butter [2021 Bighit]

コロナウイルス感染症の影響により、人々の往来が厳しく制限された2020年。韓国のボーイズ・グループ、BTSが発表した"Dynamite"は、人と人が関わり合うことの素晴らしさを再確認させるメッセージと、インターネットを通してミュージシャン同士、ミュージシャンとファン、ファン同士が結びつくことで、世界的なヒットとなったプロセスにより、物理的な隔絶とテクノロジーによる結びつきという、2020年代の社会を象徴する作品となった。

同曲を収めた『Be』から約半年ぶりとなる新曲(ただし、この間に日本語曲の"Film Out"が出ている)は、"Dynamite"以来の英語詞曲。 多くの作家とともに、リーダーのRMも制作に参加したこの曲は、軽い音色を使ったビートやオートチューンで加工されたコーラスが印象的だ。

この曲から連想するのは、80年代後半のディスコ音楽。近年もマーク・ロンソンの“Uptown Funk“やブルーノ・マーズの”24K Magic“などで耳にしてきたスタイルの楽曲を、彼らはラップを交えて2021年仕様に再解釈している。

本作の聴きどころは、ラップ担当の3人とヴォーカル担当の4人が作り出す、歌、ダンス、ラップの絶妙なバランスだろう。現代のラップに比べると音数が少なく、リズミカルなフロウが特徴的な80年代のラップのスタイルを取り入れ、普段の作品に比べるとシンプルで息の合ったダンスを楽曲のアクセントにすることで、往年の男性グループっぽい雰囲気を醸し出している。

また、ヴォーカルは他の曲に比べると艶かしく、ミュージック・ヴィデオで見せるファッションは妖しさすら感じられる。この、色々なところで80年代後半のテイストを取り入れつつ、それ以外の新しい要素も積極的に盛り込むことで、従来のBTSの作品とも、当時の音楽とも違う、独創的な作品に仕上がっているのが、本作の特徴だろう。

流行のサウンドを取り入れながら、自分達の個性を加えることを忘れないBTSによる、2021年のクラシック。R&Bの面白味を再確認できる傑作だ。

Producer
Ron Perry

Track List
1. Butter

 

Butter
UNIVERSAL MUSIC LLC
2021-05-21

 

Brockhampton - Roadrunner: New Light, New Machine [2021 RCA]

ケヴィン・アブストラクトがカニエ・ウエストのファン・コミュニティで知り合ったメンバーと結成した、「最強のボーイズ・バンド」、ブロックハンプトン。

ラッパーから音楽プロデューサー、スタイリストまで、様々なスキルのメンバーを揃えた彼らは、楽曲制作やビジュアル、映像作品やステージ上での演出まで、幅広く手がけていることで知られている。そのため、彼らのステージは、単なるパフォーマンスの場ではなく、五感を使って楽しむ総合芸術にも例えられるほどだ。

2年ぶりの新作となる今回のアルバムは、従来の路線を踏襲しつつ、発展させたもの。トラックやラップ、ミュージックビデオやパッケージまで、アルバムのほぼ全てに彼らが関与した力作だ。

収録曲の大部分では、サンプリングとコンピュータによる打ち込みを組み合わせ、90年代のヒップホップのローファイな雰囲気と、現代のヒップホップのハイファイなサウンドを見事に融合している。ウータン・クランから、クラウン・ハイヤーズ・アフェアーズまで、新旧の名曲をサンプリングし、ジェイペグマフィアのような若手からチャーリー・ウィルソンのような大ベテランまで、幅広く起用する姿勢からは、「時代に関係なく、良いものは良い」という強いメッセージすら感じさせる。

また、個性豊かな面々によるマイク・リレーは、ウータン・クランのタフさと、ビースティー・ボーイズのリズミカルなライム、エイサップ・モブの自由奔放なパフォーマンスが混ざり合い、独特の存在感を示している。この作品全体が醸し出す自由な空気と、曲の節々から溢れ出るエネルギーが、彼らの魅力なのだろう。

最強の"ボーイズ"バンドの異名に違わず、ヤンチャな心を持った各人の有り余るパワーと、各人のクリエイティビティが遺憾なく発揮されている。本作が6枚目のスタジオ・アルバムだが、彼らが「ベテラン」と呼ばれるのはまだ先のようだ。

Producer
Kevin Abstract, Romil Hemnani, Chad Hugo etc

Track List
1. BUZZCUT feat. Danny Brown
2. CHAIN ON feat. JPEGMAFIA
3. COUNT ON ME
4. BANKROLL feat A$AP Rocky and A$AP Ferg
5. THE LIGHT
6. WINDOWS feat. SoGone SoFlexy
7. I'LL TAKE YOU ON feat. Charlie Wilson
8. OLD NEWS feat. Baird
9. WHAT'S THE OCCASION?
10. WHEN I BALL
11. DON'T SHOOT UP THE PARTY
12. DEAR LORD
13. THE LIGHT PT. II
14. ROBERTO'S INTERLUDE
15. JEREMIAH
16. SEX
17. PRESSURE / BOW WOW feat. ssgkobe




ROADRUNNER: NEW LIGHT, NEW MACHINE
BROCKHAMPTON
Question Everything/RCA Records
2021-04-23



 

NCT127 - Neo Zone [2020 SMentertainment, Caroline, Universal]

メンバーの脱退や、兵役によるブランクを乗り越え、ベテラン・グループの新たなロール・モデルを築き上げた東方神起。メンバーのソロとグループ活動を両立し、ブレイクした後は卒業という、従来のガールズ・グループとは異なるキャリアの積み方を提示した少女時代。アイドル・グループの保守本流を歩みつつ、新しい音を積極的に取り入れることで、国内外に幅広いファンを獲得したEXOなど、多くの人気グループを輩出してきた韓国エンターテイメント界のガリバー、SMエンターテイメント

同社が2016年に送り出したNCTは、「開放と拡張」をコンセプトに掲げ、タイや日本、ドイツやカナダなど、多くの国から採用した個性豊かなメンバーと、コンセプトに合わせてメンバーを選抜した多彩な派生ユニットで、短い期間に多くの金字塔を打ち立ててきた。

NCT127は同グループの派生プロジェクトを代表するユニット。韓国系カナダ人のマーク、日本人のユウタ、中国人のウィンウィンなど、メンバーの約半数が外国出身という多様性と、ステレオタイプスやLDNノイズといった海外のヒットメイカーを起用した本格的なR&Bで一躍ブレイク。2019年に発売されたEP『We Are Superhuman』は全米総合アルバムチャートで11位という大記録を残した。

本作は『We Are Superhuman』から約10ヶ月の間隔を挟んでリリースされた、彼らにとって通算3枚目のスタジオ・アルバム。また、このアルバムは、マークとテヨンが事務所の先輩達と結成したSuperMとして、ウィンウィンはNCTの中国系メンバーで結成されたWay Vの一員として活動していた、多忙な時期に録音された作品でもある。

本作の1曲目である”Elevator (127F)”は、チェイン・スモーカーズやジョナス・ブラザーズの作品を手掛けているシルベスターが制作を主導した作品。四つ打ちに近いしなやかなビートと流れるようなメロディは、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”やカール・トーマスの”She Is”のような、2000年前後のR&Bに似ている。しかし、サビの箇所をシンセサイザーの演奏で埋める手法など、R&Bを土台にしつつ、近年のポップスのトレンドを取り込んだアレンジが心憎い。

続く”Kick It”は本作からの先行シングル。Dr.ドレの『Compton』で辣腕を振るい、NCTにも”Cherry Bomb”などのヒット曲を提供してきた、ディム・ジョインツが手掛けたミディアム・ナンバー。ギターのような音色のノイズを使った、トラップともEDMとも異なる独特のビートが格好良い。歌とラップを上手く混ぜ込み、観客を煽るサビも盛り込んだ構成も面白い。楽曲自体の完成度が高いのはもちろんのこと、ライブで聴いたら盛り上がりそうな高揚感も気になるところだ。

また、本作の隠れた目玉といっても過言ではないのが、ロス・アンジェルスを拠点に活動するイアン・ジェフリー・トーマスが制作を主導した”Day Dream”だ。デビュー5年目、メンバーの大多数が20代前半という若い力を活かした、甘酸っぱいメロディと柔らかいトラックが心地よい作品だ。みずみずしい歌声と爽やかなメロディ、耳ざわりのよいトラックの組み合わせはアッシャーの代表作『8701』に通じるところがある。

そして、本作の最後を締めるのが、”Dreams Come True”。ロンドンを拠点に活動し、韓国人アーティストにも多くの楽曲を提供しているプロダクション・ユニットLDNノイズの作品だ。シンセサイザーの音色を組み合わせて作ったヒップホップのビートと、なめらかなメロディ、低声を強調して年齢以上に大人っぽい表情を見せるヴォーカルが印象的な曲だ。若くしてベテランの貫禄と大人の色気を見せる9人の成長を感じられる良作だ。

本作の魅力は、世界の大舞台を経験し、飛躍的に成長した9人の表現力と、欧米のトレンドを取り入れつつ、あくまでもヒップホップやR&Bに軸足を置いた楽曲の組み合わせだ。グループとしての活動はもちろん、Super MやWayVでも、海外の大舞台を経験してきたメンバー達の高い技術と、EDMやトラップといった海外で人気のサウンドを取り入れて、アジアでは根強い人気のあるR&Bやヒップホップを現代の音楽として磨き上げた姿勢が、彼らの個性になっている。この、アジア特有のトレンドに対応しつつ、欧米を意識した音作りと、楽曲の魅力を引き出す高い技術が彼らの武器だと思う。

厳しい環境で鍛えられた9人の個性と、欧米の実力派クリエイターを9人と結びつけ、一つの作品に導いたプロデューサー達の采配が合わさったことで生まれた良作。歌手、作家、マネジメントの三者が高いレベルのスキルと明確な方針を共有したことで生まれたハイ・クオリティなアルバムだと思う。

Producer
Lee Soo-man (exec.), Dem Jointz,Yoo Young-jin, The Stereotypes, LDN Noise etc

Track List
1. Elevator (127F)
2. Kick It
3. Boom
4. Pandora's Box
5. Day Dream
6. Interlude: Neo Zone
7. MAD DOG
8. Sit Down!
9. Love Me Now
10. Love Song
11. White Night
12. Not Alone
13. Dreams Come True




NCT#127 Neo Zone(輸入盤)
NCT127
DREAMUS
2020-03-16

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    読者登録
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ