melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Republic

Justine Skye – ULTRAVIOLET [2018 Republic, Roc Nation]

2008年にジェイZがライブ・ネイションとの合弁企業として設立すると、リアーナやザ・ドリーム、T.I.などの人気ミュージシャンの作品を配給し、近年は女性ラッパーのラプソディや、元2PMのジェイ・パクと契約するなど、猛烈な勢いで勢力を拡大しているロック・ネイション

ジャスティン・スカイは、2016年に21歳の若さで同社と契約したブルックリン出身のシンガー・ソングライター。アフリカ系とインド系のジャマイカ人をルーツに持つ彼女は、動画投稿サイトにアップロードしたパフォーマンスが注目を集め、2013年に18歳の若さでアトランティックと契約。配信限定ながら2枚のEPと1枚のミックス・テープを発表し、R&Bチャートに名を刻む一方、ケラーニやロジックとともに、フォーブス誌の「30Under30」で取り上げられるなど、気鋭の若手アーティストとして、高く評価されてきた。

このアルバムは、2016年末にリリースした移籍後初の録音作品『8 Ounces』以来、約1年ぶりとなる新作。彼女にとって初のフル・アルバムで初のフィジカル・リリースとなる本作は、前作同様、ユニヴァーサル傘下のリパブリックが配給を担当。プロデューサーにはフランク・デュークスやヒット・ボーイ、ケイジーベイビーなどのヒット・メイカーを中心に、バラエティ豊かな面々が参加。これまでの作品同様、彼女自身も制作にかかわった力作になっている。

本作の収録曲で目を引くのは、アルバムに先駆けて発表された”U Don't Know ”だ。カイリー・ミノーグやエミリー・サンデーなどを手掛けているイギリスの音楽プロデューサー、クリス・ロコが制作を担当、ナイジェリア出身のヒップホップ・アーティスト、ウィズキッドがゲストとして参加した国際色豊かなダンス・ナンバーだ。クリスが用意したトラックは、ウィズキッドの作品を思い起こさせるレゲトンの要素を含むアフロ・ビート。軽快なリズムが魅力のダンス・ナンバーを艶めかしいメロディと伴奏で、妖艶なダンス・ナンバーに仕立て上げている。

これに続く”Back For More”は、ニッキー・ミナージュやリル・ウェインなどの楽曲に携わっている、シカゴのプロデューサー、ヤング・バーグを制作に起用し、同じくシカゴ出身のシンガー、ジェレミーをフィーチャーしたアップ・ナンバー。エイコンやケヴィン・リトルを彷彿させる、ソカやダンスホール・レゲエのエッセンスを盛り込んだビートが、ラテン音楽が流行っている現代のアメリカっぽい。地声を使ったパワフルな歌唱から、滑らかな高声を使った美しいメロディまで、切れ目なく繋ぐジャスティンの歌唱力と、R.ケリーを思い起こさせるジェレミーのセクシーなヴォーカルのコンビネーションが聴きどころ。しっとりとしたメロディと、軽やかなトラックが一体化した面白い曲だ。

また、エミリー・サンデーやリトル・ミックス、ワン・ダイレクションなどに楽曲を提供しているプロダクション・チーム、TMSのメンバーがペンを執った”Don't Think About It”は、エムトゥーメイの”Juicy Fruit”を彷彿させるゆったりとしたトラックが心地よいミディアム・ナンバー。22歳とは思えない、大人の色気を感じさせるヴォーカルと、歌とラップを使い分けて曲にメリハリをつけるセンスが光っている。年齢以上に老練したヴォーカルを聴かせる彼女のスキルと、ポップス分野で多くの名曲を残してきた制作者のスキルが生み出した本作の目玉といっても過言ではない楽曲だ。

そして、本作の収録曲でも特に異彩を放っているのが、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、ビジネス・ボーイとカナダのミシサガ出身のグラミー賞アーティスト、パーティーネクストドアとジャスティンの3人で制作したのが”You Got Me”だ。重いビートの上で、歌とラップを織り交ぜたヴォーカルを聴かせるスタイルは、パーティーネクストドアの作品を思い起こさせるもの。しかし、この曲では、サビの部分で豊かな歌声を響かせるなど、ヒップホップ寄りのパーティーネクストドアの楽曲というより、クリセット・ミッシェルリーラ・ジェイムスに近い、本格的な女性ヴォーカルのR&B作品になっている。流行の音を積極的に取り込む鋭い感性と、力強いヴォーカルが合わさった。魅力的な佳曲だ。

今回のアルバムでは、彼女の持ち味である先鋭的な音を取り込むセンスを活かしつつ、より多くの人に受け入れられるような、ポップな楽曲が目立っている。ワン・ダイレクションなどを手掛けているイギリスのプロデューサーを起用し、アフロ・ビートやレゲトンのエッセンスを組み込んだ楽曲で、意外性を感じさせつつ、要所要所で20代前半とは思えない、セクシーな歌を披露する。この若い感性を生かした斬新な作風と、円熟した歌唱技術の同居が、この作品のウリだと思う。

初めてのフル・アルバムとは思えない高い完成度と、最初から最後まで新鮮さを感じさせる楽曲のラインナップが素晴らしい。2018年の初頭にリリースされた作品だが、今年一年を通して楽しめそうな密度の濃い作品だ。

Producer
Pete Kelleher, Ben Kohn, Tom Barnes, Frank Dukes, Hit-Boy, Bizness Boi,Yung Burg etc

Track List
1. Wasteland
2. Goodlove
3. U Don't Know feat. Wizkid
4. Back For More feat. Jeremih
5. Don't Think About It
6. You Got Me
7. Heaven
8. Push Ya
9. Lil' Boy
10. Best For Last






SoMo - The Answers [2017 Republic, UMG, Universal]

動画投稿サイトにアップロードした自作曲や有名なヒット曲のカヴァーが、300万回以上再生されたことで注目を集め、ユニヴァーサル系列のリパブリック・レコードと契約。2012年にシングル『Kings & Queens (Throw It Up)』でデビューした、テキサス州デニソン出身のシンガー・ソングライター、ソーモことジョセフ・アンソニー・ソマーズ・モラレス。彼にとって、フル・アルバムとしては2014年に自身のアーティスト・ネームを冠した1作目『SoMo』以来、ミックス・テープも含めると2015年の『My Life II』以来となる新作。

『SoMo』では、収録曲の大部分をセルフ・プロデュース、もしくはコディ・タープレイとの共同プロデュースで制作していたが、今回のアルバムではトリッキー・ステュアートを含む複数のプロデューサーを起用。ウィークエンドやクリス・ブラウンの楽曲を巧みに乗りこなす、繊細で器用なヴォーカルを活かした、緻密で美しいメロディのR&Bを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Mirror”はピエール・メイダーとトリッキー・ステュアートがプロデュースを担当したミディアム・ナンバー。シンセサイザーの電子音を効果的に使ったシンプルなトラックと、爽やかな歌声を活かした語り掛けるようなメロディが、クリス・ブラウンの”Back To Sleep”を思い起こさせる。デビュー前から、クリス・ブラウンの曲をレパートリーにしていた彼だけあって、この曲のようにポップで軽やかなタッチのR&Bとの相性は極めて高い。

一方、この曲に続く本作からのシングル曲”First”は、電子音と”間”を強調した神秘的なトラックと、丁寧に言葉を紡ぎ出すヴォーカルが印象的なミディアム・ナンバー。電子音をフル活用したトラックと、繊細なヴォーカルはウィークエンドの”Starboy”を彷彿させるが、こちらの曲もプロデューサーはピエール・メイダーとトリッキー・ステュアート。ヒット曲を数多く手掛けている敏腕プロデューサーの多芸多才っぷりと、彼らが作るトラックとソーモの声の相性の良さを再認識させられる。

これに対し、本作で唯一、ゲスト・シンガーをフィーチャーしている”Play”はコディ・タープレイがプロデュースを担当したアップ・ナンバー。マーカス・ヒューストンの”Favorite Girl”を彷彿させる、流麗なメロディが印象的だ。本作に客演しているポップ・シンガーのメイティ・ノイエスのスマートな歌声も、本作の洗練された雰囲気を強調しているように映る。こちらはコディ・タープレイのプロデュース。

それ以外の曲で、特に注目したいのは、本作では異色のダイナミックなバラード”Just a Man”だ。コディ・タープレイに加えジェイソン・ファーマーやジム・ジョンシン、ニコラス・マルゾウカといった大物ミュージシャンも担当しているプロデューサーが終結したこの曲は、キーボードの伴奏からドラムを核にしたシンプルなトラックへと続くこの曲は、ジョーの”I Believe In You”やブライアン・マックナイト”One Last Cry”のような、美しいメロディと感情を巧みに表現する歌唱力で勝負した曲。シンセサイザーを多用した隙間の多いトラックと、繊細な歌声を強調した曲が多い彼だが、声量や表現力が求められる曲も、文句の付けどころがないくらい完璧に歌い上げている。同路線のタイトル曲”Answers”も甲乙つけがたい良曲。ヒットする可能性は皆無だと思うが、この路線を突き詰めたら大化けするんじゃないかと思う。

動画投稿サイトのパフォーマンスが評価されてデビューしただけあって、ヴォーカリストとしてのポテンシャルは非常に高いと思う。だが、流行を切り開く運の良さと大胆さが乏しいのが仇になって、曲のクオリティに見合った結果を得られていないように見える。

だが、彼の明るいメロディからナイーブフレーズまで柔軟に対応する技術や柔らかい声は、稀有なものだ。「歌」や「声」をじっくり味わいたい人にはぜひおすすめしたい。魅力的なシンガーだ。

Producer
Cody Tarpley, J. Pierre Medor, C. "Tricky" Stewart

Track List
1. Intro
2. Mirror
3. First
4. Campion
5. Play feat. Maty Noyes
6. Control
7. Over
8. Curve
9. Do You
10. Want It
11. Just a Man
12. Answers
13. You





Answers
Somo
Republic
2017-03-17

 
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