melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

DefJam

Jeremih - The Chocolate Box [2018 Def Jam Recordings]

ボーイズ・グループ出身のオマリオンやマーカス・ヒューストン、ソングライターからキャリアを始めたニーヨやB.J.ザ・シカゴ・キッド、インターネット経由で火が付いたガラントやジャスティン・ビーバーなど、様々な出自のアーティストがしのぎを削るアメリカのR&B界。その中で、独特の存在感を発揮しているのが、シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ジェレマイことジェレミー・フェルトンだ。

音楽一家に生まれ、3歳の頃から色々な楽器を演奏、のちにクラシック音楽の教育も受けている彼は、ハイスクールに進学すると、マーチング・バンドでジャズも経験。卒業後は大学で音楽ビジネスを学んできた音楽エリート。

大学在学中に音楽プロデューサーのミック・シュルツの知己を得た彼は、地元のラジオ局で働きながら、初のシングル”My Ride”を録音。同局がデフ・ジャムの創業者、リック・ルービンの目に留まり契約。2009年にメジャー・デビュー・シングル”Birthday Sex”を発表すると、総合シングル・チャートの4位に入る活躍を見せた。

その後も、学校に通う時期を挟みつつ、7年間で3枚のスタジオ・アルバムと2枚のEP、複数のミックステープを制作。アメリカ国内で50万枚を売り上げるヒットになったほか、収録曲がイギリスやオーストラリアでゴールド・ディスクを獲得するなど、作曲能力と歌唱力の両方で評価される、稀有なミュージシャンになった。

本作は、2017年の『Cinco De MihYo』以来となる3枚目のEP。自主制作だった前作から一転、デフ・ジャムの配給によるリリース。制作には、ニッキー・ミナージュなどの作品を手掛けているヒットメイカや、彼のアルバムに何度も参加しているレトロ・フューチャなど、豪華な面々が集結。実力に定評のあるクリエイターが生み出す、厳選された4曲を楽しめる。

アルバムの1曲目を飾る”Cards Right”は、プロデューサーにヒットメイク、ソングライターにエリック・ベリンガーが名を連ねたミディアム・ナンバー。ゆったりとしたテンポのトラックをバックに、透き通った歌声を響かせる姿が印象的、メロディの随所に、T-ペインを彷彿させるラップの表現技法が盛り込まれているのは、エリック・ベリンガーの影響だろうか。

続く、SMTSは、レトロ・フューチャが制作にかかわっているミディアム・ナンバー。チキチキという上物や、音数を絞ったビートは、トラップの手法を取り入れたものだが、雰囲気はトラップとは思えないほどロマンティック。メロディやトラックはクリス・ブラウンアッシャーっぽくも聴こえるが、繊細な歌声や滑らかな歌唱はR.ケリーやジョーにも通じるものがある。

また、”Forever I'm Ready”は90年代に一世を風靡した男性ヴォーカル・グループ、H-タウンの同名曲をサンプリングしたダイナミックなバラード。パンチの効いた音を厳選しているトラックは、シンプルだが味わい深いトラックが流行していた90年代のR&Bを踏襲したもの。このトラックに、泣き崩れるように歌うみずみずしいヴォーカルを組み合わせることで、90年代のR&Bの良さを取り入れつつ、2018年の新曲に落とし込んでいる。

そして、本作の最後を締める”Nympho”は、D.I.T.C.のO.C.の声をサンプリングしたスロー・ナンバー。ラッパーの声をサンプリングしているものの、曲調はロマンティックメロディとトラップのビートを組み合わせた、彼の十八番のスタイル。”SMTS”と同じレトロ・フューチャのプロデュースで、ジェレマイのしなやかな歌声と美しいメロディをじっくり聴かせる良曲だ。

彼の魅力は、美しい声やメロディをじっくり聴かせつつ、多彩な曲を用意するプロダクション能力。ジョーやトレイ・ソングスのような、磨き上げられた声と、丁寧な歌唱で勝負しつつ、新しい音を取り込み、楽曲の幅を広げることで、聴き手に新鮮な印象を与えている。このバランス感覚の良さが、彼の音楽の良さだと思う。

目まぐるしく流行が入れ替わるR&Bの潮流に乗りつつ、「魅力的な歌を聴かせる」という筋の通った作風が光る良作。前作が自主制作だったのでi色々と不安がよぎったが、それを杞憂だと思わせる充実の内容だ。

Producer Ayo The Producer, Flippa, Hitmaka, Keyzbaby, Paul Cabbin, Pop & Oak, Retro Future & SaucyKev

Track List
1. Cards Right
2. SMTS
3. Forever I'm Ready
4. Nympho





Toni Braxton - Sex & Cigarettes [2018 Def Jam Recordings]

92年に、ベイビーフェイスとのデュエット曲”Give U My Heart”でレコード・デビュー。そして、93年のアルバム『Toni Braxton』を皮切りに、2017年までに8枚のスタジオ・アルバムと多くのシングルを発表。96年にリリースされ、全世界で1000万枚を売り上げた”Un-Break My Heart”や、各国のヒット・チャートに名前を刻んだ2001年の”He Wasn't Man Enough”など、多くのヒット曲を残してきた、メリーランド州出身のシンガー・ソングライター、トニ・ブラクストンこと、トニ・ミッシェル・ブラクストン。

牧師の父と、オペラ歌手の母の間に生まれた彼女は、子供のころから、後にブラクストンズとしてデビューする4人の妹や弟と一緒に、教会で音楽に親しみながら腕を磨いてきた。その後、地元の大学で教育学を学んだ彼女は、プロのミュージシャンを目指して、ガソリン・スタンドで働きながら音楽活動を開始。徐々に知名度を上げ、4人の姉妹と一緒に、LAリードとベイビーフェイスが率いるラ・フェイスと契約する。

しかし、高いスター性と表現力が認められたトニは、姉妹とは別れ、ソロ・シンガーとしてプロのキャリアをスタート。その後は30年以上、多くのヒット曲を発表し、200公演を超える大規模なショウも行うなど、録音作品とステージ、両方で高い評価を受ける名シンガーとなった。

本作は、彼女にとって通算8枚目のスタジオ・アルバム。ベイビーフェイスとのコラボレーション作品『Love, Marriage & Divorce』から4年、単独名義の作品としては『Pulse』以来、8年ぶりのアルバムとなる本作は、プロデューサーにアントニオ・ディクソンやベイビーフェイス、トリッキー・スチュアートなど、新旧の名手を起用。彼女自身も制作に携わった力作になっている。

アルバムの1曲目は、本作に先駆けてリリースされたシングル曲”Deadwood”。ギターやストリングスを組み合わせた、フォーク・ソングっぽい伴奏をバックに、しっとりと歌声を聴かせるスロー・ナンバー。ギターなどの伴奏が引き立つギリギリの音圧で響くビートが、フォークソング寄りの楽曲を、スタイリッシュなR&Bに落とし込んでいる点に注目してほしい。

続く”Coping”は、映画「Greatest Showman」の音楽を手掛けたことも記憶に新しい、ロス・アンジェルスを拠点に活動するプロデューサー、スチュアート・クライトンが参加した作品。じっくりと歌を聴かせる序盤から、四つ打ちのビートを使ったダンス・ミュージックに展開する構成が聴きどころ。メロディや構成はポップスのものだが、パワフルな歌声と表現力で本格的なR&B作品に組み替える、トニのパフォーマンスが光っている。

また、本作の発売直前に発表された”Long As I Live”は、アリアナ・グランデなどの作品に携わっている、アントニオ・ディクソンがプロデュース。ロマンティックなメロディと、それを引き立てる上品な雰囲気のバック・トラックは、90年代の彼女の作品を思い起こさせる。絶妙な力加減で、艶めかしい歌声を響かせるトニの持ち味が発揮された良曲だ。

また、インターネット経由で火が付いた若手(といっても30代半ばだが)フォーク・シンガー、コルビー・マリーとコラボレーションした”My Heart”は、ベイビーフェイスが制作に参加したスローナンバー。ギターの演奏を軸にした伴奏をバックに、じっくりと丁寧に歌う二人の姿が心に残るバラード。これまでにも”Breathe Again”や“Un-Break My Heart”のような、シンプルなアレンジでヴォーカルを際立たせた楽曲を残してきた彼女だけあって、この曲も堂に入ってる。

今回のアルバムから感じるのは、既に確立された個性に磨きをかけ、さらに高いレベルへと持って行ったトニの表現力だ。加齢の影響が少ない低声がウリの彼女とはいえ、繊細なコントロールで色々な表情を吹き込む技術は、ヒット曲を連発していた90年代の彼女とは比べ物にならないほど優れている。磨き上げた技術によって、年齢を重ねることによる影響を補うだけでなく、表現の幅を広げている点が、彼女の恐ろしいところだ。

「成熟」とは単に年齢を重ねることではなく、経験を積んで進歩し続けることだということを僕らに教えてくれる本格的なヴォーカル作品。長い間、音楽業界の一線で戦い続けたベテランにしか出せない、円熟した「歌」を存分に楽しんでほしい。

Producer
Antonio Dixon, Babyface, Dapo Torimino, Fred Ball, Paul Boutin, Pierre Medor, Stuart Crichton, Toni Braxton & Tricky Stewart etc

Track List
1. Deadwood
2. Coping
3. Long As I Live
4. My Heart feat. Colbie Caillat
5. FOH
6. Sorry
7. Tear Me Up, Knock You Down feat. En Vogue
8. Sex & Cigarettes
9. Mission
10. Zodiac
11. Don't Look Back
12. The Last Time





Sex & Cigarettes
Toni Braxton
Def Jam
2018-03-23

Jhené Aiko - Trip [2017 ARTium, Def Jam]

2000年代初頭から、姉であるミラJ達と一緒に音楽活動を開始。姉妹で結成したガールズ・グループのほか、裏方やゲスト・ミュージシャンとしてB2Kなどの作品に携わってきた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、ジェネイ・アイコことジェネイ・アイコ・エフル・キロンボ(余談だが、母方の祖先が日本人のため”アイコ”というミドルネームを使っている。また、姉のミラJにも”アキコ”というミドルネームがある)。

2011年には自主制作のアルバムながら、ドレイクやカニエ・ウエスト、ケンドリック・ラマーといった豪華なゲストが参加したミックス・テープ『Sailing Soul(s)』を発表。同作が高い評価を受け、2014年にはヒップホップの名門デフ・ジャムと契約する。また、同年にリリースした初のフル・アルバム『Souled Out』はアメリカ国内だけで15万枚を売り上げるヒットとなり、グラミー賞の3部門にノミネート。それ以外にも多くの音楽賞にノミネート、もしくは受賞するなど、一気にスターダムを駆け上がった。

その後も、2016年にはラッパーのビッグ・ショーンとコラボレーションしたアルバム『TWENTY88』を発売。その一方で、 スラックと共作した”First Fuck”や、クリス・ブラウンと共演した”Hello Ego”など、新曲を次々と発表。それ以外にも、チェインスモーカーズやガラント、カシミア・キャットやマリ・ミュージックなど、様々なスタイルのミュージシャンの録音に参加し、あらゆるジャンルに適応する引き出しの多さと高いスキルを見せつけてきた。

本作は、そんな彼女にとって自身名義では3年ぶり2枚目となるフル・アルバム。既発曲の大半は収録せず、3曲目の”While We're Young”以外は全て新曲という予想外の構成だが、その新曲も含め、多くの曲で彼女の持ち味が存分に発揮された、ハイ・レベルな作品に仕上がっている。

その、本作からの先行シングル”While We're Young”は、これまでにも彼女の曲を数多く手掛けているフィスティカフスのプロデュース作品。シンセサイザーを駆使したみずみずしい音色のトラックに乗って、ゆったりと歌う姿が印象的なミディアム・ナンバー。彼女の透き通った歌声が、シンセサイザーのひんやりとした音色と相性のよい佳曲だ。

これに対し、ビッグ・ショーンが客演した”OLLA (Only Lovers Left Alive)”は、ドナ・サマーなどの70年代終盤のディスコ音楽やニュー・オーダーのような黎明期のエレクトロ・ミュージックを思い起こさせる、リズム・マシーンやアナログ・シンセサイザーの音色が新鮮なアップ・ナンバー。ビッグ・ショーンの作品に数多く携わってきたアメイア・ジョンソンが制作に参加したこの曲は、ダフト・パンクの”Get Lucky”やマーク・ロンソンの”Uptown Funk”などで注目を集め、最近では、ブルーノ・マーズの”24K Magic”やウィークエンド”Starboy”などのヒット曲にも取り入れられている、ディスコ・ミュージックを取り入れた、モダンなトラックといなたいメロディが光っている。

一方、カシミア・キャットとフランク・デュークスが制作を担当し、ロス・アンジェルス出身のベテラン・ラッパー、クラプトを招いた”Never Call Me”は、電子音を多用しつつも従来の作風を踏襲したミディアム・テンポの作品。声質もスタイルも異なる、二人の歌唱をスムーズにつなげるアレンジが面白い。

そして、本作の最後を締めるのが、マリ・ミュージックと共作した”Trip”だ。マリ・ミュージックが用意したトラックは、彼の作品を彷彿させるゴム毬のように跳ねる音色が気持ち良いもの。その上で、アフリカの民族音楽を連想させる軽妙なメロディを歌うジェネイの存在が光っている。メロディを大きく崩して歌うマリが、楽曲をポップな雰囲気に仕上げている。

今回のアルバムでは、前作までのクールなイメージを残しつつ、それを発展、応用した楽曲が目立っている。その最たる例が”OLLA (Only Lovers Left Alive)”や”Trip”のような曲で、これまでの作品では見られなかった、ディスコ音楽やアフリカの音楽の要素をメロディやトラックにふんだんに取り入れている。これだけ色々なスタイルを取り上げながら、自分の音楽に違和感なく混ぜ込めるのは、若いころから音楽業界の一線で活躍していた、彼女の豊富な経験と鋭いセンスによるところが大きいと思う。

アリーヤを彷彿させる冷たく透き通った歌声を持ちながら、彼女やそのフォロワーとは一線を画した独特の音楽を聴かせている。現代的な音楽を作りながら、90年代からR&Bに慣れ親しんできた人には懐かしい、そうでない人には新鮮に聴こえる魅力的なアーティストだ。

Producer
Jhené Aiko, Ketrina "Taz" Askew, Fisticuffs, Amaire Johnson, Frank Dukes, Dot da Genius etc

Track List
1. LSD
2. Jukai
3. While We're Young
4. Moments feat. Big Sean
5. OLLA (Only Lovers Left Alive) feat. TWENTY88
6. When We Love
7. Sativa feat. Swae Lee
8. New Balance
9. Newer Balance (Freestyle)
10. You Are Here
11. Never Call Me feat. Kurupt
12. Nobody
13. Overstimulated
14. Bad Trip (Interlude)
15. Oblivion (Creation) feat. Dr. Chill
16. Psilocybin (Love In Full Effect) feat. Dr. Chill
17. Mystic Journey (Freestyle)
18. Picture Perfect (Freestyle)
19. Sing To Me feat. Namiko Love
20. Frequency
21. Ascension feat. Brandy
22. Trip feat. Mali Music

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