melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2016

Soul II Soul - Origins: The Roots of Soul II Soul [2016 Metropolis Recordings]

1987年に、ロンドン出身のDJ兼プロデューサーであるジャジーBが率いるサウンド・システムとして活動を開始。翌88年にはローズ・ウィンドロスをフィーチャーしたシングル『Fairplay』でデビューすると、97年までの約10年間に5枚のオリジナル・アルバムと”Keep On Moving”や”Back To Life”、”Get A Life”などのヒット曲を残してきた英国の音楽グループ、ソウルIIソウル。今世紀に入ってからは活動のペースが落ちているものの、2012年にはロンドン・オリンピックの開会式で”Back To Life”がプレイされるなど、英国を代表するソウル・グループとして現在も多くの人から愛されている。

本作は、90年に発表された『A New Decade: Live From Brixton Academy』以来、実に27年ぶりとなるライブ・アルバム。メイン・ヴォーカルは”Keep On Moving”などのヒット曲でヴォーカルを務めたキャロン・ウィーラーが担当する一方で、バック・トラックの大部分を生バンドに差し替えるなど、全盛期の雰囲気を意識しつつ、リズム・マシンやシンセサイザーが中心のオリジナル・ヴァージョンとは違うパフォーマンスを聴かせている。

イントロに続く実質的な1曲目は、彼らのデビュー曲である”Fariplay”。原曲ではパーカッションとキーボードで刻んでいたリズムが、本作ではエレキ・ギターとキーボードに入れ替わっているほか、ベースやドラムの演奏を強調するなど、重心の低い、落ち着いたアレンジになっている。ドラム、ベース、ギター、キーボードの演奏が強調されたサウンドは、心なしか同時期にイギリスからデビューしたブランニュー・ヘヴィーズっぽくも聴こえる。

これに続くのは、彼らの代表曲の一つ”Keep On Moving”。屋敷豪太がプログラミングで参加した原曲では、リズム・マシーンの個性的な音色が淡々とリズムを刻むビートが印象的だったが、この作品では生演奏による力強いドラムに変わるなど、人間の演奏を活かした温かい雰囲気に仕上がっている。オリジナル・ヴァージョンでもリード・ヴォーカルを担当したキャロン・ウィーラーのパフォーマンスは、当時よりも滑らかで感情表現も豊かになっている。

一方、90年にリリースされた2枚目のアルバム『Vol. II: 1990 - A New Decade』からのシングル曲である”Missing You”は、ギターやキーボード、パーカッションの華やかな演奏が格好良いジャズ風の演奏にアレンジし直されている。オリジナル・ヴァージョンでは透き通った歌声でクールな歌唱を聴かせてくれたキム・メイゼルに対し、今回のアルバムでは、キャロンがじっくりと粘り強いヴォーカルを聴かせている。

だが、本作のハイライトは、なんといっても終盤を盛り上げる”Get A Life”、”Back To Life”、”Jazzie’s Groove”の3曲だろう。

原曲を知る人にはお馴染みの、ストリングスを使ったイントロから始まる”Get A Life”では、ジャジーBの淡々としたラップや、小鳥のさえずりのようなコーラス、重厚なビートなどが、オリジナル・ヴァージョンそっくりに再現されている。リード・ヴォーカルも、マルシア・ルイスの妖艶な雰囲気を忠実に踏襲している。また、メアリーJ.ブライジがカヴァーしたことでも話題になった”Back To Life”では、同曲を有名にしたイントロ部分を原曲よりも長めにとって観客の歓心を惹きながら、トラックの大部分が生演奏になったことで、感情表現がより豊かになった本編へと繋いでいる。キャロン・ウィーラーのヴォーカルは原曲よりも貫禄が増し、バンドによる伴奏と合わさって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。そして、ジャジーBがリード・ヴォーカルを担当する”Jazzie’s Groove”では、各楽器のソロ・パートを設けるなど、色々な意味で「ジャジー」な作品に仕上げている。

今回のライブ・アルバムは、これまでに発表したヒット曲が中心のセット・リストで、新曲を期待する人には物足りない内容かもしれない。だが、生演奏による起伏に富んだサウンドや、経験を積んで表現の幅を増したキャロン・ウィーラーのヴォーカルによって、リズム・マシンやシンセサイザーの使い方が斬新だったオリジナルとは違った意味で、新鮮な演奏が楽しめる。

90年代のイギリスを代表するバンドが、リスナーと一緒に成熟していった軌跡を堪能できる。魅力的なライブ録音。この勢いで新作も出してくれないかなあ。

Track List
1. Intro
2. Fairplay
3. Keep On Moving
4. I Care
5. Missing You
6. Universal Love
7. Love Enough
8. Get A Life
9. Back To Life
10. Jazzie’s Groove
11. Zion

注:以下の動画はオリジナル・ヴァージョンのもの






 

Mindless Behavior ‎– #officialMBmusic [2016 Conjunction Entertainment, EMPIRE]

2010年にシングル『My Girl』(テンプテーションズの同名曲とは別のオリジナル作)でデビュー。 その後は2011年に1枚目のアルバム『#1 Girl』を、2013年には2作目のフル・アルバムとなる『All Around the World』をインタースコープから発売。それぞれ全米アルバム・チャートの7位と6位に送り込んだロス・アンジェルス発のボーイズ・グループ、マインドレス・ビヘイビヴァ。その後は、メンバーの脱退など、苦労が続いたが、オリジナル・メンバーのプリンストンに、新メンバーのEJとマイク・リヴァーを加えた新体制で録音した3枚のアルバムが本作。

このアルバムがリリースされた2016年は、ヴォーカル・グループにとって厳しい時期だったと思う。個人でも高品質の録音機材を調達できるうえ、レーベルの垣根を越えたコラボレーションが当たり前になった時代に、同じメンバーでパフォーマンスを続けることによるマンネリ化や、人間関係のトラブルなどによる活動の停滞に気を配りながら活動を続けなければいけないヴォーカル・グループは、機動的に活動できるソロ・アーティストに比べて少数派になるのは仕方のないことだと思う。実際、彼らも本作の録音前にメイン・ヴォーカルを含む大部分のメンバーが入れ替わっている。だが、今回の作品では、グループ名義による録音という点を最大限に活用して、個性豊かなヴォーカルが複雑に絡み合う、ソロ・アーティストには作れない音楽を聴かせている。

アルバムのオープニングを飾るのは、本作に先駆けてシングルとして発売された”#iWantDat”。この曲は、ロス・アンジェルス出身のバッド・ラックとコンプトン出身のプロブレムをフィーチャーしたアップ・ナンバー。クリス・ブラウンやT.I.の楽曲を思い起こさせる、温かい音色のシンセサイザーとリズム・マシンを使ったトラックをバックに、新しいリード・ヴォーカルのEJがラップっぽい歌唱を披露している。オート・チューンを使ったバック・コーラスがシンセサイザーの音色と一体化して、一つの楽器のように機能している点も面白い。続く”FreaksOnly”もバッド・ラックがゲストで参加。こちらの曲も、温かい音色の電子楽器を活かしたトラックだが、音数を減らしてヴォーカルをじっくりと聴かせている点が大きな違いだ。

一方、”#Blur”はトラップ・ビートを取り入れたミディアム・ナンバー。スクラッチやサイレン、声ネタを挟みこんだトラックは、Tペインやリル・ウェインの楽曲を思い起こさせる。EJの気怠そうなヴォーカルもワイルドで格好良い。これに対し、”#DanceTherapy”は本作で唯一、四つ打ちのビートを取り入れたEDMっぽい華やかで高揚感のある楽曲。他の曲で使われている音色と、似ている音を出す機材を使うことで、アルバムにバラエティと統一感を与えている。色々なタイプのビートに対応する3人の適応力と、一つの音色を使って色々なスタイルのトラックを作り上げる制作陣の技術力に驚かされる。

そして、本作からシングル・カットされた、もう一つの楽曲”#OverNightBag”は、アッシャーやマーカス・ヒューストンのヒット曲を連想させる、ゆったりとしたテンポのビートとレイド・バックしたメロディが印象的なミディアム・バラード。ハンド・クラップなどを織り交ぜながらじっくりと歌を聴かせるロマンティックな楽曲だ。また、このタイプの曲が好きな人には”#ComeUp”もオススメ。こちらは、メロディはラップ寄りのラフなものだが、声の加工を抑え、EJのしっとりとした歌声と、感情を剝き出しにして歌う姿を強調したダイナミックなバラードだ。

あと、自分の中では見逃せないと思ったのは、本作では珍しいタイプのディスコ・ナンバー”#1UCall”だ。乾いた音色のギターと図太い音を響かせるシンセ・ベースを使ったトラックは、キャミオやギャップ・バンドのような80年代のファンク・バンドを彷彿させる。シンセサイザーなどを使ってディスコ・サウンドを再現するグループは珍しくないが、ディスコ・ブギーを一般向けの楽曲に落とし込む度胸と技術は凄いと思う。

今回のアルバムは、過去の2作品に比べると、魅力的な曲は多いが保守的な印象を受ける。トラップやディスコ・サウンドなど、ブラック・ミュージックのトレンドを的確に押さえてはいるものの、いずれも、他の人が成功した手法で、彼らが生み出した新しいスタイルというものは見られなかった。だが、それを差し引いても、個別の楽曲のクオリティ粒が立っていて完成度は高い。

B2Kやプリティー・リッキーのように、ポップスターとしてのわかりやすさと、R&Bのアーティストに求められる歌唱力や斬新さを絶妙なバランス感覚で両立した稀有なグループの一つ。一人では作れない、複雑なメロディや掛け合いの妙を楽しみたい人にはうってつけの佳作だ。

Producer Walter Millsap III, Walter Millsap IV, Alec Jace Millsap, Balewa Muhammad, Candice Nelson, Brian Peters, Teak Underdue etc

Track List
1. #iWantDat feat. Bad Lucc, Problem
2. #FreaksOnly feat. Bad Lucc
3. #Lamborghini
4. #Blur
5. #DanceTherapy
6. #Better feat. KR
7. #OverNightBag
8. #1UCall
9. #ComeUp
10. #SongCry
11. #Muzik





#Officialmbmusic (+ 2 Bonus Tracks)
Mindless Behavior
Conjunction
2016-08-12

 

Adrian Younge ‎– The Electronique Void (Black Noise) [2016 Liner Labs]

2000年にカレッジ・レコードからリリースしたアルバム『Venice Down』でデビュー。その後は、自身のレーベルから複数の作品を発表する一方で、ワックス・ポエティックス・レーベルから発売された映画『Black Dynamite』のサウンド・トラックの制作や、"La La Means I Love You"などのヒット曲で知られるフィラデルフィアのベテラン・ヴォーカル・グループ、デルフォニックスとコラボレーションした『Adrian Younge Presents The Delfonics』や、ニューヨーク出身のラップ・グループ、ウータン・クランの一員で、ソウル・ミュージックに傾倒したトラックが多いことで有名なゴーストフェイス・キラーとの共作『Twelve Reasons To Die』(続編もあり)などを発表してきたロス・アンジェルス出身のプロデューサー、エイドリアン・ヤング。彼にとって、『Venice Down』以来となる、純粋な自身名義による作品。

いわゆるビート・メイカーやプロデューサーにカテゴライズされることの多い彼だが、ベースやキーボードの演奏から音楽の世界に入り、ガラントの『Ology』やビラルの『In Another Life』にもプロデューサーとして携わるなど、R&B、特にバンドの演奏を効果的に使ったオルタナティブR&Bの分野に強いクリエイター。今回のアルバムでもソウルに対する深い造詣を活かした泥臭いトラックを聴かせてくれる。

アルバムの実質的な1曲目"The Night"は一定のリズムを刻み続けるビートと、おどろおどろしい電子音を多用した上物の対称性が印象的なトラック。そこから、チェンバロっぽい音色のシンセサイザーを使った軽妙なメロディの"Fly Away"へと展開していくセンスが面白い。

一方、これに続く"Systems"は金属を叩いたようなキンキンとした音が特徴的なビートと、ギラギラとした音色のシンセサイザーを組み合わせた、妖艶で煌びやかなインストゥメンタル・ナンバー。電子楽器だけで音楽を作るミュージシャンは珍しくないが、ここまで多彩な音色を組み合わせるミュージシャンは非常に少ない。複数の楽器を使いこなしてきた彼ならではの作品だ。

また、映写機の回転音やカメラのフラッシュを思い起こさせる、規則的なリズムが印象的な"Voltage Controlled Orgasms"も気になる曲だ。こちらは、クラフトワークを連想させる、規則的な電子音と唸るようなシンセサイザーのリフが心地よい曲だ。

そして、何よりも見逃せないのは、終盤の"Black Noise"から"Patterns"、そして"Suicidal Love"へと繋がる展開だ。レッド・ツェッペリンのようなハード・ロックのバンドを想起させるワイルドなドラムを使ったビートの上で、ビヨビヨとなる歪んだ音色のシンセサイザーが複雑に絡み合う"Black Noise"に始まり、規則正しく刻まれる重低音が徐々にテンポをあげ、声ネタや色々な種類の電子音と絡み合う"Patterns"へと続き、シンセサイザーの音色を重ね合わせた不気味なハーモニーが印象的な"Suicidal Love"で締めている。その流れは、一流のDJが作るミックスCDのように自然だが、それぞれの楽曲は飛び抜けて強い個性を放っている。

このアルバムを聴いた時、真っ先に思い浮かんだのは、『Bitches Brew』や『On The Corner』などのマイルス・デイヴィスが70年代に録音した作品だ、エフェクターや電気楽器などを使って、新しい音色を取り入れた楽曲を作りつつ、それらを取りまとめて、一つのアルバムに落とし込む手法は、彼の音楽に通じるものがあると思う。また、豊富な音数の電子楽器から、奇想天外な音色の組み合わせを見出す姿は、クラフトワークやDAFのような黎明期の電子音楽家の手法を21世紀に蘇らせたもののように映る。

楽器と機材の両方を使いこなせるミュージシャンならではの、キャッチーなフレーズを生み出す才能と、リスナーの予想の裏をかく音色選びのセンスが光る佳作。インストゥメンタルだからって敬遠すると損するよ。

Producer
Adrian Younge

Track List
1. Black Noise (Interlude)
2. The Night
3. Fly Away
4. Systems
5. The Concept of Love
6. Voltage Controlled Orgasms
7. Linguistics
8. Black Noise
9. Patterns
10. Suicidal Love





 
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