melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Anti

Mavis Staples - If All I Was Was Black [2017 Anti]

本作のリリース時点で78歳と、現役のミュージシャンでは屈指の高齢でありながら、今も精力的に活動しているシカゴ出身のシンガー・ソングライター、メイヴィス・ステイプルズ。

2017年も彼女は、カナダのロック・バンド、アーケイド・ファイアが制作した、アメリカ自由人権協会のためのチャリティー・シングルに参加したり、ブラーのデーモン・アルバーンによる音楽ユニット、ゴリラズのアルバムに客演したりするなど、80歳が目前に迫りながら、親子ほどの年齢差があるミュージシャン達と、積極的にコラボレーションしてきた。

このアルバムは、2016年の『Livin' On A High Note』以来、約1年半ぶりとなる通算16枚目のスタジオ・アルバム。前作に引き続き、ブッカーTやベティ・ラヴェットなどの作品を配給しているアンタイ・レコードからリリースされている。また、プロデュースは2013年の『One True Vine』でも制作に携わっている、ウィルコのジェフ・トゥイーディーが担当。演奏には、彼女の近作でドラムを担当しているステファン・ホッジや、キーボード奏者のスコット・ライゴンなどが参加。今回のアルバムでも、前作の路線を踏襲した、アメリカ南部のカントリー・ミュージックやロックの要素を取り入れた、泥臭いソウル・ミュージックに取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、ジェフが制作した”Little Bit”。軽い音を使ったパーカッションから太い音色の伴奏へと展開していく構成が、アン・ピーブルズの”I Can't Stand the Rain”やスライ・ストーンの作品を連想させる重厚なミディアム・ナンバー。ドン・ブライアントウィリアム・ベルの作品を思い起こさせる、重心が低く、太く泥臭い伴奏をバックに、地声を効果的に使った貫禄のある歌唱を聴かせるメイヴィスの姿が心に残る良曲だ。歌も伴奏も、70年代のハイ・レコードやフェイム・レコードの作品と勘違いしそうな、重々しくドロドロとした本格的なサザン・ソウルに仕上がっている。

続く”If All I Was Was Black”は、メイヴィスも制作に携わったミディアム。乾いた音色のギターをバックに、朗々と歌う姿が印象的な曲だ。現代のアメリカ社会に警鐘を鳴らす歌詞の曲でありながら、歌や伴奏はどこか牧歌的なところに、彼女達のパフォーマンスが持つ強い説得力と、多くの問題を抱えながら、前に向かって歩み続けるアメリカ人の気質を感じる。

また、ジェフがヴォーカルとして参加している”Ain't No Doubt About It”は、友を信じ続けることの素晴らしさを讃えたミディアム・ナンバー。太いベースの音色が心地よい伴奏をバックに、語りかけるような歌を聴かせる姿は、オーティス・レディングの”(Sittin' On) The Dock of the Bay”にも通じるものがある。しかし、この曲が表現するのは、失恋ではなく友情。しかも、60年代とは異なる形で、社会が分断されつつあるアメリカで、他者と結び付くことの尊さを訴えるという。この大胆な発想が面白い。

そして、本作の最後を締める”All Over Again”では、ギターの伴奏をバックに、訥々と歌う姿が魅力のフォーク・ソング。本作を通して投げかけられた多くの問題に対し、「諦めず何度も挑戦しよう」と周囲を鼓舞するメッセージ性の強い曲だ。力強い歌声が魅力のメイヴィスが、ギターの演奏の上で語り掛けるように歌う姿からは、ギターを手に音楽という形で多くのメッセージを投げかけてきた、ボブ・ディランの姿がダブって見える。

このアルバムで彼女が披露したのは、ステイプル・シンガーズや自身の名義で、多くのクラシックを残してきた60年代、70年代の録音を連想させる柔らかい音色と、強烈だが前向きなメッセージを含む歌詞だ。しかし、当時の作品と大きく違うのは、御年70歳を超え、当時に比べると衰えを隠せない歌声と、それを補って余りある老練な歌唱力を身に着けた点。40年という長い月日は、彼女や周囲の人々、社会に色々な変化をもたらしてきた。しかし、彼女はその流れに頑強に抗ったり隠したりするわけでも、変化に流されるわけでもなく、2017年に合わせた音とメッセージを送っている。もちろん、それは、ジェフ・トゥイーディーを含む、参加ミュージシャン達の高いプロデュース能力による部分も大きいが、それ以上に、長いキャリアの中で培った、自身の特性を見極め、使いこなす技術による部分も大きいと思う。

50年以上の間、常に現役のシンガーとして活動してきた彼女の、豊富な経験と実績が遺憾なく発揮された魅力的なソウル作品。「実戦に勝る修行はない」を地で行くようなキャリアを歩んできた彼女らしい、したたかさな歌唱が堪能できる傑作だと思う。この調子で80歳、90歳の彼女の歌が聴けたらいいなあ。

Producer
Jeff Tweedy

Track List
1. Little Bit
2. If All I Was Was Black
3. Who Told You That
4. Ain't No Doubt About It
5. Peaceful Dream
6. No Time For Crying
7. Build A Bridge
8. We Go High
9. Try Harder
10. All Over Again






If All I Was Was Black
Mavis Staples
Anti
2017-11-24

Mavis Staples ‎– Livin' On A High Note [2016 Anti]

60年代以降のソウル・ミュージック界を支えてきたベテランが次々と鬼籍に入る中、アレサ・フランクリンやシル・ジョンソンと並んで一線で活躍し続けるシンガーの一人に、メイヴィス・ステイプルズがいる。家族と結成したゴスペル・グループ、ステイプル・シンガーズの一員として、ヴィージェイやスタックスといった名門レーベルから多くの傑作を発表し、70年代には”I’ll Take You There”や”Let’s Do It Again”などを残してきた、シカゴが送り出した名シンガーの一人だ。

ステイプル・シンガーズ解散後は、ソロ活動を本格的に始動。ボブ・ディランとのデュエット曲や、ライ・クーダがプロデュースしたアルバムを発表するなど、ジャンルの枠を超えた活躍を見せてきた。

2013年の『One True Vine』以来となるこのアルバムでは、オルタナティブ・ロック・バンド、シー&ヒムのメンバー、M.ワードがプロデュースを担当。彼の他にも、ベン・ハーパーやボン・イヴェールのジャズティン・ヴァーノン、ニック・ケイヴといったオルタナティブ・ロックのミュージシャンや、アロー・ブラックなどの若いソウル・ミュージシャンが集まり、当時の音楽を踏まえつつ、現代の音楽のエッセンスを注ぎ込んだ、2016年仕様のソウル・ミュ-ジックを作ってくれた。

ベンジャミン・ブッカーのペンによる”Take Us Back”では、60年代にタイムスリップしたのではないかと思うほど、泥臭くて粘っこいサウンドを提供。それをバックに、彼女は地声を中心にした重厚で貫禄のある歌声を響かせている。また、アロー・ブラック作の”Tommorow”では、オーティス・レディングの”(Sittin’ On) Doc Of The Bay”を彷彿させる、一音一音つま弾くように鳴らされるギターをアクセントに、目の前の人に語り掛けるように歌うミディアム・ナンバー。また、70年代に数枚のシングル盤を残した通好みのソウル・シンガー、ダニー・ジェラルドが参加した”Dedicated”では、シンプルな編成のバンドによるゆったりとした演奏をバックに、耳元で囁くような優しい歌い方で、リスナーの心を夢の世界に運んでくれる。

デビューから50年以上の時を経て、御年70を超えたメイヴィスの歌は、緩やかとはいえ加齢の影響が隠せなくなっている。だが、力任せに歌うことが難しくなった分、膨大な数のレコーディングやステージで培った力加減の妙や表現の幅が、彼女の表現に幅をもたらすと同時に、親子ほどの年の差があるミュージシャンとのコラボレーションからも、往年のソウル・ミュージックのエッセンスを見つけ出し、自分の作品に取り込んでしまう柔軟さをもたらしたように見える。

60年代、70年代のソウル・ミュージック・シーンを体験しているミュージシャンが少なくなっているが、当時の音楽のDNAは、後の世代に着実に伝えられている。そして、なんらかのきっかけがあれば、往年のソウル・ミュージックは形を変えて蘇ってくれる。そんな希望を感じた。

Producer
M.Ward

Track List
1. Take Us Back
2. Love And Trust
3. If It’s A Light
4. Action
5. High Note
6. Don’t Cry
7. Tomorrow
8. Dedicated
9. History Now
10. One Love
11. Jesus Lay Down Beside Me
12. MLK Song




Livin' On A High Note
Mavis Staples
Anti
2016-02-19

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