ロック・バンド、ブラーの中心人物として活躍する一方、民族音楽やオペラにも取り組んでいるデーモン・アルバーンと、コミック「タンクガール」や、オペラ「Monkey: Journey to the West」(同作の音楽はデーモンが担当している)のビジュアルなど、幅広い仕事で知られる漫画家のジェイミー・ヒューレット。両者が中心になって作り上げたのが、架空のキャラクター4人によるバンド、ゴリラズだ。
英国人のベーシスト、マードック、同じく英国出身のヴォーカル兼キーボード奏者の2D(余談だが、彼の演奏を担当しているデーモンもライブではキーボードを弾くことが多い)、日本出身のマルチ・プレイヤー、ヌードル(彼女の声は日本人が担当している)、アメリカ出身のドラマー・ラッセル・ボブスからなるこのバンドは、2000年に初のシングル”Tomorrow Comes Today”を発表すると、電子音楽とロックを融合した個性的な作風と、架空のキャラクターを前面に打ち出したビジュアルで音楽ファンの間で話題になった。
また、翌年には初のスタジオ・アルバム『Gorillaz』をリリース。全世界で700万枚以上を売り上げる大ヒットになると、以後、2017年までに5枚のアルバムを発表。「世界で最も成功した架空のバンド」として、ギネス・ブックにも掲載されている。
本作は、彼らにとって通算6枚目のスタジオ・アルバム。前作から僅か1年という短い間隔で録音された作品で、制作にはアーキテック・モンキーズなどを手掛けたジェイムス・フォードが参加。前作の路線を踏襲しつつ、発展させた音楽を聴かせてくれる。
本作の1曲目は、伝説のジャズ・ギタリスト、ジョージ・ベンソンを招いた”Humility”。ティミー・トーマスの”Why Can't We Live Together”を彷彿させる、軽い音色の電子楽器をバックに、2Dが甘い歌声を響かせるミディアム・ナンバー。リトル・ビーヴァ―を連想させる、艶っぽいギターも心地よい。ベティ・ライトやジョージ・マクレーのような、マイアミ発のソウル・ミュージックに似ている爽やかな曲だ。
また、スヌープ・ドッグとシカゴのハウス・ミュージックのクリエイター、ジェイミー・プリンシプルを起用した”Hollywood”は、ハウス・ミュージックとロックやヒップホップの要素が入り混じったサウンドと、スヌープの飄々としたラップが光るミディアム。ハウス・ミュージックなどの電子音楽の要素を盛り込んだトラックと、2Dのグラマラスなヴォーカル、ロックの手法を盛り込んだ伴奏は、ウィークエンドの”Starboy”っぽい。
それ以外の曲では、”Lake Zurich”も見逃せない。リック・ジェイムスやシックのような70年代後半から80年代のディスコ音楽を連想させる洗練された伴奏と、しなやかなメロディが印象的な作品。ダフト・パンクの”Get Lucky”や、タキシードの諸作品で注目を集めているディスコ音楽を、ロックの視点から再構築した面白い曲だ。
そして、これまでの作品に近しいスタイルの楽曲が、ミディアム・テンポのバラード”Fire Flies”だ。シンセサイザーの伴奏をバックに、ゆったりと歌う2Dの姿が印象的な作品。シンセサイザーを駆使しながら、ブラーのような英国のロック・サウンドに纏め上げた手腕が光っている。
今回のアルバムでは、過去の作品で見られた大胆なアレンジは影を潜め、クラブ・ミュージックとロック、R&Bやヒップホップを違和感なく融合した楽曲が目立っている。イマジン・ドラゴンズやマルーン5のようなクラブ・ミュージックや黒人音楽を取り入れたロック・バンドが人気を博し、ウィークエンドやのようなロックの要素を盛り込んだR&Bがヒットしている2010年代。彼が活躍する10年以上前から、ヒップホップやソウル・ミュージックのアーティストと組んできたゴリラズは、このトレンドの先駆者らしい、リスナーに自然に聴こえる、高いレベルで融合した音楽を披露している。斬新なサウンドを追い求める姿勢と、それを磨き上げる技術の高さが、彼らの音楽の魅力だと思う。
様々な音楽を貪欲に飲み込み、10年先のトレンドを生み出してきたデーモンの先見性と、20年近い時間をかけて育て上げた緻密で斬新な世界観が遺憾なく発揮された良作。単なる企画バンドの枠を超えた「ヴァーチャルとリアルを融合させるプロジェクト」の最新型だ。
Producer
Gorillaz, James Ford, Remi Kabaka
Track List
01. Humility feat. George Benson
02. Tranz
03. Hollywood feat. Snoop Dogg, Jamie Principle
04. Kansas
05. Sorcererz
06. Idaho
07. Lake Zurich
08. Magic City
09. Fire Flies
10. One Percent
11. Souk Eye
英国人のベーシスト、マードック、同じく英国出身のヴォーカル兼キーボード奏者の2D(余談だが、彼の演奏を担当しているデーモンもライブではキーボードを弾くことが多い)、日本出身のマルチ・プレイヤー、ヌードル(彼女の声は日本人が担当している)、アメリカ出身のドラマー・ラッセル・ボブスからなるこのバンドは、2000年に初のシングル”Tomorrow Comes Today”を発表すると、電子音楽とロックを融合した個性的な作風と、架空のキャラクターを前面に打ち出したビジュアルで音楽ファンの間で話題になった。
また、翌年には初のスタジオ・アルバム『Gorillaz』をリリース。全世界で700万枚以上を売り上げる大ヒットになると、以後、2017年までに5枚のアルバムを発表。「世界で最も成功した架空のバンド」として、ギネス・ブックにも掲載されている。
本作は、彼らにとって通算6枚目のスタジオ・アルバム。前作から僅か1年という短い間隔で録音された作品で、制作にはアーキテック・モンキーズなどを手掛けたジェイムス・フォードが参加。前作の路線を踏襲しつつ、発展させた音楽を聴かせてくれる。
本作の1曲目は、伝説のジャズ・ギタリスト、ジョージ・ベンソンを招いた”Humility”。ティミー・トーマスの”Why Can't We Live Together”を彷彿させる、軽い音色の電子楽器をバックに、2Dが甘い歌声を響かせるミディアム・ナンバー。リトル・ビーヴァ―を連想させる、艶っぽいギターも心地よい。ベティ・ライトやジョージ・マクレーのような、マイアミ発のソウル・ミュージックに似ている爽やかな曲だ。
また、スヌープ・ドッグとシカゴのハウス・ミュージックのクリエイター、ジェイミー・プリンシプルを起用した”Hollywood”は、ハウス・ミュージックとロックやヒップホップの要素が入り混じったサウンドと、スヌープの飄々としたラップが光るミディアム。ハウス・ミュージックなどの電子音楽の要素を盛り込んだトラックと、2Dのグラマラスなヴォーカル、ロックの手法を盛り込んだ伴奏は、ウィークエンドの”Starboy”っぽい。
それ以外の曲では、”Lake Zurich”も見逃せない。リック・ジェイムスやシックのような70年代後半から80年代のディスコ音楽を連想させる洗練された伴奏と、しなやかなメロディが印象的な作品。ダフト・パンクの”Get Lucky”や、タキシードの諸作品で注目を集めているディスコ音楽を、ロックの視点から再構築した面白い曲だ。
そして、これまでの作品に近しいスタイルの楽曲が、ミディアム・テンポのバラード”Fire Flies”だ。シンセサイザーの伴奏をバックに、ゆったりと歌う2Dの姿が印象的な作品。シンセサイザーを駆使しながら、ブラーのような英国のロック・サウンドに纏め上げた手腕が光っている。
今回のアルバムでは、過去の作品で見られた大胆なアレンジは影を潜め、クラブ・ミュージックとロック、R&Bやヒップホップを違和感なく融合した楽曲が目立っている。イマジン・ドラゴンズやマルーン5のようなクラブ・ミュージックや黒人音楽を取り入れたロック・バンドが人気を博し、ウィークエンドやのようなロックの要素を盛り込んだR&Bがヒットしている2010年代。彼が活躍する10年以上前から、ヒップホップやソウル・ミュージックのアーティストと組んできたゴリラズは、このトレンドの先駆者らしい、リスナーに自然に聴こえる、高いレベルで融合した音楽を披露している。斬新なサウンドを追い求める姿勢と、それを磨き上げる技術の高さが、彼らの音楽の魅力だと思う。
様々な音楽を貪欲に飲み込み、10年先のトレンドを生み出してきたデーモンの先見性と、20年近い時間をかけて育て上げた緻密で斬新な世界観が遺憾なく発揮された良作。単なる企画バンドの枠を超えた「ヴァーチャルとリアルを融合させるプロジェクト」の最新型だ。
Producer
Gorillaz, James Ford, Remi Kabaka
Track List
01. Humility feat. George Benson
02. Tranz
03. Hollywood feat. Snoop Dogg, Jamie Principle
04. Kansas
05. Sorcererz
06. Idaho
07. Lake Zurich
08. Magic City
09. Fire Flies
10. One Percent
11. Souk Eye