melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

女性グループ

June's Diary - All of Us [2018 Music of Sound]

90年代から2000年代にかけて、4枚のスタジオ・アルバムと”Say My Name”や”Survivor”などのヒット曲を残し、スパイス・ガールズやTLC、シュープリームスに匹敵する偉大なガールズ・グループとして、多くの足跡を残してきたデスティニーズ・チャイルド。

そのメンバーは、ビヨンセを筆頭に、全員がソロでも大きな成功を収めているが、いち早くソロで結果を残したのが、ネリーとのデュエット曲”Dilemma”を全世界で700万枚以上売ったケリー・ローランドだ。

ジューンズ・ダイアリーは、彼女がプロデュースする5人組のガールズ・グループ。アメリカの黒人向け放送局、BET(ブラック・エンターテイメント・テレビジョンの略)のオーディション番組を勝ち上がった面々によって結成されたこのグループは、2016年に”All of Us”でレコード・デビュー。その後も、R.ケリーやエクスケイプのツアーに帯同し、シャンテ・ムーアのアルバムに客演するなど、地道に経験を積んできた。

このアルバムは、彼女達に取って初のEP。プロデュースはケリー・ローランドやプロ2ジェイ、ハーモニー・サミュエルズが担当。ゲストとしてトリナやジャシー・スモレットが参加した、豪華なものになっている。

1曲目は、プロ2ジェイが制作に参加した”Good Time”。フィンガー・スナップとホーンの音色を組み合わせたバック・トラックと息の合ったコーラス・ワークが光るミディアム・ナンバーだ。4人組時代に、美しいハーモニーで勝負した作品を何度も録音していたデスティニーズ・チャイルドのスタイルを踏襲しつつ、バラードではなくダンサブルな楽曲で勝負した面白い作品だ。

続く”Take Me”は、前の曲から一転、シンセサイザーの音色を効果的に使った軽妙なビートと、甘酸っぱいメロディ、キュートな歌声の組み合わせたアップ・ナンバー。2000年代前半には、3LWやドリームなど、多くのグループが取り入れて成功してきた、ヒップホップのサウンドとポップなメロディを組み合わせたスタイルを2018年に再現した良曲だ。アメリカよりも、日本や韓国といったアジア圏でウケそう。

また、彼女達のデビュー曲である”All of Us”はケリー・ローランドがプロデュースを担当、ゲスト・ミュージシャンとしてトリナが参加したミディアム・ナンバー。アイズレー・ブラザーズの”Between The Sheets”を彷彿させるシンセサイザーの伴奏と、ヒップホップのビートを組み合わせ、彼女達の爽やかな歌声を乗せたロマンティックなバラードだ。SWVやエクスケイプ、TLCやブラック・アイヴォリーなど、多くのガールズ・グループが取り組み、成功してきた、ヒップホップとバラードを融合させた作品だ。

そして、ジャシー・スモレットを招いた”Hurt People”は、彼が2018年にリリースした『Sum of My Music』に収められているシングル曲のリメイク。ジャシーがリード・ヴォーカルを担当し、5人が脇を固めた本格的なコーラス作品になっている。原曲以上のトラックをよりシンプルなものに作り替え、6人の歌声が織りなす精密なアレンジとダイナミックな表現を際立たせている。5人の可愛らしい歌声が、ニーヨの音楽を思い起こさせる、爽やかなメロディの良さを際立たせている。

彼女達のヴォーカルは、後見人のケリー・ローランドに近い、爽やかでスタイリッシュなものだ。しかし、ケリー同様、歌の安定感は抜群で、メロディの良さを丁寧に引き出している。この、新人らしい溌剌さと可愛らしさ、新人離れした完成度の高いパフォーマンスが彼女達の魅力だと思う。

今やアメリカでは稀少な存在になった「R&Bを歌うポップ・スター」の座を受け継ぐ貴重なガールズ・グループ、新しいサウンドが生まれても、人間の声が生み出す音楽の魅力は変わらないことが再確認できる、良質なアルバムだ。

Producer
Pro2Jay, Harmony Samuels, Kelly Rowland etc

Track List
1. Good Time
2. Take Me
3. Have You Ever
4. His Phone
5. All of Us feat. Trina
6. Hurt People with Jussie Smollett




All of Us
Music Of Sound LLC
2018-06-30

BLACKPINK - Square Up EP [2018 YG Entertainment]

平昌オリンピックの入場時にも使われた“Fantastic Baby”などのヒット曲を残し、アジア屈指の人気グループとして、多くの大記録を打ち立ててきたBIGBANGを筆頭に、”Fire”や”I am The Best”といった名曲を発表し、アジア人女性によるヒップホップ・グループのロール・モデルとなった2Ne1など、多くの名グループを輩出してきた韓国のYGエンターテイメント

近年は、メンバーがラッパーのオーディション番組で、ストリート出身の参加者を押しのける活躍を見せたWinnerやiKonといった新しい世代のグループのほか、クラブ・シーンで絶大な人気を誇る、エピック・ハイやザイオンTなどの移籍組、R&Bにフォークソングの要素を盛り込んだ作風で注目を集めている楽童ミュージシャンなど、個性豊かなタレントを擁立。ヒップホップを中心に、幅広いジャンルの音楽に強い総合エンターテイメント企業となった。

ブラックピンクは、同社にとって7年ぶりとなる女性ヴォーカル・グループ。韓国出身のジスとジェニー、オーストラリア出身のロゼ、タイ出身のリサかならる4人組だ。6年以上の長い研修生期間を経て、2016年にシングル”Boombayah”でメジャー・デビューした彼女達は、BIGBANGや2Ne1を手掛けてきたYGの看板プロデューサー、テディ・パクが作る本格的なヒップホップのサウンドと、流行のファッションを身にまとったセクシーなビジュアル。キュートだけど安定感のある歌声で、着実にファンを増やしてきた。

本作は、彼女達にとって初のEP(それ以外にも日本語作品『Blackpink』があるが)。制作陣にはテディ・パクやチョイス37といった事務所所属のプロデューサーのほか、BIGBANGのテヤンの代表曲”"Eyes, Nose, Lips" を手掛けたことでも知られるアメリカのソングライター、レベッカ・ジョンソンなどが参加。YGエンターテイメントらしい、アメリカのヒップホップ、R&Bを咀嚼したクールなサウンドを聴かせている。

本作の1曲目は、アルバムと同時にミュージック・ビデオが発表された、本作からのシングル曲。テディ・パクが制作を主導したトラックは、レゲトンを連想させる華やかな音色を使いつつ、トラップやクランクのエッセンスを盛り込んだビートが格好良いヒップホップ作品。レベッカ・ジョンソンや24、R.ティーを共同制作者に迎え、こまめに曲調を変えたアレンジと、ビートとは真逆のキュートな4人の歌声が聴きどころ。

続く、”Forever Young”はテディに加え、フューチャー・バウンスが制作に参加したアップ・ナンバー。BTSの”Blood Sweat Tears”を彷彿させる。鮮やかな音色のビートを使った情熱的な雰囲気のナンバー。レゲトンの要素を盛り込み、彼女達のセクシーな一面を引き出した演出が格好良い。

これに対し、”Really”はチョイス37がプロデュースを担当、ソングライティングをテディと韓国系アメリカ人のダニー・チャンが担当したゆったりとしたテンポの曲。フィフス・ハーモニーTLCのアルバムで聴けるような、遅めのテンポのヒップホップのトラックと、リラックスした雰囲気で歌う4人の姿が心に残る楽曲。SWVや3LWのような、90年代から2000年代にかけてアメリカで活躍した、スター性と実力を兼ね備えたガールズ・グループの流れを汲んだ楽曲だ。

そして、本作の最後を飾るのが”See U Later”。R.ティーと24がプロデュースしたアップ・ナンバー。ムーンバートンのビートを取り入れているものの、低音は控えめで、サビの印象的なフレーズに重きを置きつつ、起承転結がはっきりしたメロディを聴かせることに力を入れた、韓国のポップスのトレンドを取り入れたアレンジの作品だ。

彼女達の面白いところは、プロダクションではアメリカのヒップホップに傾倒しつつ、パフォーマンスではヒップホップの臭いを感じさせないところだ。音楽性こそヒップホップが土台になっているが、ファッションやヴォーカルからはヒップホップの影響を感じさせない。このヒップホップのクールなサウンドと、同世代の女性が憧れる格好良いガールズ・グループというロール・モデルを同時に打ち出したところが、彼女達の特徴だと思う。

TLCやデスティニーズ・チャイルドのような、R&Bの枠を超え、多くの人の心に訴えかける力を持つ稀少なアルバム。近年少なくなった「ポップスのいちジャンルとしてのR&B」の面白さを堪能できる良作だ。

Producer
Teddy Park, Bekuh Boom, Future Bounce, R.Tee, 24, Choice37

Track List
1. Ddu-Du Ddu-Du
2. Forever Young
3. Really
4. See U Later





Xscape - Here For IT [2018 Redzone]

1993年に、ジャーメイン・デュプリが率いるソニー傘下のソー・ソー・デフから、アルバム『Hummin' Comin' at 'Cha』でメジャー・デビュー。総合アルバム・チャートの3位に入る華々しいデビューを飾った、4人組の女性ヴォーカル・グループ、エクスケイプ。

その後も、95年に『Off The Hook』、98年に『Traces of My Lipstick』 を発表。全ての作品で100万枚を売り上げるなど、TLCアン・ヴォーグSWVと並び称される、90年代を代表する人気ガールズ・グループとして大きな成功を収めた。

しかし、3作目の発表後に、ラトチャ・スコットがソロ活動のためにグループを離れると、キャンディもシンガー・ソングライターに転身。TLCの”No Scrubs”やディスティニーズ・チャイルドの”Bills, Bills, Bills”などのヒット曲を制作して人気ソングライターとしてグラミー賞を獲得すると、それ以外のメンバーも、歌手や俳優として個人の活動に打ち込むようになり、グループとしての活動は停滞していった。

このアルバムは、『Traces of My Lipstick』以来、実に20年ぶりとなる彼女達の新作。キャンディこそ不参加なものの、ラトチャを含む3人が参加。ほぼ全ての楽曲をトリッキー・スチュアートが手掛け、美しいメロディとセクシーな3人のパフォーマンスが存分に堪能できる、魅力的なR&B作品に仕上がっている。

本作の1曲目は、トリッキー・スチュアートとピエール・メドーがプロデュースした”Memory Lane”。トニ・ブラクストンからオマリオンまで、新旧の名シンガーを成功に導いてきた彼らが手掛ける曲は、『Traces of My Lipstick』の収録曲と勘違いしそうな、ヒップホップのビートを使ったスロー・バラード。尖ったサウンドの上で、艶めかしい歌声をじっくりと聴かせる手法は、 90年代に一世を風靡した彼女達の音楽を丁寧に再現している。

続く”Dream Killa”は、本作からの先行シングル。ソングライティングを3人が担当した楽曲は、90年代に流行した、メロディをじっくりと聴かせるタイプのスロー・バラード。しかし、バックトラックはチキチキ・ビートではなく、ジョーやR.ケリーの作品を思い起こさせる色っぽいサウンド。年を重ね、大人の色気を身に着けた3人の持ち味が、遺憾なく発揮された作品だ。

また、もう一つのシングル曲である”Wifed Up”は、ピエール・メドーが制作を主導したミディアム。跳ねるようなドラムと軽妙なメロディの組み合わせは、ジェイソン・デルーロやオマリオンの作風に近い。ポップなメロディと躍動感あふれるビートが心地よい、聴きなれない作風ではあるが、きちんと自分達の作品に落とし込んでいるのは、彼女達の経験と技術の賜物だろう。

そして、本作のタイトル・トラックである”Here For It”はトリッキー・スチュアートやピエール・メドーに加え、彼女達自身も制作に参加したミディアム。ダンスホール・レゲエの要素を取り込んだ作風は、フィフス・ハーモニーの”Down”にも少し似ている。フィフス・ハーモニーと比べると、経験を積んで重みを増した3人の歌声と、軽快なレゲエのビートを組み合わせる技術が素晴らしい良曲だ。

今回のアルバムは、全盛期のイメージを踏襲しつつ、年を重ねて老練さを身に着けた3人の表現が魅力の作品だ。ジャーメイン・デュプリからは離れたものの、彼と同じく90年代から活躍するトリッキー・スチュアートを多くの曲に起用。現在もコンスタントに新作を発表している彼の新鮮な感性と豊富な経験を活かして、90年代の音楽の雰囲気を盛り込んだ、現代向けのR&Bを録音している。また、3人のヴォーカルも「高い表現力とキュートな歌声を兼ね備えた少女」から「高い表現力で豊かな人生経験を音楽に吹き込む大人の女」へとアップデートし、昔の彼女達の魅力を残しつつ、現在のエクスケイプの表現に落とし込んでいる。この、「残せる部分は残しつつ、残せない部分は現代に合わせて作り直す」という方針を徹底したことが、彼女達の強いところだろう。

前作から20年以上の時を経ても、彼女達の輝きは衰えることがないことを再確認させてくれる良作。ここにキャンディが加わったらどんな音楽が生まれるのか、次の作品に期待が膨らむ充実の内容だ。

Producer
Tricky Stewart, Medor J Pierre, Xscape etc
Track List
1. Memory Lane
2. Dream Killa
3. Wifed Up
4. Here For It
5. Craving
6. Last Of Me




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