melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

BigCrown

El Michels Affair - Yeti Season [2021 Big Crown]

リー・フィールズなどの作品をリリースし、ソウルファンク業界を牽引しているビッグ・クラウン

同レーベルの中心的人物であり、自身もダップ・トーンズなどで、腕を奮ってきたのが、マルチ・アーティストのレオン・ミッチェルだ。

彼が率いるエル・ミッシェル・アフェアは、ウータン・クランのレイクウォンのツアーを支えてきた面々と組んだバンド。そんなこともあり、結成当初からヒップホップのカラーを強く打ち出したファンクを披露してきた。

2017年以来となる新作では「架空の映画のサウンドトラック」というコンセプトを打ち出し、2000年代以降のアメリカのファンクを土台に、トルコのファンクや中東の伝統音楽など、色々な音楽の要素を混ぜ合わせたものを聴かせてくれる。

本作では、彼らの作品には珍しく、多くのヴォーカル曲が収められている。ヒンディー系シンガーのピヤ・マリックが参加した曲がそれで、彼女の歌声がバンドの音に異国の情緒を吹き込んでいる。また、過去の作品にも関わってるザ・シャツクスも本格的なヴォーカル曲に挑戦。これまでの作品とは一味違う作風の楽曲もきちんと乗りこなしている。

中東の音楽を取り入れたファンクというと、マッドリブの「Beat Konducta」シリーズや、イーゴン率いるナウ・アゲインの諸作品が頭をよぎる。両者の音楽と比べると、ビートは緻密でグルーヴは安定し、楽曲全体の雰囲気も洗練されている。

多くの名アーティストを脇から支えてきた職人の能力が遺憾なく発揮された、面白い企画作品。ファンク好きはもちろん、中東やアジアの音楽が好きな人には見逃せない内容だ。

Track List
1. Unathi
2. Sha Na Na
3. Ala Vida
4. Fazed Out
5. Murkit Gem
6. Lesson Learned
7. Dhuaan
8.Perfect Harmony
9.Silver Lining
10. Zaharila
11. Last Blast
12. Idhar Udhar (Bonus Track)
13. Messy Grass (Bonus Track)
14. Unathi(inst) (Bonus Track)
15. Dhuaan (inst) (Bonus Track)
16. Murkit Gem (inst) (Bonus Track)
17. Zaharila (inst) (Bonus Track)

Producer
Leon Michels




Yeti Season [Analog]
El Michels Affair
Big Crown
2021-03-26



El Michels Affair ‎– Return To The 37th Chamber [2017 Big Crown Records]

リー・フィールズやダップトーン一派の周辺で活動していたレオ・ミッシェルが、2000年代初頭に結成したファンク・バンド、エル・ミシェル・アフェア。

2003年にデビュー・シングル『Easy Access』を発表すると、太く柔らかい音色と、重心を低く抑えた粘っこい演奏が、好事家の間で注目を集めた。そして、2005年にはウータン・クランのレイクウォンとコラボレーションしたシングル『The PJ's... From Afar』をリリース。その後、2009年にウータン・クランの楽曲をカヴァーしたアルバム『Enter The 37th Chamber』を発売。ヒップホップのサンプリング・ソースを通してソウルやファンクに慣れ親しんできた若い世代に、人間が演奏するファンク・ミュージックの面白さを知らしめた。その後もアイザック・ヘイズの楽曲をインストゥルメンタルでカヴァーしたEP『Walk On By (A Tribute To Isaac Hayes)』等をリリース。ヒップホップを経由して昔のブラック・ミュージックを知った若者から、往年の名アーティストをリアルタイムで聴いてきた年配の人まで、幅広い層から高い評価を受けてきた。

今回のアルバムは『Enter The 37th Chamber』以来、約8年ぶりとなる、彼らにとって通算3枚目のフル・アルバム。『Return To The 37th Chamber』というタイトルが示す通り、前作に引き続きウータン・クランの楽曲に加え、メンバーのソロ作品を演奏した、カヴァー・アルバムになっている。

本作の1曲目、2016年にシングル盤でリリースされた”4th Chamber”はGZAの95年作『Liquid Swords』に収録された曲のリメイク。ヘヴィーなビートとズンズンと鳴り響くベース、おどろおどろしいギターやホーンの音色が印象的なオリジナル・ヴァージョンを、原曲よりもギターやキーボードの音を強調した、キャッチーなファンクに仕立て直している。音のバランスや楽器の音色以外、原曲とほとんど変わらないあたりに、彼らの演奏技術の高さと、ウータン一派のブラック・ミュージックへの愛着が感じられる。

これに続く”Iron Man”はゴーストフェイス・キラーが2000年に発表したアルバム『Supreme Clientele』に入っている”Iron's Theme”が原曲。1分半のインターミッションを3分半の楽曲に再構成するアレンジ技術も凄いが、ゴーストフェイス・キラーの楽曲の醍醐味ともいえる、人間が歌っているかのような、豊かな感情表現を忠実に再現した演奏も本作の醍醐味。個人的な願望だが、彼らの演奏をバックに、ゴーストフェイスがラップするステージを見てみたい。

それ以外の曲で気になるのは、前作にはなかったゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした楽曲群。その中でも、2002年のアルバム『Problems』以降、ほぼ全ての作品でレオン・ミッシェルを起用するなど、彼らと縁の深いリー・フィールズが参加した、93年のアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の収録曲”Tearz”のリメイクでは、原曲にサンプリングされた楽曲のフレーズを取り入れて、ヒップホップのビートとソウル・ミュージックの歌を融合させた面白い楽曲。元ネタが女性シンガーの曲であるサビの部分は、きちんと女性ヴォーカル(シャノン・ワイスという人らしい)が担当しているなど、芸が細かい点にも注目してほしい。

また、歌ものという意味では、彼らのレーベル・メイトでもあるレディ・レイが参加した”All I Need”も見逃せない。メソッドマンが94年にリリースしたグラミー受賞曲をリメイクしたこの曲は、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲“You're All I Need to Get By”のフレーズを取り入れたオリジナル・ヴァージョンを意識したのか、メアリーJブライジが担当したパートをレディ・レイが担当している。メアリーJに比べるとレイの歌声は線の細いが、元ネタで歌ってるタミー・テレルも可愛らしい声がウリのシンガーだったので、特に違和感はない。むしろ、可愛らしさを保ちつつ、演奏に負けないパワフルな歌が印象的なくらいだ。個人的には、マーヴィンのパートを男性シンガーに吹き込んでもらって、本格的なソウル・ミュージックとして作り直してほしいなと思った。

本作では、メンバーのソロ作品にまで視野を広げる一方、ヴォーカル・パートを含む曲やシングル・カットされなかった比較的地味な曲も丁寧に取り上げている。おそらく、実績を積んで色々な音楽に挑戦する機会を得られたことや、メンバー以外の様々なアーティストを作品に起用できるようになったのだと思う。

ヒップホップのカヴァーと銘打ちつつ、そのサンプリング・ソースであるソウル・ミュージックやファンクの醍醐味にまで手を伸ばした意欲作。収録曲や原曲はもちろん、その曲のサンプリング・ネタも聴きたくなる。ブラック・ミュージックの入り口には最適なアルバムだと思う。

Producer
Leon Michel

Track List
1. 4th Chamber
2. Iron Man
3. Shaolin Brew
4. Pork Chop Express
5. Snakes feat.Lee Fields
6. Drums For Sale
7. Shadow Boxing
8. Sipped Up
9. Tearz feat.Lee Fields and The Shacks
10. Verbal Intercourse 11. Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing Ta F’ Wit
12. All I Need feat.Lady Wray
13. The End (Eat My Vocals)





リターン・トゥ・ザ 37th チェンバー
エル・ミシェルズ・アフェアー
Pヴァイン・レコード
2017-04-19

 

Lady Wray - Queen Alone [2016 Big Crown]

90年代後半、ニコル・レイの名義で、1枚のアルバムを残した歌手がいたことを覚えているだろうか?ミッシー・エリオットのプロデュースのもと、変則ビートを軽やかに乗りこなして、人々の記憶に自身の存在を印象付けた彼女は、2000年代以降も、ジェイ・Zなどが所属するロッカフェラに移籍して、オール・ダーティー・バスタードの復帰作で自慢の喉を披露するなど、虎視眈々と躍進の機会を狙っていた。

そんな彼女の転機は2013年に訪れた。デフ・ソウルからアルバムをリリースした経験もある、テリ・ウォーカーとコンビを組み、Ladyというユニットで、リー・フィールズやアロー・ブラックの作品をリリースしている、トゥルース・ソウルから再デビューする機会を得たのだ。同レーベルからリリースしたアルバムは、10年選手のヴォーカリストの歌声に、リー・フィールズなどの作品を盛り上げたバンド・メンバーが彩を添えた佳作で、好事家を中心に高い評価を得ていた。だが、これからというところで、テリ・ウォーカーが個人的な事情により音楽活動を休止。ニコルの活動も仕切り直しを余儀なくされてしまった。

そんな彼女にとって、3度目となるデビュー作はアーティスト名をレディ・レイと改め、ブロンクスの新興レーベル、ビッグ・クラウンから発表した。同レーベルは、リー・フィールズの2016年作『Special Night』や、ザ・バカオ・リズム&スティール・バンドのデビュー作を手掛けていることからもわかるように、ダップ・トーン一派や、その周辺ミュージシャンも数多く出入りしている、ダイナミックなバンド・サウンドを録音する技術がセールス・ポイントの一つになっている。

今回のアルバムでは、Lady時代に引き続き、レオン・ミッチェルとトーマス・ブレンネックがプロデュースを担当。ダップ・トーンズやエル・ミッチェル・アフェアの一員として知られ、2016年にはリー・フィールズやレディ・ガガなどの作品に関与していた彼らは、彼らの作品同様、ダップ・トーン周辺のミュージシャンを集めて、生演奏の魅力が発揮された、本格的なヴィンテージ・サウンドを提供している。

アルバムに先駆けてシングル・カットされた”Do It Again”はリー・フィールズの作品に入っていても違和感のない。分厚いホーン・セクションと泥臭いメロディが光るミディアム・ナンバー。唯一の違いは、レディ・レイの声がソウル・シンガーの中では比較的細く、声を振り絞るように歌っているところだろう。人によって好みは割れると思うが、か細い声を絞り出すように歌う彼女からは、身体的に恵まれた歌手の声とは異なる、ある種の鬼気迫るものが感じられる。一方、2枚目のシングル曲である”Smilin’”は、モータウン・サウンドを彷彿させる重厚だが軽快なサウンドで、彼女のキュートな歌声の良さを引き立てている。また、”Smilin’”のB面に収録された”Make Me Over”では、オルガンやギターのサウンドで柔らかい雰囲気にまとめつつ、ヒップホップの作品でも時折見られた、艶めかしいヴォーカルを絡めて、気怠い雰囲気の中にもどこかエロスを感じさせるパフォーマンスを披露している。

だが、何より面白いのは、演奏者たちのスタイルの転換だろう。このアルバムには、リー・フィールズやシャロン・ジョーンズ&ダップ・キングスといった、多くのソウル・ミュージシャンの作品を盛り立ててきた名演奏者が参加しているが、今回のアルバムでは従来の演奏全体から発散するようなエネルギーが抑えられ、かわりに微妙な力加減と音数を調整した楽曲が増えている。おそらく、ヒップホップ界隈でキャリアを積んできたニコルへの配慮だと思うが、結果的に、彼らの音楽性や、ソウル・バンドの可能性を広げたようにも思える。

ヒップホップ世代のクール・ビューティと、往年のソウル・ミュージックを再現する技術で名を成したバンドの競演が生み出した、新しさと懐かしさが同居した作品。R&Bが好きな人にもソウルが好きな人にも聞いてほしい、良質なブラック・ミュージックだ。

Producer
L. Michels, T. Brenneck

Track List
1. It’s Been A LongTime
2. Do It Again
3. Smilin’
4. Guilty
5. In Love (Don't Mess Things Up)
6. Make Me Over
7. Cut Me Loose
8. Underneath My Feet
9. They Won’t HangAround
10. Bad Girl
11. Let It Go
12. Guilty (Alt mix)
13. They Won't Hang Around (Alt mix)





QUEEN ALONE
LADY WRAY
BI CR
2016-09-23


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