melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Reggae

E-girls - My Way feat. FIRE BALL, MIGHTY CROWN & PKCZ® [2018 Rhythm Zone, avex]

EXILEを筆頭に、三代目J Soul BrothersやGenerations、Rampageなどの個性的なグループを輩出する一方、DOBERMAN INC(現在のDOBERMAN INFINITY)やm-flo、Crystal Kayといった、叩き上げのヒップホップ、R&Bアクトを巻き込んで拡大を続けるLDH。同エージェント初の女性グループがE-girlsだ。

「EXILEのDNAを受け継ぐガールズ・グループ」をコンセプトに結成された彼女達は、ヒップホップに根差したダンスやヴォーカルと、ファッション・モデルとして活躍するメンバーもいる端麗な容姿が強み。2013年に”Celebration!”(Cool & The Gangの同名作品とは別曲)でレコード・デビューすると、2017年までにリリースした4枚のスタジオ・アルバムが、オリコンのアルバム・チャートの1位を獲得し、ゴールド・ディスクに認定されるなど、LDHの看板グループのひとつとして活躍してきた。

本作は、2018年2月の”Pain, pain”以来となる、通算23枚目のシングル。彼女達にとって、初の配信限定作品であり、初のコラボレーション・シングルでもある。このシングルでは、99年のWorld Clash in NYを皮切りに、世界中のサウンド・クラッシュを制覇し、アジアを代表するサウンド・システムとして知られているMighty Crownと、同システムのメンバーからなるレゲエ・グループ、Fire Ball、m-floのVerbalや元EXILEのDJ MAKIDAIなどからなるヒップホップ・ユニット、PKCZ® と組んでいる。

タイトル・トラックの “My Way”は、ダブを連想させる強烈なエフェクトをかけた、ゆったりとしたテンポのリディムと、彼女達の妖艶な歌声から始まるダンス・ナンバー。Mighty Crownの手による高揚感のあるリディムと、荒々しいFIRE BALLのDJ、E-girlsのエネルギッシュなパフォーマンスが合わさった、格好良いダンスホール・レゲエ作品に仕上がっている。

これに対し ”Let’s Feel High”は、グラマラスなリディムの上で、FIRE BALLとPKCZ®の面々が個性豊かなパフォーマンスを繰り出す華やかな作品。フックを担当するE-girlsの荒々しいヴォーカルは、百戦錬磨のゲストたちのパフォーマンスにも見劣りしない迫力がある。どちらの作品も、Mighty Crownの作品と勘違いしそうな、尖ったリディムを採用している点も面白い。

このシングルを聴いてて感じたのは、彼女達とLDHの大胆で緻密な曲作りと戦略だ。男性DJを起用することが多いMighty Crownと組むことで、彼らの作品とも、彼女達の作品とも一線を画した、新鮮で独創的な曲を生み出している。また、配信限定の楽曲として尖ったレゲエ音の作品を発表することで、「CDの売り上げ」で判定される日本のヒット・チャートの呪縛から逃れつつ、世界中の音楽好きに向けて、彼女達の存在をアピールすることに成功していると思う。

ポップス界の一線で活躍するグループとは思えない、本格的なレゲエのサウンドと、彼女達の魅力であるキャッチーでスタイリッシュなR&Bが融合した、異色の作品。日本でも本格的なダンスホール・レゲエがポップスのいちジャンルとして受け入れられるのではないか?そんな期待を抱かせる良曲だ。

Producer
Mighty Crown

Track List
1. My Way feat. FIRE BALL, MIGHTY CROWN & PKCZ®
2. Let’s Feel High feat. FIRE BALL, MIGHTY CROWN & PKCZ®





Damian Marley - Stony Hill [2017 Island]

“One Love”や”Get Up Stand Up”などの名曲を残し、レゲエ界のアイコンとして今も絶大な人気のあるボブ・マーリー。彼の息子達も、それぞれミュージシャンとして個性的な作品を送り出しているが、その中でも特に精力的に活動しているのが、ボブにとって二人目の妻である、シンディ・ブレイクスピアとの間に生まれたダミアン・マーリーだ。

10代前半から他の兄弟と一緒に音楽を始めた彼は、歌やプロダクションに興味を持った他の兄弟とは異なり、早くからディージェイ(ヒップホップでいうMCに相当)に傾倒し始める。

そんな彼は、96年に初のアルバム『Mr. Marley』でレコード・デビューを果たすと、ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートで2位を獲得。その5年後に発表した2作目『Halfway Tree』はグラミー賞を獲得するなど、華々しい実績を上げてきた。

また、彼は自身の活動と並行して、色々なジャンルのアーティストとコラボレーション作品を録音。なかでも、2010年にヒップホップ・ミュージシャンのナズと共作した『Distant Relatives』は全米アルバム・チャートの5位を獲得。彼をフィーチャーしたエレクトロ・ミュージックのクリエイター、スカイレックスのシングル”Make It Bun Dem”は、プラチナ・ディスクに認定されるなど、偉大な父と同様に、レゲエに詳しくない人達からも親しまれるようになった。

今回のアルバムは、自身の名義では実に12年ぶりとなる通算4枚目のアルバム。近年もジェイZの『4:44』に参加するなど、多芸っぷりを発揮していた彼だが、本作ではセルフ・プロデュースの作品や兄であるステファン、幾度となくグラミー賞を獲得しているジャマイカを代表するプロダクション・チーム、スライ&ロビーといった、レゲエ畑のクリエイターを中心に起用。ゲストもステファンやメジャー・マイジャーといったレゲエ・ミュージシャンが顔を揃えた、原点回帰とも受け取れる作品に仕上がっている。

2016年に、アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Nail Pon Cross”は、彼自身のプロデュースによるミディアム・ナンバー。コンピューターによる重低音を強調したビートはスレンテンのような80年代終わりから90年代初頭に流行したスタイルを踏襲したものだが、彼はナズやノートリアスB.I.G.のようなニューヨークのヒップホップ・ミュージシャンを連想させる、昔のソウル・ミュージックのような温かい音色を取り入れて、アメリカの音楽っぽく仕上げている。

また、彼自身がペンを執ったR.O.A.R.は、ブジュ・バントンの”Me & Oonu”をサンプリングした作品。マーチング・バンドっぽい軽快で緻密なビートをバックに、荒々しいパフォーマンスを聴かせてくれる。ブジュ・バントンのワイルドな歌声が、楽曲に攻撃的な雰囲気を加えている。

これに対し、ピットブルの作品に参加するなど、ダミアン同様アメリカでの活躍が目立つ兄、ステファンが参加した”Medication”は、生前のボブ・マーリーの音楽を思い起こさせる、生バンドによるゆったりとしたサウンドが心地よい曲。ステファンの艶やかなテナー・ヴォイスとダミアンのワイルドな歌声の組み合わせが面白い。歌とディージェイ、スタイルは違うが一緒に仕事をすることも多い二人だから作れる、際立った個性と一体感が両立された佳作だ。

そして、本作の隠れた目玉と言っても過言ではないのが、バウンティ・キラーやアシュリー・ロスなどの作品に携わってきた気鋭の若手、メジャー・マイジャーを招いた”Upholsteryv”だ。ピコピコという電子音を使った躍動感溢れるサウンドは、2000年代初頭、アメリカを中心に世界を席巻したダンス・ホール・レゲエを思い起こさせる。ファルセットを多用したメジャーのヴォーカルと、ダミアンのパンチが効いたパフォーマンスのコンビネーションも、いい味を出している。ボブ・マーリーの音楽が持つ親しみやすさと、21世紀に世界の耳目を惹きつけたダンス・ホールの斬新さを融合させた面白い曲だ。

今回のアルバムでも、レゲエをベースにしつつ、アメリカの音楽市場を意識してメロディやサウンドに工夫を凝らした、彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。ボブの音楽がロックやソウル・ミュージックを取り入れながら唯一無二の個性を発揮したように、彼はヒップホップやエレクトロ・ミュージックを取り込みつつ、自分の音楽に落とし込んでいる。

ショーン・ポールやウェイン・ワンダーなど、アメリカの音楽を取り込んで成功を収めたレゲエ・ミュージシャンは少なくないが、アメリカの音楽を分解、研究して、自分の音楽の糧にした例は希少だと思う。海外のトレンドを意識しつつ、母国の音楽や自身のスタイルに昇華した好事例といえる傑作だ。

Producer
Damian Marley, Stephen Marley, Sly & Robbie, Stephen McGregor

Track List
1. Intro
2. Here We Go
3. Nail Pon Cross
4. R.O.A.R.
5. Medication feat. Stephen Marley
6. Time Travel
7. Living It Up
8. Looks Are Deceiving
9. The Struggle Continues
10. Autumn Leaves
11. Everybody Wants To Be Somebody
12. Upholsteryv feat. Major Myjah
13. Grown & Sexy feat. Stephen Marley
14. Perfect Picture feat. Stephen Marley
15. So A Child May Follow
16. Slave Mill
17. Caution
18. Speak life






ストーニー・ヒル
ダミアン“ジュニア・ゴング”マーリー
ユニバーサル ミュージック
2017-08-09

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