melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Mofunk

XL Middleton - Things Are Happening [2017 Mofunk Records]

プロデューサーやソングライターとして活動する一方、自身の名義でも多くの作品を残している、カリフォルニア州パサデナ出身のミュージシャン、XLミドルトン。

地元の友人と結成したラップ・グループ、クラウン・シティ・キングスからキャリアをスタートした彼は、2003年にエクストラ・ラージの名義で、アルバム『...aka Matthew Middleton』を発表してソロに転向。以後、80年代のディスコ・ミュージックを彷彿させる、アナログ・シンセサイザーを多用したダンス・サウンドで徐々にファンを広げ、オーケイ・プレイヤーズのような音楽メディアのみでなく、ワシントン・ポストやLAウィークリーのような一般メディアにも取り上げられるようになる。また、自身のレーベル、モー・ファンクを設立すると、女性シンガーのモニーカなどのレコードを配給。魅力的なディスコ音楽のレコードを発表するレーベルとして、日本でも知られるようになった。

今回のアルバムは、自身名義の録音としては1年ぶり15枚目となる作品。すべての曲で、彼自身がプロデュースと演奏、ヴォーカルを担当。ゲストには、2017年にモー・ファンクから発表した『Blackwavefunk』も記憶に新しいモニーカなどが参加。シンセサイザーのクールな音色を生かしたクールなダンス・ミュージックを聴かせている。

アルバムの1曲目は、リック・ジェイムスを思い起こさせる鋭いサウンドが格好良い”Never Have Too Many Freaks”。きらびやかなキーボードの音色と、精密なビートが光る伴奏をバックに歌う、彼の姿が印象的なダンス・ナンバーだ。ドライブの時に聴いたら気持ちよさそうな、疾走感が魅力的だ。

これに続く”Never Have Too Many Freaks”は、ハンドクラップの乱れ打ちのインパクトが強いイントロから、スタイリッシュな演奏へとつながる展開が面白いアップ・ナンバー。荒っぽいヴォーカルと洗練されたサウンドのコンビネーションがかっこいい。80年代に数多く見られた、強烈なインパクトと洗練された演奏を両立したディスコ音楽を連想させる良曲だ。

また、アリゾナ州タクソン出身のシンガー・ソングライター、ザッキー・フォース・ファンクを招いた ”Paradise Of Pavement”は、ブリブリと唸るようなベースの音が光るダンス・ナンバー。メイン・ヴォーカルを担当するザッキーの荒々しいテナー・ヴォイスと、絶妙なタイミングで合いの手を入れるXLのコンビネーションが素敵な佳曲だ。ボコーダーを使って、曲にメリハリをつけている点も見逃せない。彼同様、80年代のディスコ音楽を取り入れた作風で大ブレイクした、ディム・ファンクの音楽にも少し似た曲だ。

そして、モニーカをフィーチャーした”Better Friend”は、彼女のアルバムに入っていそうな、シックで上品な雰囲気の作品。低音を強調した伴奏をバックに、淡々と歌うXLが魅力の佳作。軽妙な掛け合いを聴かせるモニーカのヴォーカルが、曲に軽妙な雰囲気を与えている。実際に彼らのライブを観てみたいと思わせる、不思議な魅力のある曲だ。

西海岸を拠点に、80年代のディスコ・ミュージックからインスピレーションを得た音楽を作るミュージシャンというと、ディム・ファンクのことを思い出すが、古い楽器の音色を強調して、往年のサウンドを取り入れようとしたディム・ファンクに対し、彼の音楽は当時の音楽が持つ近未来的な雰囲気を現代の音楽に組み入れようとしているように映る。だからこそ、彼の音楽は懐かしさと新鮮さが同居した、斬新だけど親しみやすい作品になっているのだと思う。

ヨーロッパや日本でも根強い人気のディスコ・ミュージック。その魅力を、本場アメリカの人間が、現代のポピュラー音楽の主役であるヒップホップと融合することで、21世紀に蘇らせた面白い作品。当時の音楽を知る人には解釈の斬新さを、当時の音楽を知らない人にはサウンドの新鮮さを楽しんでほしい良作だ。

Producer
XL Middleton

Track List
1. Never Have Too Many Freaks
2. Look Who's Talkin'
3. Ice Level
4. Purple Sheets
5. Paradise Of Pavement feat. Zackey Force Funk
6. Better Friend feat. Moniquea
7. Prelude To The Invasion
8. Enjoy The Ride
9. Gotta Let You Go
10. They Don't Wanna Leave Me





THINGS ARE HAPPENING (CD)
XL MIDDLETON
MOFUNK RECORDS
2017-10-06

Moniquea - Blackwavefunk [2017 Mofunk Records]

インディアナ州ゲイリー生まれ、カリフォルニア州パサデナ育ちのシンガー・ソングライター、モニーカ。ヴォーカル・グループのリード・シンガーだった母や、友人たちの影響を受け、自身もヴォーカル・グループを結成。その後、70年代のソウル・ミュージックや、80年代のエレクトリック・ミュージックに興味を持ち、次第にそれらを取り入れたダンス・ミュージック、いわゆるディスコ・ブギーに傾倒し始める。 そんな彼女は、15歳の時にパサデナを代表するスポーツ・イベント、ローズ・ボール(大学対抗のアメリカン・フットボールの試合)で歌を披露するチャンスを得る。そして、その勢いでロス・アンジェルスに移住。現地では、様々なソウル・フェスティバルのステージを経験していった。

すると、彼女の歌唱力は地元メディアの目に留まるようになり、それを切っ掛けに全国区の媒体でも紹介されるようになる。また、そのころには、自身の作品を発表するようにもなり、2011年には自主制作のアルバム『Moniquea』を配信限定で、2014年にはパサデナ出身のプロデューサー、XLミドルトン率いるモファンク・レコードから『Yes No Maybe』を、LPやCDを含む複数のフォーマットで発表。跳ねるようなベース・ラインを中心に据えたスタイリッシュなサウンドと、グラマラスな歌声で多くの人を魅了した。

本作は、前作から3年ぶりとなる3枚目のアルバム。前作同様、モファンクからのリリースで、プロデューサーには、前作に引き続き、XLミドルトンとエディ・ファンクスターが参加しているほか、ディム・ファンクの従弟でもあるターコイズ・サマーの提供曲や、彼女自身のセルフ・プロデュースによる楽曲も収録している。

アルバムからの先行リリース曲である”Checkin' Out”は、XLミドルトンのプロデュース曲。跳ねるようなベースと、華やかなシンセサイザーのリフが格好良いダンス・ナンバー。声量を抑えて、リズミカルに言葉を繋いだヴォーカルも格好良い曲だ。全体的なイメージとしては、メアリー・ジェーン・ガールズの”Candy Man”っぽいメロディと伴奏に、豊かな低音域と、芯の強さが光るヴォーカルを組み合わせた、大人っぽい雰囲気の曲だ。

これに対し、ターコイズ・サマーが手掛けた”Knew It”は、色々な音色のシンセサイザーを使ったにぎやかな上物と、モニーカのセクシーな歌声を活かした、なまめかしいメロディが印象的な曲。沢山の音色を詰め込みつつ、曲の展開に応じて強調する音を変えることで、楽曲に起伏をつけたアレンジが新鮮だ。耳元で囁きかけるように歌う(その割には声量があるが)、モニーカの妖艶なヴォーカルも見逃せない。

また、彼女自身が制作を主導した”Check Your Sources”は、ミディアム・テンポのダンス・ナンバー。コミカルなアナログ・シンセの伴奏が面白いトラックに載せて、ラップのように言葉を繋ぐヴォーカルを聴かせている。メロディ部分では中低音域を中心に、サビの部分では高音を使うことで、曲にメリハリをつける方法が面白い。曲の途中で喋るように歌う個所を作ってファンの度肝を抜いた、ファンカデリックやリック・ジェイムスの音楽を連想させる、奇抜で個性的な曲だ。

そして、”Make You Feel My Love”は本作では唯一、ゲストミュージシャンを起用した曲。ギタリストのブライアン・エリスが参加したこの曲は、明るい音色を多用した、華やかで洗練された雰囲気のミディアム・ナンバー。曲の後半で、荒々しいギターを聴かせてくれるブライアンの存在が、楽曲のアクセントになっている。

今回のアルバムも、過去の作品同様、キャッチーなメロディとシンセサイザーを多用した洗練されたトラックを軸に、所々に強烈なフレーズを盛り込んだ、70年代から80年代にかけて流行したディスコ音楽の手法を踏襲したものになっている。これに加えて、彼女の場合は、グラマラスな歌声とで表情豊かなヴォーカルのおかげで、ティーナ・マリーやチャカ・カーンのように、しなやかなサウンドとダイナミックな表現を両立させているところが特徴的だ。

グラマラスで妖艶なヴォーカルと、歌に負けない強靭なトラックが格好良いディスコ音楽。クールで透き通ったヴォーカルが魅力のナイト・ファンクとは対極のスタイルを武器にする、モニーカ流のディスコ・ブギーを堪能してほしい。

Producer
XL Middleton, Turquoise Summers, Moniquea, Eddy Funkster

Track List
1. Checkin' Out
2. Knew It
3. When You Are Away
4. I Just Don't Know
5. Check Your Sources
6. Make You Feel My Love feat. Brian Ellis
7. Why Can't You See
8. Famous





BLACKWAVEFUNK [CD]
MONIQUEA
MOFUNK RECORDS
2017-06-02

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