2014年にシングル”Move Your Body”(後述のアルバムの収録曲とは別のインストゥメンタル作品)を発表。70年代、80年代のディスコ音楽を中心に、色々なスタイルのブラック・ミュージックを吸収、昇華した作風でファンを増やしてきた、プロデューサーのT-Grooveこと高橋佑貴。バークリー音楽院を卒業後、東京とボストンを拠点に活動。コモンやナズ、キース・スウェットなどの楽曲を取り上げた『Re:Live -JAZZ meets HIP HOP CLASSICS』が注目を集め、ソーシィー・レディーや山口リサなど、様々な国のアーティストとコラボレーションしてきた、monologこと金坂征広。両者が新たに結成した音楽ユニットが、このゴールデン・ブリッジ。(グループ名の由来は、両者の名字「”金”坂」と「高”橋”」だろうか?)

既にT-Grooveのアルバム『Move Your Body』やG.Rinaのシングル”想像未来”のリミックスで共演している二人が組んだ本作。レコーディングには金坂が運営するKomugiko Studioを使用。演奏には高橋と金坂に加え、管楽器でクガ・ユウが参加。一部の楽曲では海外のシンガーをゲストに迎えるなど、収録曲の少ないシングルながら、豪華で濃密な作品になっている。

1曲目の”Tribal”は、二人が共作したインストゥメンタル作品。パーカッションを強調した軽妙なビートは、ディスコ音楽から多くの影響を受けた、90年代以降のハウス・ミュージックを思い起こさせる。ヴィブラホンやギター、キーボードを組み合わせた演奏は、70年代から80年代にかけて流行した、ドナルド・バードやゲイリー・バーツのようなソウル・ミュージックを取り入れたジャズ・ミュージシャンの演奏っぽい。

続く”Baby, I Got Your Sugar”は、モデルとしても活躍している女性シンガー、アル・コープランドと、ニューヨークを拠点に活躍するヴォーカリスト、リー・ウィルソンの二人を招いたミディアムナンバー。ストリングスのような音色を使った伴奏が、70年代後半のバリー・ホワイトやアイザック・ヘイズの音楽のような上品な雰囲気を醸し出している。軽やかなメロディの曲でありながら、丁寧な歌唱で落ち着いた印象を与える二人のヴォーカルや、緻密なアレンジが光っている。

そして、ボストン出身のジャズ・シンガー、リオン・ビールを起用した”Charles River Drive”は、80年代後半に流行した音楽スタイル、ブラック・コンテンポラリーを思い起こさせるスタイリッシュなメロディとアレンジが魅力のスロー・ナンバー。初めて聞いた時は、カシーフかルーサー・ヴァンドロスの未発表曲ではないかと勘違いしてしまったくらい、高級感溢れる洗練された演奏と、貫禄はあるが親しみやすい雰囲気のヴォーカルが、聴き手の心を強く打つ作品だ。

彼らの作品の面白いところは、それぞれの曲が異なる時代やジャンルの音楽をベースにしながら、一貫したスタイルを持つ、一つのアルバムのように聴かせているところだと思う。ジャズの演奏手法やソウル・ミュージックのヴォーカル技術、ディスコ音楽やクラブ・ミュージックの構成など、色々なジャンルの手法を曲の展開に合わせて組み合わせることで、多彩なスタイルと、作品の一貫性を両立していると思う。

だが、何より凄いのは、国や地域を意識させない各人の確固たる個性と技術だと思う。日本在住のトラックメイカーとアメリカ在住の日本人演奏者、アメリカを拠点に活動するシンガーと、出自もキャリアもバラバラな面々だが、70年代から80年代にかけて流行した、スタイリッシュなソウル・ミュージックをベースを共有することで、一つの方向にまとまりつつ、各人の個性が発揮されている。

スペイン語の曲が英語圏のヒット・チャートを席巻し、アジア出身のアイドルがワールド・ツアーを行う時代を象徴する、作者の人種や出身地域よりも「作品の中身」でしている本格的なソウル作品。今後、彼らが誰を巻き込み、どんな音楽を生み出すのかとても楽しみなコラボレーション企画だ。

Producer
Yuki monolog Kanesaka, Yuki T-Groove Takahashi

Track List
1. Tribal
2. Baby, I Got Your Sugar feat. Al Copeland & Lee Wilson
3. Charles River Drive feat. Leon Beal



T.B.C.
Spirit Soul
2017-11-22