melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

アメリカ

Shelly FKA DRAM - Shelley FKA DRAM [2021 EMPIRE Atlantic]

ドラムことシェリー・マーシャン・マッセンバーグ・スミスは、ヴァージニア州出身のシンガーソングライター。

2016年に出したリル・ヨッティとコラボレーション曲、"Bloccori"が700万ダウンロードの大ヒットを記録すると、その後はゴリラズ、チャンス・ザ・ラッパーといった、個性豊かなミュージシャン達と次々と競演。流行の音をキャッチアップしつつ、バリー・ホワイトやジェラルド・リヴァートを彷彿させる、柔らかい歌声を繰り出す独特のスタイルで、唯一無二の地位を築き上げた。

ミックステープを含めると、通算7枚目のスタジオ作品となる今回のアルバム。収められている楽曲は、シンセサイザーを駆使した現代的なサウンドと、ふくよかな体型から放たれる、甘くとろけるような歌声が絡み合うロマンティックなR&Bだ。バス・ドラムやベースの重低音が目立つトラックの上で、サマー・ウォーカーと絡む姿がロナルド・アイズレーっぽい"All Pride Aside"や、ラファエル・サディークの『Instant Vintage』を連想させるレトロなソウルを、シンセサイザーで再構築したような"Cooking with Grease"、エムトゥーメイの"Juicy Fruits"を彷彿させるしなやかなミディアム・ナンバーや、パーラメントを連想させるダイナミックなベースが印象的な曲、ゴスペルの要素を盛り込んだ曲など、さまざまなスタイルの曲を揃えている。

本作でも、彼の音楽は往年のソウルの要素をふんだんに取り入れている。だが、それでも新鮮に聴こえるのは、音圧の高い楽器を最小限の数に絞って使うことで、スタイリッシュなアレンジにしていること、トラップやダブステップといった、新しい音楽の要素を取り込んでいることが大きいのだ。

ソウル・ミュージックの伝統を踏襲しつつ、現代のサウンドと融合した、現在進行形のソウル・ミュージック。古き良き音楽が好きな人も、最先端のサウンドを追いかけている人も、新鮮に聞こえるはずだ。

Producer
Shelley FKA DRAM  etc

Track List
1. All Pride Aside with Summer Walker
2. Exposure
3. Something About Us
4. Beautiful
5. The Lay Down with H.E.R. & WATT
6. '93 Acura Vigor with Erykah Badu
7. Married Woman
8. Cooking With Grease
9. Remedies
10. Rich & Famous
Shelley FKA DRAM [Explicit]
W.A.V.E. Recordings/EMPIRE/Atlantic
2021-04-30


 

Brockhampton - Roadrunner: New Light, New Machine [2021 RCA]

ケヴィン・アブストラクトがカニエ・ウエストのファン・コミュニティで知り合ったメンバーと結成した、「最強のボーイズ・バンド」、ブロックハンプトン。

ラッパーから音楽プロデューサー、スタイリストまで、様々なスキルのメンバーを揃えた彼らは、楽曲制作やビジュアル、映像作品やステージ上での演出まで、幅広く手がけていることで知られている。そのため、彼らのステージは、単なるパフォーマンスの場ではなく、五感を使って楽しむ総合芸術にも例えられるほどだ。

2年ぶりの新作となる今回のアルバムは、従来の路線を踏襲しつつ、発展させたもの。トラックやラップ、ミュージックビデオやパッケージまで、アルバムのほぼ全てに彼らが関与した力作だ。

収録曲の大部分では、サンプリングとコンピュータによる打ち込みを組み合わせ、90年代のヒップホップのローファイな雰囲気と、現代のヒップホップのハイファイなサウンドを見事に融合している。ウータン・クランから、クラウン・ハイヤーズ・アフェアーズまで、新旧の名曲をサンプリングし、ジェイペグマフィアのような若手からチャーリー・ウィルソンのような大ベテランまで、幅広く起用する姿勢からは、「時代に関係なく、良いものは良い」という強いメッセージすら感じさせる。

また、個性豊かな面々によるマイク・リレーは、ウータン・クランのタフさと、ビースティー・ボーイズのリズミカルなライム、エイサップ・モブの自由奔放なパフォーマンスが混ざり合い、独特の存在感を示している。この作品全体が醸し出す自由な空気と、曲の節々から溢れ出るエネルギーが、彼らの魅力なのだろう。

最強の"ボーイズ"バンドの異名に違わず、ヤンチャな心を持った各人の有り余るパワーと、各人のクリエイティビティが遺憾なく発揮されている。本作が6枚目のスタジオ・アルバムだが、彼らが「ベテラン」と呼ばれるのはまだ先のようだ。

Producer
Kevin Abstract, Romil Hemnani, Chad Hugo etc

Track List
1. BUZZCUT feat. Danny Brown
2. CHAIN ON feat. JPEGMAFIA
3. COUNT ON ME
4. BANKROLL feat A$AP Rocky and A$AP Ferg
5. THE LIGHT
6. WINDOWS feat. SoGone SoFlexy
7. I'LL TAKE YOU ON feat. Charlie Wilson
8. OLD NEWS feat. Baird
9. WHAT'S THE OCCASION?
10. WHEN I BALL
11. DON'T SHOOT UP THE PARTY
12. DEAR LORD
13. THE LIGHT PT. II
14. ROBERTO'S INTERLUDE
15. JEREMIAH
16. SEX
17. PRESSURE / BOW WOW feat. ssgkobe




ROADRUNNER: NEW LIGHT, NEW MACHINE
BROCKHAMPTON
Question Everything/RCA Records
2021-04-23



 

George Porter Jr. And Runnin' Pardners - Crying For Hope [2021George Porter Jr.]

ジョージ・ポーターJr.はニューオーリンズ出身のファンク・ミュージシャン。ネイヴィル・ブラザーズのアート・ネイヴィルと結成したバンド、ミーターズの中心人物としても知られるベーシストだ。

また、ミーターズだけでなく、PBSやディープ・フライドなどのプロジェクトに参加し、ポール・マッカートニーやパティ・ラベル、Dr.ジョンの作品でも演奏している。彼は、同地を代表するベーシストとして、八面六臂の活躍を見せている大物ミュージシャンなのだ。

今回のアルバムを制作したランニング・パードナーズは、ミーターズが活動を再開した1989年に結成したバンド。結成30年を超えながら、スタジオ録音は3枚と少ない。だが、各メンバーが多忙な日々の合間を縫って集まり、多くのステージに立ってきた、ニューオーリンズが誇る実力派グループなのだ。 

13年ぶりのスタジオ・アルバムとなる本作は、近年のステージを支える、馴染みのメンバーと録音している。ここでは、ジョージの安定感抜群のベースを軸に、ドラムやギター、オルガンなどの楽器が、時に軽快に、時にダイナミックなパフォーマンスを披露している。その演奏は、メンバーの個性が正面からぶつかり合った、50年代のハード・バップのグループとよく似ている。

しかし、これだけ強い個性が揃っても、見るものがバンドとしての一体感を抱けるのは、ジョージの高い演奏技術と、アレンジ能力のおかげだろう。常に安定したグルーヴを生み出しつつ、曲の展開に合わせて表情を変える彼の演奏のおかげで、他のメンバーは遠慮なく自分の個性を発揮することができるのだ。

ベースと言えば「バントの下支え役」というイメージが強い。だか、ジョージの演奏はバンドの土台であり、他のメンバーを牽引するコンダクター(指揮者)でもあるのだ。ニューオーリンズを代表する名演奏者は、自身の作品を通して、バンドにおけるベースの役割と可能性を僕らに教えてくれる。

Producer
George Porter Jr.

Track List
1. Crying For Hope
2. Porter 13A
3. A Ladder
4. Get Back Up
5. I'm Barely
6. Cloud Funk
7. Wanna Get Funky
8. Spanish Moss
9. Just Start Groovin'
10. A Taste of Truth
11. Too Hot Too Cold
12. You Just Got Tired  

 
 

Crying For Hope
Controlled Substance Sound Labs
2021-03-26

 
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